two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

引っ掛かりの多い敗戦(2017ブエノスアイレス準優勝)

2/19 現地14:00~(日本時間翌日2:00~)

Argentina Open

Championship

[1]Kei Nishikori 6(4)-7 4-6 Alexandr Dolgopolov

試合感想の前に報告ですが、多忙な時期を抜けました。

いくつか大きめの残務処理も残っていますが、これからは(とりあえず以前よりは)定期的に更新できると思います。よろしくお願いします。

決勝の試合についてですが、とにかく残念だったという試合でした。

決勝に勝ち上がるまでの勝ち上がりも微妙な試合が2試合ありました。

ソウザ戦こそ会心のストローク戦を披露しましたが、シュワルツマン戦、ベルロク戦ともに苦しみました。

こうなってしまった原因はいろいろとありますが、ドルゴポロフ戦にも共通することとしてフォアが浅すぎたというのが最も致命的でした。

ハードコートだと浅いストロークでもパワーヒットすることで押し切ることができますが、クレーでは減速してしまいます。

遅くても跳ねるボールか深いボールを打てば相手から攻められることがないのがクレー。ここがハードコートと決定的に違う点です。

ナダルがクレーで絶対的な強さを失った理由もこのプレースメントが原因でした。切り札のフォアが浅くなることによって相手に拾われる確率が上がり、さらにナダルのボールは跳ねる分相手にとって打ち頃のボールへと変化してしまい、結果勝てなくなりました。

今週の錦織に起きていたのも、これと似たようなことだと考えられます。

そしてドルゴポロフは攻撃的な攻めを見せました。これがフィットしてしまいストローク戦でも苦しい場面が続いてしまったということです。

試合としては地味に大きかったと思っているのが1ゲーム目です。

試合のほとんどをリターンゲームで始めることが多い(トスで勝ってもリターン選択、相手がトスに勝った場合相手がサーブ選択=錦織リターン選択)錦織ですが、最近はブレークスタートになることが多かったです。

ここでもドルゴポロフのミスが続き15-40(うち錦織の失点もイレギュラーによるもので、ミスはなかったに等しい)となり、BPでもセカンドサーブが2つ続きました。

しかし1本目のセカンドサーブをかなり前で捉えようとした結果、ワイドの鋭いサーブに対応できず、次のリターンはうまく返したもののドルゴポロフのドロップがネットインという不運。一つ目の分岐点はここでした。

その後はドルゴポロフのサービスゲームに対してほとんどチャンスがない「ように見えました」。毎ゲームフリーポイントがドルゴポロフに入り、BPを握ることすらも難しい状況が続きました。

タイブレークでは一層その構造が強くなり、錦織は決して悪かったわけではないですが、ドルゴポロフのサーブをリターンすることもできず1stセットが終了。2セット目はブレークを許してしまい、なんと一度もブレークできずにドルゴポロフに敗れました。

もちろんドルゴポロフのプレーは素晴らしく、決勝に上がってくるプレーでした。トーナメントパフォーマンスとしてはここ数年でも有数の会心の出来だったと思います。

実際五輪の裏の週だった12年ワシントン以来の優勝。意外でしたが、ドルゴポロフはセンスでテニスをする分試合ごとにむらが出てしまう選手。誰にでも勝てますが、一方で誰にでも負けてしまう、そんなタイプの選手です。

4~5試合勝たないと優勝できないテニスツアーにおいて、いい時の調子が続くことが難しいという証拠なのかもしれません。

ですからドルゴポロフに錦織が敗れる、その事実自体は何回もやれば必ず起こりうることです。

ただ問題はその負け方でした。

華麗なストローク戦の打ち合いで敗れたのなら私は純粋にテニスで敗れた、ドルゴポロフの日だったと思い、いつも通りの次に切り替えよう、的なまとめでこの記事を締めていたと思います。

しかしそうではなかった。サーブで圧倒されなすすべなく敗れた。ここです。

過去5連勝し、最後に対戦したのも1年前とそう遠くはない。特徴的なクイックサーブに対しても柔軟に対応できたからのこれまでの結果です。ドルゴポロフのサーブが少し良かったとはいえ、それだけであそこまでサービスゲームがノーチャンスになったでしょうか?私はノーだと思います。

ではなぜそうなってしまったのか?答えは一つだと思っています。体が異常に重かった。

この試合、いやひとつ前の準決勝から、錦織のフットワークは格段にいつもより悪いように見えました。

なぜかはわかりません。全豪後休みもそこそこありました。クレーへのサーフェスチェンジもありましたが、そのハードワークだけで説明するにはあまりにも不十分です。

昨年マドリード→ローマの地獄のような連戦をベスト4、ベスト4で切り抜けた錦織が、まるで翼を失ったように横の動きが鈍くなり、しかも一発強打を打たれるとすぐに返球をアウトしてしまう。粘りが全くありませんでした。

さらに悪い時のクロスラリー偏重の組み立ても散見され、強打したいドルゴポロフに自由なボールを与えすぎました。

これが試合中ずっと続き、かつ終盤落ちてきたドルゴポロフに対してそれよりも錦織側が落ちてしまい、スコア以上に勝てる見込みが見えない試合でした。

ドルゴポロフのサーブはよかったようにも見えますが、1stは59%しか入っていませんでした(錦織は63%と実はドルゴポロフよりも入っていました!)。しかもクレーです。最も遅いはずのサーフェスでなぜあそこまでサーブだけがクローズアップされるゲームになってしまったのか。これをサーバー側だけを理由に語るのはおかしいでしょう。

正直、250であっても連続決勝、本来問題ないです。

ただ、過去5連勝中の対戦成績、第1シードで出た大会の決勝はすべて勝利、クレーで30位以下の選手に負けることは14年の覚醒以降けが以外の理由でなかった(もちろんドルゴポロフが66位とずいぶん低いランキングに落ちているのは、彼の実力に見合っていないことは認めるとしても)、いろいろな勝ちパターンが予想もしなかった負け方で崩壊しました。

ブリスベンのディミトロフ、全豪のフェデラーは、錦織も見せ場を作り意地を見ました。テニスの内容も大幅に悪かったとは言えません。ですから私は(機会は少なかったですが)ことあるごとに「問題ない、このままいけばよい」とコメントし続けてきました。

その2敗と比較すると、この1敗は非常に異質な負けに見えた、というのがここまで辛口のコメントになっている理由です。

私の嫌な予感が杞憂に終わればいいのですが…

ブエノスアイレスのコートは石が落ちていて、イレギュラーが多かったと本人も語っています。

不可解な動きの鈍さがブエノスアイレスの環境によるものであれば、リオで何事もなかったようにまた勝っていくと思います。

初戦のベルッチ戦は早くも明朝に迫っています。その答えは、もうすぐ出ます。