two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

なぜ前に出る?今シーズン最も納得のいかない敗戦(2015インディアンウェルズ4R)

3/17 現地11:00~(日本時間翌日3:00~)

Masters1000 Indian Wells BNP Paribas Open

4R

[5]Kei Nishikori 4-6 6(2)-7 [12]Fericiano Lopez

「ロペス相手には平易なミスを1ゲームに3つ以上しなければブレークされるようなことは少ないと思います。」

第1セット第10ゲーム、そして第2セット第4ゲーム。その唯一の可能性をやってしまいました。

なぜそうなったのか?そこに見えないプレッシャーがあったからです。

今日はロペスのストロークのミスは少なかったです。ただそれをロペスがよかっただけで終わらせるのはいけないです。

バックハンドにもう少し高い打点で打たせるボールを作ればミスが増えたかなと思います。低弾道のボールに対してはロペスのスライスはよく効きます。攻撃性はないですが守備性は高いです。

ロペスは片手バックハンドなので、上から抑えるようにスライスを打ったり力の入りにくいトップスピンを打てば必ずミスは増えていたはずです。

第1セットは全体的に錦織もしっかりストロークで押していた場面が多かったと思いますが、IW特有の遅いサーフェスにロペスのスライスが噛みあい、時間を作られて決定打を決めることがなかなかできない状況でロペスに精神的な余裕を与えてしまいました。繋いでいれば勝てる。ロペスはこう思っていたのではないでしょうか。

またサーブは確率こそロペスにしては低いものの、入ってくればなかなかチャンスに結びつけることができずにブレークチャンスも第1ゲーム以降あの土壇場で追いついた第2セット第7ゲームまでありませんでした。

ただ、私が思うのは全体的に互角の勝負だったはずです。錦織が無駄にブレークされなければ勝てた試合でした。

結果的にロペスのストレートですしそうは思いにくいかもしれませんが、第1セットはあのブレークされるゲームまで70%以上のサービス獲得率があり、一度もブレークポイントを与えていません。どこにプレッシャーを感じる要素があったのでしょうか。

確かにウィナー本数は少なかったしロペスはよく拾っていた。しかし結果ポイントが取れている手前それを続けていればよかったはずです。

なのにあの第10ゲーム。驚いたのはサーブ&ボレーの多様です。

サービング・フォー・ザ・セットでやるのなら意表もついているしどうぞという感じですが、あの場面でやるにはあまりにもまだ成功率が低すぎます。

よくサーブ&ボレーは「100回やって51回成功すればよい」という格言があります。

これを聞くとテニス初心者の人ほど驚かれます。前を取ったら100%決めないといけない。そう思いがちですがテニスは2ポイント離すことを積み重ねるゲーム。閑話休題シリーズでも解説しました。

ただそれは一般論です。確実にキープしなければいけないこの場面で1本ならまだしも多用は絶対にしてはいけない。

バブリンカ戦もそうでしたが、これを見たときに覚悟しました。付け焼刃で勝てるほど甘い試合はこのレベルのラウンドでは絶対にないです。

それこそロペスほどの成功率がある選手なら多様でもいいのですが、肝心な場面での挑戦が多いためかもしれませんが錦織に決定率はそこまでない。

あの付け焼刃プレーをどうしてそれまで互角に戦っていたのにやってしまったのか。私はここに錦織が感じている見えないプレッシャーを感じました。

第1ゲームキープできず、その後もなかなかブレークできない。確かにタイブレークに入ったら嫌だったし第2セットは事実それを象徴するようなタイブレークでした。

しかしあの場面でロペスはそれこそノープレッシャーになってしまった。チャレンジャーはむしろロペスなのに、あの場面で突然立場を逆転させてしまった。これがブレークポイントを2本とも取られ、自らは7本中1本しか取れなかったことに象徴されます。

冷静になれば、いつも通りプレーすればよかったはずです。

ストロークでいいポイントを重ねてやられたのならばそれは仕方ないしロペスがうまかった、強かったで済むのですが言ってしまえばロペスは何もしていない。

結論から言えば第2セットも含め、自滅で落としてしまった試合です。

第2セット第4ゲームに入っても同じようなパターンで落とし、さすがに負けを覚悟しました。しかもかなりです。

そこから第7ゲーム。0-40に行ったゲームはよく我慢していましたしロペスも平易なミスが出ました。

しかしここでまた決め急ぎから30-40で信じられないジャックナイフのミス。結果ロペスがDFとボレーミスでブレークできたものの、正直内容の良くないブレークでした。

こういった場面から流れが生まれることもありますしここからのキープまでいい感じでした。

ですがサーブ4本であっさり第9ゲームをキープされるとあとはロペスのサーブに対しノーチャンス。第1セットを落として以降終始不利になっていた(と感じていた)のがたたりました。

今日は長めに書きます。久しぶりに悔しい負けだからです。

錦織の対トップ10以外の敗戦は昨年10月の上海ソック戦です。

それから今日まで実に16連勝。これは連勝数で言うと今日地点ではベルディヒに次いで2番目、期間としては現トップ10最長。

いかに下位に負けていなかったかが分かります。

さて、これより前のトップ10以下の選手への敗戦を振り返ってみましょう。

上海ソック戦…3週連続の疲れ、やや仕方ない面あり

ワシントンガスケ戦…のう胞手術前、正直フットワーク悪い

全仏クリザン戦…復帰直後、まだ疲れてるしアジャストできてない

IWハース戦…純粋にテニスで負けた

驚くべきはその数の少なさですが、最も重要なのは私が太字で表現したここです。「純粋にテニスで負けた」

私が判断するテニスで負けた試合はちょうど1年前のIWなのです。

それ以外の敗戦に関しては悔しさはあまり残っていません。そうかそうかと次に切り替えられた大会でした。

IWが苦手なのか?賛否はあると思いますが私は苦手だと思います。

このコートの跳ねるボールに対しての処理は決してうまくないと思いますし攻撃性を欠いています。

また8年戦ってやっと今年16強というのも非常に悪い成績です。例年は故障明けという年もありますが今年はそれはありません。

一部報道では手首のアイシングという話も出ていますし、年初から手首のサポーターも取れていないのでそれは事実ですが、手首がどうだったかは関係ないです。プレー選択を間違って負けた以上この試合はテニスで負けたのです。

もちろん目の覚めるウィナーを打てばよかったのですが、ネットプレー以外でロペスが取ったウィナー本数はおそらく一桁だったでしょう(公式スタッツから判断)。これが物語っています。自発的なミスを減らしていればそれは相手のミスに変わったでしょう。少々無理にでも繋ぐテニスに切り替えていれば結果は違ったのではないでしょうか。

最近の錦織に言えるのは攻撃的テニスが持続していることです。ただ持続しているからこそ無理に決めに行くボールが増えている。

それでも改造されたサーブとミスの割合で下位選手には勝てます。16連勝が物語っています。あれだけの攻撃性を受けきることは正直トップ10以下の選手には難しい。

ただロペスに守られて負け、フェレールに拾われて負け、もちろんラリーが続けば続くほど最終結果はどちらかのミスになります。しかしその前提を分かったうえでもミスが多すぎるのがここ2か月の錦織圭の現状です。

そこで行かなくても…というのが比率として多くなっている。ハリソン戦の圭 大好き!さんのコメントにもありましたが、第2セットはそこをうまく修正して勝っているが、言ってしまえば第1セットは攻めすぎ。こういうパターンが増えているし、実際それで簡単なミスからブレークされセットを落とす場面が増えています。

2014年、チャンコーチの改造計画でそろそろ忘れられてる事実があります。「徹底した基礎の反復練習」です。

よくチャンコーチが入ったからメンタルが強くなったという意見を聞きます。ある程度はそうだと思いますが大逆転劇場はもっと前からたくさんやってました。とっくにメンタルモンスターの素質はありました。

2014年の錦織圭を最も大きく変えたのはミスの減少です。

そしてそれを生んだのがオフシーズンの反復練習。しかも基礎。チャンは錦織の攻撃性やストローク力は最初から信頼したうえでそれを最大限生かす方法としてミスを減らすということを最初に取り組みました。

そしてそれは結果となって現れます。それこそが2014年躍進の最大の理由です。

それが今年に入って少しずつ歯車が狂い始めている。何かがおかしい。下手をすればサーブよりも取り組むべきはここなのではないでしょうか。

普段ですと切り替えの早い私ですし、トップ10に負けることは仕方ないし普通相手がうまい。トップ10以下への負けも既述の通り1年間悔しい負けはなかった。

今日は珍しく立ち止まりたいと思います。率直に悔しい。こんな負けは久しくなかった。

前回のフェレール戦で「負けることを恐れてはいけない」と言った私があえて言います。

勝たなければいけなかった。この敗戦を重く受け止め、そしてマイアミで爆発したい。本人もファンも。