two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

錦織劇場inメンフィス第4幕、大団円(2015メンフィス決勝)

2/15 現地15:00~(日本時間翌日6:00~)

ATP250 Memphis Open

Championship

[1]Kei Nishikori 6-4 6-4 [2]Kevin Anderson

完勝でした。さくさくと進んだ試合は少し見どころもありながらも表題通り大団円となりました。

今日で終わりだ。そんな思いが前へと足を進めたのではないでしょうか。

今日の錦織はキレキレでした。もちろんミスはありました。しかしそれはこれまでの3試合から比べれば簡単に目をつむることができるほどよくなっていました。

第1セットはややジェットコースター気味の展開でした。

アンダーソンはビッグサーバーの典型的選手。2mを超える身長から打ち下ろされるサーブはカルロビッチ、イズナーらと同様に軌道も独特です。

しかしストロークは打ち込むタイプのボールでなければ脅威ではなく、第1ゲームはまさにリターンさえきっちり返ればポイントは錦織、そんな感じでした。

立ち上がりアンダーソンのサーブが入っていませんでした。結果6本中3本。特にこのセカンドサーブからのポイントを錦織はすべて取り切りものにしました。

これまでですと3本もあれば1本は勝手に錦織が自分でミスするためこういうチャンスは訪れなかったのですが、今日に限って言えばこういう場面でいいプレーができたことがさくっと勝てた勝因ではないでしょうか。というか、最初からやってよ…(笑)

しかし第4ゲームでやってしまいます。また40-0からのブレークを許します。

このゲームだけは自分からミスが出てしまいました。アンダーソンもリズムをつかみしっかり打点に入って打ち込むボールが増えてしまい防戦気味。これで一気に試合は振り出しに。

するとアンダーソンが流れをつかみます。第5ゲーム、第7ゲームはサーブを決め続けアンダーソンから見て4-3。

一方の錦織はミスを抑えることで問題なくキープ。タイブレークに行くかなあと思った第9ゲーム、二人の地力とメンタルの差が出たゲームでした。

この第9or第10ゲームでブレークして勝つのが錦織の勝ちパターン。簡単にできることではありませんが「ギアを上げる」と言われているものです。

ギアを上げるとは結局なんなのかは微妙なところです。結果的にポイントが続いたからギアが上がったと思いがちですが、内容が悪くてもポイントが取れることもあれば相手が上回れば自分がどれだけいいプレーをしたって取れないことだってあるし、極論言えばエース4本打ちこまれればこっちが何を用意したってノーチャンスです。

ただ結果としてはギアを上げたことがはまり0-30となります。

ここからがアンダーソンと錦織の差でした。錦織はプレーオプションをたくさん持っていますが、アンダーソンはサーブを打ち続けるしかありません。結果アンダーソンがストロークでミスを1本して15-40となり、セカンドサーブをリターンエース。よくある形で均衡を破り、5-4とします。

アンダーソンと錦織の差が見えたのは続く第10ゲームもです。アンダーソンのギャンブルリターンが決まり錦織のミスも重なって0-30。先ほどと全く逆。ですがここからが違いました。

先ほどの錦織はリターンすればポイントを取れる立場でしたがアンダーソンはそうではない。リスクを取った強打が無情にも決まらず30-30。

これは一見すると単なるミスですが、アンダーソンは上位相手にこういう場面があると昨日言ったように、こういうチャンスを逃すことは起こりうることだと思っていました。

リスクを取っているというよりはある種の自滅。チャンスを前にしながらものにできないのがアンダーソンが10位台にとどまっている理由の一つです。武器だけならもっと上の力があると私は思っています。

30-30からは錦織がサービスエースを叩き込むなどして第1セットを取り、楽な展開になります。

同じ0-30から全く違う結果となった第9ゲームと第10ゲーム。この試合を象徴するような場面になりました。

第2セットは錦織が押していきます。サービスゲームであの昨年の決勝、カルロビッチ戦を彷彿とさせる安定した試合運び。ダブルフォルト以外全くポイントを与えない完璧なゲームメイクを見せました。

この間錦織は攻める姿勢を失いませんでした。アンダーソンをしっかり動かし、大型選手相手特有の走らせてミスを誘う戦法がしっかりはまりました。

一方アンダーソンもしっかりと自分を取り戻しサーブを入れていきお互いノ-チャンスが続きます。

そして第5ゲーム。最後の決定的な場面となりました。ついに錦織のリターンが火を噴きます。2本連続のリターンエースです。

2本目はややフレームショット気味でしたが完全にアンダーソンの読みを外した格好になりました。

ここで0-30とリードした場面でアンダーソンはサーブとスーパーショットで追いつきます。嫌な流れができつつあったここで錦織が力を見せます。

持ち味のディフェンスがさえ、なんとかリターンを返して守勢に回るラリーをしっかりつなげ、ブレークポイントではベースラインの後ろから狙い澄ましたパッシングショット。

錦織のスーパーショット集でよく見る光景ですし、今日もさっそく各種メディアで素材として使われていますが、このショット、10割では打たずコントロールしつつしっかりDTLを打っています。非常に技のあるショットです。簡単にはできないでしょう。アウトやネットしてしまってはいけないわけですし、ショットを打つ前からしっかりデザインされたショットだったと思います。

まあ、こういうプレーが出ている限り錦織は簡単には負けません。最後はもたついて劇場として観客を飽きさせませんでしたが(笑)、しっかりとキープを続けメンフィス史上初の3連覇を成し遂げました。

率直にすごいです。コナーズ、ハースらが2連覇を達成していますが当時より若干大会のレベルが落ちているとはいえ史上初の3連覇は形容できません。

内容もこの3年でチリッチ、ロペス、カルロビッチ、アンダーソンに勝利。文句を言わせない3連覇でしょう。

それだけではありません。これで錦織はインディアンウェルズ前までの5位を確定させました。こちらです。

runのところは今週の勝ち負けになっています。バブリンカ、錦織が優勝しました。サンパウロではクエバスがツアー初勝利から勢いよく勝ち上がってきたVanniを下して優勝しています。

さて、今週来週の上位の参戦予定の確認です。

リオ(500)…ナダルフェレール

マルセイユ(250)…ラオニッチ、バブリンカ

ドバイ(500)…ジョコビッチフェデラー、マレー、ベルディヒ

アカプルコ(500)…錦織、フェレール、ディミトロフ(、チリッチ)

ブエノスアイレス(250)…ナダル

このうちラオニッチが気になるところですが、優勝しても250pまるまる加算されるわけではなく、160pしか加算されず5140pになり、わずかに錦織を超えられません。

ドバイやアカプルコにWC参戦すればわかりませんが翌週はデ杯もあり4週連続参戦になるためさすがにないと思っていいでしょう。

ちなみにデ杯で2勝しても、もっと言えばダブルスでも勝ったとしても押し出すポイントにならないので1ポイントも入りません。(ただしマルセイユの成績が悪かった場合は5p入る)相手が日本なのであれですがサービスエース100本打っても1ポイントも入りません。

とにかくラオニッチは最大でも5140pまでしかできないので、ということで。バブリンカやベルディヒも届きません。

ナダル、マレーの成績と錦織のアカプルコの成績次第ではいきなりインディアンウェルズから4位、第4シードでの登場も見えてくるという希望が広がる優勝でもあります。その辺はまた明日以降にまとめていこうと思います。

ここからは細かいネタです。

ロッテルダムではバブリンカが優勝しました。第1セットではベルディヒが強力なストロークでバブリンカを封じ込めましたが、第2、第3セットでは勝負所でバブリンカがいいプレーを見せ、あとベルディヒの相変わらずのメンタルの弱さもありバブリンカが逆転で優勝しました。

これでバブリンカは2012年マレー以来のキャリアで4カテゴリー(GS、マスターズ、500、250)すべてを制覇する選手となりました。昨年まで250しかタイトルのなかった選手です。本当にすごい快挙です。

ベルディヒは残念ながらランキングを落とす形になりました。レースランキングでは4位をひた走っていますが、ドバイ、マイアミと守るポイントは続々。他選手次第ではトップ10陥落もある中厳しい戦いが続きます。

WOWOWさん、しっかりしてください。

さすがに今日の中継はありえなかったです。この決勝がライブ中継されなかったからです。

もちろんNBA中継など切れない事情は分かっています。しかしそれではなんのために放送権を取ったのかわかりません。低いラウンドで試合時間が読めないのならまだしも、準決勝決勝は試合開始時間がずれ込むことはまあなく、調べれば素人でも試合開始時間が読めます(大会公式ホームページなどに行けばチケット情報などから試合開始時間がわかります)。

3チャンネルあるのですからそのあたりフレキシブルに考えてほしかったです。

そういう状況で中継が被ることがわかっていたならなぜわざわざGAORAから放送権を買い取ったのか。謎でしかないと思います。

もちろん他局の参入で焦っているのはわかりますが、それで中継の質が落ちてしまうのはむしろ本末転倒と言わざるを得ません。非常に残念でした。

さて今週はリオの一部の結果だけ追えばいいはずなので気持ち的に少し休みたいと思います。といってもやるべきことはありますし、記事は書きます。まずはアカプルコにチリッチが出るのかどうか、そしてデ杯に関する情報、ランキングの整理、データ整理などです。

ツアーに日本人が出て優勝する。そしてテレビでその活躍が報じられる。

本来当たり前のことですが、その当たり前が今現実に成り立っていることに改めてすべてに感謝です。