two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

伝説の瞬間と、差し掛かる焦燥感(その1)

7/16 現地14:00~(日本時間22:00~)

Grand Slam 2000 The Championships Wimbledon

Championship

[3]Roger Federer 6-3 6-1 6-4 [7]Marin Cilic

もちろんフェデラーは今大会の優勝候補筆頭でした。

しかし全盛期でもなしえなかった失セット0での優勝には驚きました。

まず試合を振り返りましょう。

この試合のポイントはやはりチリッチがどうやって今シーズン絶好調のフェデラーを攻略していくか、というところでした。

試合に勝つどころか1セットを取ることも遠い状況でチリッチが何をしてくるか。

そうなると、やはり考え方は勝った時のイメージ、作戦を大事にするということになります。

4ゲーム目、チリッチは仕掛けました。

お互いストロークが入らなかった1,2ゲーム目のあと、ついにチリッチの攻撃的なストロークが当たり始めます。

フェデラーとチリッチの対戦成績はフェデラーの6勝1敗。チリッチの1勝はあの14年全米です。

この時のチリッチは決勝の錦織戦でも見せたように非常に攻撃的でした。シンプルにハードヒットを決めていき、相手にチャンスを与えない。

結局、チリッチにとっては自分ができるベストのテニスを自分らしくすることがフェデラー攻略への最短ルートになる、ということです。

この地点までフェデラーはあまり1stサーブが入っていなかったため、実際リードするならここしかないという場面でした。序盤の山場でした。

そして迎えたBPもフェデラーセカンドサーブ。しかしチリッチはボディー気味の深いセカンドサーブのリターンをネットにかけます。

このBPがチリッチが得たこの試合最初で最後のBPになってしまいました。

そして次のゲーム、こちらも1stサーブが入ってなかったチリッチはストローク戦に苦しみます。

このゲームからフェデラーはスライスを使い始めました。これによって、強打で来ていたチリッチのリズムが崩れてしまったのかもしれません。

連続失点の後はチャンスボールをミスで0-40。2本しのぐものの再びバックハンドのラリーでミス。フェデラーが先にブレークします。

4ゲーム目まではチリッチのほうが押し気味だったものの、そのわずか3分後にはフェデラーが数字上リード。ここからチリッチの歯車が狂い始めます。

チリッチは1stサーブの確率を上げることができず、ストローク戦でもリスクを取らされた形でミスを量産。

対してフェデラーは少しずつチリッチのボールにアジャストしたのもありミスが減少。さらにチリッチがミス量産した結果ストロークで無理な攻めをすることもなくなり、一度ついた差がどんどんと広がっていく格好になります。

結果的には、そのまま1時間41分それが続いた形になります。

チリッチは足のけがもあり万全ではなく、精神的な状態もあまりよくなかったことは想像されます。

ただ、最初にゲームが動く流れを察知し、BPで悪いなりにもセカンドサーブをきっちり打ち、そして自分に振れた流れを一発でものにした。

フェデラーの勝負勘が光ったゲームでした。

チリッチも状態が悪いなりに3セット目は驚異的な粘りを見せました。

これまで4強もなかったというのが不思議なくらい、チリッチは芝のテニスにフィットしていて、さすが決勝まで上がってきたという内容でした。

ただこの日はコンディションと、何より相手が悪かった。

チリッチの今後のウィンブルドンタイトル獲得も十分にあるという2週間でした。

今更ここで触れることでもないですが、今回の優勝でフェデラーは男子選手として最多記録のグランドスラム19勝目、そしてサンプラス、レンショー(オープン化前)の7勝を抜いて最多のウィンブルドン8勝目。また年間GS2勝以上は04~07年、09年に続いて6度目で最多(そもそもGS12勝以上が5人しかいない…)、そのほか数多くの記録が更新されただけでなく、なんとこの勝利がキャリア通算1111勝目。どれだけ数字に愛された男なのでしょうか。賛辞の言葉がいくらあっても足りません。

また蛇足ですが、レースランキングでは3位以下を大きく突き放して2位。ナダルとは約500p差で、年間1位はほぼこの二人の一騎打ち。ナダルなら4年ぶり、フェデラーなら8年ぶりとなります。

そして、今日発表のランキングでは、1位マレー、2位ナダル、3位フェデラー、4位ジョコビッチ。ついに、ついにBIG4が1~4位に戻ってきました。

もちろんマレー、ジョコビッチの失効は多く、また両名にシーズン終盤戦の欠場が一部で示唆されていることからこの状態はおそらく1~2か月程度の一時的なものになりそうですが、それでも驚異的です。

初めて4人が1~4位を独占したのは2008年9月8日(全米OP明け)。それから約9年。まだBIG4はその力をテニス界に轟かせ続けています。

しかし、一方でこの優勝、このBIG4返り咲きが私の中で嫌な焦燥感となってきています。

9年前、当たり前ですが4人全員が20代、そして、ジョコビッチとマレーに至っては今のズベレフやキリオスと同じ年齢だった頃の話です。

そこから幾多の激闘が繰り広げられ、何度も各選手に「ピークは過ぎた、終わった」との評価が起きる中彼らは覆してきました。

今はジョコビッチとマレーもトンネルの中という感じですが、何かをきっかけに戻ってくることは十分に考えられます。

08年当時と違い、BIG4も年齢や様々な問題と闘いながらの状況となり、正直「支配力」とでも呼べるようなものは落ちていると言えます。

その証拠がランキングポイントです。

1位マレーは7750p。このポイントはBIG4全盛の時代なら3~4位の選手のポイントでした。

7750pは09年にランキングシステムが変わって以降1位の選手としては最小のポイント。09年はBIG4がすでに形成されていた時期。同じ尺度で見れるからこそ、これがすべてを物語っています。

フェデラーナダルは今シーズン驚異的ですが、昨シーズンの終盤戦がほぼ0pの状態。

ジョコビッチ、マレーは昨シーズン素晴らしい活躍でしたが、今シーズンはあまりにも物足りない結果。

この4人が1~4位です。

常々私は年間上位に行くためには年間通しての活躍が必要不可欠だと言ってきたにもかかわらずのこれです。

今の状態が、いかに異常かということがそれだけで分かる数字です。

ではなぜこうなってしまったのか、そしてこれからどうなっていくのか。それは後半戦へと続きます。