two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

ここ最近では最もベストな内容での勝利(2016全豪1R)

フルマッチを見なかったときは冒頭にスコアリングを書かないルールにしてます。

コールシュライバー戦、第2セット途中まで見ました。

その先の内容についてはあまりわかりませんが、少なくとも私が見ていた部分までは完璧な内容だったと思います。

第1セット、第1ゲームは不安でいっぱいでした。

本当に勝てるのか。不安が募る中、いきなりエース級の1stサーブで切り裂いていった錦織。内容も納得のラブゲームキープでまず一安心です。

この日の錦織は「気合い」が違いました。

適当な推測は避ける私ですが、これは誰もが同意するのではないでしょうか。

ポイント間のガッツポーズ、リターンの構え、要所のポイントを取った時の声。

いずれもいい状態の時の錦織です。

そしてそれはプレーにも表れていました。

調子が悪いと言われてきた2015年後半はどことなくストロークに「伸び」がない感じがしていました。

一方いい時というのは相手が全力で追っても取れないようなウィナーが出てきます。

目の覚めるようなウィナーを高い精度で実施していた錦織につけ入る隙はありませんでした。コールシュライバーの視点から見れば、まさにどうしようもない敗戦だったと思います。

・意図の見えなかったコールシュライバーの戦術

第1ゲーム、第3ゲーム、第5ゲームと錦織は1stサーブを入れ、それがいいところに決まっていました。コールシュライバーはリターンミスや返球してもチャンスボールにしてしまう場面が多く、全くポイントが取れない状態が続きます。

一方コールシュライバーはサービスゲームに苦しみ、ラリーでなかなかポイントが取れません。何かを変えようと組み立てを変えたり、珍しくサーブ&ボレーを試みたりといろいろ工夫はしていたのですが、この日は生命線のバックハンドが決まらず、一球で流れを変えるショットを作ることができませんでした。

事前に私は錦織が調子の悪い状態で、消極的なバックのクロスラリーに持ち込んだ時に切り返しのバックDTLを打たれる形が増えるとコールシュライバーのペース、錦織の負けパターンだと考えていました。これは両陣営とも考えの一つにあったと思います。

ところがコールシュライバーがバックを決められないため、コールシュライバーは得点パターンを失います。

第1セットは錦織が押す中でオールキープで進んでいきます。

錦織はウィナーを量産していきました。なぜ量産できたか?

それはコールシュライバーが下がってプレーしてしまったからです。これは完全にミスでした。

と言っても一応意味はありました。コールシュライバーは通算タイトル6のうちクレーで4つ取っています。

芝巧者というイメージも強いですがドイツ国内のクレーは一級品です。毎年250の決勝クラスには上がってきます。

クレーコーターとまで断言するわけではないですが、少なくともハードよりはクレーという選手です。そういえば去年のマレーとの死闘2連戦もクレーでしたね。

なぜクレーで勝てるのか?これは武器のバックハンドです。

コールシュライバーはワウリンカ、ガスケらと並んで片手バックハンドでベースラインの遥か後ろからウィナーが取れる数少ない選手です。

普通は(最近は違うけど)クレーは後ろで打ち合うので、普通のラリースピードの遅いラリーからいきなりバックDTLを打たれてしまうと崩されます。

ところが速い展開で打つ錦織にとって下がってくれて、たまに出る一撃も精度を欠いているようでは危険な要素が見当たりません。

錦織はどんどんチャンスボールで前に出て、まるで練習でもしているかのように次々と効果的なショットを打ち、ポイントを重ねていきました。

コールシュライバーは自分のリズムで持久戦に持ち込もうとしたのでしょうが、早めに無理でも早打ちに切り替えるべきだったかと思います。第2セットではその攻めっ気を出したのでいい時間帯もあっただけに、もっと攻めの姿勢を見せた方がよかったと思います。

・好調のサーブ、IPTLから持続

年末に書いたんであまり見られてないと思いますが12/4にIPTLに行ってきた第一の感想が「サーブよくなった」ということでした。

特にセンターとワイドに分けていい打ち分けができていたというのが昨日の感想です。

センターには200km/h近いフラットサーブでエースを取れるだけでなく、特にデュースサイドのワイドのスライスサーブがよく効きました。コールシュライバーに的を絞らせず、サーブポイントを量産しました。

また嫌なカウントでのDFを避けただけでなく、0-30からエースで切り抜けるなど、ピンチの序盤で芽を摘み取るサービスポイントが大きかったです。

・コールシュライバーのメンタルを崩すことに成功

ツイッターには書いて反響があったのですが、コールシュライバーという選手を表すうえで2つ面白いデータがあるので紹介します。

①いわゆる「TSDレーティング」の要領で、1~10位、11~20位、21~30位、31~50位、51~100位、101位~の成績を並べると、コールシュライバーの2015年の成績は

0-8、1-6、3-1、3-4、18-4、7-0

となります。

特にトップ20以上には1勝14敗。この1勝は昨年3月デ杯1Rのシモン戦ですが、公式戦績には勝ちがついていますがデッドラバー扱いです。

今年の1月にはツォンガに敗れており現在対トップ20には14連敗中。一方下位選手には確実に勝っており、トップ20を境に成績が一変しています。

20~30位辺りのランキングの選手は、爆発こそ多いけど安定して成績が出せないキリオスやペールのようなタイプと、確実に下位には勝ち上位には負けるコールシュライバーやガルシア=ロペス(ベテランに多い)タイプの選手が混在しているように思います。

つまり普通にやれば錦織は負けない。そう思っていました。

そしてもう一つ興味深いデータがあります。

②4-6、4-6、4-6です。

これは去年のウィンブルドン1Rでジョコビッチと戦った時のコールシュライバーから見たスコアです。

こう見るとあまり違和感を感じませんが実はこの試合、すべてのセットで第10ゲームのコールシュライバーのサービスをジョコビッチがブレークして勝っています。4-5まではブレーク数は同じだったのです。

コールシュライバーのこの傾向はこの試合だけではなく、いくつかの試合に当てはまります。勝てそうだった2015ハレフェデラー戦でもあったように、メンタルを原因にしたくなるような終盤の崩れで負けた試合がありました。

戦術ミスにもつながるのですがコールシュライバーはトスで勝ったのにリターンを選択しました。

錦織がいつもリターンを選ぶことからリズムを崩す意図だったのでしょうが、結果的にこれが自分で自分の首を絞めます。

第10ゲーム、4-5の0-15からのフォア逆クロスのミスが象徴的でした。惜しいアウトではなく結構ひどいネット。コールシュライバーはまたしても崩れてしまいました。

錦織が0-30からセカンドサーブのリターンをミスして雲行きが怪しくなりますが、今回は30-40から1本目のBPで一発で決め、効率よく1stセットを錦織が先取しました。

・流れを与えなかったBPなし

1stセットを取った後、コールシュライバーはやや攻めの割合を増やしてきました。

第1セットで実はコールシュライバーは1stサーブを83%も決めていたのに全くいいところなく落としてしまい、とにかく変化が必要。第1ゲームはいきなり攻めが決まり0-30とチャンスを作ります。

しかしここで錦織はサービスを安定して打ち込み、BPを与えずにこのゲームを乗り切ります。

この後も錦織は普段だと劇場と言われるような場面を一切作りませんでした。

理由はいろいろあるでしょうが、高い集中を最後まで意識していたこと。大きくリードしても闘志が消えることがなかったですよね?こうされるとトップ選手相手です。コールシュライバーはきつかったでしょう。手を緩めることのない攻撃を受け続けるしか道は残っていませんでした。

他にも絶賛すべきところは多いですが、30位台相手、片手バック、全米と同じ初日の序盤の試合で全体初シードダウンの危機あり、GS3回戦相当、タイブレークなし、BP与えず、これ以上の注文を付けるのが難しいくらいの快勝でした。

このプレーができれば、正直4回戦までは100%行きます。QFへ行く確率も、50%は越えました。

ツォンガはバグダディスをしっかり退けており警戒は解きません。しかし初戦という大きな山を越えたことで乗っていけるのではないでしょうか。

そしてこれは仮説です。まだ相当確率の薄い仮説ですが、

錦織圭は、2015年のドサ周り修行を終え、いよいよGSMS集中のスタイルに移行が完了したのでは?

ということです。

これは2015年の前半戦ごろからドサ周り修行仮説を唱えていた私にとって、面白いように納得できる仮説なのですが、テニスファンのほとんどがこの点を指摘していません。結構多くの人が望んでいた姿だったのですが…

2015年の成績→必死にどの大会も戦って、耐久力を身につけかつ下位には負けない

ということが分かりました。この力を正しく使う時が今なのでは?ということです。

7戦戦った全米は嘘ではありません。もしブリスベンを「流して」、この全豪に最高の状態で入っていけているとすれば…?

まだ1試合です、この仮説は全豪、メンフィス、3月MSまで行かないとわかりません。調子が良くても相手がよければ負けることはままありますから。

それが今回だと思います。このプレーが維持できてもジョコビッチには勝てないかもしれない。だけどそれが12回もあれば?おそらく4000pは稼いでくるのではないでしょうか。

本来、GSMSで勝った方が同じ勝敗数だとしても効率がいいのです。

さあ少し期待を上方修正した1回戦でしたが、明日には負けるかもしれません。一戦必勝の覚悟で。

明日の対戦はクライチェク。昨年のメンフィスで当たっています。その時は逆転勝ちとハラハラする試合でした。

1回戦の相手は予選上がりのウーで、ちょっと参考にならない感じです。スコアは大差なので調子はよさそうですが。

ストロークがいいかどうかが試合がどうなるかの分かれ目です。平均的にはコールシュライバーより劣るはずなので、ストローク戦で問題がなければ悪くともタイブレークでは取れるはず。

とにかく省エネで。サービスゲームさえ落とさなければ今回のコールシュライバー戦が2時間切ったように結果的に省エネになります。

昨日の錦織が何割くらいの力でプレーしていたかはわかりませんが、時間短縮のためにはとにかく6-4ペース、ほころびを作らないということに気づいてもらえると1週目を楽に戦えるのでは。1つ1つ、しかしあと6つです。