two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

教科書通りのプレー、ジョコビッチに誰が勝てるの?

4/3 現地19:00~(日本時間翌日8:00~)

Masters1000 Miami Miami Open presented by Itau

SF

[1]Novak Djokovic 7-6(3) 6-2 [22]John Isner

昨日「イズナーに勝てるチャンスはあったはずだろう」とプレビュー記事のタイトルをもじって記事にしました。

多くの反響をいただきありがとうございます。当ブログ始まって初めてのコメント30件(私が実況代わりに使った記事は除く)、いかに昨日の試合の注目度、意味合い、そして何よりみなさんの応援熱があったかを示していると思います。

これこそが私がやりたかったことです。多くのファンの皆さんと忌憚なく意見を交換できる場所。これからもこのブログがこうあってくれれば私としても嬉しいです。

よく「プロの試合なんだからプロのことが分からない、プロの技術レベルがないアマチュア素人が論評したって無駄」と言われますが私はそんなことはないと思っています。

それだと世界NO.1の論評は世界NO.1しかできないことになっちゃいますよね、弟子が師匠を超えても師匠は指導者としての域を外れないですよね、そういうことです。

たとえ昨日テニスを見始めた人であっても意図してかそうでないかは別として本当にクリティカルなことを言う可能性はゼロではないはずです。

この場所では私も著者であると同時に読者の一人です。一緒にいろんなことを考えていけたらと思います。

最近このブログのコメントで多く目立つのが、テニスブログの出発点がここTSDブログだという人が増えてきているという事実です。

他にも素晴らしいブログを書かれている方を私はたくさん知っています。正直後発組だと思っている(スポーツナビではかなり先進でしたが)私は驚きを隠せません。

ここ2日ほどは20万アクセスというスポーツナビ全体でもなかなか見ない数字に正直心底滅入っていました。

明らかに昨日初めて見たであろう人がたくさんいたと考えた時、ここがその人にとっての出発点になるんだなあと考えた時にこの記事は適切だったか、いろいろ考えました。

結論は出ていませんが、とにかくこのブログは自分らしくやっていけたらと思います。

そしてこれからの記事でも昨日のようにコメントでたくさんあふれかえるようにいい記事を書いていくつもりです。

100件の支持するボタンよりも1件の生身のコメントを大事に頑張っていきます。

ちょっとコメント件数が多いのでじっくり読んで時間のある時に返します。気長にお待ちください。

さてジョコビッチ×イズナー戦です。結論から言えばイズナーの調子が昨日と同じであったと仮定した場合、ジョコビッチはどうするのか?まさに昨日みなさんが議論されたうちの一つの最適解を示してくれるのではという期待がありました。そしてジョコビッチはそれを見事にやってのけました。完勝です。

イズナーは序盤かなりいいプレーを見せていました。錦織戦で見せていた強力なフォアハンドに安定感。このままジョコビッチも苦しむのでは?そう思いました。

ですがジョコビッチはしっかり戦いました。イズナーのサービスゲームではなかなかチャンスを掴めません。第1セットでジョコビッチがイズナーに許したエース本数は8本。これは錦織戦での第1セット5、第2セット8と比べてもしっかり打たれていることが分かります。

ところが、です。少しずつジョコビッチは試合の中でリターンを合わせていきます。

特にポイントだったのはセカンドサーブのリターンです。あのイズナーのスピンサーブに対してしっかりクリーンヒットするように強いリターンを返します。イズナーがビッグサーバーであることを、セカンドとはいえかなり速い球速があることを忘れさせるようなリターンでした。

一方でこの試合の決め手になったのは奇しくもジョコビッチサービスゲームです。

ジョコビッチサービスゲームではイズナーにフリーで打たせることを避けました。深いボール、左右へのゆさぶり…私がイズナー戦展望で書いた②と③の作戦をやっていました。

普通ですとこれで簡単にイズナーは崩れるのですが、しっかりイズナーはストロークをつなげいい勝負になりました。ただしキープが安定しているのはジョコビッチの方で、イズナーは終盤に行くにつれてジョコビッチのリターンが合っていくのでキープするのが大変になってきます。

特にイズナーは切り返しで何度も強力なフォアハンドを打ち込んでいきました。イズナーの調子は悪くなかったと評しているように正直これで打ち込まれたらたいていの選手はウィナーにされてしまいます。相変わらずの破壊力でした。

ただしそれはジョコビッチには通じませんでした。信じられないディフェンスで攻めをしのぎ続け、ミスを誘ったり逆に攻め込むことで主導権を握っていきます。

こうすると少しずつイズナーの方が苦しくなってきます。ビッグサーバーはどっちなのかというくらいにサービスキープが苦しくなり、ついにチャンスはやってきます。第12ゲームでジョコビッチブレークポイント。デュースにもつれ、サービスポイント以外でなかなかポイントが取れなくなるイズナー。何とかキープしてタイブレークにもつれ込みますが、この地点で勝負は決まっていたのかもしれません。

繰り返すようにイズナーはやはり好調を維持していました。今日のイズナーでも錦織が昨日のような戦術を取れば負けていたのではと思います。ストロークはよかったし、ロングラリーでも戦えていた。実際9本以上のラリーは試合を通じて2対2。あのジョコビッチ相手にこの数字というのはイズナーの普段を考えると大絶賛されていい内容でした。

しかしタイブレークまでに要したお互いのサービスでのポイントはジョコビッチ33に対しイズナー56。サービスポイントでの獲得率はジョコビッチが24/33=73%。イズナーが35/56=63%。テニスで10%も違うと結構大きい数字になってきます。そして実際タイブレークでは耐え切れなくなったイズナーがミスを量産し7-3でジョコビッチが取ります。特に印象的だったのは最初のセカンドサーブになったリターンでジョコビッチが完璧に合わせてリターンエース級の強打。これが試合を実質的に決めたポイントになりました。最初のセカンドサーブでポイントにする。言うのは易しですが簡単にできることではありません。

セカンドセットに入ると連戦の疲れでイズナーが崩れ始めます。リターンゲームでは戦うことができず、サービスキープに集中しようとしました。

しかしここでジョコビッチが取った戦術が見事でした。スライスの多様です。

イズナーはラオニッチ戦からずっと足にテーピングをしていました。大型選手にとって低い打点のショットは膝をしっかり曲げないと打てないのでウィークポイントであり、試合後レビューでスライスの多様を私が言及した理由です。

ジョコビッチがすごいのはここでこの戦術を使うということです。

正直イズナーは走れていなかった。もしかしたら強打を打っていけば、攻めのテニスに転じればそれで押し切れたかもしれません。

でもそうではなくて深く低いスライスを浴びせる。遠回りな道のりに見えますがじっくり、確実にイズナーを仕留めたのです。

末恐ろしい選手です。強打というリスクよりも確実に相手の体力と集中力をむしり取っていく戦法、耐え切れなくなったイズナーは予想通りミスを連発。この頃にはついに1stサーブにもリターンが合い始めなすすべなし、ジ・エンドでした。

この試合はジョコビッチの戦略勝ちという印象がありました。

こう着状態のように見えた第1セットも自らのキープを容易にすることで見えないプレッシャーをイズナーに浴びせました。

ビッグサーバーを倒す方法はリターンゲームではなく自らのサービスゲームをキープすることでプレッシャーをかけていくこと。非常に逆説的ですが、しかしこれこそが正攻法。イズナーに打たせないことでペースをつかみ、タイブレークで勢いづかせずにしかも大事なリターンポイントを確実に取る。理想をすべて実現する教科書通りのビッグサーバー撃破といった試合でした。

好調イズナーでなければここまでジョコビッチが追い込めばもっと早く崩れるものですが、イズナーがしっかりストロークを打ち込み、特に第1セットに関してはマスターズ準決勝にふさわしい見応えのある試合でした。両者本当にお疲れ様でした。

改めてまとめると、ジョコビッチがやったイズナー対策は

サービスゲームで振り回し、満足に打たせない

・スライスをうまく使って足を曲げるショットを打たせる

・リターンでしっかりコートに入れる

・リターンをクリーンヒットし圧力をかける

こんなところでしょうか。後者に関してはジョコビッチの素晴らしいリターン力によるものですので誰もがまねできることではなかったのですが、前二つについてはやっぱり錦織がやってほしいプレーだったなとこの試合を見て再認識しました。

さて準決勝のもう一試合はマレーがベルディヒをストレートで下しました。奇しくも一部の選手を除き全豪と同じような勝ち上がりです。

ジョコビッチ×マレーの一戦はその全豪以来。ここのところマレーはジョコビッチに負けっぱなし。13年あのウィンブルドン決勝以来勝てていません。

今日の充実した準決勝を見る限りジョコビッチ優位でしょうが、なんとか一矢報いてほしいもの。正直ジョコビッチ、誰に負けるのかというくらいの強さです。ビッグサーバーカルロビッチへの事故の敗戦と、攻めに押し切られたフェデラーへの一敗(ただしIWでリベンジ)、誰がどう見てもジョコビッチがランキング通りのナンバーワンであることを疑わないでしょう。

次にジョコビッチに土をつけるのは誰か。明後日のマレーであってほしいですがなかなか難しそうです。

最近ATPツアー全体の記事が少なめですいません。