two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

伝説の瞬間と、差し掛かる焦燥感(その2)

珍しく内容を分割しました。

色々と試みているうちの一環です。

今シーズンはフェデラーナダルの2強状態というのがトレンドになっています。

主要大会は唯一ズベレフがローマで優勝しただけで、これも様々な要素が絡んでの優勝。この理由については後述します。

ではなぜこうなってしまったか?それを考えてみましょう。

この手の議論で最近よく聞く意見として、「長期的に休むことによって蓄積疲労が取れる」があります。

そして錦織に限らず多くの選手に対して休んだらどうだろうという意見を聞きます。

私はこの類の意見には一部賛同しますが、本質的な部分では同意できないというのが正直なところです。

少しフェデラーナダルの復帰前、復帰後の状況を見てみましょう。

まず、フェデラーは16年全豪後にひざを痛めて2月シリーズを欠場。その後何度か大会に出たもののフットワークはとてもいい状態とは言えず、ウィンブルドン準決勝で転倒してしまい、その後のプレーは痛々しいものでした。

そして半年間じっくりとひざや体の治療に充て、17年1月のホップマンカップで復帰。相性のいいガスケに圧倒したかと思えば、その後はベルディヒ→錦織→ズベレフ(兄)→ワウリンカ→ナダルに5連勝しての圧巻の全豪優勝。そして今シーズン未だ2敗、圧倒的な成績で勝っています。

そして、全豪後にけがをする前、フェデラーのランキングは3位でした。

次にナダルですが、ナダルは15年終盤戦を盲腸の手術で欠場。復帰後は悪くない成績で進行していたものの、クレーシーズンで手首痛に苦しみ、一番大切な大会である全仏を途中棄権。五輪で復帰するものの試合過多がたたり、シーズン終盤戦を治療に充てるために欠場。

そして、16年全仏前(ローマ後)、ナダルのランキングは5位、レースランキングは3位でした。(ランキングが低いのは、15年終盤に欠場あったためというのが理由の一つでしょう)

3位という数字がポイントで、これらのランキングの時に常に上にいたのがジョコビッチ、マレーでした。

フェデラーナダルが復帰した17年、この二人は信じられない失速状態に陥ってしまい、代わりにフェデラーナダルが2強状態。

もしジョコビッチ、マレーが去年の状態であれば今年はBIG4が単純に4強状態だったかもしれません。

何が言いたいかと言えば、フェデラーナダルもけがからの復帰をしたに過ぎず、その結果、けがをする前のBIG4の状態に戻っただけなのです。

休んだから「元の状態よりもはるかによくなる」ということではないのです。

過去のBIG4の復帰事例を見ても、基本的にはBIG4がほかの選手より優れたテニスをするために驚異的なランキング上昇が起きているだけで、構造としては同じものが続いています。

つまり、これはほかの選手にも言えることで、状態が普通以上のBIG4と互角のテニスをできる選手がいない以上、あくまでその選手のキャリアハイ状態までは戻ることはできても、その上に到達することは全く別の問題なのです。

伝説の時代と言えるBIG4時代、しかしその時代に引導を渡せる選手は今のところ見当たらないというのが現状です。

そして、今後このまま行くと男子プロテニスはどうなるのか。

今のままでは、強いテニスでツアーを席捲できる選手がいない冬の時代が来てもおかしくありません。

新時代を統べる者としてズベレフを挙げる声は増えてきていますが、まだ彼はGSのQFにも進めていません。

私はやはり現行のATPのツアーシステム、さらに5セットマッチ7試合の特殊性からやはりGSで勝てない選手は厳しいという意見を持っています。

まだ20歳のズベレフですのでもちろんこの先はもっと勝ち上がるとは思いますが、現状ではまだ大きな期待ができないというのは本音です。

そのほか本来であればキャリアのピークを迎えているべき「YOUNG GUNS」世代もピリッとしません。

14年に大きな波を起こしてから3年、彼らはいまだ30代に突入したBIG4のレベルに到達していません。

2年前にTENNIS LOVERSさんも似たようなことを言っていました。

あの当時はフェデラージョコビッチが決勝でした。しかし今年はジョコビッチ、マレーが未だGSの決勝なし。二人合わせて準決勝1回という状況で、全仏ではワウリンカ、ウィンブルドンではチリッチが決勝に行きました。

二人ともGS優勝経験者、そしてそれぞれのサーフェスに合った選手。

そこまでの前哨戦を見ても、最もBIG4以外で対抗できる選手の一人でしたが結果はどちらも圧倒的大差をつけられての完敗。

あの当時よりもBIG4の支配力は落ちていると感じます。

4人いつもツアーにいて、たまに1人がけがなどの理由で離脱していた時代から、2人しかいないような時代に向かいつつある今でも、その最後の一太刀が出ない。

2年前よりも、状況は悪化していると感じます。

誰が立ち向かっても越えられない。

そしてBIG4自身のプレーレベルの低下によって混沌としたとき…

その時のATPツアーは、果たして面白いのでしょうか?

ウィンブルドンを終わって今のテニス界に思うのは、まさに激闘を終え芝が禿げた後の荒れ地。

まさにそんな感じです。

これから新しい芝が生え、新しい物語は生まれるのか。

生まれるはずなんですが、不安でなりません。