two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

オフシリーズ・閑話球題 ⑫今は「コーチ」が熱い!

こんばんは。

今日はコーチに関する話です。

現在のトップ選手の多くが「レジェンドコーチ」を迎えているのが最近のトレンドです。

そもそもコーチはATPにおいてそこまで大事なのか?もちろん名コーチはそれまでにも存在しました。例えばフェデラーの元コーチ、ポール・アナコーンや、後で紹介するブラッド・ギルバートなど優秀な指導者はいました。ですがこれらの人物はグランドスラムを取ったわけではなく、単に名伯楽だったというわけです。

そもそもグランドスラムを取る選手が少ないというのはあれ、これまでのATPの中での認識は「いい指導者≠いい選手」という明確な感覚をみな持っていました。

それが変わったのがレンドルのマレーに対するコーチングです。

レンドルが与えた影響についてはマレーの回(⑦)で説明しましたが、マレーほどの選手が勝てない理由はもう技術的な問題ではなく、大舞台でのメンタルでした。

それを同じような体験をしたレンドルがサポートすることで約1年で五輪金、グランドスラム2勝を達成するに至りました。

この出来事がきっかけになり、レジェンドコーチを依頼するケースは増えてきています。

そしてレジェンドコーチの選択もその選手の特徴を把握したうえで各選手適切な選択をしているというのが印象的です。

トップ10選手を中心に今のコーチラインナップを見ていきましょう。

ジョコビッチ×ボリス・ベッカー

2014年からベッカーをコーチに迎えているジョコビッチ、世界1位の選手にとってのメリットはなんでしょうか?

ベッカーは現役時代ビッグサーバーとして名をはせました。

ジョコビッチのサーブは決してビッグサーブとは言えず、サーブ力強化は一つ考えられるかなあと思います。

そして2014年開幕当初は2位。2位とはいえ「1位ではない」のです。

2011年、2012年と年間1位を取ってきたジョコビッチにとっては、この1つの差を埋めることが大きな課題だったのでしょう。ベッカーという世界1位経験選手の体験を聞くことで何か得られるものがあったのかもしれません。

開幕当初は全豪で優勝を逃すなど不安視もされましたが、終わってみれば圧倒的な差で1位フィニッシュと力を見せました。

フェデラー×ステファン・エドバーグ

2014年からボレーの神様エドバーグをコーチに迎えました。

フェデラーほどの選手は正直今更メンタル改造というのはしなくてもいいレベルですので、エドバーグをコーチに迎えた目的は技術的なところにあります。

フェデラーも30歳を大きく超え、4時間や5時間も長丁場の試合でラリーを続けると、やはり体力負けが心配になってきます。

それを避けるためにフェデラーはサーブ&ボレーで短いラリーでポイントを取れる組み立てを以前より多くすることにしました。

それにあたって参考にするべきプレーヤーだったのがエドバーグだったのでしょう。

事実フェデラーのプレーに占めるネットプレーの割合は増えています。その結果サービスゲームで特にキープが楽になっています。

ナダル×トニ・ナダル

ナダルのコーチはナダルのおじさんです。幼少期からずっと連れ添ってきており、特別な信頼関係にあるようです。

技術的なことがどう教えられているかはわかりませんが、精神的な主柱になっていることは間違いありません。

バブリンカ×マグナス・ノーマン

ノーマンは選手としてはグランドスラム決勝進出を経験している選手で、2012年に終盤戦でバブリンカはコーチなしで戦っていました。

バブリンカにとって必要だったのは上位を打ち破る力だったと思います。当時のバブリンカはまだトップ10に少し入った程度の10位台の選手。潜在能力は持ちながらもその実力は100パーセントは発揮されていなかったであろう時期でした。

ちなみにノーマンは今回が初めてではなく、以前に全仏ファイナリストのソダーリンのコーチ実績があります。

バブリンカの2013年の成功は2014年の多くの選手のコーチ変更のきっかけになりました。

錦織圭×ダンテ・ボッティーニ、マイケル・チャン

錦織は結構多くのコーチに指導されています。

2011年にはあのアガシのコーチ経験があるブラッド・ギルバートをコーチに招きました。

ギルバートは著書に「カッコ悪く勝つ」という本があり、錦織にディフェンシブに戦うことを教えました。

ショットのきらめきは当時からもあった錦織ですが、いかんせんそれを試合で効果的に使うことができず、ミスを量産してしまっていた当時の錦織に我慢するテニスを教えました。

最初はうまくいくのか不安だったところもあるようですが、シーズン後半では実を結び、錦織の第2期覚醒期と私が思っている上海マスターズ4強、バーゼル決勝進出へとつながりました。

その後ギルバートと別れた後は2012年からIMGアカデミー専属のダンテ・ボッティーニさんが一人でコーチを務めてきました。

ダンテさんはもともとプロ選手で若く、錦織の「ヒッティング練習ができるコーチ」という要望に合っていたようです。

また南米出身の陽気な性格が錦織と合っていたようで、現在まで3年間ずっとコーチを務めている(来シーズンもおそらく)結果になっています。

3年連続トップ30、2年連続トップ20を達成した2013年ですが、トップ10挑戦に失敗した2013年夏の悔しさは錦織本人にも大きな精神的ダメージを与えました。

そこで錦織が次に招いたのがあのマイケル・チャンでした。

そもそもチャンを招いた理由は「トップ10の壁を打ち破り、トップ選手になるため」でした。

マイケル・チャンの成績は10代全仏制覇が印象に残りますが、実はその後トップ10落ちも経験しており、とにかく体格の大きい選手と戦うためにメンタルを改造したり、トップ選手として居続けるために様々な苦労をした選手でもあります。

またアジア系で体格が小さいながら勝ち上がっていったのは現在の錦織のそれにもっとも近いということもあり、チャンの経験を追体験として教えてもらうことでメンタル的に大きく成長することができました。

よくチャンの鬼のような反復練習が注目されていますが、正直これは副次的なよかった点で、何よりあの世界を知っているチャンが言うのだから…というような意味合いが錦織には大きいのだと思います。

あとチャンコーチだけでは厳しすぎて錦織がついていけなかった可能性があり、ダンテさんと「飴とムチ」の関係にあり、お互いがお互いのことを理解しながら二人がコーチングしていったことが成功の秘訣だと思っています。

マレー×アメリ・モレスモ

レンドルと今年の序盤でコーチ解消したマレーはその後もともといたコーチスタッフのみで一緒にツアーを回ってきました。

当時のマレーはけがから復活したものの残念ながら優勝、決勝進出もなしが続いている完全な成績不振に陥っていました。

芝シーズンに入ったところで衝撃の発表がありました。グランドスラム2回制覇の女子選手、モレスモをコーチに迎えたのです。

この意図についてはいまだにわからないところも多いのですが、当時は芝シーズンのみの限定契約という話だったのですが、現在も続いており、ファイナルの錦織戦でもロイヤルボックスにいるシーンがありました。

モレスモの指導の効果かはわかりませんが、アジアシリーズ以降はマレーも調子を取り戻しており、2015年が注目な組み合わせです。

ラオニッチ×イワン・ルビチッチ

2013年からラオニッチのコーチを務めており、錦織同様トップ選手になるための方法論を教えています。

特にストローク強化は実を結んでおり、簡単にサーブに崩れなくなったのはルビチッチのコーチングの効果だと思われます。

チリッチ×ゴラン・イワニセビッチ

イワニセビッチはザ・ビッグサーバーという母国クロアチアの英雄です。クロアチアではアンチッチ、ルビチッチなどもいますが、今年のチリッチの実績に並ぶような成績はウィンブルドン優勝のイワニセビッチまでさかのぼります。

この母国の英雄に自分が変わるためのきっかけをもらうためにコーチを依頼しました。

プレースタイルも大味なところが比較的似ており、性格も楽天的な面がかみ合ったようで、さっそく2月のインドアシリーズで連勝。夏ごろから再び成績が上昇し全米ではダークホースとして優勝。しかしここからが勝負です。全米後は燃えつきも指摘されており、イワニセビッチ同様一発屋にならないためにも今後が勝負でしょう。

そのほかのコーチ

ベルディヒモレスモが入ったことでコーチを外れたマレーのスタッフを来年から迎えるようです。

一時期フォニーニとマッケンローがタッグを組むという話が出ました。ガセだったようですが、コートマナーが悪い同士で、意外とうまくできるのではと思いました。

イズナーは来年からATPの協議会などで活躍しているジャスティン・ギメルストプをコーチに迎えます(ギメルストプは「ATPテニスマガジン」を見ている人であれば一度は聞いた名前だと思います)。

マトセビッチのコーチはダブルスでキャリアグランドスラムを達成した「ウッディーズ」のウッドフォードです。

今日はこんなところです。しかし実はこの中の多くの人がコーチ初経験だそうです。

結果的にうまくいっている組み合わせが多いのですが、それぞれかなりリスクのある賭けだったと思います。

試合中に移るロイヤルボックスの様子もこれでよくわかると思います。

次回は2014年のオフコート関係のネタです。それでは。