two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

際立った強さ、クレーキングとクレープリンスの激闘(2019全仏決勝)

すごい試合でした。前半戦を締めくくるにふさわしいハイレベルなゲームでした。

 

試合開始前の状況は

・金曜日、最高の状態で入ってきたフェデラーにあっさりストレート勝ちしたナダル
・金曜日に試合が終わらず、土曜までもつれて4時間ゲームになり、最後までわからなかった試合を制したティー
・直近の対戦ではティームがナダルに勝利
・おそらくだが、次期クレーNO.1に位置するティーム、現状のテニス界ではおそらく最高の挑戦者(全仏でジョコビッチに2回勝っていることからも、これは強く主張したい。今BIG4以外で「ティームのクレー」は最も信頼できる要素の一つ)

こんな感じでした。

もしかして、今年のティームなら奇跡が起こせないか?そしてそのためのポイントは「体力負けしない」ことでした。

 

ただこの点については、本人もある程度自信があったようです。

ブレスニクを中心にティーム陣営が数年間続けてきた、小さい大会まで含めてのドサ回り。当時は批判の声も多かったですが、最後まで体力的に崩れることなくやり切ったところを見ると、この効果はあった、ついに実ったように感じます。あのジョコビッチとの死闘。その翌日。普通出がらしのようになってもおかしくないところ、ティームはむしろ上がっていきました。最高のプレーでクレーキングに挑戦していきました。

今回は叶いませんでしたが、ティームはGSを優勝できる心技体の「体」に到達した、そんなように感じました。

 

 

1セット目、いきなりティームがやってのけます。

調子の上がらないナダルをよそに、持ち前の力で押し込むテニスが機能します。ナダルティームよりもUEを打つ苦しい展開で、ブレークされたゲームもバックハンドをアウトするなど、波に乗れません。

しかし次のゲーム、ティームにミスが出ます。あっさりとブレークバックするとそのまま4ゲーム連取。ナダルが1stセットを取ります。

しかしティームが悪かったわけではありません。ナダルのUEが減った途端、簡単にポイントを取ることができなくなってしまい、ティームに高いレベルのプレーが求められました。高いレベルのプレーはやっていたように思えたのですが、それでも足りず。普通の相手なら6-2でセットを取れているようなティームの内容だったにもかかわらず、結果は3-6。タイブレークにももつれさせてもらえませんでした。

 

この1stセットを取れなかったことが大きなダメージになるのではと思いましたが、杞憂でした。ティームはプレーを変えず、自分のテニスでナダルを追い込み続けました。

2セット目、ティームは高い1stサーブの確率に加えてショット精度も高めてキープを続けます。少しでも落ちればやられる中、懸命のプレーが続きました。そして先サーブを活かし、その努力が実りました。ワンチャンスをものにして7-5。ナダル相手にセットオールに持ち込みました。

 

しかし、これでやっと1セットなのです。まだこれを、あと2回やらなければいけない。見た目上セットオールに持ち込んだのは見事でしたが、それでもまだ試合の主導権はナダルでした。

そして第3セット序盤、少しミスが重なった、少しプレーレベルが落ちたティームを見逃さず、ナダルがあっさりブレーク。そのままわずか15分で4-0に。ティーム、会場、そして世界のテニスファンが、もしかしたらと思ったその夢は、15分であっさり沈黙へ変わりました。

 

ここで第2セットのティーム側のスタッツを見てください。

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何の文句のつけようもない、完璧なスタッツです。1stサーブの確率もよく、2ndになってもポイント獲得率が落ちず、W>>UEという完璧な内容。ここまでやって、やっと7-5でセットが取れた。

これをあと2回やることが、どれだけ困難なことか。

やはり3セット目以降の感想は多くの人に「ガス欠」でまとめられていますが、私は違うと思います。あのレベルを維持することが困難であっただけ。しかし、ナダルにとってはこれが日常。だからこそ、ナダルはクレーキングなのです。

QFの錦織も大会内ではベストパフォーマンスでした。SFのフェデラーも言うまでもないでしょう。そして決勝のティームも、相手がナダルでなければ確実に全仏を取れている、GSを勝てるテニスをしていました。

その3人が束になってかかっても、かすり傷1つついたかどうか。それがラファエル・ナダルです。

 

4セット目もティームはBPを迎えるなど粘っていました。しかし要所での1stサーブ、回り込みフォアからの打ち分け。ティームの豪打をいとも簡単にカウンターしてブレーク。すべてがナダルでした。

そのままナダルは優勝。12度目の全仏制覇。もう記録についてはいくらでも出てくるので割愛します。

 

ティームが本当に良かっただけに、さらにナダルのよさが際立った、そんなゲームでした。GS決勝にふさわしい、好ゲームでした。ティーム、これで全仏取れなかったらおかしいです。それほど良かった。来年以降に期待しましょう。

 

総括すると、結局、あのサーブとあのストロークをもってしてもティームが7回もブレークされてしまった。これがいかに異常なことかということです。一方のナダルはわずか2回。ティームよりもサーブの球速は落ちるはずなのに、です。

じゃあどうやってナダルに勝つのか?という話ですが、ティームのプレースタイルなら1~2セット目のプレーを4時間続けるということなんですが、それはもはや無理難題です。どうやったって3,4セット目のような時間帯は出ます。相手がナダルでなければ、1,2セット目を連続で取って、もう1セットどこかで押し切って優勝だったでしょう。そういうプレーだったんですが、それではナダルには届かない。

正直、この3連覇中の21試合の中では一番可能性を感じただけに、試合後の絶望感が半端ないです。

4月までは今年のナダル大丈夫か、でしたが、終わってみればローマ全仏2連勝。いつものレースランキング首位に。いつも通り全仏決勝に完璧に合わせてきました。

 

正直、ナダルが落ちる以外にナダルに勝つ方法が見当たりません。ティームは前哨戦では勝っていましたが、本番で2年連続勝てなかった。しかしこれはフェデラージョコビッチも通った道です(なお、結果としては2人ともナダルを倒して優勝したわけではないのですが…)

全仏でナダルに勝つことは、全く別次元の話なのです。特に2週目後半。

 

さて、いよいよ季節は芝へ。今週からは後半戦。まずはウィンブルドンへ向けての戦いが続きます。

今大会、フェデラーナダルの庭に挑戦しましたが、ウィンブルドンでその逆はあるのか。まずそこが楽しみなポイントになってきそうです。