史上最大級のチーム戦「ATPカップ」展望
こんばんは。
もう来シーズンの開幕まであと16日です。
えっ、あと16日なの?それは私が一番思ってます。
オフシーズン中に進めるはずだった閑話球題シリーズもネタ仕込んでるんですが、調べてるとなかなか進まないのであと1~2記事上がればいいなと…
それに年明けに向けて色々と準備しなければいけなくなりまして。
端的に言うと近々いいお知らせができそうです。お楽しみに。
多分一番楽しみにしてるのは私なのですが…
2020年、五輪イヤーということですごいことをやっちゃいたいなと思います。
さてそんな五輪イヤーですが、ATPツアーは開幕から予想不可能の新設大会を迎えます。ATPカップです。
今日はこのATPカップについてのルール確認と、簡単な展望をしたいと思います。
ATPカップは今年から新設された総勢24チーム、100名以上の選手がオーストラリアに集結して行う史上最大級のチーム対抗戦です。
何をもって史上最大級とするかは微妙です。
ご存知の通り、デビスカップは世界100ヶ国以上が参戦しています。しかし、ルールが改正された2020年現在でも、原則はホーム&アウェー。一度に集まるのはゾーン3以下とファイナルのみで、最大18ヶ国。
それに対して、1つの期間で24ヶ国が集まり優勝を争うATPカップは、捉え方によっては最大と言えそうです。ただし、これも厳密には3都市に分かれて試合を行うので、やっぱり最大「級」くらいが適切な表現かなと思います。
ATPカップのルールは、新しいデビスカップファイナルのルールにかなり似ています。デ杯ファイナルを経験したことで、テニスファンにとってはルールを受け入れやすいかなと思います。
・出場チームを4ヶ国ずつ6つのグループに分けてリーグ戦を行う
・各組1位+各組2位の中でよかった2チームがベスト8進出、決勝トーナメントへ
・シングルス2本+ダブルス1本の3本勝負。予選はすべて消化、決勝トーナメントは結果が決まった段階で打ち切り
・単複の連闘はあり(制限なし)
・キャプテンを一人設けて、チェンジコート中などで選手にアドバイスができる
この辺りは、出場チームが18→24に変わったデ杯ファイナルと捉えればOKです。グループ2位のチームのうち一部だけ進めるのも「目無し問題」の解消目的なので、全く同じです。
なお、デ杯はITF管轄のため、ATPツアーのポイントがかかった大会としては史上初めてオンコートコーチングが認められる大会となります*1
逆にATPカップのデビスカップファイナルと違うルールをまとめます。
・ダブルスはノーアド、ファイナルセットはマッチタイブレーク(10ポイント)
・対戦相手と内容に応じてATPランキングポイントがつく
・特に昇降格という概念はない
ATPカップの出場権は、各国の選手のATPランキングによって決まります。どれだけまずい成績を出しても、翌年の出場権が決まる時に選手が上位にいれば出場できます。
またダブルスは現在のATPツアーでも採用されている「促進ルール」です。※私が言っているだけで公式的な名前ではありません
デビスカップファイナルではダブルスを確実に消化+下手すると2時間半ゲームということがありましたが、この促進ルールだとだいたい1時間~2時間以内に収束するので、あまり負担にはならないかなと思います。
そして気になるランキングポイントですが、対戦相手のATPランキングに対応する変動制を取っています。
またここで得られたランキングポイントは、通常数えられる18大会の枠とは別に、ボーナスポイントとして追加されます。ATPファイナルズと同じです。つまり、出て損になる理由がないということです。
出場するプレイヤーとしては、全豪の前哨戦で調整もできて、勝ったらランキングポイントも入るのでこんなにうまい話はありません。
しかし一方で、ATPカップの出場資格は純粋にランキングの優劣だけで決まらないため、不平等であるという意見も出ています。
ミルマンやオペルカはこの制度に対して疑問をSNSで発信しています。
実際、オーストラリアやアメリカのようなテニス大国の4~5番手は、50位~100位付近で、ATPカップに出場するケースは少ないです。それどころかベンチ要員としてスケジュールを拘束されます。
一方、テニス小国の2番手の選手は、そのランキングが200位や300位になることもありますが試合に出れます。
一応自身のランキングが300位以下の場合、得られるポイントも小さくなるように是正措置はとられていますが、それでも不平等なのは否めません。
正直追加ボーナスポイントまではやりすぎというのが私の正直な感想です。ATPポイントはスケジュールを拘束する以上つけるべきだと思いますが、18大会のノンマンダトリーの置き換えにできるくらいが適当だったのではないかと思います。*2
一応今回の想定される対戦相手と、それに対応する勝利した場合のランキングポイントを載せておきます。
Ranking points available during ATP Cup group stage.
— Oleg S. (@AnnaK_4ever) December 2, 2019
(based on the teams' current Top 2 singles players)
(unofficial calculation — errors possible, feel free to spot and correct them) pic.twitter.com/EdyObWTpqa
わかりづらい!!!!!!!!!
各組の組み分けは、シングルス上位選手を有している国がシードとなり、シード帯同士が当たらないように組み分けをします。
ただし2020年は、一旦組み分けした後にフェデラー(スイス)が棄権したため、次点だったブルガリアがスイスの場所に入りました。これは例外的な措置で、原則
①9月の段階で1~18位までの国(とWC)を選出し、ドロー抽選
②11月の段階で残りの国を選出し、残った場所のドロー抽選
の合計2回のプロセスで対戦カードを決定します。
2020年はこんな組み分けになりました。
2組ずつ3都市で試合を開催します。
パースはホップマンカップ、残り2都市はATPツアー開催中の都市で、それぞれそこで使われていたセンターコートを使います。
個々の組み分けについては細かく解説はしませんが、もう誰が見ても分かると思いますがグループFが死の組です。デ杯ファイナル2019のベスト8が3チーム。実は今回、残りの5組にはデ杯ベスト8が1チームずつですから、これがいかに厳しいかは分かると思います。ギリシャを除くとすべてのチームで2番手、ダブルスともに充実しているチームばかりで、いったいどこが勝ちあがるか全く分かりません。
さて、デ杯ファイナルの時と同様に、全体7位8位で拾われるチームはどんな勝敗条件なのか?ということを最後に検討してみたいと思います。
ただし、2020年ルールブックはまだオープンになっていないため(2019/12/18現在)、あくまでデ杯ファイナルと同じルールで進んだ場合と仮定します。
ただ順位決めの方法はこれくらいしかないはずなので、たぶんこれでいいと思うのですが…*3
4チームのリーグ戦でちゃんと試合が完結した場合、星取表は次の4パターンしかありません。
①3-0、2-1、1-2、0-3
②3-0、1-2、1-2、1-2
③2-1、2-1、2-1、0-3
④2-1、2-1、1-2、1-2
つまり、グループ2位のチームの勝敗として考えられるのは、2-1、1-2の2つです。とはいえ②のパターンばかりになるとはあまり考えにくいので、まずチームとして2勝1敗になることが必要条件になりそうです。
さらに次の評価対象になるのはラバー勝敗だと思われるのですが、2勝1敗のチームのラバー勝敗として考えられるのは、7-2から4-5までです。
ということから、おそらくラバー6-3のセット率くらいがボーダーになるのではと見ています。
デ杯で(本当はなかったけど)降格ボーダーを正確に読み切ったので今回も自信あります。
日本チームの対戦順はウルグアイ→ジョージア→スペインの順です。チームランキング順に対戦するので、とてもやりやすいですね。
日本決勝トーナメント進出に向けて必要なことは、スペインに負ける確率が極めて高いことを考えると、まずウルグアイとジョージアに連勝して、できればスペインにラバー1-2で負けても可能性が残る条件を作っておくことになります。
具体的には、ウルグアイかジョージアに3タテして勝ちたいです。両方できればスペインに負けてもかなりの確率で決勝トーナメントに行けます。
錦織が出れるかは、現時点ではかなり厳しい状況ですが、デ杯ファイナルでも示したように今の日本チームは史上最強。錦織抜きでもこの相手関係なら決勝トーナメントに行ける可能性はあります。正直グループBは楽なほうだと思います。
年初でフレッシュな体で臨めますが、国別対抗戦で張り切りすぎてけがをして全豪欠場、なんてのは絶対に避けてほしいです。どうしても国別対抗戦だと気合入っちゃう人多いですからね…
デビスカップファイナルと違い、予選リーグの間は全てのチームについて必ず中1日でやることが保証されています。またダブルスも促進ルールのため、連闘の負担もデ杯よりは軽減されます。11月の時のような悲劇が起きないことを願うばかりです。ルール上は比較的大丈夫なはずなんですが。
今回の大会の結果がデ杯のさらなる改革へつながる可能性もありますし、もちろん激動の時期を迎えたATPツアー新シーズンの、全豪前哨戦としての役割も大きいです。目が離せない大会となりそうです。
大会期間中は3会場同時に試合が進行するので、追う方はなかなか大変ですが…
AbemaTVで全試合生中継されるので見る試合も選び放題!お正月から楽しいテニス観戦ライフとなることを期待しています。