ATPランキング試算(2016全仏OP後)③3回戦終了時
こんにちは。
全仏OPは3回戦が終わり2週目に突入です。
3回戦を振り返りましょう。
まずは錦織×ベルダスコ、すごい試合でした。正直錦織の逆転負けを覚悟する展開でした。
1セット目はベルダスコのミスも目立ち、錦織があっさりと先取します。
ただ錦織にも微妙なミスは目立ち、ベルダスコの状態が上がってくれば危険、そういう認識はありました。
試合の序盤からウィナーとUEを合計した数、これを私は「ポイント自己決定率」と呼んでいますが、これがベルダスコのほうが高かった、つまりウィナーを取るにしてもミスするにしても主導権自体はベルダスコ。つまりそれがウィナーに変われば、結果は一気に変わる。そう感じていました。
2セット目中盤から一気に流れが変わります。リターンゲームでベルダスコの内容がよくなります。
リターンが特段よかったというわけではなくプレースメントがよかっただけですが、それでもラリーに持ち込めばベルダスコのペース。普段錦織がサーブの強い選手に対して行うことをベルダスコは見事に実現しました。
しかし錦織もベルダスコの1stサーブの確率がそこまでよくなかったこともあり、勝負どころでポイントを取ることができました。結果は錦織の6-4。内容的にはベルダスコの6-4で何もおかしくなかったところを取り切りました。
結果的にはこの第2セットが勝因と言っていいと思います。
3セット目からはベルダスコの猛攻が続きます。
全豪でナダルをフルセットで倒した力は健在。なぜ50位台にいるのか不思議でなりませんが、プレーの当たり外れの大きい選手なのでこういうことはままあります。
かつて全豪SFでナダルと死闘を繰り広げたこともある選手。一度上を見ている選手はやはりプレーの上限が高い。これに尽きます。
4セット目をブレークで落とし、ファイナルセットはベルダスコからのサーブとなりました。
全仏OPにはファイナルセットタイブレークがなく、2ゲーム離すまで試合は終わりません。
先サーブでプレッシャーをかけられなくなったことでこの試合の敗戦はぐっと現実的なものとなりました。
ただファイナルセットはやはり錦織でした。ファイナルセット中盤からベルダスコの守備範囲がやや落ち、チャンスを見逃しませんでした。
3ゲーム目ではほとんどのラリーポイントを取れていたにもかかわらずリターンミス5本でキープされます。
それを5ゲーム目では修正しました。下がってのリターンを試みます。これがはまってリターン返球からラリーでポイントを重ね、取ることができました。
最後も度重なる反撃にあい、ストロークミスでヒヤリとする場面もありましたが、簡単なショートポイントを作ることができたのがファイナルセットオールキープをもたらしました。6-4で締めて終了。なんとか4回戦に駒を進めました。
なぜベルダスコの猛攻にあってしまったのか?ということですが、いろいろ理由があると思います。
・ベルダスコのフォアがすごかった、仕方ない
・試合中盤錦織のリターンミスが目立った
・ドロップショットを多用された
・錦織が消極的なプレーだった
というあたりだと思います。
2セット目あたりから、錦織は下がってプレーをしました。
ほとんどのケースの場合、下がって後ろからスピンをかけた重みのある打球を配球してポイントを取ることができるようになった最近の錦織。アグレッシブに攻めなくても取れるので、ベルダスコのミスが先に来ればそれでOK。こういった考えだったのだと思います。
実際錦織が下がっても攻撃で錦織を脅かすことができる選手はそういません。
そして下がってしまったことで次のことが起きました。
・前がオープンスペースに
・ベルダスコに十分な体勢で打たせる時間を与えてしまい、フォアの連打を許した
こういったことがドロップショット多用の理由になりました。
あとベルダスコが走って打つことがほとんどなくなってしまいました。
試合中盤の錦織はストレートに展開することがほとんどなく、クロス偏重のプレー、そうです、2015年後半戦のようなプレーになってしまいました。
コースが読まれることもあり、ますますベルダスコは打ち放題。悪循環に陥っていました。
2セット目が取れていなかったら押し切られて敗戦は十分にあり得ました。
今年はレース3位のナダルに勝っていますし、13年には悲願のウィンブルドン初優勝を達成したマレーをその年で一番追い詰めました。乗った時のプレーは今でもトップに通用するものを持っています。
しかし勝ち切った錦織はこれで2月アカプルコ前に示したあの目標、「save 2000」プロジェクトを達成しました!!
アカプルコ 45(300)デ杯 0(80)IW 180(90)マイアミ 600(180)バルセロナ 300(500)マドリード 360(360)ローマ 360(180)全仏 180(360)2025(1970+デ杯80)save 2000 達成— twosetdown (@twosetdown) 2016年5月28日
かっこは昨年の成績です。
正直達成できると思ってませんでした。転機となったのは再三言っていますがデ杯マレー戦です。
あれ以降大きな取りこぼしは一度もありません。2月末のクエリー以降トップ10、BIG4以外への負けなし。22連勝中です。
そしてこの話題にも触れないといけません。ナダル、初の全仏大会途中棄権です。
マドリードから不安のあった左手首のけがが悪化し、今後数試合以内に壊れてしまうと医師から診断されるほどの重症のようです。
全仏でなければ大会前から欠場していたというナダル。ナダルもけがには繊細な選手。そのナダルが危険性を分かっていながら押して出場した2試合。ぐっと来るものがあります。
ナダルの通算成績は72勝2敗。1大会の、それもGSとしては歴代最高の記録の物語は、来年に続いていきます。
今年のプレーを見る限り、「Dreamin10」はきっと来年以降、やってくれると、そう信じたいです。
ナダルの今後ですが、芝1週目のシュツットガルトに出場予定でしたがおそらくキャンセルでしょう。まずはウィンブルドンに間に合うか、ではないでしょうか。
今シーズンは3月以降その調子を取り戻していただけに、一刻も早い復帰が待たれます。
大会は、フェデラーとナダル、2005年から2010年までを引っ張ってきた2人の偉大なスターがコートにいません。
BIG4なきあとの未来を少しだけ覗いているのかもしれません。
そのほかの3回戦の結果です。
マレーは連続フルセットから一転しカルロビッチにストレート勝ち。初優勝に向けそろそろ勢いをつけていきたいところです。
ワウリンカもシャルディーを危なげなく退けました。
ラオニッチは心配。相手のマーティンは3回戦にしては与しやすくストレート勝ちですが、3セット目にはMTOを受けました。ずっと全豪以降気にしている股関節の痛みのようです。
ズベレフとティエムの若手対決ですが、ここは「Young Guns」のティエムに軍配。
ティエムは疲れ知らずで、ズベレフが1セット目を取った以降少しプレーが落ち込んだのに対してティエムは最後まで行きました。この二人、前週で決勝に行っている同じ条件です。
ナダルが不在となった第2クォーターにさらに激震が走ったのは昨日。ツォンガが5-2と1セット目をリードしながらけがのため途中棄権。
Jo-Wilfried #Tsonga has retired! He was up 5-2 on #Gulbis, threw in the towel & is leaving the court in tears. pic.twitter.com/hpaZl2RQ7r— Live Tennis (@livetennis) 2016年5月28日
この結果、グルビスが16強。2年前の躍進の再現なるか。ランキングもかなり戻してきました。「Young Guns」筆頭格の一人だった男です。もう一度活躍してほしいところです。
キリオスとガスケの注目のカードはキリオスが肩のけがにより精彩を欠き、ガスケがストレート勝ちです。
王者ジョコビッチは昨日の最終試合となり、雨中断などで試合進行が押していた結果日没サスペンデッドの可能性が出ましたが、ベデネにストレート勝ち。昨年のように順延でリズムを崩されることは絶対に避けたい場面でしたが、今回は切り抜けました。
試算です。
ナダル、ツォンガの敗退によって大きく動きがありました。
エントリーランキングからです。
ランキング試算は今年初めてなので初めての人向けに。
ベスト16以降のカードは、対戦相手同士を同じ色にするようにしています。
あと似た色の系統は近いブロックにいることを示しています。トップ赤→紫ボトム、です。
表にいない勝ち残り選手は、ラモス=ビノラス、グルビス、グラノジェルスの3人です。
4強まで彼らのトップ30入りはありません。
2回戦進出となったプイユが初のトップ30入りを決めそうです。
トップ10の整理です。
・1~3位は確定しました。
・4位ナダルはワウリンカの決勝進出か錦織の優勝があれば5位です。
・5位ワウリンカは決勝進出で自力4位、錦織に抜かれるのを止めるための自力条件も決勝進出です。
・6位錦織はワウリンカがおととい勝ったため、5位浮上の条件は4強進出に変わりました。決勝進出で5位確定、優勝で4位確定です。
・7位以下の争いです。
ラオニッチは近い差で7位ですが、次勝つとベルディヒ、ガスケ、ゴフィンの条件が4強、ティエム、フェレールの条件が決勝進出となり、7位濃厚となってきます。
計算しましたが、自身が次戦敗退、ベルディヒ8強、ティエムorゴフィン4強、アグー準優勝、ガスケ8強、トロイツキ優勝のパターンで12位まであるようです…
なので今週のトップ10が確定しているのは錦織までの6人です。
優勝の場合最高5位です。
ラオニッチ…5~12位
8位ベルディヒはだいたい似たような条件で(そうしないと説明が大変なことになる)5~12位まであります。
9位ガスケはツォンガと同ポイントですが、規定によりガスケが上となります。次戦勝つと暫定でベルディヒを超えます。ラオニッチを超えるには4強が必要です。
ガスケのトップ10復帰の条件は結構厳しいです。
次戦の錦織に勝てば問題はありませんが、負けてしまった場合、ゴフィン、ティエム、フェレールはすべて次戦の勝利で抜かれます。
対戦カードから察するに、トップ10復帰は難しくなります。
全仏が終わるとウィンブルドン4強の失効が迫っており、ツォンガ同様厳しい戦いとなります。5~14位まであります。
10位ツォンガは自身の加点ができないため、ガスケの条件で説明したとおりゴフィン、ティエム、フェレールの次戦勝利で抜かれます。
1つも起こらないというのは確率としては低く、ツォンガは上海決勝進出以降守ってきたトップ10の座を半年ぶりに明け渡すことが濃厚です。10~15位まであります。
11位ゴフィンはキャリアハイ13位。自己最高位の更新が見えてきました。
次戦勝利すると最低でもツォンガを抜き10位。と、なりますが…
ティエムとQFで直接対決をして敗れた場合抜かれます。
ですので、次戦勝ってもトップ10入り確定ではありません。
計算しましたが、4強に入るとトップ10入り確定のようです。
6~15位まであります。
12位チリッチはグルビス優勝←!!、イズナーorトロイツキ準優勝、アグー4強、ティエム8強、ベルディヒ8強の時17位まであります。グルビス優勝のパターンがあるなんて…自分でも考えててびっくりしました…
13位ティエムはまず次戦勝利がほしい。次戦勝利でチリッチ、ツォンガを抜くことができます。4強でトップ10入り確定のようです。6~17位まであります。たぶん…
14位フェレールも次戦勝利がほしい。次戦勝利でチリッチ、ツォンガを抜くことができます。6~18位まであります。グルビス優勝のパターンです…
グルビスとグラノジェルスとラモス=ビノラスが優勝すると10位付近まで上がってくるので、計算が大変でした…間違ってるかもしれませんがごめんなさい。次戦勝利の条件だけは再チェックしたので勘弁してください。
レースランキングです。
ツォンガは今回の敗退でファイナル行きは苦しくなってきました。
フェレールは何とか踏ん張っています。次戦勝利なら希望が残りそうです。
一方8位のボーダーは上がりそう。ティエムかゴフィンに720p入ることが濃厚となり、どちらに入っても大きく動きそうです。
今日から4回戦8試合です。
錦織×ガスケ戦ですが、雨上りのコートでボールが重くなり跳ねにくくなり、ここ2回の対戦で見せたフォア逆クロスのスピンボールでガスケのバックハンドを封じるという展開が通用するかどうか心配です。
基本的には前回と同じ作戦でいいと思いますが、まずいと感じた場合ベルダスコ戦のように引くのではなく、ストレートに展開するボールを増やしてほしいところです。いたずらな単調なバッククロスの打ち合いは先にガスケにバックDTLを打たれ、6連敗した時と同じパターンにつかまります。
ガスケは全仏ベスト8が一度もなく、地の利はあまり生かせていない印象です。
またキリオスに勝つまで今期上位選手には勝っていなかったガスケ。必要以上に警戒はする必要はないと思いますが、しかし警戒する必要はあります(文脈で理解してください)。
もう一つ心配なのは天候。果たして今日試合は行われるのか。そこも含めて、ただならぬ空気が充満する今大会の2週目がいよいよ幕を開けます。