錦織史上、ファイナルで最も内容のいい快勝(2016ファイナルRR1戦目)
11/14 現地14:00~(日本時間23:00~)
Barclays ATP World Tour Finals
Round Robin Group McEnroe Game1
[5]Kei Nishikori 6-2 6-3 [3]Stan Wawrinka
オンコートインタビューでの錦織の言葉がこの試合のすべてを表していました。
「スタンに時間を与えなかった、ソリッドなテニスを心掛けた」
まさに、狙い通りの作戦がそのままずばりはまっての快勝。これは大きい勝利になりました。
ではなぜ錦織はワウリンカに対し「時間を与えない」ことを心掛けたのか?それはO2アリーナであり、ワウリンカ対策として有効な戦略だったからです。
ワウリンカはなぜテニスの試合に勝てるのか?という原始的な問いを考えた時に、私は即答で「ためて後ろから打つ、それが世界トップクラス」と答えます。
ワウリンカは代名詞のシングルバックハンドに加え、フォアハンドにも威力があります。
しかしそれはしっかりと打点に入り、十分な体勢で貯めを作って打つことで初めて現れます。
錦織が時間を与えないと表現したのはそこで、要するに打たせなければいい。そのためにはどうするか。自分がボールを前で捉え、ワウリンカに考える時間と足を止める時間を与えない。
それはまさに、2年前の覚醒期のテニスでした。
そしてそれをO2アリーナに2年ぶりに錦織は持ってきました。
もう一つワウリンカ対策としてキーになるのはバックハンドです。貯めて打たれなくても単発で威力のあるボールは打てます。
ここで影響したのが、今回のO2アリーナのサーフェスでした。
2015年のベルディヒ戦で書いているように、元来O2アリーナは低速かつあまりバウンドしないサーフェスでした。
この時スライスショットの重要性を解説しています。
実はジョコビッチ戦の地点で私は気づいていました。
錦織がスライスでイーブンのラリーに戻していたのは何もベルディヒ戦が最初ではありません。
パリでは見えなかった(ほとんど見れてないが)O2アリーナに対応したテニスが機能したのです。
(中略)
ボレー、アプローチが甘すぎでした。O2アリーナは減速しやすいサーフェスなので、叩き付けるなら思いっきり打たないと返されてしまいます。
あれで錦織のほうが歯車がおかしくなった感じでした。
しかしどうでしょう、今日のラリーはとても速く、またお互いに前で打ちあい激しい内容でした。
全く同じ会場とは思えない内容でした。
そしてそれは昨日から続いていました。
ジョコビッチ×ティエム戦を見ていた当時の実況です。
コートかなり速く感じるバブは打点に入りづらくなるから不利と見るラオもサーブ返された場合不利(ただしサーブは有利)— twosetdown (@twosetdown) 2016年11月13日
バブ戦の見立ては昨日の試合を見てだいぶ変わった。従来のO2で効いていた戦法はあまり意味がなさそう。早め跳ねるサーフェスというあまり慣れてない環境に対し効果的な戦法がカギになる。— twosetdown (@twosetdown) 2016年11月14日
すでにこの地点で予想していました。錦織が自分のテニスをできれば勝てるということを。
そしてワウリンカがO2で6勝6敗といい成績で来ている(負けたのはすべてBIG4ばかりで仕方ない、他は全部勝ってる)のにもこのO2の減速し、打ち頃の打点に入りやすいワウリンカ向きのサーフェスというのが少なからず効いていたのでは?と思っていました。
つまり今回条件はかなり錦織に向いていました。
加えて全米も第1セットは寄せ付けず取っていましたし、かなり以前に比べてワウリンカに勝つ方法はしっかりと描けるようになってきました。
試合は序盤からワウリンカがいきなりスロースタート。しかし錦織もリターンミスしてお付き合い。その後序盤は動きがありませんでした。
ワウリンカは簡単なミスを重ね、特にセカンドサーブからほとんど攻撃できず、下がってリターンしているにもかかわらずバックアウトしてしまうなど精彩を欠いていました。
対して錦織はストローク戦こそ主導権を握れているものの、アグレッシブさが裏目に出るミスが少し出たのと、とにかく1stサーブの入りが悪く、固まって6連続1st失敗といった感じで、BP0で終わったのが不思議なくらいサーブに安定感はありませんでした。
ワウリンカはセカンドサーブになると苦しく、また深いコースに速いボールを集められ続け、なかなか自分の間合いでボールを打つことができずフラストレーションをためます。
そしてあっという間に1セット目を落とすと、2セット目は錦織の飛びついたリターンをワウリンカがウォッチミスしてブレークを献上。その後も勢いを取り戻すことができず、眠ったままのワウリンカを錦織がわずか67分で料理しました。
ワウリンカは膝にテーピングがあり、「アイアン・スタン」とはほど遠い状態。常に何があってもおかしくない気持ちで私は見ていましたが、現実問題としてクラッチできるエネルギーはなかったように思います。
マッケンローグループは非常にタフで、チリッチマレーの内容次第ではワウリンカ3連敗もありうるというような内容でした。
これで年末3位争いは混とんとしてきました。
5250ラオニッチ
5115ワウリンカ
4905錦織圭
ラオニッチに勢いがあり、今後も勝ち星を重ねそうなのでかなり有利ですがまだわかりません。
錦織は、優勝するとかぎりなく3位に近づきます(ラオニッチ決勝進出の場合無理なパターンあり)。
いずれにしてもRR換算ではラオニッチワウリンカと2勝差。次の勝利もなんとかもぎ取りたいところです。
ただ、初戦をこれだけの快勝で終え、体力消費も少なく、テニスの内容もいいところが多く、今のところは問題なしです。
次戦はチリッチとマレーの勝者になると思われます。日本のテレビに配慮して次も23時かな(2014年はそうだった)。
何やらやってくれそうな、そんな予感がします。
準決勝進出に向けても、2位通過候補のワウリンカをセット0-2、さらに大量のゲーム差をつけました。
1-2で三つ巴になっても、拾われる可能性が高くなりました。
後は次戦を待つだけです。すでに私の中では勝つイメージを持っています。今年のO2アリーナだからこそ、勝つ方法です。