リターンの鬼!難敵挑戦を退けて決勝へ!(2016マイアミSF)
4/1 現地19:00~(日本時間翌日8:00~)
Masters1000 Miami Miami Open presented by Itau
SF
[6]Kei Nishikori 6-3 7-5 [24]Nick Kyrgios
今週は勝負の週だ。
この意識はマレー敗退のあたりから皆さん持っていたと思います。
年明けにまだ全豪8強になる前の話、私がツイッターにて「すべての主要大会で8強に入っているだけで2880p入り、そこから4強ひとつで2倍になるので3000pは取れる、いかに主要大会が大事か」というコメントを出しました。
主要大会で勝つことを大事に、しかも継続的に。
これを個人的な2016年錦織圭の観戦テーマにしています。
当時返信を頂いたときに「すべての大会で8強なんて不可能だ」というコメントを頂きました。
私も期待はしていますが、期待していません。難敵に当たれば1回くらいやらかしてしまうことも当然あり得ます。
ただここでポイントになってくるのはATPのポイントシステム。1回4強に入るだけで2回8強に入ったのと同じポイントが入ります。
2014年の錦織圭がなぜすごかったか?複数の欠場をカバーできるほど1大会で貯金しまくったからです。
そして今日の勝利で純増240p。メンフィスを勝ったのと同等のポイントを1日で手にしました。
マッチポイント5本をしのいでから420pの獲得。それに値する活躍です。
この勝利でしばらくは8強ペースを上回ります。なんとローマまでの貯金を確保しました。あるいは全仏かウィンブルドンの8強相当をカバーしました。
いかに大きい勝利だったか言うまでもないですが、モンフィス戦を含め、ここまでの4試合があったから今日があります。
キリオスはQFでラオニッチを退けました。
ラオニッチはすでにプレーレベルが全豪のそれから数段落ち、サーブとフォアクロスだけでなんとかしているという状態まで落ち込んでいました。
一方のキリオスはストロークにキレがあり、独特のフォームからの回転偏重ながらも威力のあるフォアハンドが決まります。
総合的に差をつけ、要所では1stサーブを沈めたキリオスが内容で上回ってSFに来ました。
若手世代の停滞はここ数年のATPツアーの問題でしたが、キリオスはあらゆる面で規格外です。
すでにナダル、フェデラーを不得意サーフェスとはいえ倒し、GS8強に2回。さらに今回のマスターズ4強。ツアー優勝も果たし次々と何年ぶりというクラスの記録を作っています。
警戒すべきはキリオスのフォアハンド。自由に打たせるとノーチャンスでウィナーが決まり続けます。
またマレー戦から通算して10試合目。デ杯ウィークから4週間近くでタイトな11試合をこなしています。
モンフィス戦では顔面が紅潮し、酷暑環境の中苦しいテニスで体力を削られました。
いつ力尽きてもおかしくないという状況で、勝率は半分もないのではと思っていました。
ブックメーカーのオッズもほぼ五分。途中でキリオスの倍率が軒並み下がったことから、実際にはキリオスを支持していた人は半分を超えていたと思います。
試合はキリオスのサービスゲームでの圧倒からスタートしました。
ラオニッチ戦でも1stサーブから主導権を取っていたキリオスはこの日も勢いがあり、いつもビッグサーバー相手には1セットの前半をリターンのアジャストに使う錦織。今回も苦しい立ち上がりか…と思いました。
しかしサービスゲームで一転します。
得意のストロークで錦織は攻めます。そして今日はその精度がよかった。
キリオスも身体能力でカバーしますが、バックハンドに決め手がなく、ラリーで劣勢になると戻し切ることが難しくなりストローク戦で完全に錦織が主導権を取ります。
そして第3ゲーム。なんと1stサーブを次々とリターンし、強力なフォアハンドをすべてディフェンスしきった錦織が0-40の大チャンス。
ここからキリオスが2本エースとオンラインのウィナーでしのぐものの、やはりカウントが悪かった。3本目で初のセカンドサーブとなったところでDF。させたDFだったかは微妙ですが、キリオスはインタビューなどで錦織のリターンを高く評価しており、プレッシャーは感じていたと思います。
第9ゲームではリターンをすべて返し、先行するとキリオスがDF。このセット2回目のBPのカウントでDFでブレークとなり、錦織が6-3と充実した内容でセットを取ります。
第1セットはサービスゲームで嫌なポイントもあったものの、第3ゲーム以降の信じられないリターン力でキリオスの1stサーブを無効化。ラリーに持ち込みロングラリーではほぼすべてのポイントをものにして取りました。
錦織のストロークは非常によかったですがそれ以上に戦略も見えていました。錦織はキリオスのバックハンドにやや集める形に。しかしフォアにも早いタイミングで配球して仕掛け、的を絞らせずキリオスに満足にフォアを打たせませんでした。その結果、キリオスはリスクを負ってギャンブル強打を打ちますが大半はミスか錦織が拾い、ポイント獲得の活路を見いだせません。
キリオスもなんとかしようと強打だけでなくセカンドリターンで強襲などを試みますが、キリオスはマレーではないので精度を欠きなかなか決まりません。この地点から決まっていたとしても脅威ではなかったでしょう。
第2セットに入っても勢いは変わらず、リターンを返しストローク戦に持っていく錦織が主導権を握りまたしても0-40からの3本目でブレーク。
特にこのBPは圧巻でした。
キリオスなのか錦織なのか先に仕掛けたのはわかりませんが、ここでラリーが一気にスローペースになりました。
しかし最後はバックハンドに釘づけにしてからフォアクロスに気持ちいいウィナー。ペース変化にも対応しリードを取ります。
第3ゲームは不運でした。珍しくラリーミスで2本連続で落とし30-30。次のポイントで形を作ったアプローチを打ちましたがキリオスのパッシングが決まります。
BPでは本人もアウトと思ったかバックハンドのDTLでしのぎなんとかアドバンテージまで持っていくも、その次のポイントはキリオスが再び難しい位置からパッシングを決め、デュース合戦の末大外からのキリオスのフォアウィナーとDFで初めてサービスゲームを落とします。
このゲームはキリオスのいいポイントも多く仕方ない面もありました。
しかし1stの入りが悪くなり、セカンドアタックが来ているとはいえDFで落としてしまったのは手痛く、スコア以上に押し戻された格好になりました。
ただ、ここで錦織を救ったのは第1セット第9ゲームです。
一見するとよく分からないようですが、このゲームをブレークしたことで錦織は第2セットサービスゲームからスタート。錦織はQMKパターン(5-4、6-5からブレークしてセット、試合を取ること)が非常に多い選手なので、先にサーブを打てることでプレッシャーも減りました。
その後はキリオスが息を吹き返します。第4ゲームでもつれさせず一旦デュースに持ち込み、キリオスのまた抜き失敗もあって流れは一気に渡しませんでしたが、その後はキリオスが100%ではなく80~90%の1stサーブを高確率で沈め、錦織はリターンゲームでノーチャンスが続き、苦しい展開となります。
そして錦織は1stが入らなくなります。非常に苦しい。我慢の時間帯でした。
しかしストロークは健在。キリオスも変化をつけようと様々な試みをしますが突破には至らず。第12ゲームに入ります。
このゲームに入ってキリオスはセカンドサーブが増えます。
プレッシャーを感じていたでしょう。そしてその結果このゲームを落とすことにつながります。
30-15からセカンドサーブ。返すだけのリターンとなった錦織に対しキリオスがサーブ&ボレー。体勢もそこそこよかったです。
しかしこれをふかしてしまいます。
本人としては相当悔しかったでしょう。このミスで空気が一変。QMKパターンでの勝利が見えてきます。
そしてデュースからDF。まさに急にマッチポイントが来ます。
1度目のマッチポイントでは、セカンドサーブをスピード重視で打ったキリオスに対してなんとか錦織もリターン。しかし浅くなったボールを打ち込まれ押されて錦織がミス。最初のマッチポイントをしのぎます。
ここはキリオスがうまかった。どうしようもないポイントでした。
しかし次のポイント。錦織形を作って振り回し、逆クロスにフォアウィナーを決める体勢から逆にストレートに決め、キリオス動けず。
2度目のマッチポイントはすごかった。今年のベストポイントと言っていいでしょう。
遅いテンポのラリーで支配し、バックに釘づけ。
ネットインで一気に展開は動き、最後は難しいボールをオープンスペースにボレー。会場の観客が立ち上がってガッツポーズするほどのハイレベルなラリーを制し決勝進出を決めました。
本物です。5本のMPをしのぐ2時間半の激闘から一夜、対して相手はストレート勝ちを続けてきた強敵で失うものはない。
しかし終わってみればキリオスの持ち味を完全に打消し、その一方で自由自在なショットメークでウィナーを量産しました。
試合後のウィナーが19に対してUEは12。完全に勝ちスタッツです。
キリオスが悪いわけではなかった中、テニスで完璧に上回っての勝利でした。
タイトな試合でしたが体に今のところ不安も見られずに勝ちきりました。
やはり、今年は何かが違います。
今日の勝利に関するデータです。
・マイアミでは3年連続8強以上(マスターズではマドリードに続いて2例目)
・マスターズの決勝進出は2回目、ハードでは初
・現役選手でハードとクレーの両方マスターズ決勝進出を果たしたのは、BIG4とベルディヒ、フェレールに続いて7人目(ツォンガ、ワウリンカなどは未達成)
・レースランキング暫定4位浮上(来週確定)、明後日勝てばマレー、ラオニッチを抜き2位に
・BIG4との対戦はすでに今年4回目に、主要大会ではすべて達成
・下部大会でもすべて安定しIWまで対トップ10以外無敗だった2015年のレースポイントを上回る
とにかく記録づくめ。あの全米以来の主要大会決勝進出。幾度となくSFでBIG4の壁に苦しみました(14パリ、ファイナル、15マドリード、15カナダ)
決勝までBIG4、一桁シードと当たらなかったのはラッキーですが、荒れた大会を勝ちきるのもまた実力。シード選手はドルゴポロフ、バウティスタ=アグー(表記変えました)、モンフィス、キリオス、特に上限の高い3R、QF~SFの3人の挑戦を退けました。簡単な勝利ではなかったでしょう。
正直決勝はボーナスステージです。というかQFあたりから今大会はボーナスステージなんですが、ジョコビッチに勝つというのは簡単なことではありません。
今週は比較的つけ入る隙があると思いますが、それでも好調ティエム、ベルディヒ、ゴフィン相手にセットすら落としませんでした。
ジョコビッチ相手にどうすればいいのか?それは次の記事に回します。
モンフィス戦の激闘も含めて次の記事でマイアミをざっと振り返りたいと思います。