【ドロー解説】2015バルセロナOPの展望
こんにちは。
だいぶ暖かくなってきて、自分でテニスをするにはいい時期ですね。私も久しぶりにやりたいのですが、時間がないの一言に尽きます。
さていよいよバルセロナOPのドローが発表されました。
今大会の重要性はまたあとで説明するとして、まずは大会概要です。
大会名…バルセロナオープン・バンク・サバデル
銀行がスポンサーになっています。
ドロー数…48
16人シード。シード選手は1回戦免除で、ノーシード選手で6勝、シード選手で5勝優勝まで必要です。
位置づけ…クレー好きの猛者が集まりやすい。モンテカルロ→バルセロナの連戦勢とクレー初戦勢が半々。モンテカルロからの連戦勢は最大10試合近く2週間で戦うので結構きついはずだが、全盛期ナダルは一切ものともしませんでした。
この大会は昨年錦織圭が日本人初のクレータイトルを手にした思い出の地です。同時にスペイン人選手以外の優勝も12年ぶりという極めて歴史的な年になりました。
さらにバルセロナはナダルの準ホームとしても知られています。この大会では03年に当時16歳でコレチャに敗れて以降2014年にアルマグロに敗れるまで41連勝。05~09、11~13年と8度の優勝を誇り、ケガで欠場した2010年以外は負けなしが続いていました。同じく05~12年まで8連覇を達成していたモンテカルロと同様に4月はナダルの月というのが鉄板でした。
また意外なのはこの影響を受けてほとんどを第2シードで迎えているフェレールが一度も優勝がないことです。現役での残りの優勝経験者はロブレド(2004)、ベルダスコ(2010)、錦織(2014)です。今年はこの歴代優勝者が4人一堂に会する大会ということで現地では宣伝しているようです。
それではドロー解説に移りましょう。
①錦織山
[1]錦織圭
bye
ガバシビリ
カレノ=ブスタ
ドルゴポロフ
ソウザ(ポルトガル)
bye
[15]ヒラルド
[10]クエバス
bye
シュトルフ
[WC]CARBALLES BAENA
ベルッチ
予選勝者
bye
[7]バウティスタ=アグト
クレーコート、そしてヨーロッパでの大会で初の第1シードとなった[1]錦織圭。昨シーズンはクレーで実力で負けた場面には一度も遭遇しなかっただけにこれを繰り返せるか。注目です。
私自身も感覚をマヒしてしまったので正直に言えばあのテニスができれば決勝までは少なくとも敵はいないと思います。これは多くの方が同意されると思います。ここで言っているのは昨シーズンのようなコンピューターゲームでもプレーしているかのような異次元フットワークと攻撃力があればという話です。少なくとも今シーズンあのようなテニスはまだ見れていない(マイアミで片鱗が出始めましたが)ので、これはうまく入れた場合の話です。
現実的に相手を分析しましょう。
初戦のガバシビリとカレノ=ブスタですが、ガバシビリは特にクレーコーターではありません。ヒューストンでイズナーを破っているのが気になりますが、単純にイズナーがマイアミ後疲れがたまっていただけなので、次の試合でベルダスコに2-6、3-6と大差で負けていることからもあまり心配はないと思います。
ガバシビリとの対戦成績はツアーレベルで2勝1敗。といっても1敗は2014デルレイビーチで棄権負けしたものなので特に脅威はないでしょう。
カレノ=ブスタは典型的クレーコーター。2013年に600位台からフューチャーズ、チャレンジャーで連勝を重ねツアー4強も達成して一気にトップ100入り。ナダル以来のクレーで一気に出てきた選手として注目が集まりましたがその後は結果が出ず、今シーズンもクレーでもなかなか勝てず3勝9敗。
どちらが上がってきても組みやすい相手ではあると思います。
3回戦は昨年決勝カードの再現なるかというところですが、その[15]ヒラルドは来週にはその準優勝の300pの失効も迫っており、ランキング以上の実力はあまりない感じです。ここはノーシードのドルゴポロフに勢いがあります。ただクレーなのであっさり負けてしまう可能性もあり、正直誰が来るか読めません。ドルゴポロフだとやや厄介です。
そしてQFですが、ここはノーシード選手に勢いがなく、ほぼ[7]バウティスタ=アグトと[10]クエバスの一騎打ちという構図です。
バウティスタ=アグトはクレータイトルもありマドリードでは波乱に乗じて初のマスターズ4強も手にしています。しかし今シーズンはモンテカルロ16強に入るまでは目立った成績はありません。
ここで要注意なのはクエバスです。
この選手、クレーシーズン展望でも紹介しましたがクレーにおいてのみ非常に危険な選手です。
クエバスのランキングは23位。一旦ランキング落ちを経験してから復活してきた29歳の選手です。
この選手のランキングポイントは1442。先に言っておきます。普通のトップ選手はクレーで戦うのはこのヨーロッパクレーシーズンのみで、ごくわずかの選手が2月武者修行シリーズでクレーを選択したり、7月にクレーを戦ったりします。
そのため無双できて相対的に比率が伸びるナダルを除いて全ポイントに占めるクレーの割合は2割~3割です。
ところがこのクエバス、クレーでわずか1年で3つのタイトルを持ち、クレー総ポイントは1212。実に80%以上がクレーのポイントになっています!!
一応クエバスはチャレンジャーなどにも出ていたのでもちろんクレーが伸びやすい傾向にありますが、これはトップ100選手の中でも最も偏ったランキングポイントの割合です。
プレースタイルは典型的クレーコーター。守備もうまくストロークの強さもあり、この選手を崩すのは容易ではありません。あのナダルともリオデジャネイロでいい試合をしました。
不調のバウティスタ=アグトが上がってくれば問題ないでしょう(ちょうどこのバルセロナで去年勝っています)が、クエバスだとかなり難しい戦いを強いられると思います。
逆にこのクエバスに対してしっかり勝ちきれるようなら視界は良好です。
②チリッチ山
[4]チリッチ
bye
エストレラ=ブルゴス
ティエム
ゴンザレス
bye
[14]クリザン
[9]ロブレド
bye
ソウザ(ブラジル)
ククシュキン
マトセビッチ
グラノジェルス
bye
[6]ツォンガ
ここは激戦のブロックになりました。
[4]チリッチはモンテカルロ8強でついに復活しましたが、タフな道のりになりそうです。
初戦に今年クレータイトルのエストレラ=ブルゴスとクレー得意のティエムの勝者と対戦するのは大変です。
加えて3Rも調子を維持している[14]クリザンとモナコ。どちらが来ても難しい試合になります。
また[6]ツォンガにとってもチリッチとのリベンジマッチを実現させたいところですが簡単ではありません。2004年優勝の[9]ロブレドが牙をむいています。モンテカルロではラオニッチには敗れてしまったもののクレーコートでの力を見せているロブレドの方がやや有利か。混沌としているブロックです。
③フェレール山
[8]ガルビス
bye
ペール
予選勝者
予選勝者
クズネツォフ
bye
[12]コールシュライバー
[16][WC]キリオス
bye
予選勝者
[WC]イメール
ベランキス
[WC]モンタネス
bye
[3]フェレール
ここは[3]フェレールが圧倒的有利なブロックですが、モンテカルロQFでは足の状態を気にしており、始まってみるまで分かりません。
[8]ガルビスは早く勝ってください。いや切実に。解説とかなしでまじめに勝ってほしいところですが、ペールもここにきて戻してきているだけにトンネルを抜けるには自分で頑張るしかないようです。
唯一フェレールを倒せるチャンスがありそうなのはWC参戦、復帰戦となる[16]キリオスです。
キリオスは初めてのツアーシードを獲得したということで喜びの声が来ています。
Nice to get my first seeding in an @ATPWorldTour event. #Progress— Nicholas Kyrgios (@NickKyrgios) 2015, 4月 17
ちなみに錦織が初めてツアーでシードをもらった大会は何か知っていますか?正解は2011サンノゼです。調べるまで私も勘違いしてた…(2011ヒューストンだと思っていました)
④ナダル山
[5]ロペス
bye
予選勝者
ラモス=ビノラス
bye
[11]マイヤー
[13]フォニーニ
bye
予選勝者
ベルダスコ
ロレンツィ
bye
[2]ナダル
復活を目指す[2]ナダルにとっては是が非でもタイトルが欲しいところ。ランキング的な意味でもタイトルが欲しいところですが、このあと解説します。
初戦にアルマグロというのは最悪です。アルマグロは昨年バルセロナでは11年ぶりに敗れた相手。ロレンツィに倒す勢いはなくほぼ確定事項です。
さらにそのあとはリオデジャネイロで負けた[13]フォニーニか2010年チャンピオンでIWで負けたベルダスコ。本当に嫌がらせのようなドローになっています。
モンテカルロのナダルを見る限りナダルは勝てそうですが、もしプレーレベルを落としてしまうと捕まってしまう可能性は十分にあります。
反対のブロックにもクレーコーターが勢ぞろい。唯一[5]ロペスはクレーコーターではない選手ですが好調です。
全体としてナダル付近に強い選手が固まって潰しあいという構図になりました。混戦を抜け出せればその先は比較的明るいだけに、モンテカルロで3試合7時間と体力を削られた状態で入るアーリーラウンドは注目でしょう。
総評
錦織としてはとにかくクエバスに注意、クエバスには要注意です。しかしこれさえ突破できれば、加えてマイアミでその片鱗を見せたいいテニスが帰ってくれば決勝までは行けるのではないでしょうか。
決勝は誰が上がってくるのか。ナダルも厳しい相手が多いですしフェレールは足の状態が心配です。錦織もいいプレーが帰ってくるかは不明なので非常に混戦と言えるのではないでしょうか。
思考停止すれば錦織×ナダルの決勝のような気はしますが、そう簡単にはいかないんでしょう…クレーだし…
・ランキング的な意味合い(錦織)
バルセロナ後のランキングはマドリードのシードに使われます。そして翌週のイスタンブール/エストリル/ミュンヘンのランキングはローマのシードに使われますが、イスタンブール/エストリル/ミュンヘンに出るのはトップ選手ではフェデラー、マレー、ディミトロフだけなので4位付近の選手に関するシード付けは実質バルセロナで2重の意味合いを持つことになります。
ラオニッチが欠場した今、ベルディヒがモンテカルロで優勝しないとするとこうなります。
ここから来週加点ができるのはナダルだけです。このポイントは2014バルセロナを含んだポイントなので、錦織は来週加点することはできません。むしろ落とさないことが重要です。
さてポイントになってくるのは錦織の落ちたその先です。
引き算をすれば分かるのですが結論を言うと優勝、準優勝→5位、4強→6位、8強以下→7位となります。
厳しい条件です。しかしここで5位をキープすることである可能性が出てきます。
クレーシーズン展望で書いたように、フェデラーはローマを飛ばす可能性がゼロではありません。
そうするとシード順は一つずつ繰り上がり、ジョコビッチ、マレー、ナダルに続く選手が第4シードを確保できます。
バルセロナで決勝進出→ローマで第4シードの可能性あり!!(ただしフェデラー頼み)
これは覚えておきましょう。しかもローマ第4シードだとナダルジョコビッチを同時にQFで避けることになるのでかなりおいしいです。
・ランキング的な意味合い(ナダル)
ナダルは戻れるのか。この答えはモンテカルロで一つ見えたような気がしますが別記事に。
ジョコビッチが強すぎました。と同時に、下手をすればナダルはジョコビッチの影響でマドリードから全仏までの3大会全部優勝できない可能性すら出てきました。
ナダルも他の選手には負けないほど復調してきたという感覚を受けましたが、何せここからナダルがディフェンスするのは優勝の嵐。そのためにもバルセロナでの加点で補っておくことは必要です。
バルセロナでもし昨年と同じQFで敗退したと仮定すると、マドリード→ローマ→全仏ですべて準優勝だったとしてもナダルのポイントは4235まで落ちます。
すべて準優勝という強烈に高い仮定を敷いてもこの数字です。とにかくナダルは優勝しないとどんどんポイントを失っていきます。
しかしこの仮定にバルセロナ優勝を加えるだけでなんと410pも加点ができ4645pになります。
バルセロナは今後加点が望めないからこそ絶対に勝ち進んでおきたい大会です(本当は一気に820p加点できたモンテカルロで優勝すべきだったんですけど、まあ仕方ないですね…)。