two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

あのー、ちょっと強すぎじゃないですか?(2015マイアミ4R)

3/31 現地17:30~(日本時間翌日6:30~)

Masters1000 Miami Miami Open presented by Itau

4R

[4]Kei Nishikori 6-1 6-2 [18]David Goffin

わずか6度目。

これはなんの数字でしょうか?

正解は錦織圭がマスターズ8強に進んだ回数です。

錦織はなかなかマスターズで大物食いをできない時期が続き、16強で止まる大会が続きました。12年には4回、13年にはマドリード以外で4回16強があります。

私個人としても2012~2013年の錦織に求めていたのは「マスターズでもっと勝ってほしい」でした。

マスターズ8強の180pは今でこそあまり大きいポイントではなくなっていますが、2000pもなかった当時の錦織にとってみればかなり大きいポイントでした。

今日は勝って8強に進みました。当たり前のように勝ってしまいました。強すぎました。

しかし忘れてはいけない、たった6度目だということを。私たちが強くなった錯覚に陥ってはいけない。信じられない領域にいるのだということを今日は口酸っぱく言いたいと思います。

今日の試合を見て思ったのは、今週錦織が優勝してもなんらおかしくないということです。すでに多くの方もそう思われているでしょう。強すぎです。

マスターズの優勝、希望論ではなく初めて現実味としてこの言葉を出します。

だからこそ私は大勢の人が見ているこのブログで扇動するようなことを書いてはいけないので心を鬼にしていつもの慎重モードに切り替えています。

まだ8強は6度目でしかない。とんでもない領域にいとも簡単に勝ち進んでしまったその姿は、2014年やそれ以前の上位食いで勝ち上がった快進撃とは違った新しい2015年の錦織圭を見せてくれました。

いろいろあったとはいえベルディヒフェレールも勝ち残っています。まさにそんな感じ。トップシードとしていとも簡単にその責務を果たす。

全豪は苦しむシーンも多かったですが今回は圧勝に次ぐ圧勝。シード選手としての貫録をついに身につけたような気がします。

試合を振り返りましょう。

正直言って今日のゴフィンはかなりよかった。試合を見ていれば分かりますが自滅したユージニー、踏ん張りが利かなくなったトロイツキと違い多彩なショットを打ってきましたし、普通に押し込まれてウィナーを取られる場面もありました。試合前に警戒していた度合いよりはかなり危険な匂いを感じました。

オープニングから目立つミスはフォア。今回も先に相手にブレークチャンスを握られました、第3ゲームです。フォアのミスが続いた結果です。

このゲームはサービスを中心になんとかしのぐと、続く第4ゲームでチャンス。ロングラリーを制してBPを握ると1本で取り切り3-1に。

その後はエースも飛び出すなど安定したテニスを展開しゴフィンに隙を与えません。

一本一本のラリーの内容はかなりレベルの高いものでした。2,3回戦とは全く内容の違う6-1で第1セットを取ります。

なぜこのような差がついてしまったのか?と私でもわからなくなる程度ですが、ざっくりとまとめると、多くの解説者が「錦織とゴフィンのプレーは似ている」と言っています。

ゴフィンはフォアDTLを決める場面も多く、フォアバックともかなりストロークが安定しています。私も「Young Guns」の中でかなり期待している選手の一人です。ショットメーカー大好き人間なので。

しかしサービスキープ力、リターンの強さ、バックハンドの精度、ディフェンス力、ブレークポイントでのプレー。そのそれぞれの要素で少しずつ錦織が一枚か二枚上手なのです。そしてその差がこの結果を生んでしまっています。たとえば1本のブレークポイントをゴフィンは落とし錦織はサーブポイントで切り抜けた。結果論ではありますがこういった部分が試合に出てしまっています。

何度も言っていますがテニスは51-49で勝っていくスポーツ。決してラリーポイント制ではないのですが、少しずつ6割、7割のポイント獲得率で押していく錦織にゴフィンはつけ入る隙がなかなかなかったのが現実です。(実際試合の総ポイントは偶然にも60-40でした)

第2セットに入って一瞬錦織にミスが続く場面が出て30-0からブレークされ、0-2となります。この時間帯はゴフィンのストロークもよくDTLが効果的でした。

しかし悪くともタイブレークでは取れる印象があるくらい全くこちらとしても動じなかったですし、実際その通りになりました。そこから6ゲーム連取であっという間に試合を決め、ベスト8に駒を進めました。ある意味つまらなさすぎて途中からドルゴポロフの激闘の方ばっかり見てましたし…

今大会の錦織は何が違うのか?得失ゲーム数36-10。テニスのスコアではない異次元スコアで勝ち続けています。

ユージニー戦についてはまああれですが試合を追うごとに相手も強敵になってきている中のこの成績。理由を考えてみました。

・圧倒的なブレーク獲得率

今シーズン前半はなかなか取り切れずセット序盤でチャンスを逃しそのあとぐだぐだになる展開が多かったのですが、ゴフィン戦では主審のミスジャッジでサービスエースにされた1本以外の3本ですべてブレークに成功。

相手のサーブがビッグサーブでないことは影響しているのですが、トロイツキ戦でも6本中5本で成功。かなりいいリターンが打てているということでもあります。なおユージニー戦は調子もそこまでだったのでぐだぐだでした

そして単純なブレーク力も異次元です。23ゲームで15ゲームブレーク。サービスゲームとはなんだったのか…

トロイツキも含めてのこの数字は異常です。理由としてはまず2ndからのリターン強打がものすごくいい精度で決まっているという点です。いわゆるコーナーを付いてリターンエースを取るポイントもありましたが、私は前記事にコメントがあったようにセンターの深い位置にリターンし、サーブを打った後に時間のないサーバーに跳ね際を打たせてチャンスボールを作って決めるというパターン。これがこの大会で新しく見せている戦略でよくはまっていると思います。またこうすることでコーナーへのリターンも生きますしね。

加えて1stサーブのブロックリターン気味のディフェンシブなリターンが深いところに落ちている。いったん落ちてしまえば得意のストロークでポイントを取る。相手からするとショートポイントで決められなければ絶望。そんな印象を受けます。

・スーパーディフェンス復活

以前私がネーミングセンスのない「すすすっとフットワーク」というのを紹介したと思います。

ニンジャと海外で称されるフットワークは錦織の魅力の一つです。マイアミに入ってからこのコートカバー力がかなり上がっています。

今日もゴフィンのストロークに手を焼く中ディフェンスから活路を見出すポイントがいくつか見られました。

昔ですと無理していると思うこともありましたし、クレーでのあの快進撃はこのコートカバー力あってのことでした。そしてその諸刃の剣みたいなものが故障に至らしめたのが昨年でしたが、今年は全然無理をしていない感じがします。メンフィスなどで重い動きや精彩を欠くプレーを見ているだけに、今は単純にのびのびプレーできているから動けているように見えます。

トロイツキ戦のマッサージの姿を見て去年の錦織を思い浮かべた人は多かったと思いますが、ああいう場面が今年一度もないというのは大きな進歩ですね。サーブ向上以上に大きなファクターだと思います。

・バックハンドの安定

全くミスがないですよね。しかもウィナーを取れる力がある。

簡単に言いますが本来バックハンドはうまいプロ選手でもウィークポイントになりがちなショットです。どうしたって両手バックハンドは片手できっちり打てるフォアに比べて威力が落ちるのが普通です。

しかし錦織の場合バッククロスのラリーからより厳しいクロスに打ってウィナーを取れるかと思えば代名詞のDTLも打てる。ゴフィン戦はまさにそんな感じでDTLも決まり出して手が付けられない状態でした。

課題を挙げるとすれば1stサーブの確率とフォアですが、しかし他があまりにもよすぎるので相対的に気になる、いわばオール5が取れるような人の4が目立ってしまっているような感じです。

フォアでもウィナーはしっかり取れてますし、精度も試合を悪くするほどの悪い数字ではありません。1stも入ればサービスポイントがたくさん取れてますしエース5本は少ないゲームで勝っているせいで、サービスゲーム自体が少ないので実はエース率で見るとかなり多く、まあどっちもこんなもんで十分です。

次戦の展望についてはランキング試算の方に書きます。ラオニッチ×イズナー戦がぼちぼち始まりますが、地味に楽しみです。それでは。