two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

至高の決勝に酔いしれた(2015シンシナティ決勝)

8/23 現地13:00~(日本時間翌日2:00~)

Masters1000 Cincinati Western and Southern Open

Championship

[2]Roger Federer 7-6(1) 6-3 [1]Novak Djokovic

ただ単純に面白かった、そんな試合でした。

ジョコビッチにとってはゴールデンマスターズがかかった大事な試合、一方のフェデラーは全米第2シード、そして何より昨年上海で優勝して以降マスターズ以上の主要大会決勝4連敗中。自信を取り戻すために大事な試合でした。

ジョコビッチはゴフィン戦であわやがあり、ドルゴポロフにも1セットダウンするなどなんとか勝ち上がってきたものの、なんとマレーまで含めて4戦連続のストレート勝ちで来ているフェデラー。どちらが勝ってもおかしくない一戦でしたが試合は大会を通じての両者が出た形になりました。

最初のポイント。速い展開からジョコビッチがミスしてフェデラーのポイント。続くセカンドサーブでのフェデラーの返球。跳ね際で処理すると強引なネットダッシュを試みました。結果リターンはアウトになったものの、この先を予想させるようなフェデラーの攻撃性が際立ったポイントでした。

結果ジョコビッチがキープした後の第2ゲームは今大会好調のフェデラーのサーブが炸裂します。危なげないサービスゲームを展開しキープ。ジョコビッチはリターンできないと厳しい印象を受けました。

第3ゲームはすごいゲームでした。15-30から第1ゲームで見せたライジングでのネットダッシュ。普通のリターンダッシュだと前に出きったくらいでパッシングが来るのでリスクがありますが、なんとベースラインから4mも前で返すのでジョコビッチが打つ頃には完全にネットで待ち構えています。

リターンダッシュは普通パッシングが甘くなるのを待ちつつプレッシャーをかける賭けになる選択なのですが、フェデラーはそれをリターンを返球する限り「100%」にしてしまったのです。

BPからのジョコビッチは見事でした。すべてのBPで1stサーブを入れ、フェデラーにラリー勝負に持ち込ませんでした。

ラリーでも半分くらいは実はジョコビッチ取れていたんですが、これだけ速い攻撃でジョコビッチの守備をかいくぐっている現状と何よりあのセカンドサーブでの猛烈なダッシュ。あれを見ると2ndに入っていればブレークされていた可能性がきわめて高いです。

第4ゲームはフェデラーの独壇場。ベースラインからリズムを変えるフォアの逆クロスなどやりたい放題。低い打点で打ちながらミスの少ないプレーに抑え、ジョコビッチからウィナーを量産していきます。

第5ゲームでもフェデラーは押し込んでいきます。再びBPを握りますがここでもジョコビッチがしのぎます。全体的にフェデラーが押している時間帯でした。

この地点まででよく見られたのはフェデラーセカンドサーブでのリターンの攻め、そして速い展開からジョコビッチを動かすラリー、そして多彩なネットプレーです。すべてがジョコビッチからウィナーを取りに行く、主導権を握りに行くような攻めのテニスです。

ご覧ください。このセカンドサーブでのリターン位置です。

かつてこんな位置でセカンドサーブをリターンした選手がいたでしょうか。いないでしょう。それほどに前でのリターン本数が多いのがフェデラーです。

第6ゲームでは少しジョコビッチにいいポイントが出ますがやはりサーブが救います。

ジョコビッチはリターンさえできればポイントはそこそこ取れていたのですが、まずそこに持ち込めないほどフェデラーのサーブの配球がいいためなかなか掴めません。

ウィンブルドンではラリーに持ち込む方法がうまくはまりました。1stでもリターンし2ndではプレッシャーをかけていく。SFまで1ブレークしか許していなかったフェデラーからプレーレベルが落ちたのにも助けられ何度もブレークしましたがこの日はそうはいきませんでした。

仮にラリーに持ち込んでもネットプレー、1球で決められるフォアハンドをもっているフェデラーから5割以上取っていくのは容易ではありません。昨日のジョコビッチはSFまでのよくないプレー状態から相当持ち直していましたが、その状況のジョコビッチに好調フェデラーを止めるというのは難しいミッションだったのかもしれません。

その後もキープが続きますが、キープが続く過程でジョコビッチは少しずつペースを掴みつつありました。

一方のフェデラーは第10、第12ゲームで1stサーブの確率が悪くなり、セカンドが増えます。少し嫌な流れもありつつ、まだ流れの見えない中でのタイブレークでした。

ジョコビッチとしてもここで取れればよしという感じ、最初どう動くかという中での最初のポイント、ジョコビッチサーブでした。ほんの少し浅くなったジョコビッチのボールをフェデラーがバッククロスで一閃。

こういったところでバックのコントロールに苦しむとフェデラーはきついですが、昨日はバックハンドでもこういうポイントが取れました。試合を象徴するポイントでした。

2-0からフォアアプローチのミスで追いつかれるも2-1からの吸い込まれるようにベースラインに落ちるバックハンド。そして次のポイント。まるでセカンドサーブをハーフボレーのように処理してネットダッシュ。これもポイントにして4-1。ここで勝負は決まりました。結果2-1から5連続ポイントでタイブレーク7-1。フェデラーが優勝に王手をかけます。

タイブレークでのフェデラーの神がかったプレーは本当に全盛期を思い出させる、いや今が全盛期なのではというプレーでした。

フェデラーは34歳になって初めての大会です。34歳です。

さすがに今の過酷なツアー制度で毎大会その結果は出なくなっていますが、休養さえ取って自分のテニスを持続できれば今でも世界NO.1相手にこのプレーができる。やはりレジェンドです。

第2セットはそんな状況でジョコビッチにプレッシャーがかかってしまいました。

フォア、バックからミスを上回る量でウィナーを量産される。ネットプレーもある。加えて安定したサービスゲーム。どこから手を付けていいか全くわからない状況で第4ゲーム、ジョコビッチは3つのDFを重ねてしまいあっさりブレークを許します。

1-4の第6ゲームでもジョコビッチは0-30としてしまい、苦しい場面が続きます。BPを迎えますがパッシングショットをミスせず難局を乗り越えます。するとチャンスがやってきました。直後の第7ゲームです。

40-15からジョコビッチが追いつき、この試合初めてのデュースにします。

流れが少し変わった要因はジョコビッチがやや攻撃性を上げたことです。ここでネットプレーを多用する戦略を取ってきました。

ジョコビッチはこういう土壇場で戦略を変え、そこから流れを作るのがうまいです。ジョコビッチ最後の反撃でした。

しかしフェデラー、ここで冷静でした。1stをしっかり入れ、自分のテニスを淡々として最後はお返しのネットプレー。スマッシュで無理をせず、その次のボレーを叩き込みキープ。5-2とします。

そして最後もしっかりサービスキープを決めシンシナティ7度目の優勝。ジョコビッチのゴールデンマスターズは今年もお預けになりました。

試合後のジョコビッチのスピーチが語っています。

「Today wasn’t a day」

今日は私の日ではなかった、ということです。

つけ入る隙を全く与えず、テニスのすべての要素で高いプレーを維持し続け勝利。この相手に勝つことは昨日のジョコビッチには酷すぎる要求でした。

最終スタッツです。

#Federer v #Djokovic first set stats from @CincyTennis. http://t.co/kRsZ9udpkC #ATP #tennis pic.twitter.com/QTWATnG5Ra— TennisTV (@TennisTV) 2015, 8月 23

The numbers from #Federer's @CincyTennis victory over #Djokovic. http://t.co/kRsZ9udpkC #ATP #tennis pic.twitter.com/VLeApMNNzz— TennisTV (@TennisTV) 2015, 8月 23

ネットポイントの多さ。そして成功率の高さです。この数字が試合を決めたと思います。

表にはありませんが実はロングラリーではジョコビッチの方が取れていたのもミソです。つまりフェデラーは徹底的にこういうじり貧のラリーを嫌い、自分でポイントを取りに行ったということです。

それが走行距離にも表れています。(表なくてすいません)

フェデラーはローコストで勝てるテニスを心掛けているのが最近の復調の要因ですが、一見すると走行距離がジョコビッチより長いので矛盾しているように見えますが、これでいいのです。

フェデラーはネットダッシュに30回近く出ています。ベースラインからネットプレーをする位置までを約8mと仮定すると、これだけで走行距離は240mあります。

さらに回り込みフォアでも走る距離が長くなっているので、ラリー自体での走行距離は相当抑えられています。

いわゆる反復ダッシュが少なくなることで、1ポイント当たり全力ダッシュする走行距離を抑え、総合的には体力を抑えているのです。

さてこの勝利でかなりいろいろなところが見えてきました。

まずはフェデラー。やはり本物です。今年は大会を間引いている分レースは3位につけていますが、単純に1試合の強さだけならジョコビッチ、マレーにも勝てる力を維持し続けています。

この選手が全米第2シードです。そしてこのフェデラーを挟んでジョコビッチが第1シード、マレーが第3シードです。

全員が、優勝に向かってポジティブになれる2週間だったと思います。

ジョコビッチもマレーとフェデラーに負けましたがポジティブになれると思います。そこまで致命的に悪い印象はありません。

マレーはカナダ優勝が大きな自信になっています。

もちろんジョコビッチ、マレーは疲労とケガ寸前の体、フェデラーは連戦の疲労が不安視されます。他選手にもチャンスがあります。そしてそうなった時に次に優勝可能性があるのが上限の高いナダル、そして一発がある錦織、ワウリンカです。十分に今回も優勝可能性のある選手として錦織は挙げられるでしょう。

全員の疲労がたまってきており、暑さもある。全米は最初のGSウィナー誕生が起きやすい場所とも言われています。サンプラス、マレー。こういった選手が最初にGSを取ったのがニューヨークです。

全米オープン、シード位置も確定しいよいよ舞台は整いました。ドロー発表は現地27日木曜日、日本時間では金曜朝ごろになると思われます。

ドロー発表まではカナダ決勝の備忘録やキリオスの件など大忙しです。いろいろやっていこうと思います。それでは。