two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

勝てない相手はもういない~錦織、マレーにストレート勝ちの「衝撃」~

11/9 現地14:00~(日本時間23:00~)

Barclays ATP World Tour Finals

Round Robin Group B Game1

[4]Kei Nishikori 6-4 6-4 [5]Andy Murray

日本に、そして世界に再び衝撃を与えました。

あの青いコート、すべてが青いあのツアーファイナルズに錦織圭がいる。

それだけでもにわかには信じがたく、私もいまだに完全には呑み込めていません。

でも彼は勝ってしまったんです。どこまで先を見ているんでしょうか。

昨日書くのを忘れたのですが、対戦成績の0勝3敗は一切気にしていませんでした。

0-3程度では苦手と断定するには試合回数が少ないからです。

単純にプレースタイルの問題で確かに2012年ごろの錦織とマレーはいわゆる上位互換・下位互換のプレースタイルにあったのは事実です。

しかし、最後に戦った2013年ブリスベンから約2年、錦織はもはや別人になっています。過去の統計など一切あてになりません。

特に今回は片方の選手が異常なペースで成長途中にあるパターンなので、本当に意味がないデータです。

それに3敗と言っていますが、実は2013年のブリスベンは4-1とリードしたところからの棄権負け。

2013年地点でも十分戦えていた錦織、マレーに勝つことにはなんの不思議さもありませんでした。

昨日私が驚かされたのはやはりあのツアーファイナルズ、シングルスの開幕戦で自分を見失わなかったこと。そしてストレートで勝ってしまったこと、この2つにあります。試合を振り返っていきましょう。

第1セット、硬さが目立ちました。

結果的にポイントは錦織に行っているものの、1stサーブの確率が悪く、DFも連発。正直いつブレークされてもおかしくない展開でした。

やはりリターンはマレーがプレッシャーをかけてきていました。ミスになっているものの、何かがかみ合ってくれば一気に持っていかれる。嫌な予感はありました。

耐えきれなくなったのは第5ゲーム。自分からのミス3本で3つのブレークポイント。2本はしのぐものの入らない1stが災いして痛恨のダブルフォルト。厳しさを感じました。

しかし次のゲーム。マレーが今度は硬くなりダブルフォルト2本。マレーも本調子には遠い出来でした。

ここで大きいポイントが来ます。

第7ゲームのデュースからの回り込みフォアのストレート。これはこの地点での試合の中でのベストショットでした。

BS朝日の松岡修造さんの解説もこのポイントを取り上げていました。あそこで自信を持って振りぬいたボールがポイントになったこと。

それまではとにかく抑えていました。やはりマレーのスローなペースに捕まってしまい、嫌な展開でした。アングルショットの角度が緩く、マレーにいい体勢で取らせてしまう展開が多かったように思います。

第5ゲームまでで実は錦織のウィナーは1本。普段ならこの地点で6~7本、それ以上も時にあるくらい攻撃的なテニスが完全に鳴りを潜めました。

その硬さがあったプレーから少しずつプレーレベルを上げていく起点になってくれたのが大きかったです。

すると第10ゲーム。直前の嫌な流れを止めるキープで少しずつ錦織ペースに向かっている中、錦織が攻めの姿勢を崩しません。

最初のポイントは意表を突くドロップで、守備範囲の広いマレーが打たれた瞬間に諦めるショットで流れをつかみます。

そして15-30からのセカンドサーブのリターン。

分かってました。リターンエースを狙いに行くことは。ですが「狙う」のと「決める」のは全く意味が違います。

それを簡単にやってのけるのが今年の錦織。隅に一発で決めた錦織が2つのセットポイント。

2本目をマレーがドロップで仕掛けるもネット。錦織が先制です。

もうこの言い回しもこれまで何度も書きましたが、1stセットは普通落としているセットです。

ダブルフォルト連発。ウィナーも少ない。しかもマレーのペースに捕まっている。あれだけ遅いラリーは2014年の錦織戦では他に見たことがありません。

展望記事で書きました、マレーの待つテニスに意図してかそうせざるを得なかったのか、真っ向勝負する形になってしまいました。

それを悪いながらにゲームメイクし、あのマレーから1stセットを取った。ここで試合の8割は決まってしまったような気がします。

第2セットは両者ともプレーレベルが上がり、さすがファイナルという内容でした。

セット序盤では攻撃的なテニスが完璧にはまり、ものすごいウィナーもあってブレーク成功。第4ゲームも錦織にブレークポイントのチャンスが来ます。

しかしここからマレーが粘ります。マレーも強打を展開するようになり、マレー得意の後方からペースを変えてラリーで主導権を握る展開に。お互いに両者がベストプレーできる間合いでの真剣勝負です。うまさの目立つプレーでしのぐと、なんとなく会場も試合もマレー逆転のムードが高まっていきました。

1セット取って1ブレーク先行している。普通に考えれば余裕なのかもしれませんが、しかし見ている方もプレーしている両者もうすうす感じていたのかもしれません。

依然として錦織のダブルフォルトは減りません。1stセットよりは効果的なサーブも増えていますし、キープ率も高いですが、ついにその時がやってきました。

マレーが2本のエースを含むサーブで勢いをつけた直後の第7ゲーム。流れはできていました。マレーがブレークバック。

錦織にミスが出る形のブレークバック。もつれる予感を感じました。

正直言うと第2セットに関してはこれで取れる確率が5割を切ったくらいに取れない感じがありました。ファイナルセットは錦織がいつもの感じで何とかしてくれると思っていたので負けるとはあまり思わなかったのですが、後々のことを考えると、一応手首にテーピングしてたのもあって嫌だなあと思っていました。

第9ゲームでうまいキープ。これで第1セットと同じ展開に持って行けたのが救いでした。第10ゲームです。

マレーの1stが入りません。それはおそらくそれまでの錦織のプレッシャーにあります。

第1セットの第10ゲームでも2ndからリターンエースを決められているからこそ、欲しい1stサーブ。ですが願えば願うほど1stサーブは入らなくなるものです。

ラリーに持ち込んだ錦織はまず1ポイント目で振り回し、スマッシュのチャンス。

しかし落ち着いていました。有効打を打ち続ければいい。そしてチャンスボール3球目。一旦フォアに打つ構えを見せてマレーを走らせてから逆方向にジャンピングボレー。

第1セットでもそうでしたが、オープニングのこのポイントを気持ちいい形で取れたことで、同じことが起こる…そんな気持ちを与えてくれました。そしてそれは実現します。

次のポイントは錦織得意のアドコートからのバックストレートへのリターンエース。セカンドサーブになった地点でもう打つんだろうな、そして決まるんだろうなと思ってしまいました。

そしてマッチポイントでマレーは大きくアウトし、錦織圭がアジア人初、日本人初のツアーファイナルズラウンドロビン勝利です。

オッズが示す通り、錦織がいくら今年好調だからといっても、それでもマレーというのが大方の見方でした。

世界が驚きました。これだけのテニスを展開する錦織に。

試合としても、第1セットは悪いなりにゲームメイク、第2セットはお互いのいいところが出た中で錦織が勝ち切る。二つの側面からマレーを打ち破ったのは本当に驚きでした。

いくらランキングが下だからと言っても、私もあんまり勝つイメージが湧いてなかったんですよね。

しかし蓋を開ければ完勝でした。見事な勝利です。

ただ知っておいて損はないことを一つ。海外での評価は「凡戦」です。

やはりダブルフォルト8本はいけなかったですね。あと私が試合前に指摘したようにマレーが効果的なサーブをほとんど打てなかったのも理由です。

ただそれは錦織に対する期待値の表れでもあります。特にクレーシーズンで見せたまるコンピューターゲームでもやっているかのような完璧なテニス。あれを知っているからこそ、初戦の硬さもあった錦織に「もっとできるのでは?」と思っているということです。

凡戦でもいいんです、初戦を、しかもストレートで勝ったことは大きな意味があります。

ツアーファイナルズのラウンドロビン通過条件にはセット率が大きく絡んできます。2位争いをするかもしれないマレーに0-2と1セットも与えず、自身は失セット0というのは大きすぎます。

ファイナルは1勝した選手同士が2戦目を戦います。次戦はラオニッチを破ったフェデラーに決まりました。

いやー、やっぱりファイナルはフェデラーの場所なんですね。あんなに簡単にラオニッチのサーブをブレークしますか。パリとは何だったのでしょうか。

ですからポイントはやはり錦織のサーブになると思います。またフェデラー戦もしっかり見た上で展望を書きますね。

ところでBS朝日のみなさん、この素晴らしい試合の中継、そしてこの後の大会の完全中継本当にありがとうございます。

GAORAやWOWOW以外のテレビ局が中継すると結構負けることが多かったので、大きな英断だったと思います。時間の読みにくいテニスで試合終了までの放送も感謝です。

あと松岡修造さんの解説がかゆいところに手が届くいい解説でした。全てに納得できましたし、選手の心理状況をよくとらえた名解説でした。今後も楽しみにしています。

それにしても震えたなあ。というか正直1ブレークされても2ブレークして勝てばいいって書いたらほんとに2セットとも1ブレークされても2ブレークして取ったんですよね。

隣のはまちゃんさんのブログではスコア予想当たってるし、なんだこれ…

それでは。興奮冷めません。あと眠いです。体調気を付けて私も決勝まで、頑張ります。もちろんそのコートに、錦織圭が立っているのを信じて。