O2アリーナに現れた「フルセッターのサムライ」~価値ある2勝目、あとは結果待ちだ!!~
11/13 現地14:00~(日本時間23:00~)
Barclays ATP World Tour Finals
Round Robin Group B Game5
[4]Kei Nishikori 4-6 6-4 6-1 [9.alt]David Ferrer
またしても、日本が、そして世界が震えました。
凡戦続き、全てストレート勝ちのツアーファイナルズ。
6-0、6-1のセットを合わせると8試合ですでに7つ。正直ワンサイドゲームが多く確かになーとは思っていました。
だけど、今日は違います。
2万人のO2アリーナの観客が震え上がりました。こんな選手が、しかも2人もこのコートでとんでもない試合をした。きっと満足して帰るでしょう。
ざっくりと総評すれば改善されたサーブですね。第3セットで1ゲームだけもたつきましたが、それ以外は結局第1セット苦しみまくっていた時の2ブレークのみ。
2ブレークされる。もしラオニッチ戦ならそれだけで致命傷ですがこれはフェレール戦、よく止めた、よく粘ったということです。
フェレール、わずか2時間前に選手交代が発表されたわけですが本当によくアジャストしてきました。
こういう時守備的なテニスはいいです。しぶとい守りからミスを誘ったりワンチャンスを決めに行く。ラリーも続きますし、試合中盤からは本当にレベルの高い試合でした。
試合を振り返っていきましょう。幸いにも毎ゲームごとのコメントを残しています。書きやすい書きやすい。
序盤は全員が苦しむO2アリーナの1stサーブの確率にフェレールもはまってしまいました。
しかしこのころは錦織のショットのフィーリングが合わず、競るものの決定的チャンスは来ず。
一方の錦織は毎ゲームDF。どちらもサービスキープに苦しみながらサービスキープする展開。
こういうのは危険です。結局流れが傾きだすと一気です。嫌な空気を感じていました。
第4ゲームでフェレール、錦織両者が上げてきたところからビッグマッチのスタートです。
錦織×フェレール戦の良さはとにかくラリーが続く。決まったと思ったところから逆襲が来る。テニスを初めて見る人には本当にいい導入になる楽しい試合です。サーブで終わるとちょっと淡白ですからね。
そしてその中で攻めと守りの入れ替えがすごいです。
錦織が攻めのテニスというのは散々言ってますが、最近はフェレールもラリーの中でスピード調整をしてくるので目まぐるしく主導権が動くようなじりじりするラリー。
やってる方は嫌ですが、見る方としては見ごたえのありすぎる試合です。
第5ゲーム、錦織にチャンスが来ました。
初のブレークポイント。ここを落とすと、やはり一気に流れはフェレールへ。次の錦織のサービスゲームがデュース合戦に。
こういう時、並の選手なら落としてしまいます。
フェレールはこういう場面を見逃しません。しかしここで錦織がフェレールのBPでネットインのドロップショット。
しかも本来最短距離、フェレールから一番遠いバックサイドに落とすのに、わざわざ難しい距離感の掴みにくいクロスコートへ、フェレールの近いほうへのドロップ…
私たちの常人の発想では絶対に出ません。あとそれがネットインすることなんて一生テニスしても私は無理です。
ここを止めたことでまたしても流れは錦織。相変わらず攻めた結果ミスは多いもののそれを上回るビッグポイントでブレーク成功。4-3とします。
しかしここでついに錦織のサーブがフェレールに捕まります。ブレークした後のゲームは流れが動きやすい場面です。ここを見逃さなかったフェレールが、錦織の強いられるミスに助けられて12ポイント中11ポイントを取ります。6-4で1stセットはフェレールです。
明らかに最悪の流れでした。フェレールの場合1stセット落とす時の落とし方がここまで悪かった試合で勝ち試合の記憶がありません。このまま行かれるのかな…誰もがそう思ったこの場面で、ついに錦織が目覚めます。
第1ゲーム、フェレールのサーブ、0-40の大チャンスからいいサーブでしのがれたところ、最後の3本目を決めて1-0。
これ、あっさり書いてますがありえないことです。
直前に2連続ブレークを許し、ブレーク終了で相手のサーブから始まった第2セット、ここで1セット目を取った選手がサーブをキープして勢いをつけるのが普通です。
ここをブレークで反撃できる男、世界に何人いるでしょうか。
これで試合の流れは全く分からなくなりました。
私はなんか感覚的な問題なんですけど、2セット目取れたら形はどうあれ勝てると思っていたので、このブレークの意味は計り知れなかったですね。
そしてここでサーブが決まりだします。190km/h、錦織が出せるベストのサーブがコースにきっちり決まりだします。
なぜ今までできなかったのかと突っ込みたくなるくらいの出来に引きました。そしてここから錦織はキープに安定感が出てきます。
そして個人的に勝敗のポイントと思っている第2セット中盤です。
本当にフェレールはしぶとかった。フェレールに対するしぶといは褒め言葉です。それこそがフェレールのスタイルですから。
この時間帯、キープが安定し振り回しも強力になった錦織、カウンターや信じられないディフェンスでポイントを稼ぐフェレール。
まさに、ファイナルにふさわしい名勝負でした。
その中でフェレールが70%近い1stサーブを決めてきて、それに錦織がほとんどリターンミスしない。さらに錦織のサーブはどんどんよくなっていく。気がつけばダブルフォルトはなくなっていました。
しぶといフェレールを錦織は根気よく振り回しました。なんと試合終了後には錦織が約1800mの走行距離だったのに対し、フェレールは2200m。実に400m、20パーセントも違うんです。
ここでディフェンスからミスすることが少なかったフェレールがやや根負けする場面が出てきました。
こうなると錦織はキープが楽です。フリーポイントに加えラリーで打ち勝つ、しかもフェレールを走らせる。見事なゲーム運びでした。
そしてブレークポイントを与えないまま、第2セットを6-4で取り返します。
この地点で、私は80パーセント以上勝ちを確信していました。
錦織のサービスキープがかなり安定していて、個人的には神がかっていたクレーシーズンの頃のサーブに戻った印象でした。
一方フェレールはかなりミスが出てきて、振り回しの効果がじわじわと効いてきた状態。一旦崩れるとドミノのように来る、そう感じていました。
予感は的中。錦織はトイレットブレークを取り(よくやります)、非常に落ち着いていました。逆転勝ちのビジョンをしっかり見据えていたのでしょう。
オープニングから明らかにギアの上がったプレーでいきなりブレーク。さらに第4ゲームはすべて1stサーブを沈め走らせてからオープンコートに全てウィナー。
私はゾーンは信じない人ですが、あれはゾーンでした。怖すぎました。全盛期のビッグ4を見ているかのようでした。
フェレールは依然粘っています。しかし逆に言えばもう粘るしかないのです。そういう状況のフェレールに猛攻が襲い掛かりました。トップ10、トップ5、いやそれ以上のプレーでした。
信じられません。勝ち負けのかかったファイナルセット、正直言って体は当にボロボロ、そんな状況で2万人の大観衆を前にゲームを支配したのです。
第6ゲームは危険な場面でした。感覚がよすぎてミスが出たところを突かれ5回のブレークピンチ。
しかし今の錦織にはサーブがあります。あのフェレールがリターンできないサーブを次々と叩き込みます。
2DFはいけなかったですが、ここをキープし勝ちを確信。
最後はその次のゲームでいつものリターンからの「急なマッチポイント」を一本で沈め勝利。
何よりもこの試合は、どっちもミスの多かったマイアミ、体がぼろぼろだったマドリード、遅いサーフェスでじりじりするラリーを展開させられたパリの3試合とは違い、お互いの良さがぶつかり、その上で振り回し続けた錦織が真っ向勝負に勝った。この強さ、本物と言わずして何があるでしょうか。
だいたいフェレールに4連勝なんて本当にビッグ4くらいしか無理でしょう。
よく考えると錦織がパリの試合でフェレールを倒しました。ちなみに錦織がレギュラーシーズンで倒した3回でフェレールは全部勝ってたら510p入ってました。
ランキング表を見ればわかりますよね、フェレールが余裕でファイナルに出てました。
そんなフェレールが負けたことで出れたラオニッチ、そのラオニッチの代わりでフェレールが出てきて、準決勝進出を最後に阻む刺客として現れた…
あまりにも出来すぎなプロットです。そしてそんな中最後までこの物語の、コートの中心にいたのは錦織圭です。
とんでもないです。もう形容する言葉がありません。とんでもないです。
いくらでも書けますのでこの辺で終えましょう。
ランキング、準決勝の先についての話はフェデラー×マレー戦が終わってからにします。
なおくどいですが再確認、マレーがストレート勝ちする以外のすべてで錦織が2位となり準決勝進出です。
つまりフルセットマレー勝ちは錦織ですので、マレーは1セット落とした地点でアウトです。
まあさすがにあの錦織を完全に打ち破ったフェデラーが1セットも取れないのは万に一つもないと思います。いや真剣に。
あんまり肩入れしたくないのですが、フェデラーの結果に関わらず錦織は絶対2位通過しかありませんので、今回ばかりは何も考えずフェデラーを応援します。
それでは、3時間後に会いましょう。絶対起きるぞ…(ひどいフラグ)