ATPランキング試算(2015マイアミマスターズ後)④4回戦終了時
こんばんは。
今日はテニス関係に5時間くらい割いてるんですが、こんなんで新年度始まっていいんですかね…
さてマイアミマスターズもベスト8が出揃いました。いろいろと面白い出来事のあった4回戦を振り返っていきましょう。
まずはジョコビッチ×ドルゴポロフ。ドルゴポロフ、あと一歩まで行ったのですが土壇場でジョコビッチがブレークに成功し、ケガの影響かそこからはあっという間にベーグルで落としてしまいました。
ジョコビッチは簡単に崩れないのでこういう試合が多くなりますね。いいプレーができている時間は競っていても少し何かが変わってしまうと一気です。
ただ私はジョコビッチが第1セットにメンタル的に安定していなかった、ここがもし準決勝で錦織と当たるなら錦織側の作戦に使えると思いました。いかに流れを掴めるか。ファイナル準決勝第2セットや全米の時のような何かが必要だと感じました。それがあれば勝つチャンスは出てくる、そう思いました。
フェレール×シモンは第1セットの混沌を抜け出したフェレールがベーグルフィニッシュ。フェレール、IWでこそ簡単に負けましたがいまだに調子を維持しています。QFのジョコビッチ戦は非常に楽しみです。番狂わせも十分にあり得ます。
モナコとベルダスコの一戦は前試合の調子を維持し続けたモナコが勝ち、久しぶりのマスターズ8強です。
マレーはアンダーソンに苦しみながらもフルセットで振り切り勝利、キャリア500勝目を挙げました。この大会の上位進出で花を添えたいところです。
ベルディヒはモンフィスとの一戦。面白いカードだと思いましたが試合中盤でモンフィスが転倒した際に足を傷めそこからプレーレベルが落ち棄権負け。転倒した際にはベルディヒが介抱に行きましたが、その姿は2月のロッテルダムと真逆。その時は転倒したベルディヒをモンフィスが助けに行きました。
TENNIS LOVERSさんの記事でも触れられていますが、相変わらずベルディヒはいろんな面がラッキーです。しかしなぜ勝てない…
マナリノ×ティエムはいい勝負でした。今大会のベストマッチにも数えられるかもしれません。
両者初のマスターズ8強に向けての戦いだったのですが、第1セットはタイブレークをティエムが取って先行。
第2セットはマナリノが中盤でブレークしファイナルセットにもつれます。
ファイナルセットでは激しい攻防が見られたものの終盤でティエムの片手バックの強打が炸裂。耐え切れなくなったマナリノが崩れ、ティエムがファイナルセット7-5で勝利、初のベスト8に進出しました。
このティエムはよかったです。マドリードでバブリンカに勝った時以来の衝撃でした。その時は次戦でロペスに敗れてしまいましたが今大会はしっかり4連勝して勝ち進んでいます、本物です。
そしてナイトセッションのラオニッチ×イズナー。とんでもないことが起こりました。
1stセットは両者1ゲームだけ苦しみお互い1つのBPを与えますが結局取り切れず勝負はタイブレークへ。
しかしこの間の両者の戦術は見事でした。
ラオニッチのエースは第1セットタイブレークに入るまで0本。おかしいと思うところですがラオニッチには作戦がありました。
ラオニッチはビッグサーバーの割に1stの確率がそこまで高くなく(イズナーは平均70%くらいですがラオニッチは65%。5%ですが1stを入れられればほぼ得点できる彼らにとってこの差は大きいです)、少し課題です。
ところがラオニッチは以前に比べてストロークが向上しているので、この日もロングラリーに入ればラオニッチがほとんどのポイントを取っていました。
つまり無理にエースを取りに行く必要がないのです。イズナーはリーチが長いのでその分もエースを取りにくい要因になっていて、ラオニッチは威力よりも確率とその先につなげるための1stサーブを打つように心がけていました。
1stセットはイズナーのほうがしっかりポイントが取れていて、タイブレークに入れば単純な確率計算ならイズナーというところでしたが、とにかくストローク戦が機能しないために差が付き、ラオニッチがタイブレークで一度もサーブポイントを落とさずに1stセットを取りました。
ビッグサーバー同士の試合なのでタイブレークのこういった総合的な面で試合を分けることが多いのですが、ラオニッチの過去2敗は2012年2013年。この頃よりもストロークが向上しているからやはりセットが取れる。第2セットも間違いないかと思っていましたがここからドラマがありました。
第2セットはお互いにブレークポイントがなくキープ。ただラオニッチはここでいつもと同じようにエース優先に切り替えました。思った以上にイズナーがリターン自体は返してきた(なおその後のラリーはノーコメント)ので、フリーポイントを増やすためにより厳しいコースを付くようになりました。
ただセカンドサーブになる確率が増えたことでイズナーも勢いづき、時折ではありますがいいショットも見せて抵抗。やはり総ポイントでイズナーがリードする中タイブレークに突入します。
ところがタイブレークに入ってイズナーがウィニングショットを連続ミス。2ミニブレークダウンの0-3となり、勝負は決まったかに見えました。しかしここからドラマは始まります。
次の2本のうち1本を返し1ミニブレーク差とすると2本キープし、さらに次の2本でもう1つミニブレーク。4-5からのサーブもしっかり2本決め6-5とします。
ラオニッチにプレッシャーのかかるこの場面でラオニッチはサーブポイントで1本取るも、次のポイントでイズナーがネットプレーに出て3度目のミニブレークで7-6。最後はセカンドになりながらもなんとかチャンスボールを叩きつけて8-6。大逆転でファイナルセットに突入します。
しかし実はダブルスでQFに残っているイズナーはこれで5試合目。ビッグサーバーで試合時間が短くなる傾向にある中ですでに1時間50分を経過した試合、イズナーに疲れが見え始めます。
足のサポーターもあり、デ杯でワードと5時間以上戦った影響からか動きが悪くなっていきます。
どう見ても総合力で上回るラオニッチ、しかしイズナーにはサーブがあります。動かなくても打てるサーブは時に230km近くに達し、それだけでラオニッチはなかなかチャンスを掴めません。
ラオニッチ最大のチャンスは第3ゲーム、15-40とリターンを何とか返しストローク戦から活路を見出して2BPとしました。
しかしここもイズナーに実質サーブ2本で切り抜けられチャンスを逃します。2本目のサーブはサービス球速表示の電光掲示板が速度を示せず、おそらく測定不能だったものと思われます…
その後は苦しみながらも両者キープが続き、3度目のタイブレークへ。
この地点ではサーブからショートポイントでしかポイントが取れないイズナーが不利と見ていましたが最後のひと踏ん張り、デ杯と違ってここで終わりと分かっているだけあってイズナーがフットワークを取り戻し攻撃的になりました。
イズナーのサーブから始まったタイブレークの1ポイント目はあいさつ代わりのサービスエース。2ポイント目、ラオニッチのサーブを返すと渾身の回り込みフォアDTLが決まり2-0に。しかしラオニッチはセカンドサーブからラリーをつなげすぐミニブレークバックして2-1に。その後は両者セカンドにもつれる場面でもきっちりキープしてイズナーの5-4に。特にイズナーは3-4からのサーブ2本がプレッシャーのかかる場面でしたがしっかりよく取りました。
そして10ポイント目。バックのラリーからラオニッチがストレートに打ったボールがネット。6-4とイズナーがリードし2MP。
この次のポイントのラオニッチのセカンドサーブはかなり厳しいコースを付きサーブポイント。DFなら即死の場面でしたが、ナダル戦でも思いましたがメンタルがかなり成長しています。
イズナーの次のポイントはセカンドサーブに。厳しいかと思いましたが3球目を打った後勝負のネットダッシュ。ラオニッチがDTLをミスし試合終了。番狂わせが起きました。
ラオニッチは残念でした。悪くはなかったと思いますがリターンですね、単にイズナーのサーブが手が付けられないだけなのか…
この試合の評価は難しいところですが、しいて言えばイズナーが疲れている中で半ばリターンゲームを諦めてサービスゲームに集中し、一発勝負のタイブレークで第3セットそこまでわずか3ポイントしか取れていなかったリターンポイントで2ポイントをものにして、自らは1ミスのみで止めたのが勝因でしょうか。
すごい試合でした。初めてビッグサーバー同士の試合が面白いと思えた試合でした。
以上からわかる通りイズナーは非常に危険です。もちろん日本以外でも戦前予想のほとんどが錦織有利としていますが、あのサーブがはまれば正直手が付けられない印象です。
とあるテレビ局じゃイズナーの名前も出さずにランキングで勝てると推し量ったようですが…そんな甘い世界じゃないですよテニスは。
今大会は「strong 9」の8人がまあ負けることはないだろうなんて思ってましたし戦前予想で敗戦を予想する人はほとんどいませんでした、それほど強いトップ9が勝ち残れたのはわずか5人。なんと厳しい世界でしょうか。少し間違えば簡単に負ける世界です。その証拠にベスト8を世界1~8位で占めたことがあるのは09年カナダMSのみです。
イズナー戦は個人的にかなり大きな山場になりそうだと感じています。むしろこのイズナーに対してストレートで突破できるようなら本当に優勝もあり得る気がします。しっかりと別記事でイズナー対策を考えてみたいと思います。
さてランキングですが、ラオニッチ敗退で申し訳ないですがかなりの追い風になってきました。
まず、錦織圭がナダルをキャリアで初めて抜くことが確定しました。マレーに続きビッグ4では2人目の突破です。
キャリアで一度も上に立っていないのは残すところフェデラーとジョコビッチの二人だけになりました。
そしてQFでの対決で抜かされる可能性のあったラオニッチは6位以下が確定。ナダルは命拾いして5位でクレーシーズンをスタートします。
トップ10の順位可能性を順番に整理します。
ジョコビッチ…1位確定(当面ずっと)
フェデラー…2位確定(当面ずっと)
マレー…3~4位
マレーは次負けても錦織が決勝に進まなければ3位です。ただ決勝まで行っても錦織優勝で4位ですので、優勝が自力3位の要件です。
錦織…3~5位
フェレールが優勝しなければいかなる成績でも4位です。明後日には4位復帰確定するかもしれません。3位の条件はマレーのところで書きました。
ナダル…5~6位
すでに2つ順位を落とすことが確定しているナダルですが、フェレールの優勝で6位転落です。前回も書いたようにもしそうなれば約10年ぶりの6位転落です。
ラオニッチ…6~7位
こちらはフェレール準優勝でわずかにかわされます。
フェレール…4~8位
準優勝で6位確定、優勝で4位確定です。それ以外の成績だと変化はありませんが、ベルディヒ次第で下げます。
バブリンカ…8~9位
ベルディヒが次勝てば(今日勝てば)9位です。加えてモンテカルロの1000pもあり、今後は第9シードとしてクレーシーズンの迷惑下位シードになります。
ベルディヒ…6~9位
優勝すればラオニッチをかわして自力6位。まずは今日勝って8位に上げたいところ。
あとこのランキングはバルセロナのシードに使われるのですが、フェレールにかわされない限り、錦織はナダル8度優勝の要塞都市バルセロナで10年ぶりのスペイン人選手以外の第1シード選手(10年前はサフィン)になります。これも快挙です。