two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

【考察】今のランキングポイント以外で実力を推し量る方向はないのか

こんにちは。

NHKさんのマスターズ特集を見ていて思ったのですが、結局マスターズ1000ってなんですか?

せっかく中継するのにマスターズが小さなグランドスラムで、トップ選手が全員出場する大会という新規テニスファンが知らない事実に触れずに進んでしまっていたのが残念です。これに関しては中継する側としてもぜひ知ってほしい、トップ選手出るから見てね!とつなげられる内容だったのにもったいない印象を受けました。

あとマレーが空気すぎて泣きました。ケガで離脱しているわけでもないのに触れられているのはビッグ4の弱体化のところで「夏場に弱い」のみ…

最近まわりでもマレーが過小評価されていて残念です。私たちが「日本のテニスファン」がもっとも見習わないといけない選手こそがマレーだと思います。それについては明日書きます。マレーが歩んだ道こそがこれから錦織圭が歩む道そのものです。

あとジョコビッチとマレーが夏場に弱いってそれ本当ですか?

ジョコビッチはキャリアで取れていないマスターズがシンシナティだけだし、昨シーズンはUSオープンシリーズが一番成績が悪かったので分かるんですが、マレーはマスターズ9勝のうちの4勝がカナダとシンシナティ、加えて全米優勝経験がありむしろ苦手なのはクレーシーズンなのは明白です(ほとんど4強以上に進めない、クレー未タイトル)。

もちろん新規ファンにはこれでも十分すぎる内容だったとは思うのですが、多くのコアなファンが「えっ」と突っ込みたくなる内容だったようです。

なんべんも言っていますが嘘が報道されるくらいなら報道されないほうがましというスタンスを取っていますので、いくら脚色してもらってもそれはテレビなんでいいんですが、嘘だけはいけません。

さて今日は少し違ったアプローチから「強さ」を考えていきます。

無批判にランキングシステムを受け入れて試算している立場の人間ですので、やや矛盾している立場ではあるのですが、それでも問題点はすぐ挙げることができます。

例えばA選手とB選手というトップ選手がいて、A選手は昨年のマスターズで2回戦敗退の10p、B選手は優勝で1000p入っていて、今年のマスターズでA選手は下位選手に敗れて3回戦敗退の90p、B選手は連覇を達成しました。

ところがA選手B選手はわずか10pしか離れていなかったので、A選手が80pを増やして逆転。優勝したにもかかわらずB選手はランキングを落とすことになりました。

こういった事例は多かれ少なかれ様々なランキング帯の選手間に実際に起きている出来事です。

ランキングは様々な大会を転戦する都合から1年間にしなければいけないのは仕方のないことです。

ところが現実的に戦うのは世界のどこかの限定したサーフェス、環境。こういったときに時にランキングが意味をなさないことはしばしばあります。

例えば今日ガルビス(15位、2045p)とトミッチ(35位、1150p)が試合をしたらどっちが勝つと予想するでしょうか?もちろんやってみないとわかりませんが、ガルビスは今シーズン未勝利(0-5)。正直すでに二けた勝利、勢いのあるトミッチ過半数の支持を集めるのではないでしょうか。

ランキングはあくまで年間平均値を表していて、その場その場での強さとは一切関係ないのです。

メンフィスも結果論予選勝者で力のあったハリソン、クライチェクに錦織が苦しめられました。どちらもあのドローでありうる最もランキングの低い選手との対戦でしたが結果は違いましたね。大苦戦でした。

こういった要素を反映できないか?いろいろなことを考えてみました。

そんなときに当たったのが「レーティング」という考えです。

すでに将棋やチェスなど様々な場面で応用されているシステムです。勝てばレーティングが上がり負ければ下がる。しかし戦う前の相手のレーティングとの差が勝った時(負けた時)に上がる(下がる)量を決める仕組みです。

つまり相手の方がレーティングが高ければ強い相手と戦ったということ。勝てばそれだけ自分が力があるということなので一気に自分のレーティングが上がる。負けても相手が強かったので自分に責任はなく、そこまで下がらない。

こんな感じで勝ち負けを繰り返していくとやがて実力が一定ならある程度の値に収束する。力がついていけばじわじわと上がっていく。対戦回数が多く中長期的な見通しでは正しい結果を反映してくれるはずです。

レーティングで最もメジャーなのは「イロ・レーティング」というシステムで、日本語ウィキペディアにも記述があります。

このイロ・レーティングシステムで現在のATPツアーの各選手のレーティングを計ったサイトがありました。こまめに更新しているわけではなさそうなので、全豪後のこれが最新になります。

デルポトロは強いままけがで離脱してしまったので数字の更新の仕様がなく、現在でも6位にいるようです。

錦織はこのランキングでビッグ4に次ぐ5番手につけています。やはり上位に勝ちつつ、格下への負けも減ってきた(大量失点が少ない)ことがこの位置を生んでいるようです。

ラオニッチは下位ラウンドではコンスタントに勝っているけど上位に勝てないのでこういう位置にいますね。

バブリンカは取りこぼしが多すぎたのがたたってます。上限がこの位置でないことはわかってるんですけど、中長期的な強さで見るとこういう位置づけになってしまうんですね(ロッテルダムで少し取り返したと思いますが)。

ちなみに錦織とナダルのポイント差が44。その後錦織はメンフィス優勝、アカプルコはレーティングで50p差しかないフェレールに敗戦、デ杯ではラオニッチを含む2勝、それに対してナダルはリオで300p差以上あるフォニーニに負け、ブエノスアイレスはトップ50に勝っていないのであまり伸びていません。現実的にはナダルと錦織の差は40は切っているものと推測されます(計算できないんで本当のところはわかりませんが)。

ウィキペディアの理論値から私が計算したところによると、レーティングで40差がある選手の試合の勝率は56%と44%のようです。

そうか、40%超えるのか…でもわからないでもないです。

ちなみに錦織とジョコビッチの差が235なので錦織の対ジョコビッチ勝率は20.4%です。なんか妥当だと思いました。

このレーティングシステムでもかなりいいと思ったのですが、起点がわからないのとあくまで他人がやっているものなので参考値にしたいと思います。

そこで一応私なりのレーティング(数字ではなく、単純な大小関係)を作ってみました。題して「TSDレーティング」です。

TSDは私の名前ですね。あと名前これからこれで統一します。tsdさんかTSDさんでお願いします。

私が参考にするのはレースポイント、勝敗、対トップ10勝敗、対非トップ10勝敗、非トップ10勝利のランク帯別の分布です。

このTSDレーティングで計るのはトップ10選手の力の「瞬間値」の大小関係のみです。

テニスは瞬間の強さも重要。平均値は普通のランキングに任せるとして今勢いがあるかという部分に特化したレーティングを作ることにしました。

トップ10対応のレーティングなので評価材料を「上位に勝てるか」「下位に取りこぼさないか」という面で分けて、特に下位選手には様々なランク帯があるのでそれを分けることにしました。

あとテニスという競技の性質上、もたついて勝った場合と完勝した場合の差はつけないことにしました。そういうことをやったほうがもっとクリティカルな結果を得られそうな気はしたんですが、作業量が増えすぎるのと試合評価ができないものがいくつかあるのでやめました。

本来錦織のメンフィスはもたつきすぎで、こういうのと一律にダブルベーグルを同じ勝ちと評価するのはよくないんですが…

また瞬間値のデータを取るために、年間の数字ではなく3か月程度の成績でつけようと思います。今回は年初からここまでの成績(デ杯含む)でつけました。

まず、各選手をレースポイント順に並べます。

名前 勝敗 対トップ10 対非トップ10(ランク帯11~30 31~50 51~100 101~)

ジョコ14-2 4-1 10-1(0-2-4-4)

バブリ15-2 3-1 12-1(2-3-3-4)

マレー12-3 1-1 11-2(2-3-4-2)

フェレ18-1 2-1 16-0(3-2-7-4)

ベルデ16-4 1-4 15-0(3-4-6-2)

錦織圭16-3 2-3 14-0(2-4-6-2)

フェデ11-1 2-0  9-1(2-3-2-2)

ナダル11-3 0-1 11-2(2-1-5-3)

ラオニ11-5 1-4 10-1(1-2-6-1)

こうなりました。一応10勝以上した選手に広げると、トミッチ(16-6)、トロイツキ(14-4)、シモン(12-5)、カルロビッチ(12-5)、アンダーソン(12-6)、ミュラー(12-6)、セッピ(12-7)、ヤング(11-6)、ガスケ(10-3)、モンフィス(10-4)、ガルシア=ロペス(10-5)、ジョンソン(10-6)、スタコフスキー(10-7)となります。このうち上記の9人がすべて達成している2勝1敗ペース以上に限定すると、トミッチ、トロイツキ、シモン、カルロビッチ、ガスケ、モンフィスのみになります。

ただこれらの選手を対トップ10勝利経験+下位取りこぼし2敗以下で並べると、ぎりぎりシモンがデ杯デッドラバーを除けば2敗なだけで、残念ながら総合的にこの9人を超える成績を持っている選手は下位に誰一人いません。シモンの勝率もラオニッチにわずかに勝っているだけで他の8人には程遠い数字です。

今シーズン序盤は昨年ツアーファイナルズを争っていた11人から不調のディミトロフと、ケガで出遅れたチリッチを抜いた9人が抜きんでる結果となりました。

しばらくの間この9人を「strong 9」と呼ぶことにします。ビッグ4的なノリです。

こう考えると4回戦で第9シードのベルディヒを避けれたのは大きいし、バブリンカ(+ベルディヒ)にとってはきつすぎるドローなんですね。

本当に今年はこの9人以外に長期的に勝てそうな選手がいないですね。チリッチにはそういった面でも最後の10番目のピースを埋める活躍を期待していますが、どうでしょうか。

というわけでここからは9人の力関係を見ていくことにします。

まず、この中で唯一5敗、勝率も6割台にいるラオニッチを9位にします。

トップ10に4敗しているだけなのですが、トップ10同士の比較なのでこの数字は痛く、他の成績を見ても上位に上がる理由が見当たりません。

続いて8位のナダルもすぐに確定します。

驚かれるかもしれませんが、トップ50以上の勝利数が最低、勝率もそこまで高くなく、対トップ10で唯一勝利なし。これが痛いです。上位に勝っていけばすぐレーティングも戻りますがこの2か月間ではこの判断をしないといけません。

ここからは微妙な判断を強いられましたが、おおむね最終結論は納得しています。

ナダル、ラオニッチに対する成績を対トップ10から抜くと、ベルディヒが0-4になります。トップ10以下への取りこぼし0はさすがですが、上位に押し上げる可能性をこれで潰してしまっています。7位にしました。

このベルディヒを基準にすると、フェレールに勝っていて、勝率と対トップ10で上回る錦織がやや上に行きます。

マレーはベルディヒに勝っているものの、ジョコビッチに敗戦。レーティングの性質からとりあえずマレーを上にします(ここは要議論)。錦織と比較すると、錦織が取りこぼし0なのに対して目につくロッテルダム→ドバイでの取りこぼし2連続。またよく見るとナダルと勝ち星の成績が対トップ10に1勝多い以外変わらず、ベルディヒより下でもいいかと思ったんですが、錦織、マレー、ベルディヒの序列を確定させます。5~7位です。

続いて1~4位。難しかったのですが、本当にドライに考えると錦織に1敗しかしていないフェレールを1位にしてもいいのですが、トップ10に4-1のジョコビッチを1位にすることにしました。全豪優勝が大きく、ドーハやドバイでの敗戦を補っているとしました(要議論)。

フェレールが2位で続きます。バブリンカとフェデラーですが、バブリンカはフェレールと僅差ですが、取りこぼしの分とジョコビッチに敗戦がついているのでフェレールをわずかに上回れず3位としました。

フェデラージョコビッチ戦で評価を大幅に上げましたが、対トップ10に2-0以外に評価できるポイントが少なく、試合数の溜まっていないフェデラーを上位に上げることが自分の中でできませんでした。

1~4位については賛否あると思いますが、こんな感じで1~9位を決めました。試行回数が少ないんでどうしてもこうなるんですよね。

一応1位から順に並べると

1ジョコ14-2 4-1 10-1(0-2-4-4)

2フェレ18-1 2-1 16-0(3-2-7-4)

3バブリ15-2 3-1 12-1(2-3-3-4)

4フェデ11-1 2-0  9-1(2-3-2-2)

錦織圭16-3 2-3 14-0(2-4-6-2)

6マレー12-3 1-1 11-2(2-3-4-2)

7ベルデ16-4 1-4 15-0(3-4-6-2)

ナダル11-3 0-1 11-2(2-1-5-3)

9ラオニ11-5 1-4 10-1(1-2-6-1)

細かいところは除いて、だいたいもっともらしい順位になっていると思います。

ちなみにこれで今週のインディアンウェルズを見ると

①ジョコ

②フェレ

⑥マレー

錦織圭

⑨ラオニ

ナダル

③バブリor⑦ベルデ

④フェデ

となり、ジョコビッチ山とフェデラー山が厳しいことがわかります。

これは所詮一般人が考えたレーティングだしがばがばなんですが、みなさんは選手の強さをどう計りますか?TSDレーティングシステムへの批判でもいいです(笑)