two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

歴史は変わった~錦織圭、そしてラオニッチの初ツアーファイナルズがもたらすもの~

アンフォースドエラー66本。

いやーひどい試合でした。

あえてこう表現しましょう。錦織の勝った試合の中でワーストマッチだったと。しかし、勝って得たものはベストマッチだったと。

どうやって勝ったのか、私には分かりません。ちゃんと書きますが、それが勝った理由の説明になっているかもわかりません。

ただ結論だけ言えば、最後に勝者としてコートに立っていたのは錦織圭だったということです。

4試合すべて見ました。はっきり言って体はボロボロです。私の方がですが。

しかしこの4試合、本当に素晴らしい試合ばかりでしたし、全部見たからこそ最後の錦織戦の感動はひとしおです。

今日がとてつもない1日になるというのは第1試合からなんとなくその空気を感じさせていました。

過去11戦11敗のアンダーソン、正直凡戦が予想されたにも関わらずベルディヒに最後まで喰らいつきました。

ベルディヒもよくはなかったのですが、最終的にサービスゲームの引き出しの多さが勝敗を分けました。

3球目までに攻撃を決めないと厳しかったアンダーソンは勝負どころでポイントが取れず、無念の敗退となりました。

自己最高位、初のマスターズ4強のかかった試合、しかしそれに臆することなく、最後まで闘志を見せてくれました。

2時間34分、ビッグサーバー同士の二人の対戦としては異例の長さでした。

これでベルディヒがファイナル進出、残る椅子は2つになりました。

そして第2試合、奇跡は起こりました。

ラオニッチがフェデラーにストレート勝ちです。

原因ははっきりしています。フェデラーのリターンを完璧に崩したところにあります。

これまで6戦全勝のフェデラーでしたがビッグサーバー相手に勝つ秘訣はブロックリターンです。これで相手のサーブを無効化して、ラリーで押し切る。

ところがラオニッチはフェデラーにほとんど効果的なリターンは与えず、エース量産。

フェデラーはコースの読みもいいのでエースを打たれることは少ないのですが、この日は2セットで21本。完全に主導権を握り、ブレークポイントも与えませんでした。

この日のラオニッチのプレーは絶対にファイナルに行くという強い気持ちが入っていました。はっきり言って全米のチリッチかそれ以上の確変状態に入り、同じラオニッチで比較すればウィンブルドン錦織戦のような感じで手が付けられないといった感じでした。

特にサーブからの3球目攻撃や、強力なカウンターはフェデラーを苦しめました。決してサーブのみではないプレイヤーへの成長を感じました。

私はラオニッチにファイナルに進出してほしくないと思っていました。ただそれは昨日までです。

理由はトップ10対戦で今期1勝しかしていないからです。勝ったのも復帰途中で春先不調だったマレー。

シンシナティフェデラーに赤子の手をひねるようにゲームをコントロールされ敗れたあのラオニッチです。昨日のラオニッチは別人でした。

正直あの確変状態は誰も止められないと思います。タイブレークにチャンスはあったかもしれませんが、フェデラーがリターンの影響で満足にストロークを打てず、結果ミスを誘発されました。

ビッグサーバーは相手にストロークを打たせないことでリズムを崩していく、そういう効果もあったのかと思いました。

ラオニッチは一つの壁を超えました。下位選手には無双できてもトップ選手に勝てなかった壁。

彼こそ、ツア-ファイナルズに行くのにふさわしい選手です。

第3試合は約束された好勝負、ジョコビッチ×マレーです。

熱戦でしたが安定感に勝るジョコビッチが少しずつ差を作り、ストレートで勝ちました。

マレーも6週連続、23戦目の試合でした。20勝3敗という驚異的な数字でアジア・欧州インドアを駆け抜けていきました。お疲れ様と言いたいです。ほんとケガだけ気を付けてほしいです。

さてベルディヒ、ラオニッチがともに勝ちあがる確率を心の中で20パーセントとしていた私ですが、前記事のコメントにある通り本当にナーバスになっていました。

フェレールにとっても正直自動進出と思っていたのが勝たないと通過できなくなり、錦織は6位で入ったパリで通過はほぼ確実と思われていただけに、想像以上のプレッシャーを背負い続けての3試合目。まさに最悪の環境での試合が始まりました。

しかもラオニッチ優勝って厳しいやんと思っていたのですが、正直フェデラー戦のプレーがチリッチの時のようにしばらく続くなら優勝だと思いました。ジョコビッチでも、フェレールでも、ベルディヒでも厳しい。そんな気配すら感じました。

試合はその硬さが出た試合となりました。

第1セット、先に硬さが出たのはフェレール。粘り強さはあれどプレーに反映されない状態。

一方錦織はストレートのウィナーを放つなどショットのフィーリングが合っている気がしました。ここで早速ブレークに成功。

さらに第3ゲームも先行。試合はワンサイドかと思いました。

ところがなんでもないボレーを錦織がミスしたところから状況は一変します。ブレークチャンスを逃すとサービスゲームでミス連発。目の覚めるウィナーを放つも結局次でミスをしてチャラ。こういうもどかしい試合展開の中で終盤のポイントを取りきれず、なんと連続ブレークを喫し5ゲーム連取されます。

ミスの原因はなんなのでしょうか。今期の錦織の中でも最悪でした。チリッチ戦の時はチリッチがよすぎたので仕方ない面がありましたが、フェレールも一応ミスしてくれてる状況でストレートをほとんどサイドアウトしてしまう展開。このころはなんというか錦織圭ではなく、錦織圭の形をした別人が試合をしているみたいでした。しいて言うなら、2012年の楽天覚醒前の錦織に似ていました。目の覚めるウィナーを正直擁護できないようなミスで潰す。本当にもどかしかったです。

第1セットの救いだったのは第8ゲームをなんとかキープし、第9ゲームでそれなりにフェレールを追い詰めることができたことだと思います。しかし3-6で第1セットを落とします。

このセットの錦織側のしょうもないミス(アンフォースドエラー)は24本。テニスは最小24ポイントで1セットを取れますから、感覚的にもこれがどれくらいひどい数字かお分かりだと思います。これ以外にもフォースドエラー(仕方ないミス)とフェレールのウィナーやエースもあります。どうやってこれでセットを取るのか私には分かりません。

しかし結論から言えば、第2セット、第3セットともにアンフォースドエラーは減らず、毎セット20本以上のミスを犯したのです。

どうやって勝ったのか、この数字から判断すると余計分からなくなります。

少し変わり始めたのは第2セットでした。

錦織のウィナーの比がわずかに増えたことと、フェレールの1stサーブが入らなくなったことです。

ほんのわずかな差ですが、ほぼほぼデュースにもつれていた戦いにこの誤差は大きすぎました。

セカンドサーブに入れば錦織も攻めていけます。相変わらずミスが多いですが、はまればリターンで崩し4球目で決めるパターンに持ち込めることができるようになり、ブレークが容易になりました。

ところがサービスゲームで30-0からブレークピンチや実際ブレークされる事例が多発。どうして…と言わざるを得ません。

もちろんメンタル的に与える影響は大きかったのは分かっています。トップ10入りのロペス戦の時は「知らなかった」とコメントしていましたが、加熱する報道(ただし海外が)、質問もされたでしょうし勝てばファイナルということは分かっていたはずです。

そもそもパリ大会全体において錦織の調子が悪く、サーフェスかボールと合っていないのは明らかでした。

ですが特に今日はひどく、そう言う次元の問題ではなく、代わりにテニスができないのは分かってますが代わりたいくらいもどかしい状況が続きました。

特に3-2からブレークに成功しその後ブレークバック、さらに4-3からブレークしてサービング・フォー・ザ・セットだったのにまたブレークバック。5-4からブレークできず絶体絶命の状況になりました。

なんとかタイブレークに持ち込んだ錦織ですが、ここで再びミス連発。0-4となりました。

正直このままタイブレークで落としてたら「擁護できない負け」と書いて、かなり物議を醸していた可能性があります。

それくらいプレーはひどかったし、もう私も諦めかけながら見ていました。全く6-6に追いつけるイメージがありませんでした。

しかしここから錦織が目覚めます。もはや失うものなどない。ここで負ければ、今年最後の可能性もあった場面です。

目が覚めたのか、0-4から7-5。特に4-5で迎えたフェレールのサーブ2本。本当に素晴らしいポイントでした。

最後はサーブポイント。苦しんだ第2セットを手中にし、ファイナルセットに入りました。

この時フェレールがラケットを投げ警告。あのフェレールがです。でも気持ちは分かります。逆の立場なら絶対に勝ちを確信していたと思います。

気落ちしたフェレールは次第に連戦の疲れもあって守備範囲が狭くなってきます。

うまく攻めるポイントが全体的に増えてきた一方、逆にオープンコートができることで焦りがあったのか、錦織のミスは減りません。

明らかに試合の流れを戻しつつあった錦織、しかし先行しても30-0からブレークバックされるなど安定感に欠けるプレーが続きました。

しかしゲーム展開としてはこのころには錦織優勢に傾きつつあり、根拠こそないけどやはりあの第2セットの神がかったタイブレーク、加えてファイナルセット歴代最高勝率の男、なにか勝てる感覚は不思議とありました。

第9ゲーム、効果的なショットが出始めた錦織、粘りを少しずつ失い始めたフェレール、一気に訪れたブレークポイントを制し、先にあと1ゲームにします。

そして、サービング・フォー・ザ・マッチ、いや、サービング・フォー・ザ・ツアーファイナルズ。

最初のポイント。ここまであまり決まっていなかったバックストレートのダウンザラインが決まり、フェレールが一歩も動けなかった瞬間、勝利を確信しました。

ミスが多い中それでも頑固に決めに行くプレーを捨てなかったことが最後にいい結果をもたらしました。

まあこれも結果論なんですけどね。それがネットにかかってたら「またかよ…」で終わってたでしょうけど、何度も、下手をすれば何十度もあったチャンスのラストをしっかり決めたこと。

総ポイントはフェレール113、錦織108。セカンドサーブから31パーセントしか取れず、アンフォースドエラー66。

どう考えても負け試合のスタッツです。でも最後に勝ったのは錦織圭でした。

この日の最後を締めくくるに十分すぎた試合は、アジア人初のツアーファイナルズ、そして錦織圭、ラオニッチの初めてのツアーファイナルズを確定させ、幕を閉じました。

ありがとうフェレール。確かにフェレールも気負う場面で信じられないミスを連発したり、ベストからは程遠いプレーでした。

錦織も同じでした。でもこれこそがファイナルの重み、最終戦の意味なんだと思います。

フェレールも最終戦に行ってほしかった。あれだけ実直にストロークを打ち、最後まであきらめない姿勢。ファンとしても好きですし、プレーヤーとしても目標であり模範的なプレースタイルの一人です。

本当に今年は運がなかったと思います。ハンブルグ決勝でまさかの敗戦。その他にも惜しい負けはいくらでもあります。

しかしフェレールが錦織に負けここで敗退したこと、これこそが今年のテニス界の最大の流れだったのです。

ここ5年、ビッグ4時代と言われていましたが、その陰に隠れていたデルポトロ、ツォンガ、ベルディヒ、そしてフェレールの4人。彼らはケガを除きほぼ5~8位付近をキープ。私の中では「準4強」と呼んでいました。

ところがどうでしょう、最終結果はベルディヒしかファイナルに進めませんでした。そのベルディヒも序盤2000pの大量リードから一時は落ちかけの位置まで下降しました。来年前半、トップ10を外れる可能性もあるのです。

今年はマレーが最後に復調したことで、暫定で1~6位にビッグ4が返り咲き、確かに全員のポイントは少なくなっていますが、何より影響を喰らったのはこの準4強だと思います。

ファイナル常連のフェレールが落ちたこと。これは本当に大きなことですし、何よりこの原因は錦織ら「Young Guns」の台頭に他ならないと思います。

バブリンカの衝撃の優勝から1年近く、テニス界に起きた地殻変動は最もその影響を如実に表すファイナル進出者にはっきりと現れました。

何せ2回目のバブリンカに初出場の錦織、ラオニッチ、チリッチです。これだけフレッシュな面々が揃うのはここ10年で、いやもう少し大きなスケールで初だと思います。

これ以上話を長くすることはできるのですが、寝たいのと、嬉しいことに準決勝に備えなければいけません。話を進めましょう。

ベスト4が出揃い、とんでもない数字が出てきました。

1 ジョコビッチ     9370 ○

2 フェデラー       8700 ×

3 ナダル       6835 -

4 バブリンカ       4895 ×

5 ↗2 錦織圭       4625 ○

6 ↗2 マレー       4475 ×

7 ↘2 ベルディヒ       4465 ○

8 ↗2 ラオニッチ       4200 ○

9 チリッチ       4150 -

10 ↘4 フェレール       4045 ×

11 ディミトロフ     3645 ×

1000ポイント台だった錦織がついに5000ポイント目前です。私は嘘を書いていません。いや自分で書いてて不安になるくらいです。5000ポイントです。そして5位です。ついに片手で数えられるテニス選手になろうとしています。

トップ10の情報を整理し、ツアーファイナルズの組み分けについて解説して終わります。

ファイナルは1位と2位、3位と4位、5位と6位、7位と8位がそれぞれ別の2つのグループに組み分けられ4人で総当たりの予選リーグ(以下ラウンドロビン)を戦います。

たとえば1457と2368みたいな感じに分かれるということです。

ここで面白いポイントは逆に考えると例えば3位は4位とラウンドロビンで絶対に当たらないということです。

さて現状ファイナルの1位と2位はジョコビッチフェデラーで決まっています。ですので今強い2強のうち一人が入ってきます。

現実的にそれ以外で1枠を争うと考えた時に、誰が有利でしょうか?

すると錦織にとって私の当たりたくない順位はこうなりました。

マレー>ラオニッチ>チリッチ>ベルディヒ>バブリンカ

マレーは言わずもがなでしょう。正直当たりたくないです。ビッグ4が2人となればいくら好調錦織でも苦戦を強いられます。対戦成績もありますしね。

ラオニッチは今日のフェデラー戦で上方修正です。やっぱ嫌です。調子も上げてきてますし、錦織が勝ってる試合も苦しい試合ばっかりなので。

チリッチはケガ明けの出場ですが、インドアハードでめっぽう強いのでまあまあ嫌です。全米のこともありますしね。

ベルディヒ、バブリンカは不調です。正直ベルディヒは北京以降ドロー運に救われていて、必死に戦ってるマレーやフェレールのプレーレベルからすると劣っています。前者の3人よりは組みやすいでしょう。

バブリンカはアジアシリーズ以降精彩を欠きすぎています。デ杯決勝もありますし、全敗もありえます。

すると現在の順位は【バブリンカ錦織】-【マレーベルディヒ】-【ラオニッチチリッチ】となり、最悪マレーラオニッチジョコビッチとかいう超厳しい組み合わせもあり得るわけです。

しかし心配はいりません。SF以降で大きく順位は入れ替わります。

3 バブリンカ 4895 ×

4 ↗2 錦織圭 4625 ○  4865→5265

5 ↗2 マレー 4475 ×

6 ↘2 ベルディヒ 4465 ○  4705→5105

7 ↗2 ラオニッチ 4200 ○  4440→4840

数字はシード順位に書き換えています。ランキングは+1してください。

つまり今地点で考えられる8通りの結果で組み合わせはこうなります。

①Wジョコビッチベルディヒ 【バブリンカベルディヒ】-【錦織マレー】-【ラオニッチチリッチ】

②WジョコビッチFラオニッチ 【バブリンカ錦織】-【マレーベルディヒ】-【ラオニッチチリッチ】

③W錦織Fベルディヒ 【錦織バブリンカ】-【ベルディヒマレー】-【ラオニッチチリッチ】

④W錦織Fラオニッチ 【錦織バブリンカ】-【マレーベルディヒ】-【ラオニッチチリッチ】

⑤Wベルディヒジョコビッチ 【ベルディヒバブリンカ】-【錦織マレー】-【ラオニッチチリッチ】

⑥WベルディヒF錦織 【ベルディヒバブリンカ】-【錦織マレー】-【ラオニッチチリッチ】

⑦WラオニッチFジョコビッチ 【バブリンカラオニッチ】-【錦織マレー】-【ベルディヒチリッチ】

⑧WラオニッチF錦織 【バブリンカ錦織】-【ラオニッチマレー】-【ベルディヒチリッチ】

一番左から4位、5位、6位…ですので、自己最高位5位以上には②③④⑧、マレーとの対戦を避けられるのは①⑤⑥⑦となり、どっちかは実現されます。

どっちのほうがいいですかねえ。どっちにもメリットデメリットあるので、結局フェレールに勝っててよかったね!で終わる気がします(笑)

とりあえず現状はこんなところです。とりあえずジョコビッチ×錦織よりも、ベルディヒ×ラオニッチのほうがポイントには大きく影響してきます。

楽しみですね。とにかく今日からの準決勝はボーナスステージ、錦織にとってはかなり体力精神力疲弊していますし、プレッシャーとはいえ精彩を欠きすぎています。勝てたらラッキーくらいに思っておきましょう。

試合はベルディヒ×ラオニッチが夜の10:30から。ジョコビッチ×錦織が深夜1時からです。私は見るのは善処しますとしか言えません。体力的に。勝率は薄いですし、大きな期待はしません。

とりあえず寝させてください…あと第2セット途中からずっと横脇腹が痛いんですが、真面目に病院行った方がいいかな(笑)

それでは。コメント等は夕方返します。寝させてください。