two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

東京五輪テニスの出場条件について③シングルスの出場条件を理解しよう

この記事は東京五輪テニス競技の大枠を事前に理解しようというシリーズの3番目の記事です。

先にこちらの記事を読むことを推奨いたします。

twosetdown.hatenablog.com

twosetdown.hatenablog.com

 

続いてはオリンピックシングルスのエントリーについて解説していきます。
まず大原則として、男女とも2つの枠があります。
ドロー64に対して、ランキングからの直接DAが56、ITF枠が8です。

直接DAは、①で紹介した五輪出場要件(主にデ杯/フェド杯出場要件)を満たし、各国最大4人を満たすような範囲でシングルスランキングの上から順にリストを埋めていきます。マスターズなどと違い、ペナルティはないので自動エントリーではありません。各選手(協会)が自分でエントリーする必要があります。
なおプロテクトランキングは使用可能です。使用しそうなのは、デルポトロや錦織(3月以降まで復帰がずれ込んだ場合)です。

上位56人ですから、仮に国籍がバラバラでみんな条件も満たしていたとしても56位以上に入っていれば絶対クリアです。西岡、内山あたりはこの数字が一つのターゲットになります。

WTAのランキング推移は詳しくないので割愛しますが、ATPで56位というと、1000pあれば堅いかなと思います。昔は1000pだと45位くらいだったんですが、現在ランキングが大幅にシャッフルされているため、上位が寡占しているポイントがランキング中位に分散されている現象が見られています。そのため、五輪ボーダーとしては吊り上がっています。
今の56位は950pくらいですが、余裕を見て1000pを当確ラインとしておきましょう。
実際は、4人ルールにより弾かれる選手が出る+ティームのようにすでに出ないことを表明している選手がいるので、ボーダーは70位くらいまで下がってくるのかな、と思っています。*1正直800pもあれば大丈夫だとは思います。

ちなみにリオ五輪の時は最終的にボーダーが101位まで下がりましたが、これは例外的。ジカ熱や厳しい環境の南米遠征を避ける目的などがあり、不出場表明の選手が多かったからです。ロンドン五輪では72位でしたし、こっちがより正しい数字かなと。*2

ということで、1000pを当確ライン、900pを安定ライン、800pを仮想ボーダーと設定したいと思います。
全豪開始前のランキングで800pは70位のムテなので、まさにボーダーライン。選手たちはまずこの800pを目指す形となります。実際にどの選手がどのあたりを争っているのかは④で詳しく紹介します。

 

 

さて、残りの8枠はどうなっているのか?これを一旦まとめて「ITF枠」としたいと思います。ITF枠には3つの枠があり、大陸枠、実績枠、開催国枠です。
大陸枠は各大陸ごとに与えられている枠です。

南北アメリカはパンアメリカゲームのシングルス決勝進出者2名に与えられます。該当者はブラジルのメネセスとチリのバリオスですが、バリオスは記事投稿現在300位を下回っており、シングルス300位以内という条件を満たせない場合は権利を失います。
この場合、3位アンドレオッシと4位バグニスに権利が回ってくるようです。*3

アジアは2018年(!)のアジア大会優勝者です。これはイストミンが取っています。イストミンは170位までランキングが落ちていたんですね…300位まで落ちることはなさそうなので、確定的です。

アフリカは2019年のアフリカ大会優勝者です。これはエジプトのサフワットです。サフワットのランキングは150位付近で推移しているので、確定的です。

ヨーロッパ、オセアニアについては、出場選手がいない国の中で最上位の選手が選ばれます。これは誰が56位以内に入るかの見通しが立たないと決まらない、複雑な条件なので、もう少し先に予測したいと思っています。

 


続いて実績枠です。
実績枠はオリンピックシングルス金メダルか、グランドスラムシングルス優勝経験があり、56番目以内のDAができなかった場合に適用される枠で、最大1です。なお該当選手の国がDAで4つ埋めきっていた場合は適用外です。
オリンピックシングルス金メダルorグランドスラムシングルス優勝経験がある男子選手は現役で7人(BIG4+ワウリンカ+チリッチ+デルポトロ)しかいません。
デルポトロは出場する場合PRを使う可能性が高く、ここから出る可能性があるのはマレーのみです。マレーは56番以内になるためには、大きな大会での好成績が必須ですが、復帰が遅れているため不透明な状況です。300位以下に落ちることはなさそうなので、本人が出る意思があればこの枠から出れると思います。*4


最後に開催国枠です。
開催国日本の選手が、ランキングによるDAおよび上の2つのITF枠で一人もエントリーできなかった場合に、最上位の選手一人に与えられます。
現状西岡が通過濃厚になってきたので、この枠は使われずクリアされそうです。その場合は57番目の選手が代わりにDAします。

改めてまとめると、ITF8枠は
大陸枠6
 南北アメリカ2
 アジア1
 アフリカ1
 ヨーロッパ1
 オセアニア1
実績枠1(マレー?)
開催国枠1(クリア?)
となります。

 

 

さて、通常DA、ITF枠どちらのプロセスを通るにしても、デ杯/フェド杯出場条件をクリアすることは必須となります。逆に言えば、どれだけ素晴らしいテニス選手で実績があっても、その条件をクリアできなければ五輪に出れません。ということで、ボーダーがどこまで下がるかの焦点はこのデ杯出場状況によるわけですが、はっきり言ってこんな複数年のデ杯の出場状況を確認しているサイトなんてありません(私が知る限り)。じゃあ私がやりましょうということでまとめました。全豪開始前1位から100位までの各選手について、デ杯の出場状況をまとめた表がこちらになります。

長いので、画像で保存/拡大して眺めやすいように4分割してみました。

 

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※画像の無断使用、転載を禁じます。引用元を付けたうえでの利用、個人で楽しんでいただく分には問題ありません。
※私個人で一つ一つ確認したため、ミスがある可能性があります。もし発見した場合は遠慮なくご指摘ください。
※出場条件をクリアしている選手については、ノミネートされながら試合に出なかったケース(出場回数にカウントされる)を数え漏らしている可能性があります。しかし五輪に出れるか/出れないかの観点には影響がなく、出場回数がすれすれの選手についてはそこも含めて丹念に調べあげたので、表の機能としては問題ないと考えています。

 

表の見方ですが、五輪出場に必要なデ杯出場状況をすべてまとめています。
左から、4年間の出場回数(2か3必要)、2年間の出場回数(1必要)、通算出場回数(20以上で減免措置)、ゾーン3以下に落ちていた年数(3以上で減免措置)、必要回数(2か3)、出場の可否です。

出場可否の〇は条件クリア、△はデ杯出場経験があり、少し数が足りないのでパネル申請で通りそうな選手、×は4年間一度の出場もない選手で、原則パネル申請は無理そうな選手です。ただしフェデラーワウリンカは特例で△にしています。

ご覧の通り、数字だけで見るなら結構な数の選手がクリアしていません。

△、×が多いのはテニス強豪国です。デ杯代表の枠は各国一緒なのに、選手層が厚いことでパイを分け合うので、回数クリアが難しくなります。一方自身がエースや2番手で長らくやっているような国の選手はほとんど問題なくクリアしています。

強豪国の中位下位選手に関しては、どっちみちその国最大4人しか出れないので、そもそも機会が回ってこないとは思いますが、一応真面目に評価しました。

 

表にいない選手では、マレー、デルポトロが〇、アンダーソンが×(普段からデ杯に出ていない)です。

 

それでは上位から順に見ていきましょう。

まずトップ20でクリアできていないのは、フェデラー、チチパス、モンフィス、ワウリンカ、錦織、イズナー、ディミトロフです。

フェデラーについては貢献枠が使われるでしょう。まあユニクロのエキシビで大きく宣言したのに、結局出れませんでしたみたいなことは間違ってもないと思います。

ワウリンカも貢献枠が使える立場です。14デ杯優勝+五輪ダブルス金という実績を基にいけそうですが、同一国から2名出せるのかどうかは不明です(ルールブックには否定するような文言はない)。貢献枠の乱れ打ちになると批判も出そうなので、本人の意思とかいろいろ絡みそうでよくわからないですね。
関連ニュースも探ってみたのですが、スイス協会はITFに働きかけるべきだ、という記事しか見つからず、核心にはたどり着けず。その記事には、ワウリンカは3月のWG1プレーオフには出ない予定とは書いてました。

意外だったのがモンフィス。モンフィスに限らず、フランス選手は多くの選手がクリアできていません。先ほど説明した、代表が固定化されないことで3回を満たしていないケースが多いです。
モンフィスの場合、ランキングを落としていた時期やけがなどの理由で何とでも申請できそうですが、2回分通るのでしょうか。前回大会ベスト8の選手に厳しい裁定が下るとは考えにくいですが、ちょっと心配です。おフランスはデ杯シードのため、2020年3月に試合を積み増すことができません

チチパスはデ杯デビューが遅く、ゾーン3減免措置を使ってもまだクリアできていません。2020年3月のタイに出れば条件クリアです。2017、18年に出れてそうなのに出てなくてパネル申請が通りにくそうなので、ここはちゃんと出ておきたいですね。

錦織については①で書いた通り、最大限の配慮がなされるものとして△としました。

イズナーは19-20年の1回がまだありません。19年のアメリカはシードで、出るなら19年ファイナルに出るしかなかったのですが出ていません。直前にけがをしたわけではないので、20年3月のタイに出ておく必要がありそうか。ごねたらなんとかなりそうでもあるのですが、基準があいまいでよくわからない…
そもそも裏のアトランタがホーム大会なので、五輪に出れるのに蹴る可能性もありそう。

そして×が唯一ついているのがディミトロフ。メディアなどの報道を見ても厳しいという見方で、0回出場をひっくり返せる状況になさそうです。以降のボーダー予想でもディミトロフは出ないものとして扱うことにしました

 

21~50位の選手については軽くまとめます。

・フランス、スペイン勢が強豪国による出場機会減少でトラブル。

・アルボットが一度も出ていないため出場絶望的。

・チリッチ、ラオニッチはけが考慮でなんとか。

・バシラシビリは2020年3月出場が必須。

 

その他、日本勢3名は条件クリア。各国4番手以内で危なそうなのは、ロンデロ、トラバグリア、コプファー(以上×、ニューカマーでごり押せるのか?)、ソネゴ、ブブリク、ノーリー、デルボニス(以上△)です。

 

次の記事では、全仏終了後のランキングを予測し、ボーダー付近の選手が誰なのかを探っていきます。

*1:open era rankingsが示している仮想ボーダーは、1国4人ルールを反映して今65位にあります

*2:英語版wikipedia参照、エントリーリスト公開後2名のwithdrawが出たが、オリジナルエントリーリストの数字を引用しました

*3:この辺りの議論は、ハモさん(twitter:@Vestige_du_jour)の多大な貢献があって詳細に解説できています。この場を借りてお礼申し上げます

*4:出場可否について話題になるフェデラーとワウリンカがこの枠から出ることはありません。五輪出場にはまずデ杯出場条件をクリアする必要があり、クリアした場合はランキングDAで出れるので、56番目以下300位以内にのみ適用される特例的なITF枠に入ることがないからです。