two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

ビッグ4時代は終わらないのか?驚異のパリ準決勝&決勝

11/1 現地17:00~(日本時間翌日1:00~)

Masters 1000 BNP Pariba Open Paris

SF

[1]Novak Djokovic 6-2 6-3 [6]Kei Nishikori

11/2 現地15:00~(日本時間23:00~)

F

[1]Novak Djokovic 6-2 6-3 [7]Milos Raonic

やはり最後はこの男なのか。

準決勝、決勝を終えての正直な感想です。

今これだけ波乱の多いテニス界で、コールシュライバー、モンフィス、マレーに連続ストレート勝ちできる選手はほとんどいないと思います。錦織なら3連勝は可能ですが、ストレートは相当難しいでしょう。

そして準決勝、決勝と今勢いに乗る新世代の旗手2人をいとも簡単にねじ伏せてしまったジョコビッチ、少し前のインタビューで「若手が伸びていることは嬉しいことだが、その座を譲る気はまだない」とコメントしていたまさにその通りのプレーだったと思います。

準決勝の錦織戦は錦織に疲労が見られました。

見ていた方はもうお分かりだと思いますが不可解すぎる1stサーブの遅さ、キレのなさです。

しかし私はちょっと驚くことがいくつかあったので、それを説明したいと思います。

フェレールの関門

前回書くのをやめていた内容ですが、錦織はフェレールと節目の対戦が多いことで知られています。

勝った試合は08全米、12ロンドン五輪、14マイアミ、14マドリードと非常に意味のある試合ばかりです。

08全米はデルレイの優勝がフロックでなかったことを証明し、初のGSベスト16へと階段を上った大会、12ロンドン五輪は12全豪以降の不振の成績を払しょくし、当時メディアが他の大会をあまり報道してなかったこともあり、錦織この調子で行けばと日本の知名度を上げた大会、2014マイアミは錦織覚醒が始まった大会(全豪、メンフィスは立派でしたがシードキープ。一方マイアミは久しぶりのマスターズ4強に加えフェデラー勝利、連続トップ10勝利などいろいろありました)、マドリードは初マスターズ決勝とトップ10入り。

しかしその一方で直近の2勝は他の対戦もハードだったため、その次もしくはもう一つ次の試合で棄権となっています。

今回フェレール戦後かなりぐったりしてる様子だった錦織、その地点で察した私は婉曲的に「明日(ジョコビッチ戦)は相当厳しい」と評しました。

ですので敗戦は予想通りです。が、試合を最後まで全うしたこと、これは驚きでした。

②ケガのリスクから考えた最善のプレースタイル

一方で最近の錦織は「ケガと痛みの違いが分かってきた」とコメントするように棄権する場合も正しい引き際、棄権しない場合は最善のプレーを心掛けているように思います。

この日サーブのスピードが遅かったのは、おそらく何らかの痛みか、あるいはケガに繋がりそうな何かを感じていたからです。

しかし彼は戦いました。最後まで戦いました。

ではなぜサーブのスピードを遅くしたのか?それはジョコビッチが相手だったことに起因します。

ラオニッチ戦での素晴らしいジョコビッチのリターンから分かる通り、他の部分もすごいのであまり言われませんがジョコビッチはリターンの名手です。決勝ではあのラオニッチから3度のブレークです。

錦織の1stサーブは決して秀でたものではありませんから、結局、速くてやや確率を低くするサーブと、遅くて確実にプレースメントなどを重視できるサーブなら、どちらでも返球できてしまうジョコビッチにとっては、速くすることに意味がないからです。

いわゆる期待値の問題ですね。ケガのリスクも含めていますが。その結果おとといの錦織はケガのマイナス要素も考えた上で、遅く確実に入れていき、ラリーでの勝負に持ち込んだということです。

この辺よく考えていたと思います。結果的にストロークにも少しミスがあったのと、ジョコビッチのディフェンスがよすぎたことでなかなかポイントに繋げられなかったのですが、やれることはやっていた感触です。

それが感じられたのがラオニッチができなかったジョコビッチからのブレーク成功にあります。もちろんジョコビッチがサーブで手を抜くわけではありませんから、これは素直に錦織のラリー力がジョコビッチに通用していることの証明に他なりません。

③試合の位置づけ、トップ選手としての責務

今年の過去2回のマスターズ4強は両方とも棄権で終了。その忸怩たる思いはファン以上に本人が思っているでしょう。

やっとトップ10に入ろうかという選手ではなく、今はツアーを引っ張っていく選手へと成長しました。

準決勝を見に来ているお客様に簡単な敗北は見せられない。それは試合前から思っていたでしょう。

マイアミ、マドリードでは批判もありました。

①にも関連しますがそういった意味で試合の棄権をできるだけ遅らせ、特にブレークバックしたところでは観客を大いに沸かせ、観客も満足できたと思います。

自分の体の状況を判断し試合も壊さなかったことは大きな成長だと思います。

やはり3戦連続フルセットというのは痛かったと思います。単純にサーフェスの合わなさとか北京に続き問題となっているHEAD製のボールの問題など、ちょっと風向きはよくなかったですね今回。

そう言った中またしてもシード以上の4強に入り込んだことは自力アップだと思いますし、今回はまああのジョコビッチだと万全でもわからなかったのでこれでよかったのではないでしょうか。

ファイナルについては疲労が取れればですね。ファイナルは中1日で進むので比較的体にやさしいです。万全なら好成績を期待していいと思います。今のところ大丈夫8:ケガで次も厳しい2くらいに捉えています。

さて決勝のラオニッチ戦です。8:2になった理由がこれです。それまでは6:4くらいで「ファイナル欠場かもしれませんね…」と書こうと思っていたのですがこれを見て分かりました。ジョコビッチ、強すぎ!!!

ラオニッチが悪かったかというと決してそうではなかったと思います。結局リターンが返ってしまうとラリー戦になり、よほどのパワーストロークでないとジョコビッチのディフェンスを崩すことができず敗れてしまいました。

この試合の大きなポイントは「確実性」で、ラオニッチが驚くようなショットを放つこともありました。が、それがなかなか続けられません。

それは当たり前なわけでそれだけ強いボールを打てば入る確率が落ちていきます。

つまりコインの裏表で偶発的に表ばかり連続して出るのを待つようなもので、これでは先に4ポイントを取らなければいけないテニスにおいて、なかなかリターンから崩していくのは難しいと思います(この辺りは年末に思考実験記事で説明できたらと思います)。

一方のジョコビッチはある程度厳しいボールを確実に入れていきます。

このほうが嫌ですよね。何度も厳しいボールを追わなければいけない。メンタルも追い込まれるし、こっちがミスしたらポイントになってしまうわけですし。

この辺りジョコビッチのプレースタイル由来ですが、うまさが光った試合だったと思います。

あれだけ勢いのあったラオニッチがここまでやられるのは…という印象です。もう少し粘って、タイブレークでこの確実性の差が出るかなあと思っていたので、なすすべなく完敗したのは驚きでしたし、このジョコビッチからブレークできたのは、錦織本当に体悪いのかと疑いたくなるほどでした(明らかに動きが悪かったんで疲れかケガなのは間違いありませんが)。

さてそういうわけで、レギュラーシーズンが終了しました。10位までのランキングは確定です。こちらです。

1 ジョコビッチ    10010

2 フェデラー       8700

3 ナダル       6835

4 バブリンカ       4895

5 ↗2 錦織圭       4625

6 ↗2 マレー       4475

7 ↘2 ベルディヒ       4465

8 ↗2 ラオニッチ       4440

9 チリッチ       4150

10 ↘4 フェレール       4045

11 ディミトロフ     3645

12 ツォンガ       2740

13 ガルビス       2455

14 ロペス       2130

15 バウティスタ=アグト 2110

16 ↗2 アンダーソン     2080

17 ロブレド       2015

18 ↘2 イズナー       1890

19 ↗2 モンフィス       1825

20 フォニーニ       1790

21 ↘2 シモン       1730

22 ゴフィン       1599

23 ↗2 ドルコポロフ     1455

24 コールシュライバー 1415

25 ↗1 メイヤー       1399

26 ↗2 ベネトー       1365

27 ↘4 ガスケ       1350

28 ↘1 カルロビッチ    1320

29 ↗1 シャルディー     1240

30 ↘1 ロソル       1210

年末ランキングでの自己最高位更新決定は、バブリンカ、錦織、ラオニッチ、チリッチ、ディミトロフ、ガルビス、ロペス(33歳)、バウティスタ=アグト(初コミットメントプレイヤー)、ゴフィン(初コミットメントプレイヤー)、メイヤー(初コミットメントプレイヤー)、ロソル(初コミットメントプレイヤー)です。

そして忘れてはいけません。もちろんファイナルでまだ動きますが、錦織圭は史上初の5位にランクインしました。

ついに世界の片手に数えられる選手です。相変わらず若手最強の位置にありながらまだ上を狙えます。この男、どこまで進むのでしょうか。

さてファイナルの組み分けですが、どうやら今日の24時から組み合わせ抽選のようです。

シード順は、

1.ジョコビッチ

2.フェデラー

3.バブリンカ

4.錦織

5.マレー

6.ベルディヒ

7.ラオニッチ

8.チリッチ

となり、組み分けは【ジョコビッチフェデラー】-【バブリンカ錦織】-【マレーベルディヒ】-【ラオニッチチリッチ】となります。

前回も言いましたが、当たりたくない組み合わせ順はマレー>ラオニッチ>チリッチ>ベルディヒ>バブリンカです。

加えてジョコビッチは今回のパリで確信しました。相当強いです。翌週のデ杯決勝に向け準備するであろうフェデラーの方が戦いやすいのは明らかです。

したがって錦織にとってラウンドロビンを勝ち抜けるために最高の組み合わせはフェデラー・錦織・ベルディヒ・チリッチで、最悪の組み合わせはジョコビッチ・錦織・マレー・ラオニッチです。

最高の組み合わせはおー普通にすごい大会だなですけど、最悪の組み合わせは絶句しますね。錦織強いですが、これだと全敗も普通にあります。

ちなみに対戦順は確かシード順とは別の抽選があったはずです。ちょっと不確かな記憶ですので誰かご存知でしたら補足お願いします。

組み分け後大会の詳細と展望はやるので、今日はこの辺で。とりあえず今週1週間で体力を回復します。それでは。