two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

気がつけば、自己最高成績まで来ていた(2016ウィンブルドン1R~3R)

6/27 現地15:30~(日本時間23:30~)

Grand Slam 2000 The Championships Wimbledon

1R

[5]Kei Nishikori 6-4 6-3 7-5 Sam Groth

6/30 現地13:00~(日本時間21:00~)

Grand Slam 2000 The Championships Wimbledon

2R

[5]Kei Nishikori 4-6 6-4 6-4 6-2 Julien Benneteau

7/2 現地11:00~(日本時間19:00~)

Grand Slam 2000 The Championships Wimbledon

3R

[5]Kei Nishikori 7-5 6-4 7-5 Andrey Kuznetsov

今大会の錦織はきついなー、と1回戦が始まって30分ほど経った時に思いました。

サーブの球速が180km/hくらいしか出ていないことがその理由でした。全力で打っていなかったのです。

さらに、ストロークも手打ちに近く腰の回転を使わない打ち方で、ハレで故障した箇所が治っていないと思いました。

錦織圭が、大会の最初から大きめのけがを抱え、そこから大会を勝ち上がっていった中で完治した事例はありません。

つまりこの大会はどこまで行くかはわからないにしてもけがと付き合ってプレーしないといけない。そのことは織り込み済みとなりました。

ただ一方で、昨年のワシントンで序盤MTOを取りながら優勝して、カナダSFまで体が持ったり、今年のローマでは疲労?の影響かトロイツキ戦で精彩を欠きまくったところから気がつけば準決勝でジョコビッチに肉薄(しかもこの間MTOなし)。

今回の芝での故障によってやや揺らいでいますが、少しずつ、フィジカルが向上しているのでは?と私は考えています。

さらに付け加えると、単発の棄権こそあれど、あのカナダ以降主要大会欠場なしで、棄権した次の大会でも勝ち上がっており(15WTF、今回)、現在のATPツアーで生きていくうえで最もマイナス要素になる長期離脱を1年間避けています。

だからこそ、今大会の錦織はどんなプレーをして、自分の体にどんな判断を下すのか?楽しみでもありました。

そして今のところ、どうやら錦織陣営の出した結論はベストになりそうです。すでに今日の地点で自己最高のベスト16。あれだけ期待された全仏と同成績まで来ました。不思議なものです。

1回戦のグロス戦はビッグサーバーということでトリッキーとも取れるカードでしたが、タイブレークでよほどリターンできないか、自サーブをブレークされまくるような展開になるかされないと負けないとは思っていました。

ただサービスのスピードが遅く、これはきついと思いました。

結果的には2度ブレークされましたが、要所でネットプレーに出たことが効果的でした。グロスにパッシングやロブで抜かれることがほとんどなかったため、重要な場面で正しくプレッシャーをかけれたことが大きかったです。

芝コートではうまくリターンを「合わせる」ことが上位進出のカギです。

グロスの1stサーブは癖なくまっすぐきれいに飛んでくる印象があり、コースも隅ばかり狙ってくる選手ではないので、このあたりの感覚もうまく調整してリターンエースを取れました。

2回戦のベネトー戦は苦しみました。第1セットは第10ゲーム、40-30からミス3本であっさりとセットを落とします。

1ゲーム目にいきなり0-30と錦織がブレークチャンスを握りかけて取れなかったところから五分の攻防に。試合はセットを落としたことでベネトーに傾きます。

序盤はベネトーがアグレッシブでした。打ち合いを好まず、芝コートの組み立てをベテランらしく忠実にやってきたという印象です。

一回オープンコートを作ってしまえば、攻守の逆転が起きにくいのが芝。ミスはいけませんが、先に仕掛けていく勇気も必要で、序盤はベネトーのほうがそのクオリティが高かったです。

ずるずると行ってしまえば敗戦もあり得た中、転機となったのは第7ゲーム。リターンゲームで15-40を作り、一旦はBPをしのがれるものの再度迎えたBPではバックハンドのDTLがウィナー。決めに行ったボールではなかったですが、追い込み、ウィナーになるには十分なボールでした。

ここで吹っ切れたのか、錦織も漫然とクロスラリーをする展開から打つ展開にシフトしていきました。さらに34歳で復帰中のベネトーには体力面もきつかったのか、錦織がプレーレベルを上げ、ベネトーがプレーレベルを下げていき、時間が経つごとに徐々に流れは錦織に傾いていきそのまま錦織が勝ちました。

3回戦のクズネツォフ戦は個人的にはドロー発表後よりも警戒度が増しました。

先週準優勝のクエバス、さらにミュラーを破っての3回戦。プロツアーでの芝成績は良くないですがジュニア時代にはジュニアウィンブルドンシングルスで優勝。

プレースタイルもフラットの強打を小気味よく打っていくタイプなので、芝には合っている方だと思います。

試合は不思議な内容になりました。

この日も腰を気にしてか、錦織の攻撃はおそらくわざと鳴りを潜めさせ、クズネツォフが強打をして展開が動く内容となりました。

ただ漫然と打たれるのではなく、錦織は特にバックハンドでスライスを多用。これが効いたのでは?と思います。

強打をしたいクズネツォフは高い打点から打ちたいところですが、スライスが滑ることで低い打点からしか打てず、フラット系のショットを得意とするクズネツォフは高さの軌道のコントロールに苦しんだ印象です。

試合終了後のスタッツを見てびっくりしましたが、錦織とクズネツォフのウィナーは23と25でほぼ変わりませんが、UEは14と37。総ポイントの差は18となり、実質このUEの差が勝敗を分けた形になります。

打ち合って攻めて勝たずとも、体が悪いなりにうまくプレーを選択して勝った、そんな印象があります。

これで錦織は14年に並ぶ2度目のウィンブルドン4回戦進出、ベスト16です。

今大会は上位選手にも早期敗退が目立ち、主要大会では久しぶりに荒れている感覚です。14年全米以来と表現してもいいかもしれません。あの時は1、2シードが準決勝まで行ってるしもっと遡る必要があるかもしれません。

ただ、とにかく一戦必勝なのは変わりません。

依然としてけがが治ったわけでもないですし、目の前のシード選手が倒れたわけでもありません。

ミドルサンデーで3回戦が無事消化されたと想定して、月曜日の4回戦の対戦相手はチリッチに決まりました。

ボトムハーフの方が消化が遅れているので、1番コートか2番コートの男子の最初の試合かな?と予想しています。センターはフェデラーとマレーと女子の試合だと思います。

チリッチはプレビュー通り芝にフィットしたテニスでここまで失セット1。タイブレークを1つ落としただけで、芝巧者のスタコフスキーにも勝ってきています。

正直、4Rの中ではキリオスorロペスとマレー、ラオニッチ×ゴフィンのカードと並び、タフなカードとなります。

私も勝率は錦織から見てギリギリ5割ないくらいかなと思っています。

それほどに、チリッチを評価しています。

プレビューでも解説した通り、チリッチは錦織からGSで2回勝利しており、錦織にGSで2度土をつけた選手は、ジョコビッチナダル、デルポトロとチリッチです。

特にハードヒットするフラット系のショットは芝では活きます。さらにいいサーブも持っています。

また、コートコンディションによってはチリッチの伝家の宝刀、セカンドサーブのキックサーブも火を噴くかもしれません。

本来芝コートだと滑ってこの手のボールは意味がなくなることが多いのですが、グロス戦で結構グロスのキックサーブに手を焼いたところを見ると、芝コートによるファクターは弱いのでは?と見ています。

ストロークもサーブもよい選手にあたるのは今大会初です。どちらかが備わっている選手とは当たりましたが、ここまでの3試合と比較すると遥かにブレークするのは困難になるでしょう。

ラリーに持ち込んだら全部のポイントを取るくらいに意識しないといけませんが、トップ10クラスのチリッチがそう簡単に主導権を渡してくれることはないと思います。

さらに錦織の脇腹の状態も気がかり。ベストなプレーができるのかは未知数です。今日は絶対に試合がないので、これまでと違って調整に当てやすいのが救いか。

ここまでも不安だらけでしたが、何とか失セット1に抑えてきました。ブレークを結構許しているのが気がかりですが、試合にしっかり出るのであれば、応援するのみです。

ただ、カナダMSまでの期間が今年は短く、4週間から2週間に縮まりました。

夏シリーズは9月前半までに主要大会が五輪含め4つあります。今日はきつい、と思ったら先を見越した戦略的撤退も仕方ないと思っています。

すでに今大会は180pを獲得しているのですから、ランキングはそんなに気にする必要はないです。ランキングの状況はこのあと別記事で。

この3勝、そしてこのあとの2週目の活躍が、1年以内に何かのランキングに到達したときに活きてくる、あの時頑張っていてよかった、そんな勝利であってほしいと思います。