two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

最強の挑戦者の猛攻をしのぎ切り、価値ある2連覇(2015バルセロナ決勝)

4/26 現地17:30~(日本時間翌日24:30~)

ATP500 Barcelona Open Banc Sabadell

Championship

[1]Kei Nishikori 6-4 6-4 Pablo Andujar

難攻不落の城…

かつてナダルが05年から13年まで8度優勝したこの場所はさながらそんな印象を受けます。

1度その頂に立つだけでもナダルがトップ選手になってから不可能だったこの場所で、2度その頂に立つこと…

それは私たちの想像より遥かにとんでもないことです。しかしやってのけました。

アンドゥハルはこれまでの勝利からプレーレベルが落ちる可能性も維持する可能性もありました。落ちれば錦織の勝利は容易だったのは間違いないですが、結果が示す通り、そしてプレーが示す通りアンドゥハルは最高のプレーで臨んできました。

第1セットオープニング。サービスゲームからスタートの錦織は今週見せてこなかったような散漫なプレーでミスを重ね落とします。

この瞬間に危険を感じました。ブレークされたことではありません。もつれるだろうなという直感が働いたからです。

第2ゲームではすかさずブレークバックし追いつきますがこの日はとにかくストロークが不調。アンドゥハルの攻撃を容易に許してしまう展開になりました。

仮にトップ選手であってもアンドゥハルのような攻め方をすれば必ずミスが出てくるものですが、最後の数ゲームを除きアンドゥハルはミスをほとんどせずにプレーを続けました。

錦織は早いタイミングで打っていくので、これがアンドゥハルの攻めたい展開のスピードとマッチして速い打ち合いで精度のよいアンドゥハルに先に打たれるといった形が多かったように思います。

さらにポイントだったのがセカンドサーブ。錦織のセカンドサーブをリターンしてからの攻撃力は健在でしたが、アンドゥハルも叩きつけるようなリターンを何度も決め、今大会錦織のセカンドサーブスタッツはかなりよかったのですが、この試合ではほぼ50%に落ち込みます。

こうしたこれまでの試合とは全く違う展開の中で錦織もペースを崩され、なんでもないネット近くのチャンスボールをオーバーしたり(この辺は股関節の影響が間接的にないか心配です)バックハンドのクロスラリーで先にネットにかけたりとらしくないプレーが続きます。

ただこういった場面でしっかりとマネージメントし、とにかく平均して5割を切らないこと。これを守ったことで苦しいながらもしっかりと試合を作っていきます。

そして第10ゲーム。ここではリターンが噛みあいさらにDTLが出ました。こういった攻めができればアンドゥハルとて容易にはしのげません。一つ目のセットポイントでラリーに持ち込みポイント。苦しみながら1stセットを取ります。

この1stセットはかなりタイトでした。スタッツを比較してもお互いに大きな差はなく、クレーで錦織相手にウィナーとUEがほぼ同数という地点でいかにアンドゥハルがレベルの高いテニスをしていたかが分かります。

それでもSFまでの試合のようにウィナーがUEの約2倍というペースでストロークで攻撃できたらよかったのですが、アンドゥハルにやりたいプレーをやられてしまいました。

第2セット。ここでアンドゥハルが気落ちすれば…という場面でしたが失うもののないアンドゥハルは全くプレーを変えず質も落ちない。対して錦織はここで集中力を切らしたのかまたミスが増えます。オープニングをブレークされ、その後も苦しい展開が続きます。

第4ゲームでは2度のBPを迎えるものの要所でアンドゥハルのサーブが決まりブレークできません。

ここをブレークできればというところも落とし、依然苦しい展開が続きます。

2-4で迎えた第7ゲーム、錦織がラブゲームでキープします。

しかしこのゲームはフレームショット(ただしコートには入る)や錦織がチャンスボールをなぜかいるところにドライブボレーしたりと相変わらず不可解なプレーが見られ、流れは悪いように見えましたが、結果的に楽にキープできたことで流れが変わり始めました。

3-4からの第8ゲーム、私がポイントだと思ったのは15-15からのバックハンドでのリターンエースです。

セカンドサーブを叩くような形のリターンで、錦織はもちろんこういったリターンを打っているのですが、打ち方がまるでマレーのようでした。

よくマレーのバックハンドリターンを漢字の「片」に似ていると思う私ですが、このリターンは理にかなった打ち方です。しっかりとボールを押し込むことができます。

アンドゥハルはこのポイントで何か虚をつかれたかのようにウィナーを取られました。

錦織のこれまでのボールから想定される軌道より伸びたということです。

ここから逆算すると、実は錦織のキレのあるボールの伸びが昨日は全体的に弱かったのかもしれないということです。

アンドゥハルがしっかりとストロークで押し込んでいった結果、錦織はどうしても守りに入ります。

またのびのびと打てないことによってボールに無駄な力が入り、逆にボールにキレがなくなることはよくあります。

このゲームはアンドゥハルがさすがに少しずつプレーレベルが落ちてきたのとこういったビッグポイントも噛みあってブレークバックに成功。これで試合を優位に進めます。

4-4からのオープニングの平易なミスにはヒヤッとしましたが、この時間帯になるとアンドゥハルのミスも目立つようになったので何とかキープに成功。

神がかり的なプレーだったアンドゥハルは一気に追い込まれ、30-0としたところから何でもないミスとDFで崩れてしまいQMKへ。最後は1stを入れられず2ndで錦織がリターンエース。かっこいい締め方で連覇を達成しました。

ナダル

ナダル

ナダル

ナダル

ベルダスコ

ナダル

ナダル

ナダル

ナダル

錦織

錦織

間違い探しではありません。過去11年のバルセロナチャンピオンです。

この並びからも分かる通りとんでもないことをやってのけたということです。

今回の勝利のポイントは相手がとてもいいプレーをしてきている中でうまいゲームメイクができたということです。

1ブレークされて2ブレークしてともに5-4から6-4、6-4で勝つ。このスコアラインに見覚えはないでしょうか?

中盤のブレークゲームの場所は違うとはいえ、このQSK+QMKでの勝利はあのファイナルマレー戦を彷彿とさせる試合でした。

こういう勝ち方ができるのは強い選手の証です。5位なのでもう言うまでもないことなのですが。

自分も微妙なテニス、相手が最高のテニスをしてくる中で上位としてしっかり勝ちきる。トップの勝ち方です。悪いなりにまとめるゲームメイクが光った試合でした。

さてこの優勝でマドリード/ローマでは第5シード獲得となります。ここでの500pディフェンスがどれほど大きかったかの証拠です。

そして全仏の第4シード争いですが、ナダルはある程度他選手より勝つと一応仮定して、ナダル、錦織、ラオニッチ、ベルディヒがほぼ横一線です。これについては後日改めて解説します。

またレースランキングでは5位に躍り出ました。2~9位まで各選手小差なのでまだまだ分かりませんしだからこその9位→5位ジャンプアップなわけですが、上のフェレールもそう遠くはなく、全仏までに捉える可能性も十分です。

今から一喜一憂していても仕方ないですが、マドリード終了地点からは錦織はボーナスステージ。全米直前で3位に上がるためには他選手と同じだけのレースポイントを稼ぐだけでOKです(全米後のポイントでは錦織がジョコビッチフェデラーに次ぎ3位)。一つレースランキングは単純なファイナル争いだけでなくこういった側面も持っているということも覚えておきましょう。

最後に「save 1500」プロジェクトですが、前記事のコメントにありましたように

アカプルコ 300

デ杯 80

IW 90

マイアミ 180

バルセロナ 500

と1150pになっています。デ杯を入れるかは微妙なところですが、一応アカプルコマドリードまでに1500p稼げばいいという話だったので、80pが将来的に500以下の大会としてカウントされるかは微妙ですがこのプロジェクトではれっきとした80pとして扱います。

あとここで80pを扱うとマドリードのターゲットが4強360p=1510p=達成!と明確になりやすいのでそうします。

さて朝になって股関節の不安のニュースが出ています。読みましたがこれではいまいちよくわかりません。上位選手で体に問題があると言いながら結局何の心配もなく勝つケースはよくあります。

錦織がMTOを取ったわけではないですし、まだ深刻な状況ではないと考えるのが自然でしょう。

昔に比べけがをすることがなくなったので体の異常に対する危機予測も敏感になっているはずですし、それでも好調アンドゥハルに勝ててるわけですから無理のない程度にマドリード、ローマも期待していいと思います。

今週はフェデラーなどが出場。見どころが多いので別で特集します。それでは。