two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

新デ杯、大量に発生した新たな問題点

こんばんは。

今日は新ルールになって起きた新たな問題点を振り返りながら、改善方法を検討していきたいと思います。

 

・6ラバー決着は少なすぎでは?

 

今回のデ杯ファイナルから、シングルス2ダブルス1の3本2先取ルールに変わりました。
デビスカップは少しずつ時間短縮の方向にルール改正が進んでいましたが、それでもシングルス4ダブルス1の5本3先取ルールだけはずっと変わらないルールでした。

5本3先取のリバースシングルスは、初日の結果が3日目に影響します。特に自国2番手が相手国1番手を削るという要素があったため、勝負に行くなら勝負、相手関係では適度に捨てシングルスも存在しつつ、5試合秩序だって行われているという点がとてもよく機能していました。


ところが今大会は、3ヶ国の予選リーグで各組1位+各組2位のうちよかった2チームがベスト8に進出というルールに変わり、タイの勝敗が決まった後のダブルス、いわゆるデッドラバーが事実上デッドラバーではなくなりました

以前デ杯ファイナルについて解説した記事でも書きましたが、ラバー勝率が最終順位に大きく影響するため、1ラバーすらも落とせない状況なのに、予選リーグでは2つのタイしか試合がないため、全6試合(ラバー)しかないのです。

実際、各組2位のチームの比較を見ると

      ラバー  セット 総合順位
A フラン 3-3   6-7  12
B ロシア 4-2   8-6  7
C アルゼ 3-3   8-6  8
D ベルギ 3-3   7-7  9
E カザフ 3-3   7-7  10
F アメリ 3-3   7-8  11
※ベルギーとカザフスタンはゲーム率で決定

と、たった1ラバー、それどころか1セットが勝敗を分けたことがよくわかると思います。
これはいわゆる「目無し問題」に対応したためで、それ自体はよく理解できるのですが、本当にぎりぎりまでほとんどのチームが「目あり」になってしまったため、一切手が抜けなくなり、2勝してタイを取ったチームですらダブルスで手が抜けないという事情が発生しました。

それを含めても、たった6試合で決まってしまうのはあっという間すぎるし、初戦を落としたチームが挽回することが非常に困難でした。イタリア、クロアチアがこれにあたります。
1試合捨てても確実に3-1で勝つみたいなゲ-ムプランが組めなくなりました。

 


・負担減はどこへ 度重なる連闘策とけが

 

新デ杯ルールの最大のメリットは「1年間に集まる回数と、試合時間が減る」ことによる選手側への負担減と見られていました。以前にルール記事でも解説したように、デ杯で優勝するために必要な拘束日数は4週間から2週間に減り、予選ラウンドに出なくていい年(前年ベスト4orWC)だと1年に1回、1週間だけです。

しかし、その1週間に大きな負担がのしかかる結果となりました。
まず開催時期が問題。例年パリが終われば選手はオフシーズンに入り、NAFとデ杯決勝出場選手という限られた人以外は休暇を取ることができました。10ヶ月間働きっぱなしのテニス選手にとってはつかの間のオフです。1ヶ月バカンス、1ヶ月トレーニング。これでも足りないかもしれません。
それが多くのトップ選手に、11月4週までスケジュールを拘束させる結果となりました。
パリの頃のATPツアーはみんな疲れ切っています。フレッシュな選手はどこにもいません。ある意味けがと隣り合わせになっているこの時期に、さらに1ヶ月シーズンが伸びたことは致命傷で、実際けがが相次ぎました。

分かりやすかったのはカナダです。出場メンバー4人で構成されていたのが、まずラオニッチがけがで欠場。さらにアリアシムがパリで負傷し、メンバーに帯同するも終盤まで使うことができませんでした。
ラオニッチの代わり呼んだシュナーも負傷で結局登場せず、ポスピシルとシャポバロフがひたすら出続けるという深刻な事態に。アメリカ戦でwalkoverを選択することとなり波紋を呼びました。


スペインも優勝したものの、かなりの自転車操業でした。
アグーが父親の葬儀のため緊急離脱することになり、4人に。シングルスをナダルとカレノ=ブスタで回していましたが、カレノ=ブスタが負傷。ロペスがシングルスに出てくる緊急事態。
さらにナダルがダブルスに連闘し、5つのタイでのべ8試合を戦い全て勝利という獅子奮迅の活躍でしたが、これはナダルだからできる芸当で、普通はけがします。並の人間が真似してはいけないやり方です

今回決勝に進んだ2チームがこの状況で、ベスト4のロシアもハチャノフとルブレフの二人でずっと回していましたから、根本的に破綻していると言わざるを得ません。

現実的には、連闘に対して出場制限をかけるようなルール改正をしないと選手が壊れます。これは長続きしないなという感想です。

 

 

・一都市集中開催の弊害、7時間問題

 

これはツイキャスで放送していた初日から私が指摘していた問題なのですが、午前セッションから午後セッションまでの時間が7時間しかないという問題です。

具体的には、午前に行われるセッションが11時開始、午後に行われるセッションが18時開始になっています。
先述の通り目無し問題を解消するために必ず3試合が消化されるルールになっています。そしてダブルスはノーアドではなく、デュースあり、3セット目もマッチタイブレークではなく普通にやるルールです。

ここでテニスを普段から見られているみなさんならもう結論が分かると思います。はい。7時間で3試合が確実に終わるわけがありません。ましてやポイント間が長くなりがちなデ杯でです。

もっと言うと、ダブルスにシングルス2の選手が連闘する場合、適切な休憩時間が設けられたり、第1試合と第2試合の間のお客さんの入れ替え時間/室内清掃時間もこの7時間の中に含まれます。

その結果がイタリア×アメリカの4時決着をもたらしました。

この日の午前セッションではアルゼンチン×ドイツの試合が行われ、ダブルスの試合では3セットともタイブレーク、さらにファイナルセットのタイブレークスコアは20-18という大熱戦に。当然7時間で終わるわけもなく、イタリア×アメリカの試合は遅れて開始します。この試合はタイスコア0勝1敗同士。そしてシングルスを分け合った段階で、実は決勝トーナメントへ向けては目無しになりました。しかし、デ杯チームポイントやタイ勝敗の記録に残るため、ダブルスでは本気でぶつかり合い、そして4時決着となりました。

仮に8時間ずつの16時間かかったとしても午前3時決着になりますから、いかに無謀な時間設定か分かると思います。

一都市で集中的に開催し、試合を詰め込んだ結果選手たちはかなりつらい日程で戦っています。本末転倒と言わざるを得ません。

  

ホーム&アウェーの消失、消えた観客

 

スペイン戦ではない試合では毎試合空席。これが全てです。
ちょうどラグビーワールドカップを観戦した私が感じたこととしては、ラグビーワールドカップを日本に見に来た外国人ファンは、そのまま1ヶ月間滞在し、ひいきのチームの試合を中心に何でも見ながらついでに日本を観光して帰るというスタイルを取っている人が多かったです。
事実、私が見に行った準決勝は各国のファンごとに固まっていて、白(赤)いチームと黒いチームの対戦だったのに、黄色とか緑とかのジャージーを着た人がたくさんいました*1彼らは自国の選手の応援ではなく、ラグビー自体を楽しみに来ているのです

 

デ杯運営側も、そんな風にテニスファンが1週間ずっと滞在して、各国の試合を見るような形に変えていきたいんだろうなあという意図は伝わりました。が、旧デ杯で100年やってきた立場からすると、中立地で他の国の試合をわざわざ見たいか?と言うと、正直うーーーーーーーーーーーーーーーーーんです。(長棒の長さから汲み取ってください)

エルベールが記者会見でコメントしていますが、国歌斉唱で選手の声が聞こえるなんてこれまでは絶対にありえなかったことです

フランス応援団は今回の改革を機に遠征をボイコットしています。また遠隔地の応援団では人が集まらなかったという台所事情も聞いています。
テニス・ナショナリズムとでもいうべき特別な空気感が支配していたこれまでのデ杯会場。それはなくなったという事実が突きつけられた今年のファイナルでした。

 


こういった諸問題が新たに発生し、一方でプラスになった面はほとんどなかったように思います。というか負担減が目的だったはずなのに負担が増えているのだからそれは当然。

マレーは記者会見で「最初から批判するのは間違っている。チャンスをあげるべきでは」というコメントをしています。これ自体は確かに正論なのですが、残念なことに今のままでは来年以降もこの諸問題は解決できないのではと思います

1日に2セッションをやる限りは7時間問題は解消されませんし、このグループ方式を変更する場合、またWG入れ替え戦付近での大きな組織変更が行われ、最後のタイの結果と関係ないランキング順で再度グループを組みなおすような操作が行われます*2結局、抜本的にもう一度見直さない限り厳しいと思います。

 


すでに立ち上がったばかりのATPカップとの統合案や、ファイナルを9月に移設するという案も出てきています。デビスカップ、ATPカップ、レーバーカップが乱立している2019年。いずれは統合の方向に向かうことになるとは思うのですが、ITFとATPが仲悪かったりポイントの配分だったり色々と解決しなければいけない問題が山積していて、10年単位の時間がかかるのかなあと思っています。

 

2週間かけて全米後の9月にファイナルをやるのが現実的なのかなあと。できたばかりですがATPカップとレーバーカップを廃止して、予選ラウンドを1日1セッションにすれば比較的負担も楽。早期敗退ならアジアまで軽く休める。これが私の今のところの考えなのですが、越えなければいけない壁が多すぎる…

 

何よりプレイヤーファーストであってほしいのですが、果たしてうまくいくのか。必要であればファンからも声を上げていく必要があるのではないでしょうか。

*1:余談ですが、そんな人たちがコンビニの前で群がってほとんどの人がビールを飲みながら歌っている様は、多分もう一生見れないんだろうなと思うほど異様な光景でした

*2:実際、2018→2019では新ルールに対応するため、結構がばがばなグループ組み分けが行われています

abematvがATPカップ全試合中継を決定

驚きました。

AbemaTVが2020年のATPカップ全129試合を完全中継することが発表されました。

 

programnews.abema.tv

 

AbemaTVについて詳しくない人もいると思うので説明します。
AbemaTVはテレビ局を母体としない放送媒体で、スマートフォンアプリやwebで見ることができます。実業家の藤田晋氏が束ねるサイバーエージェントのグループ会社で、系列にはアメーバブログソーシャルゲームのcygamesなどがあります。また最近ではJリーグ町田ゼルビアのオーナー企業になったことでも知られています。

サイバーエージェント系列企業と意識しなくても、意外なところでお世話になっているのではないでしょうか。

 

AbemaTVでは現在、20以上のチャンネルが24時間放送されています。

ジャンルごとにチャンネル分けされていて、将棋、麻雀、釣り、海外スポーツといったジャンルからヒップホップ、アニメ、韓流ドラマ、ニュース番組まで幅広いジャンルのチャンネルが開かれています。

印象としては、少しニッチな分野に強いという印象です。

基本は録画放送の垂れ流しで、注目される放送がある場合のみライブ配信という形をとっています。

例えば麻雀チャンネルでは、月火木金の19時からプロリーグ「Mリーグ」を放送し、深夜やお昼は昔の大会の映像を垂れ流ししています。

Mリーグのことは以前記事にしたのでこちらもどうぞ。

 

twosetdown.hatenablog.com

 

出演タレントもテレビ業界から干されたり都合で出れないタレントを起用したり、全体的にテレビができないことを積極的にやっている媒体だなと思います。(例.新しい地図みのもんた

 

AbemaTVは原則無料。アプリで放送を見るだけならお金は1円もかかりません。ただし、タイムシフトや高画質視聴などの機能を充実させるためのプレミアム会員制度もあります。

将棋の藤井七段の対局中継など、一部コンテンツでは無料でタイムシフトもできますが限定的。ATPカップが無料でもできるかどうかは、放送が近くならないと分からない可能性があり、あまり期待しない方がいいかなと思います。

正直試合が多すぎるので、1ヶ月だけプレミアム会員になってタイムシフトでのんびり見るのもいいのかもしれません(私はそうするつもりです)。

あと今までプレミアム会員になったことがない人は、無料トライアル期間があるので、入ってATPカップが終わってすぐ退会すれば2020年は0円で済みます。*12021年以降もabematvなら、その時はお金払わないといけないですけどね…

 

AbemaTVの制作の方に確認してみたところ

・3チャンネルで会場別にチャンネルを割り当て、試合をすべて流す
・実況解説はつけたい
・まだ公開できない動画や企画を準備している
・テニス中継は初めてだが、無料放送を活かして新しい視聴層に手軽にテニスが見れる環境を届けたい

とおっしゃっていました。

まだ不安なテニスファンもいらっしゃるかもしれませんが、私が担当の方から聞いた感じではノウハウがないなりにかなり準備していらっしゃる様子だったので、期待していいのかなと思います。

 

個人的にはスポーツ中継の放送形態だと、DAZNJリーグに参入した以来の衝撃なので、既存のテニス中継の概念を壊してほしいなと思います*2

*1:GS期間だけWOWOW入ってる人いますよね、無料トライアルじゃないけどそんなイメージでやればいいと思います

*2:おかげで以前から要望があって準備していた、テニス中継放送媒体論がお蔵入りになりました。ちーん

デ杯チームランキングの計算方法について(2019新制度対応)

※重要なお知らせ

2020年3月のランキングシステム改定により、この記事で説明されている方式は2019年限定ルールであることが判明いたしました

2020年以降の恒久的なルールについては新しく公開される記事を参考にしてください。
また、2020年3月のタイの付近で発表したランキングの情報は全てこの記事のルールに基づくものでした。避けようがなかったのですが、間違った情報を流してしまい大変申し訳ありませんでした。

 

 

こんばんは。

というわけでデ杯チームランキング試算です。
本当は今年のファイナル終了前に間に合わせたかったのですが、時間の関係上間に合わなかったので計算方法の解説と、実際の運用状況を解説する記事となりました。新制度1年目で計算ミスも多くなることが想定されたので、実際の結果を見れたのは少し助かりました。
この記事を読み進める前に、その前の新制度についての記事を読んでいない人は

http://twosetdown.hatenablog.com/entry/2019/11/23/151402

こちらから読み進めることを推奨します。

 

そもそもデ杯チームランキングは、デ杯公式から発表している各国のデ杯成績をもとにしたチームランキングです。ATPランキングとは一切関係ありません。

2018年までの旧フォーマットでもチームランキングが存在し、私が必死こいて試算した記録が残っています。

twosetdown.hatenablog.com

 

twosetdown.hatenablog.com

 

しかし2019年の新デ杯から、戦う形式が変わったので当然ランキング計算方法も変わります。
2019年ファイナルの組み分けを抽選する際には、突然改訂されたランキングが発表され、微妙に順位が変わっている事象が確認されたので個人的には大混乱しました。

が、今回の新ルールになってとてもありがたいことが一つあります。

 

ATPで言うところの「rankings breakdown」に相当するポイント内訳が見れるようになりました!!!

今までは4年間かけてじわじわと減っていくポイントを、各種ボーナスポイント込みで計算していたので、一種の連立方程式を解いているような感覚でした*1

しかしこれによって、私のこの後の説明を聞けば誰でもランキング試算ができます!!!

いやしないですよね。
今でこそATPランキングはノウハウがあれば計算できるし、してる人増えたんですけどデ杯はたぶん誰もやらないでしょうね…
しかも、使いどころが少なくなるのでますます需要ない…

 

しかし誰かがやらないといけない。私は色々思うところありましたが、新デ杯もなんとか船出となったので、引き続き見ていこうと思います。デ杯大会の感想については別記事で。

 

というわけで、デ杯チームランキングの計算方法を解説していきます。

 

まず、今回のデ杯チームランキングで重要なのは、ランキングの更新が主に年4回→2回になることです。
旧ルールでは、年間4回のタイ(WG1R、WGQF、WGSF/入れ替え戦、WG決勝)が終わるごとにランキングを更新し、新たにドロー抽選する場合にはそのランキングを使ってシードなどを決めていました。

しかし新ルールでは、各国年間に2つの週しか参加しなくなります。具体的にはqualifierタイ(予選ラウンド/WG入れ替え戦)とファイナル/WGタイです(夏~秋の時期)。

WG1とWG2(以下この略称で行きます)が全米後、3以下のグループは任意の時期、ファイナルは11月と開催時期がまちまちですが、この都度ランキングを更新するのかどうかは来年の運用を見て確認します。今の段階では不明です*2

 

というわけで、年間にやる試合の数が減るためチーム1勝の比重が以前より大きくなります。それを是正するために、新ルールでの計算方法は大きな変更点が加えられています。

 

 

まず、新ルールでのランキングは引き続き4年間の成績をポイント化して、傾斜をつけて合計する方法です。これは旧ルールと同じ思想です。

具体的には

qualifierタイ後…(quaifierタイのポイント)+(1年前のシーズンのポイント)+(2年前のシーズンのポイント)×0.75+(3年前のシーズンのポイント)×0.50+(4年前のシーズンのポイント)×0.25

ファイナル後…(その年のシーズンのポイント)+(1年前のシーズンのポイント)×0.75+(2年前のシーズンのポイント)×0.5+(3年前のシーズンのポイント)×0.25

 

こう書くと分かりにくいですが、ポイントの増減で見ると

ファイナル→qualifierタイ…qualifierタイのポイントを足すだけ

qualifierタイ→ファイナル…1~4年前のポイントが25%ずつ減、ファイナルのポイントを足す

となります。

なお、2018年以前のポイントについては、今の制度との互換性を取るため、ポイントが10分の1になります。*3 

成績をポイント化する際に出てくるファクターは

S…ステージポイント
W…勝利ボーナス
R…ランクボーナス
A…アウェーボーナス

の4つです。下の3つについては旧ルールの計算方法を知っている人であればピンとくると思います。順に解説していきます。

 

旧ルールでは、どの位置にいようと、タイに勝たないとポイントが入らない仕組みになっていました。例えばWG1回戦で2-3、WG入れ替え戦で2-3で敗れた国があった場合、その国が1年間に稼いだポイントは0です。どれだけ僅差でも0になります。2012年の日本の結果なんですけどねこれ。

しかし新ルールではこういうことをしていると、現実の実力とポイントの関係がばらつく可能性が高くなります。また、ファイナルでは最大5タイあるので、そこと入れ替え戦勢とのポイントの適切な分布が求められるようになりました。そこで、各グループ帯に所属しているだけで入るポイント、「ステージポイント」が新設されました。これが今回の改正のミソです。2019年以降は、1年間デ杯のタイで勝てなくても、必ずポイントが入るようになります

 

ステージポイントは、本番の夏~秋のタイの時に、どこのグループに所属していたかで自動的に入るポイントです。ポイントは以下のように入ります。(一部抜粋)

ファイナル決勝 300
ファイナルSF 200
ファイナルQF 150
ファイナルリーグ戦 100

WG1 50
WG2 40*4

 

なお、ファイナルの決勝トーナメントに進んだ場合は、ポイントを足していくのではなく、最高到達したラウンドのポイントのみが加算されます。例えばベスト4で終わったイギリスの今年のステージポイントは、200+150+100ではなく、200ポイントです。

 

次に勝利ボーナスですが、タイに勝利した時に加算されるボーナスです。
ただし、加点対象のグレードは限られていて

WG決勝 200
WG1 10
WG2 10

のみです。

つまり、qualifierタイでは、どの国も勝利ボーナスはありません
これでいいの?がばがばでは?と思われそうですが、これで大丈夫です

qualifierタイの勝利に対する評価は、ランクボーナスと、ステージポイントに含まれています。
結局、予選ラウンドで勝った場合ファイナルに昇格、負けた場合はWG1に降格することになりますが、そうなるとステージポイントが50違います。qualifierタイで勝利した分の加味は勝った段階ではなく、その年のステージポイントで評価されています。

同様に、ファイナルの勝利ボーナスは決勝のみですが、例えばQFとSFの国の違いもちゃんとステージポイントで評価されています。
ただし、ステージポイントだけだとスペイン(優勝)とカナダ(準優勝)の差をつけるポイントがありません。なので、WG決勝の勝利だけ200ポイントという大きな勝利ボーナスが入っているのです*5

 

次にランクボーナスですが、これも旧ルールと変わりました。
旧ルールでは、自分のランキングより相手のランキングの方が上だった場合にランクボーナスが適用されるというものでした。
例えば、33位の国が32位の国に勝つと適用されますが、31位の国が32位の国に勝つと適用されないという超がばがばルールでした…

そうではなく、とにかく世界上位相手に勝てば一律でボーナスポイントがつくルールになったので、よりよい改正だと思います。また、qualifierタイに勝った場合にも適用されるので、その勝利の評価の意味合いもあります*6

 

対戦相手のランキングに応じて

1-2  10
3-4  9
5-8  8
9-16  7
17-32  6
33-64  5
65位以下  4

ポイントが加算されます。

 

最後にアウェーボーナスです。
ホーム&アウェーのルールが適用されているのは、予選ラウンド、WG1、WG1プレーオフ、WG2、WG2プレーオフです。

しかしこのアウェーボーナスは、予選ラウンド、WG1、WG2にのみ適用されるようで、WG1プレーオフとWG2プレーオフには適用されないようです。
これは「同一年に2回アウェーボーナスが取れないようなルールになっている」(The format of the competition prevents Nations from winning two away ties in a year.)という記述があることから、事実関係を考えると間違いなさそうです。

アウェーボーナスは、A=0.25×(S+W+R)と、勝ったタイの評価に対して1.25倍するような追加分のポイントとなります。qualifierタイにはステージポイントがありませんが、特例で80ポイントを代入します。

 

 

ということで、以上のことが分かれば原理的には全ての国のランキングポイントを計算できます!!!やったね!!!

って、んなわけあるかああああああああああああああ

新しいことだらけで訳が分からないですよね。私もそう思います。

というわけで、試算も間に合わなかったので、今回は実際に各国のランキングポイントを見ていきながら、こんな風に計算するのかなという感覚を掴んでもらうことに終始したいと思います。

 

 

分かりやすいところから行きましょう。日本です。

計算式は、ファイナル後の場合、(その年のシーズンのポイント)+(1年前のシーズンのポイント)×0.75+(2年前のシーズンのポイント)×0.5+(3年前のシーズンのポイント)×0.25

ですが、便宜上各年ごとに獲得したポイントをP2019 P2018のように文字で置き換えると
ファイナル後のポイント=P2019+P2018×0.75+P2017×0.5+P2016×0.25
となります。

日本のP2018=100
日本のP2017=100
日本のP2016=100

全部WG1R負け+入れ替え戦ホームで勝利なので、3年連続旧ルールで1000ポイント。10分の1に圧縮されるので100ポイントずつです。

 

2019年
予選ラウンド 中国アウェー勝利
ファイナル リーグ戦 フランス敗北 セルビア敗北

予選ラウンドはまず中国に勝利してランクボーナス6が入ります。

さらに、アウェーで勝ったのでアウェーボーナスをS=80で計算、勝利ボーナスは0なので、(80+0+6)×0.25=21.5 

したがって、6+21.5=27.5ポイントがこのタイで獲得したポイントです。

ファイナルは予選リーグ敗退で、ステージポイント100が加算。さらに、ランクボーナスは0、勝利ボーナスとアウェーボーナスはそもそもファイナルでは適用されないので、100ポイントがファイナルで獲得したポイント。

したがって、日本のトータルポイントは

(27.5+100)+(100×0.75)+(100×0.5)+(100×0.25)=277.5

となります。

 

 

次にファイナルベスト4のロシアを見てみましょう。

ロシアのP2018=32
ロシアのP2017=0
ロシアのP2016=209

2016年は、ゾーングループ1から3連勝。入れ替え戦も勝ってランクボーナス付きで2090ポイントを獲得、圧縮されて209ポイント。2017年はWGも入れ替え戦も敗れて0。2018年は降格を回避する1勝で320ポイントを獲得、圧縮されて32ポイントです。日本と同じく、全部WG1R負け+入れ替え戦ホームで勝利なので、3年連続旧ルールで1000ポイント。10分の1に圧縮されるので100ポイントずつです。

 

2019年
予選ラウンド アウェーでスイスに勝利
ファイナル リーグ戦 クロアチアに勝利 スペインに敗戦 QFでセルビアに勝利 SFでカナダに敗戦

予選ラウンドではまずスイスに勝利してランクボーナス6が入ります。

さらに、アウェーで勝ったのでアウェーボーナスをS=80で計算、勝利ボーナスは0なので、(80+0+6)×0.25=21.5 

したがって、6+21.5=27.5ポイントがこのタイで獲得したポイントです。※日本の計算方法と全く同じ

さて次のファイナルが複雑ですね。これをしっかり見ていきましょう。

まず、ステージポイントはベスト4でしたので200ポイントです。
ランクボーナスは勝ったタイにのみ適用されます。クロアチアセルビアが相手でそれぞれ10,8ポイント入ります。クロアチアは2位だったので、ルール上最大の10ポイントです。

勝利ボーナス、アウェーボーナスはありませんので、0ポイント。これらを合計して218ポイントがファイナルでの獲得ポイントです。
したがって、ロシアのトータルポイントは

(27.5+218)+(32×0.75)+(0×0.5)+(209×0.25)=321.75

となります。

 

最後に今年の優勝国、スペインです。

スペインのP2018=609
スペインのP2017=261.25
スペインのP2016=200

2016年は、ゾーングループ1から2連勝。1600ポイントですがアウェーボーナスにより2000ポイントを獲得、圧縮されて200ポイント。2017年はWG1Rがアウェー勝利+ランクボーナス付きだったため2612.5ポイントと少し小数点が煩雑な結果に、圧縮されて261.25ポイント。2018年はホーム連続勝利+ランクボーナス1回で6090ポイントを獲得、圧縮されて609ポイントです。

 

2019年
ファイナル リーグ戦 ロシアに勝利 クロアチアに勝利 QFでアルゼンチンに勝利 SFでイギリスに勝利 決勝でカナダに勝利

予選ラウンドは免除されています。
ファイナルを見ていきましょう。

まず、ステージポイントは決勝でしたので300ポイントです。
ランクボーナスは勝った5つのタイに適用されます。ロシアが6、クロアチアが10、アルゼンチンが9、イギリスが8、カナダが7です。

勝利ボーナスは決勝で勝った際の200ポイント。アウェーボーナスはありませんので0ポイント。これらを合計して300+6+10+9+8+7+200=540ポイントがファイナルでの獲得ポイントです。
したがって、スペインのトータルポイントは

540+(609×0.75)+(261.25×0.5)+(200×0.25)=1177.375

となります。ただし、小数点3桁目以下は四捨五入するので、1177.38ポイントが正しいスペインのランキングポイントです。

 

小数点以下を四捨五入しないといけないのは、ただでさえ旧ルールで小数点のポイントになっていたものをさらに10分の1に圧縮してしまったからで、なら新ルールのポイントを全部10倍にすればよかったのでは…と思います。

いかがでしたでしょうか?まあ複雑ですよね。自分でやりたくないですよね。でも私は計算しますし、いくつかまだ今の段階で分かっていないルール以外は全部把握したので、一応2020年からは試算できます。

2020年3月までこの記事のことをひっそりと覚えていてもらえたら嬉しいです。

*1:実際そうで、予想される相手のランキングを見積もったうえで、各時期に撮った魚拓(wayback machine)と照らし合わせてそれが妥当かどうかを検証し続ける作業でした

*2:インド×パキスタンの結果を踏まえて12月にランキングを更新していることから考えると、都度更新するのか?

*3:および、小数点第3位を四捨五入しているが、めんどくさいので脚注へ

*4:WG3も40ポイントとされているが、実際は30ポイントっぽい。WG3以下のグレードのポイントはrankings explainedに書かれている数字と、実際に入ったポイントが違うので、どちらが正しいのか不明…移行年だから特別ルールなのか?

*5:だったら初めからWG優勝のステージポイントを500にすればいいだけなのでは?と思うのですが、何の違いが生まれるのか私にはわかりませんでした…

*6:ただし、2019年は制度移行年のため、qualifierタイに相当する試合が予選ラウンドしかなかったため、WG1プレーオフ、WG2プレーオフで勝った場合にもランクボーナスが適用されるかは、2020年の結果が出ないと分からない

2019ATPファイナルズ 感想

こんばんは。

NAF決勝と大会を振り返って記事を書くぞ!Numberwebに寄稿だ!と思って書いたんですけど、既に他の方が書かれていたので、テーマ被りということでボツとになってしまいました…

 

でも結構いい感じに書けたので、どこにも公開しないのはもったいないなということで、ここに公開します。

普段のブログだと、とりあえず書きなぐって最低限のミスだけなくしてから公開という風にしているんですが(時間取ってられないから)、Numberwebではそうはいかないので、推敲に推敲を重ねてから出しています。普段と同じブログ形式の画面で見ると、差がそこだけになるので、その辺の違いも感じ取ってもらえたらなと思います。

 

 

 

 

あっという間のビッグタイトルだった。

今年の年間最終戦、日東ATPファイナルズを制したのは、21歳のステファノス・チチパス(ギリシャ)。昨年のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)に続いて「ネクストジェネレーション」が優勝カップを持ち帰ることになった。

 

高年齢化が続いていた男子テニス界だが、ここ数年は一気に若返りが進んできた。以前は20歳前後の選手でもトップ10に入ることは当たり前だった。事実、2000年から2009年までは、10年中9年で21歳以下の選手がトップ10でシーズンを終えている。しかし2010年から2016年までの7年間は、1人もトップ10に入らなかった。若手不作の時代と言えるかもしれない。

その流れが変わったのが2017年。ズベレフがマスターズを優勝し、20歳でトップ10に入った。今年に入ってチチパスが20歳でトップ10入り。

最近の高年齢化には様々な要因があるだろうが、傑出した才能があれば本来早い年齢から活躍できてもおかしくないのだ。ようやく通常のサイクルに戻ったと言っていいだろう。

 

 

3年前、チチパスは今回と同じロンドンの会場にいた。

ATPファイナルズでは毎年、ジュニアの有望株をトップ8の練習相手として招待している。先日の決勝で戦ったドミニク・ティーム(オーストリア)と、実はこの時練習していたのだ。

2年前、チチパスは楽天ジャパンオープンの「予選」を戦っていた。

親戚に日本人がいる親日家として、日本でのファンを獲得した大会だった。直後に初めてトップ100に入る、まだそんな時期だった。

1年前、チチパスはマスターズで準優勝。21歳以下の大会、ネクストジェネレーションファイナルで優勝した。

そして今年、チチパスは全豪オープンベスト4、トップ10入り、ATPファイナルズ優勝。

目にも止まらぬ速さで指数関数的に飛躍している、そんなここまでのキャリアだ。

こないだまで目の前でプレーを見れた選手が、ツアーを引っ張るスターになった。彼はもうネクストジェネレーションではなく、立派なトップ選手なのだ。

 

 

まず驚かされたのはラウンドロビン終戦ラファエル・ナダル(スペイン)戦だった。押される展開が続いたものの、ブレークポイントで1stサーブを立て続けに決めてピンチを脱した。まるでロジャー・フェデラー(スイス)のようだった。2時間50分を超える死闘の末敗れはしたものの、勝っていても不思議ではなかった。

それから21時間後の準決勝、憧れのフェデラーとの対戦でも勝負強さが光った。立ち上がりのフェデラーのスマッシュミスを逃さずブレークに成功すると、再三のピンチを迎える試合となったが動じなかった。ブレークポイントを12回中11回凌ぐ姿は、どちらがフェデラーなのか分からなくなるほどだった。

これを2日連続で、この大舞台でやり遂げる21歳がいる。BIG4時代の感覚でいると、事態を呑み込めないほどだ。

そのまま決勝でも優勝。ティームの猛攻を受けながら勝ち切った。近年稀に見る好ゲームだったが、ほとんど崩れる時間帯はなかった。キャリアでも最大のプレッシャーがかかりそうな場面だが、この男には関係なかったのかもしれない。

 

 

準決勝でチチパスがフェデラーに勝った試合の直後、あるセレモニーが行われた。今年はトマーシュ・ベルディヒチェコ)やダビド・フェレール(スペイン)ら、BIG4時代を長く戦い、ついにグランドスラムに手が届かなかった名手たちの引退が相次いだ。その選手たちが一堂に集まり、最終戦の舞台で功績を讃える特別なセレモニー。一番近くのベンチで見届けたのは、試合を終えたばかりのチチパスだった。

世代交代という事実を感じさせる、象徴的な時間だった。

 

つい数ヶ月前の男子テニスの話題は、ダニール・メドベデフ(ロシア)のことで持ちきりだった。6大会連続決勝進出、全米OP準優勝、マスターズ2勝という離れ業をやってのけ、一気に世代の先頭に立った。次の全豪オープンはこの人だという声もあったが、4連敗でシーズン終了。そう簡単にはいかなかった。

一方チチパスは今年の夏場に苦しんでいた。公式戦で2ヶ月間勝利から遠ざかった。

ATPファイナルズの結果を受けてチチパスを次世代王者と予想するのは簡単なことだが、数ヶ月前はその世論が違ったように、まだまだ分からない。

世代交代は一人でするものではない。20代前半の前途有望な若者たちが束になって既存勢力にかかっていく様子は、これまでのどの世代よりも世代交代の可能性を感じさせてくれている。

 

毎年のように年末には「来年はBIG4以外の新たなグランドスラム優勝者が出る」と期待が高まるものの、終わってみればBIG4やその世代がグランドスラムを総ナメする年が続いてきた。

相変わらずレジェンドとしての力をいかんなく発揮しているが、以前に比べて隙も多く見えるようになってきた。グランドスラムは特別な環境で、BIG4が跳ね返す可能性もあるが、ついに今年の全米OPではメドベデフが決勝の門を叩いた。こうなると他の選手も一気に殺到してくるだろう。何せ今の若手は成長スピードが速く、まだ伸びしろがある。まばたきしているとあっという間に置いていかれる。

 

BIG4時代という常識外の出来事が続いた魔法は、もう間もなく解ける。その先には何が待っているのか、2020年のテニスシーズンからも目が離せない。

 

 

 

という感じです。これでだいたい私が投稿している平均字数くらいです。

色々解説したいところはあるのですが一点だけ。

「高年齢化が続いていた男子テニス界だが、ここ数年は一気に若返りが進んできた。以前は20歳前後の選手でもトップ10に入ることは当たり前だった。事実、2000年から2009年までは、10年中9年で21歳以下の選手がトップ10でシーズンを終えている。しかし2010年から2016年までの7年間は、1人もトップ10に入らなかった。若手不作の時代と言えるかもしれない。」

はい、このブログを読んでいる方ならもう分かりますね。閑話球題2019に出てきた部分です。こんな感じでさらっと紹介されるデータを掘り下げると、あんなブログ記事ができます。

 

デ杯も終わったんでまた閑話球題も更新していきます。そちらもお楽しみに。

2020デビスカップ予選ラウンド、日本はエクアドルとホームで決定

日曜日夜にデ杯2020予選ラウンドの抽選があり、日本はエクアドルとホームで対戦することが決まりました。

その他の対戦カードはこちらです。

旧制度からの移行年だった昨年とは異なり、今年はシード国が比較的有利かなと思われます。

この辺はまた3月にも解説したいと思いますので省略。

 

日本はエクアドルとの対戦が決まりました。
対戦国については12チームの可能性がありましたが、その中では比較的というか、かなりやりやすい相手になった印象です。
今回の抽選対象の国は

・アジアが全てアウェー確定

・チリとコロンビアがホームだが強そう

・欧州も、粒揃いの選手が集まっていて油断ならない

と、日本優勢ではあるものの、デ杯の魔物が作用すれば危険という国が多かったです。

そして11番目に抽選される日本の対戦相手。残っていたのはチリとエクアドルで、8割方チリだと思っていました*1

しかし引かれたのはエクアドル。ライブで見ていた私も変な声が出ました。

 

エクアドルはゾーン1でベネズエラに勝って予選ラウンドへ上がってきました。エクアドルの近年はゾーン1で安定。ブラジルには敗れるも、他の国にはそこそこの勝率を維持しながら位置をキープしています。

過去にはラペンティが全盛期の頃に、WGにいた時期もありました。 

 

メンバーは150位付近にいるゴメスがエース。250位付近のキロスが2番手。トップ1000に5人しかいない少数精鋭のチームです。
760位付近にいるマーチという選手が19歳なので注意か。今年はデッドラバーに出ていますし、日本戦では意表をついて使ってくるかもしれません。

しかし、この5人を合わせてもチャレンジャータイトルの合計は1。これといったダブルスのスペシャリストも不在で、今回ばかりは格の差があると正直に申し上げたいと思います*2

 

日本戦の場所はこれからJTAが決定しますが、エクアドルという中米相手かつ日本の伝統的なコート選定の傾向から、間違いなくハードコートでしょう。そして、出場するであろう錦織に五輪前に経験を積んでもらうためという目的もあって、改修した有明でやるのが本命とみています。

ただし、有明はまだ五輪仕様に完成したわけではないので(ショーコート2の建設中)、何らかの支障が出るようであれば、その場合のみ地方へ行くことになりそうです。靭か北九州になるのでは。

 

日本チームはまず錦織が出場するでしょう。これは五輪出場要件の「五輪から直近2年のどちらかの年にデ杯に出場する」を満たすためです。厳密には絶対条件ではないですが、要件を満たさない裏ルートを食いつぶす形にはしないと思います(フェデラーがその裏ルートを使う可能性が高いため)。この辺はまた別の記事で解説します。

その他は西岡、ダニエル、杉田のうち調子のいい2人と内山、マクラクランになりそうです。ベストメンバーです。

 

方式は2019年予選ラウンドと同じで、2日間に分けてシングルス4試合、ダブルス1試合の5試合を行います。旧デ杯と同じリバースシングルス形式です(2人ずつ総当たりで4試合)。ただし3セットマッチになっているため、波乱には要注意。

 

会場誘致、チケット販売とスムーズに行う必要がありますが、とにかく多くの人に集まってほしい。

楽天OPも五輪も当たらない!プロのテニスを見ることが困難になってきている今、デ杯は比較的取りやすいと思われます。

いや錦織出るから違うでしょと言われるかもしれませんが、たぶん今回はあまり気付いていない人が多いと思われます。錦織自体の報道もけがで過小気味。売り切れ必至になるとはあまり思っていません。そもそもデ杯だと行かない人もいるくらいだし…

世界最高峰のテニスを数十倍/数百倍の倍率で戦わなくても簡単に見れるチャンスです。*3

最近感覚がマヒしてきてるんですけど、1万人+グラウンドパスを平日でも平気で毎日埋めてる楽天OPすごいんですよ。デ杯だとこうはいかないもん(経験則)。特に初日の最初の抽選は、席種によっては全当もあるのかなと。認識甘いですかね?

 

デ杯は応援が一番大事です。ホームだからおもてなし、ホスト国だから相手をリスペクトというのは必要ですが、最低限必要な範囲でいいです。

というか、相手をリスペクトするからこそ全力で応援しなければいけないのではないでしょうか。相手をリスペクトするがゆえに、手を抜かない。強さを認めるからこそ応援で全力対抗する。そういうものだと思うんです。

 

ただこの考えは浸透していない。昨年の盛岡でも痛感しました。初見の人に分かってもらうことは本当に難しい。

私からのお願いは、既存のテニスファンの懸命の努力です。立ち上がり、声を出し、大きくリアクションをして応援している人が増えれば、あるタイミングからそれが常識に変わる。日本人の習性である「誰かがやっているから自分もやる」思考になってもらうためには、ある程度の人がそれをやっている必要があります。今のところ、私が現地で見たりテレビで見たりしたデ杯では、そこに至っていません。応援団と一部のファンのみに収束してしまっています。

 

会場とチケットは近いうちに発表になると思います。私は一度見てみたい。有明が満員になり、うねりを帯びながら日本に声援が届く光景を。

それをWGでできなくなったことは本当に残念でなりませんが、やることは変わりません。日本チームがこれまで受けてきた他国での洗礼。受けっぱなしでいいのでしょうか。

特にタイの展開と応援の空気の流れを決める初日は来年も金曜日と、出足が悪くなることが想定されています。

 

チケットも取りやすいだろうし日本人、休もう。そして会場へ。

よろしくお願いいたします。

*1:日本のデ杯ドローの悪さは本当に異常だと思います…ホーム運をもう少し対戦相手運に回して…

*2:私の発信を見られている方はもう言わなくてもわかっているとは思いますが、格上格下という表現はできる限り私としては使いたくない。しかしこの差はさすがに力の差があると書かないと、おかしな表現になってしまいます

*3:そこがデ杯のいいところだと個人的には思っています。必ずホームでやる権利が年1回平均で回ってくるのは値打ちがある。ピケさん、聞こえてますか?

デ杯ゾーングループの改訂について

こんにちは。

今日の記事は閑話球題シリーズには含んでいないものの、実質閑話球題シリーズと言えるほどのマニアックな話題です。

今年もこのコーナーが帰ってきました。たぶん世界で一人しかしていないデ杯ランキング試算です。

 

さて、今回ランキング試算をする前に、ある重要な点について触れておく必要があります。

それは「今回の大幅改正で、ランキングは対戦相手を決めるファクターとしての機能が少なくなった」という点です。

どういうことなのか?これはデビスカップのゾーングループに関してのルール改正が効いてきています。ランキング試算に入る前に、こちらを説明していきます。

多分これを理解しないと、試算で言っていることが一切分からなくなります。
前座のはずだったんだけど、内容が濃いので別記事として立てることにしました。

 

2018年までの旧ルールでは、デビスカップはWGとWG入れ替え戦を除けば、世界地図で3つにわかれたゾーン内の国としか対戦することはありませんでした。

図にするとこんな感じです。(パワポで作った)

f:id:twosetdown:20191123123539p:plain

だから日本は欧州や北米南米との対戦実績が少なく、WGや入れ替え戦で毎回のようにchoice of ground by lot(開催地くじ決め) になっているんですね。


本当はグループ4もあるのですが、説明の対比の都合上ここで切っています(ヨーロッパとアフリカは参加国が多いので、本当はゾーングループ3は2つに分割されていることもお断りしておきます)

さらに、年間最大4つのタイ、多くの国が2~3のタイをフルに使って、降格昇格を決めていました。

例えば2018年のアジアオセアニアゾーン・グループ1のドロー表を貼りますが、参加国6のうち、自動降格1、入れ替え戦進出2、何も起きないが3となっています。(表ではインドウズベキスタン入れ替え戦へ、ニュージーランドが自動降格)

f:id:twosetdown:20191123124612p:plain

この傾向はどこのゾーンでも同じで、グループ1であれば入れ替え戦定数の2分の1というわずかな国だけが自動降格し、それ以外は何も起きないか入れ替え戦進出となっています。あまり動きにくいんだなという直感理解を持ってください。

 

しかし、2020年以降の新ルール(英語名global format)ではこうなります。(公式の図より)*1

f:id:twosetdown:20191123124926p:plain分かりづらい!!!と思われた方ご安心ください。私のパワポ図形式に直すとこうなります。

f:id:twosetdown:20191123143445p:plain

ちゃっかり名前も変わっているのですが、これまで〇〇ゾーン・グループ1/2と呼んでいたものが、「ワールドグループ1/2」と一つにまとまったものと思ってください。

グループ3以下はこれまでと同じく、ゾーンごとに総当たりリーグ形式で行って、上位が昇格、下位が降格します。

しかしワールドグループ1、ワールドグループ2は大きく事情が異なります。なんとホームアンドアウェーによる1発勝負。勝てば上のグレードとのプレーオフ、負ければ下のグレードとのプレーオフに臨むという過酷なルールです。

じゃあ実際に選手たちはどんな感じで戦っていくのか?これをイメージしやすい考え方として、「階段のフロアと踊り場」の類推を提唱、紹介します。

 

今回の改正によって、ワールドグループ2以上のグレードに所属する国の動きは、①春(全豪後かIW前週?)に行われる試合と、②夏~秋に開催される試合の2つに参加するというものになります。年間最大2週間しか拘束されなくなるというのが新ルールが目指す負担軽減の形そのものです。

そして、デ杯公式の図をもう少しわかりやすく私のパワポ図に落とし込むとこうなります。

f:id:twosetdown:20191123143539p:plain

デ杯公式の図では、開催時期と形式が違うためにファイナルズ、ワールドグループ1/2、グループ3/4を別の位置に書いていますが、現実的には、このようにある場所にとどまることなく、上がっては下がってはを繰り返すような動きになります。

 

そしてこれを階段のフロアと踊り場の関係に振り替えます。

4階建ての建物のうち
4階…ファイナル
3階と4階の間の踊り場…予選ラウンド
3階…ワールドグループ1
2階と3階の踊り場…ワールドグループ1プレーオフ
2階…ワールドグループ2
1階と2階の踊り場…ワールドグループ2プレーオフ
1階…グループ3

 

とします。夏~秋に1階~4階でそれぞれ戦います。敗者は階段を下りて踊り場へ、勝者は階段を上がって踊り場に行きます。

翌年春、その踊り場でタイマン勝負をします。勝った方が上の階へ上がり、負けた方は下の階へ下ります。以下これの繰り返しです。
4階の場合は、最上階なのでそこにとどまり続けることができます(ベスト4かWC)。

このように、フロアと踊り場を行ったり来たりしながら上を目指すのが新デ杯のシステムです。

 

 

さて、デ杯ではランキングをもとにシード付けをしています。
2018年までの旧ルールでは、昇降格があった場合、ゾーングループのドローを抽選する際のシードは前年の成績ではなく、すべてランキングに基づきます。
また、WG入れ替え戦のドローも同じで、ゾーン勝ち上がり国でもランキングが高ければシードになります。実際、2013年の日本×コロンビアのWG入れ替え戦は、どちらもゾーン勝ち上がり国でありながら日本がシードになっています。*2

しかし、新ルールでは必ず「階段を下りてきたほうがシード、階段を上がってきたほうがノーシード」となります。これはフロアでも踊り場でも同じように適用されます。

つまり、ゾーングループ1(3階)からゾーングループ1プレーオフ(2階3階の踊り場)に降りてきた国と、ゾーングループ2(2階)からゾーングループ1プレーオフ(2階3階の踊り場)に上がってきた国では、ランキングにかかわらず前者がシードになります。

※11/26追記 どこかで上記の記述を英文で読んだのですが、再度様々な資料を読み返したところ、その該当する部分を発見できなくなりました…少なくとも2020年のWG1プレーオフとWG2プレーオフでは、上記のルールっぽいのですが、念には念を入れて2020年版ルールブックでの説明を待ちたいところです…

 

なおこれが予選ラウンドにも適用されるかは不明です。ファイナル敗退国が14で、ワールドグループ1勝ち上がり国が12。そこからWCを選ぶので、必ずしもファイナル敗退国×ゾーングループ1勝ち上がり国と12対12で組めるとは限らないからです。この部分は前の記事に書いたように、新たなルールブックを確認することができないために現在検証不可能です。日曜日にドロー抽選があるので、そこでシード付けのルールがはっきりすると思いますので待ちたいと思います。

 

11/25追記

予選ラウンドのシードは、その日までのファイナルの成績を加味したランキングで決定されるようです。ルールブックが更新され次第文章でも確認します。通常ATPツアーがそうであるように、ドローは一番直近の大会の成績を加味せずに2週間前までの成績で行います。

しかしデビスカップは、旧ルール下ではSF/入れ替え戦のタイが終わってから次年度のドロー抽選を行っていました。これに対応する形で抽選を行ったのが今回ということでした。そうすると、WGSF/入れ替え戦までの成績を加味してランキングを決める必要があり、大会後に出るランキングを一部前倒しで発表してそれをシード付けの材料にしたと考えるのが腑に落ちそうです。

 

というわけで、ランキングが使われるのは

・ゾーングループ3以下の総当たりの組み合わせ抽選

・ファイナルの組み合わせの時のポット(1~6、7~12、13~18のグループ分け)

・予選ラウンドのシード付け

だけになります。
デ杯公式も記事で「The Davis Cup Nations Ranking will no longer be used to determine which group a nation is playing in.」(デ杯チームランキングは、どこのグループでプレーするかということにもう使われることはありません)と表現しています。

以上、ゾーングループの解説でした。

ここまで前座なのに、スライド作ってたらお昼過ぎになってた…

 

さて、次の記事が本当の本番です。世界初(?)、新ルールでのデ杯チームランキング試算に挑みます。

*1:※2019年は制度移行年のため、2020年以降とも2018年以前とも違う特別ルール。混乱を招く可能性があるため、説明をあえて省きました

*2:この時は2013WG1R敗退国のブラジルがノーシードに回っています。2012年に日本がWGにいたことがこのランキングの逆転を生んでいます。詳しく知りたい人のための補足

デ杯降格という概念は「初めからなかった?」(ルール解読の闇)

※おことわり

この記事は2019年11月21日19:00現在の見解です。
何か意見が変わったり、間違いがあった場合は訂正が入る可能性があることを承知の上お読みください。

 

11/25追記

やはりこの後に書いた仮説で合っていました。デ杯公式がルール変更したにもかかわらず改定したルールブックをwebにアップしていませんでした。ほんと公式に振り回された一週間でした…思考過程を残しておく意味で、記事はそのままにしておきます。解決済みの問題です。

 

終わった。

ダブルス試合終了後、放送でも言いました。
もちろんクロアチア、チリが全敗して終われば日本は16位ですが、16位/17位のボーダー上に見えたコロンビアの成績を下回ったのは事実。この段階で暫定最下位になり、陥落回避は他力待ちでした。

 

しかし翌朝、事態は一変しました。
フォロワーさんから「別所で17位18位の降格ルールは撤廃され、予選ラウンドには確実に回れるのではという話が出ている」という話が出てきました。

 

本当かと疑ったのですが、何人かの方の議論や、実際にその方と意見を交換した結果、どうも17位18位は2020年予選ラウンドを戦える可能性が高そうということが分かってきました。以下、考えを変えることになった理由と、これまでの記事で紹介してきた説についての裏付けと、現在も残る疑問点についてまとめておきます。

 

<なぜ当初は17位18位を降格と判断したのか>

 

私のブログや発信を長く見ている方はよくご存じだと思いますが、「分からなくなったらルールブックを原文で読め」がポリシーです。

実際、当時あまりなじみがなかったファイナルズ通過の条件(2014年)やIPTLのルール(2015年)、旧デ杯のルールについても再三ルールブックを確認し、発信してきました。
ルールブックに定義されていないものは、決めようがないからこそ、細かいところまで先読みして補填されているものだからです。

 

もちろん新デ杯にあたってルールブックを確認しました。2019年2月のqualifing round(予選ラウンド)時にもですし、もちろん今回も確認のために再度読み返しました(記事書きましたからね)。

さすがにトーナメントのお金の問題とか、ボールパーソンがどう必要だとかは関係ないので、関係ある部分だけですがそこだけは集中して全部読むようにしています。

 

 

17位18位の話題が出てくるのは、F. COMPETITION DATES AND FORMAT 21. Finals Week (今回のファイナル)に関する部分です。

21.7 Promotion and relegation
21.7.1 Subject always to Regulation 2.4:
21.7.1.1 The four Nations that reach the Semi-Finals will automatically be entitled to participate in the Finals Week of the 2020 Davis Cup competition. 
21.7.1.2 The two Nations that finish the Finals Round Robin with the lowest number of points based on the count-back calculation will be relegated to the Zone Groups for the 2020 Davis Cup competition. Their placement in those Zone Groups will be determined according to the provisions on Zone Groups in Regulations 23-25. If a Wild Card is relegated, it will return to its original Zone Group. 
21.7.1.3 The other Nations in the Finals Week (i.e. those that finish in places 5-16) will be entitled to participate in the qualifying round of the 2020 Davis Cup competition. 

英語嫌いな方はめまいすると思いますので私の意訳を上げますが、

21.7 昇格と格下げ

21.7.1   2.4 のレギュレーションに従う
21.7.1.1 ファイナルベスト4の4か国は自動的に2020年ファイナルに参加できる(DA)
21.7.1.2 何度か紹介している順位付けの計算(count back calculation)で最も下の2ヶ国は2020年デビスカップ競技でゾーングループに格下げされる
21.7.1.3 ファイナルに出ていたその他の国、すなわち5位から16位で終えたチームは2020年デ杯競技の予選ラウンドに参加する資格がある

 

あとから振り返ると、「17位18位は予選ラウンドでプレーできない」と明記されたわけではありません。しかし、わざわざ分けて先に言及しているうえに、予選ラウンドと対比する形でゾーングループに格下げ(will be relegated to the Zone Groups for the 2020 Davis Cup competition)と、17位18位は特別扱いとして言及されています

さらにこのことを正しいと裏付けた原因として、2018年夏に新デ杯ルールがITFで可決された際に、ファンに向けたルール説明というところで動画が上がっています。

 

このツイートのリンクに、動画が貼られています。 

この動画でも、17位18位に相当するチームだけが、特別に色分けされているのが分かります。画像を貼ります(動画じゃないよ!)

 f:id:twosetdown:20191121194230p:plain

順番としては、2018夏動画→様々な情報収集→2019冬ルールブック読むだったので、私も「あーこれが降格に関する記述ね」と疑いも持たずに信じてしまっていました。

 

<17位18位は降格ない説の根拠>

 

今朝フォロワーさんからの指摘を受けて驚愕しました。
こちらのデ杯公式記事(2019年9月の記事)では、なんと5位から18位の14ヶ国が予選ラウンドに進出とはっきり書いているではありませんか。

www.daviscup.com

「The 12 winning nations from Group I this year will be joined by the 14 nations who finish in fifth-18th place at this November's Davis Cup Finals - from those 26 teams, two will be chosen as wild cards for the 2020 Finals, leaving 24 nations to battle it out in the Qualifiers for the 12 remaining spots in Madrid.」

 

 

さらに、この2020年2月予選ラウンド進出を決定するための、group 1の試合(2019年9月、全米後に行われたもの)のドロー表のページにも、5位から18位の予選ラウンド進出がうたわれています。

www.daviscup.com

 「The winners will contest the 2020 Qualifiers. These teams will also be eligible to receive a wild card into the 2020 Finals, along with the nations that finish in 5th-18th positions at the 2019 Finals.」

 

 <ルールブックと公式の謎を考える>

ではこの二つはなぜ両立しているのか?また、これをつなげるルールブックの文言は存在するのか?この辺りが盛んに議論されました。

その中で出た有力なポイントとして、E. WITHDRAWING FROM THE COMPETITIONの 17. Replacement of a withdrawing Nation に、WCが出た場合のリプレースはこのルールに基づくという記述がありました。

それによると(17.2.3)、前年ファイナル出場国からWCを出した場合は、次年度予選ラウンドの枠が1つ空きます。そこにはファイナル17番目の国(その次は18番目の国)をリプレースするという記述があります。

なんだこれか!!!謎が解けた!!!WC2枠を今回のファイナル組から出せば実質18位まで予選ラウンドに出れるの同義じゃん!!!

というのは甘い理解です。ここにはある決定的な「矛盾」が生じます。

そのあとの文章には、意訳すると「予選ラウンドのうち、ゾーン勝ち上がり国からWCがあった場合は、ゾーングループの国から補充する」(If the withdrawing Nation qualified for the qualifying round in 2020 as a result of winning its 2019 Zone Group I Tie, the highest ranked Nation from its Zone from among those Nations that lost their 2019 Zone Group I Ties based on the Davis Cup Nations Rankings at the time of the 2020 Qualifying Draw)と書いてあるのです。

例えば今年の具体的なケースで言うと、ゾーン勝ち上がりのオーストリアにWCが出ると、補充国は日本でもクロアチアでもなくなるのです。

????????

じゃあなぜデ杯公式は18位チームまで通過と言い切れるのか?謎は深まるばかりです。
そして以上のことを踏まえたうえで、先ほどの公式記事の引用を見たところ、まごうことなき決定的な矛盾を発見しました。

「The 12 winning nations from Group I this year will be joined by the 14 nations who finish in fifth-18th place at this November's Davis Cup Finals - from those 26 teams, two will be chosen as wild cards for the 2020 Finals, leaving 24 nations to battle it out in the Qualifiers for the 12 remaining spots in Madrid.」

ファイナル敗退5~18位の14ヶ国、ゾーン勝利12ヶ国の計26ヶ国から2ヶ国をWCとして選ぶ

 

ルールブック2019  21.3 Wild Cards

21.3.1 Prior to the Qualifying Draw, the Steering Committee will select two Wild Cards from any of the Nations entered in the Competition that meet one or more of the following criteria: 
21.3.1.1 the Nation has a Davis Cup Nation’s Ranking of 50 or above; and/or 
21.3.1.2 one or more of the Nation's Players is ranked in the top 10 of ATP singles players in the ATP rankings published on the Monday following the ATP World Tour Finals.

 

21.3のワイルドカードに関する部分は、ワイルドカード選出のためにその国に必要な資格の条件が書いてあります。そこによると、2つのうちいずれかの条件を満たすことが必要で
21.3.1.1 国別ランキング50位以上
21.3.1.2 その国の選手にシングルストップ10の選手がいる

です。
この文言に、その国が予選ラウンドにいる必要性は一切書かれていません。
ルールブックが正しいのであれば、ゾーン2にいるギリシャは、チチパスがトップ10にいますから有資格国であるはずで、これを棄却することはできません。
*1

なのに、26ヶ国から2ヶ国を選んでいいと言い切れるのはなぜか?そんな規定はルールブックのどこを探しても見つかりませんでした(「wild」で文書内検索をかけて、前後をすべて読んだ)

 

まるで2つ別のルールブックが存在しないと、こんなことは起こりえないのです。

 

 

え?

 

<仮説・ルール変更とデ杯運営のミス>

いろいろ悩んでいた夕方、この問題を一発で解決するある決定的な事実が判明しました。

 

 

というわけで、信用していたルールブックは何らかの改定が加わる前の過去のものだった可能性があるのです。

そしてそれどころか、ある事実に気が付きました。

先ほどのリンクの先にあったyoutubeには鍵のマークがついているのです。
そしてこの動画をITFyoutubeページにある全動画のページから飛ぼうとすると、その動画がないのです。

さらにそれに代わって、こんな動画がありました。

www.youtube.com

新デ杯公式が上げた5ヶ月前の動画には、下位2ヶ国についての説明が一切ありませんでした。

そして9月には、デ杯公式HPに、新フォーマットによるゾーングループの一元化についての説明が書かれた記事が上がっています。

www.daviscup.com

つまり、2019年の途中でWCと補充国、17位18位の取り扱いに関するルール変更が行われている可能性があるが、少なくともデ杯公式HPのルールブックは、掲載した2019年1月以降一度も更新されておらず、確認のしようがない。そしてそれは、最新のルールブックではない可能性がある

ということです。実際、先ほど示した記事など、2019年9月以降に発表されている公式筋の記事では、一貫して5~18位がすべて3月の予選に回り、WCは26ヶ国のうちから選ぶという表現になっています。

 

長々と書いてきましたが、まとめると推察込みですが

・ルールブックが一番偉いから、ルールブックを見た
・2019年1月段階のルールブックの解釈は当時間違ってなかった
・しかし、現状起きている現象はその1月段階のルールブックでは説明不可能
・しかし直近の情報から5~18位通過が正しく、ルールが変わった可能性が高い
・以上不可抗力な面もあったが、結果的に私は誤った情報を広く流してしまう結果になってしまった、本当に申し訳ないです

 

以上になります。
この内容に質問、嫌疑、訂正、意見などある方はコメント欄かTwitterまでよろしくお願いいたします。

*1:細かいのですが、実際21.7.1.2では If a Wild Card is relegated, it will return to its original Zone Group. と、低いゾーンからWC選出された場合、敗退すれば元のゾーンに戻るという記述がなされていて、今回のギリシャのような事例に対応していないと必要ない記述がわざわざ書かれています。本文の流れを切りそうだったので注釈にしました