two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

2015全仏OPの展望その2~大混戦のRG、8人の優勝争い~

というわけで後半戦です。

・激戦のローランギャロス、「Dreamin10」と「不滅の記録」への挑戦

今大会の最注目ポイントはトップハーフの仮想QF、ジョコビッチ×ナダルになりました。

なんといっても5連覇中、前人未到の6連覇がかかり、加えてGS同一大会最多の10度目の優勝がかかっているナダル。優勝は至上命題…と言いたいところですが、QFでジョコビッチ、SFでマレー、決勝ではフェデラー錦織ベルディヒなどという厳しい組み合わせになりました。

本来であればナダルは誰がどのラウンドで来ようが一切関係ありません。ただ目の前の相手に対してクレーキングの力を見せつけて勝つ。それがここ10年ローランギャロスで繰り返されてきたことです。

初めて出場した05年で一気に頂点に立ってから、たった一度けがの影響でその後を棒に振った09年を除き、「ナダル危うし」の声をすべて振り払ってきたナダルですが、2011年にジョコビッチがクレーでナダルに連勝したあたりから「いつナダルは負けるのか」という議論が過熱していきました。

2011年は最有力だったジョコビッチがSFでフェデラーに敗戦。そのフェデラーもあっけなく敗れ6度目の優勝。

2012年は2度の雨中断をなんとか乗り切ったナダルジョコビッチを退けて7度目の優勝。

2013年はアーリーラウンドでセットを落とし続けるものの、4回戦の錦織戦からギアアップ。その後はジョコビッチと史上最高の準決勝を戦ったものの決勝でフェレールを蹂躙。8度目の優勝を達成しました。

昨年2014年はついにジョコビッチがやってくれる…SFまでの安定した勝ち上がりからジョコビッチ優勝を予想する人も多かったですがジョコビッチの体調が悪かったのも影響し、あっけなくナダルが優勝。9度目の優勝で喜びを爆発させたナダルは優勝直後こんなツイートを残しています。

#DREAMIN9— Rafa Nadal (@RafaelNadal) 2014, 6月 8

私は05~08の4連覇はもちろん素晴らしいし、誰にもチャンスを与えないその強さは賞賛されるべきだと思いますが、むしろ10~14年の円熟期に苦しみながらも5連覇したこと。こちらのほうがもっとすごいと思っています。

そして今年ナダルはもう一つ自分の名前を刻みに、「Dreamin10」に挑みます。

一方ジョコビッチは最強と言われた2011年をしのぐかもしれない猛烈なペースで勝ち進んでいます。敗北こそ2つあるものの、主要大会では2011年と同様に無敗。同様に最強議論に挙げられる06年フェデラー(4敗)はパリをスキップしたりクレーでナダルに3敗したりしていますが、今年のジョコビッチは今後も負ける気がしないです。しかも終盤戦でガス欠した2011年の反省を込めてマドリードをスキップするなど、年間を通してのスケジューリングも完璧です。

主要大会は一応14大会(GS4+MS9+ファイナル)ですがこのままいけばジョコビッチは過去最高の二けた優勝も夢ではない、加えてあのロッド・レーバー以来2度目の年間グランドスラム達成も現実味があります。

しかしこのドロー、QFでナダルというのはジョコビッチにとってもタフドローです。それでもジョコビッチという識者/ファンの予想が最も多いですが、しかし簡単でないのは明らかです。QFからピーキングをもっていかないとナダルにやられるので、決勝あたりで落ち込む可能性もあります。あくまで一説ですが、GSのピーキングはSFに持ってくるのがベストと言われています。4R、QFで負けては元も子もないのでこの辺りをピークにして決勝は惰性で行けるといいという考えです。

・こちらも負けていないBIG4、フェデラーとマレーがキャリア最大級のチャンス

フェデラーはおそらく最後の全仏チャンスになるのではと思います。

昨シーズンは後半戦から素晴らしいテニスを披露し、獲得ポイントの面でもジョコビッチとの2強状態。

しかし今シーズンはいい成績を上げながらもマスターズ欠場や全豪のけがでの早期敗退など波に乗れずレースも現在5位。

しかし第2シードで迎えた全仏、ジョコビッチ、マレー、ナダルとの対戦を避けながら決勝まで進める今回のドローはラッキーと言わざるを得ません、事実上全仏を取れるラストチャンスといってもいいかもしれません。

昨日のドロー解説ではモンフィスに要注意としたフェデラーですが、モンフィスは依然体の状態が良くないようでふたを開けないとわからないようです。

バブリンカが上がってきたとしてもローマでのテニスができれば勝てると思います。

SFはベルディヒか錦織でしょうがベルディヒはローマで「フェデラー超特急」で片づけています。錦織が上がってくるとわかりませんが、チャンスはあるはず。

フェデラーはダブルキャリアグランドスラム(すべてのGSで2勝以上)がかかっています。ナダルは全豪が1勝でこちらも王手ですが、どちらがこの大記録にたどり着くかというのも注目な点です。

そしてマレーは大注目。優勝候補として全仏に乗り込みます。

昨年はフルセット2回と苦しみながらもバブリンカのシードダウンにも助けられ4強に。しかしこの時とは違い、今はどんない相手が来ようともSFまで来るポテンシャルを持っています。

マレーの全仏失効は大きく、ここで錦織が逆転して3位に躍り出るという予想でしたが、マスターズ1勝+250で1勝してすでにクレー失効をすべてカバー。

全仏でも加点のチャンスは大。QFでジョコビッチナダルが疲弊すれば漁夫の利で決勝に難なく進む可能性も十分です。

しかしマレーの最高成績は2度の4強。比較的苦手なこの大会で勝ち上がれるかはマレーの今後を占う大事な大会になります。

・衰えない鉄人と「Mr.consistent」が狙う悲願のGSタイトル

この二人も黙ってはいません、フェレールベルディヒです。

フェレールは2013年のファイナリスト。ここのところジョコビッチフェデラーナダル、しか辿り着いていないローランギャロス決勝の舞台ですが、これ以外でここ10年で決勝に行ったのは05年のプエルタ、09年、10年のソダーリン、そして13年のフェレールのみ。

他のGSでは苦しい戦いが続く中、本来GSを1度でも取れてもおかしくない選手であるフェレールはこちらも最後に近いチャンスとして臨んでくるでしょう。

序盤は比較的楽なドローなので、マレー同様QFでジョコビッチナダルが共倒れし、加えてマレーに勝つことができればチャンスは出てきます。

そして今大会のダークホースと言っても過言ではないベルディヒ。毎回優勝候補の最後の方に挙げられながら、GS決勝1度しかないベルディヒですが今大会はボトムハーフに入り第4シードも確保。なかなか取れなかった4位を達成し自己最高の成績で臨む今年。決勝、そしてそれ以上も見据えているのは間違いないでしょう。カギはトップ10選手に対するプレー。アーリーラウンドでは負けることはないはず…現在2015年に入ってからトップ10以外に30連勝中も、ラオニッチの負傷による棄権勝ちを含めても対トップ10に2勝9敗。まさにトップ10のリトマス試験紙と化しているベルディヒですが、QFから勝ち上がれるか。

ベルディヒは加えて近くのシード選手をシードダウンに追い込む謎の力(?)もあるので、錦織をはじめシード選手がこれに飲まれないようにしてほしいです。対策の打ちようがないのですが(笑)

多くの人がベルディヒ周りのシードダウンについて指摘していますが、数字的に意味がある差が出ているのか今後検証してみたいと思います。今のところはあくまで「そんな感じがする」にとどめておきます。

公式からも「Mr.consistent」(一貫して安定性がある)(行間を読めば、爆発力はない)と言われているベルディヒですがついに爆発できるか。間違いなく注目でしょう。

ただベルディヒは毎年全仏かウィンブルドンのどちらかでころっと2回戦くらいまでに負けることが続いているので、ついに連勝が止まるのか?注目です。

・ついに頂点へ、まずはベスト8からの錦織の挑戦

忘れられがちですが錦織圭の全仏最高成績は16強。クレーで覚醒した2014年がほぼノーデータに等しいので仕方ないのですが、現実的にまずはベスト8からという感じでしょうか。

シードキープすることすら難しいのが全仏。4つのGSともすべて波乱が起きやすい理由が挙げられていますが、本質的にクレーというコートの性質上最も全仏が波乱が多いというのが個人的な意見です。あのサンプラスですらここが取れずにキャリアグランドスラム達成を逃しています。

しかしベスト8にも到達したことがない選手(他のトップ8シードはすべて8強以上経験済み)が真剣に決勝進出、優勝できるかどうかが願望ではなく世界中でまともに議論されていることに驚きしか感じません。

とんでもないことが起きているという認識、加えて今大会のボトムハーフの誰でも勝ちあがれる感。

本当にやってしまいそうな気もします。もちろん簡単ではありません。タフドローであろうが、シード選手であろうが、どんな選手も優勝するためには必ず7回勝たないといけないのがGS。甘くはありません。

少なくともローマのような「たぶんQFでジョコビッチに仕方なく負ける」というような感覚はありません。どこまででも行ってしまいそうで怖いです。

総評

波乱の多い全仏ですがしかし近年の上位勢の強さから行くと、いつも通り「strong 9」の8人の中から優勝者が出ると思います。

昔はノーシードからクエルテンが優勝したりとか本当にふたを開けるまで分からないことの多い大会でしたが、ここ10年トップ10外からGS優勝者がほとんど出ないほどに上位層のレベルは高いです。

シード位置的にも平等です。QFからが上位勢同士の真剣勝負。トップ10以下の選手(今回はあえてチリッチもこっちに含む)が誰か風穴を開けてほしいところですが、現実的に難しく、仮に1人倒せても2人3人は厳しく、BIG4がセミBIG8みたいな感じになっているので、中位勢にとっては本当に厳しい時代だと思います。

さて、この8人のドローを4回戦まで並べて見ましょう。(対戦が予想される選手を書いてます)

[1]ジョコビッチ ニエミネン→ミュラー→[27]トミッチ(コキナキス)→[15]アンダーソン([20]ガスケ)

[2]フェデラー  [LL]ファリャ→グラノジェルス→[25]カルロビッチ(バグダディス)→[13]モンフィス(ティエム)

[3]マレー    [WC]アグエロ→ポスピシル→[29]キリオス→[16]イズナー([17]ゴフィン)

[4]ベルディヒ  [Q]西岡良仁→ドディグ→[28]フォニーニ→[13]ツォンガ([22]コールシュライバー)

[5]錦織圭    [WC]マシュー→ベルッチ→[32]ベルダスコ→[11]ロペス([19]バウティスタ=アグト)

[6]ナダル    [WC]ハリス→アルマグロ(ドルゴポロフ)→[30]マナリノ→[10]ディミトロフ(ここは読めない)

[7]フェレール  ラコ→ヒメノ=トラベル→[31]トロイツキ→[9]チリッチ([23]L・マイヤー)

[8]バブリンカ  イルハン→ゴンザレス→[26]ガルシア=ロペス→[12]シモン(クリザン)

明らかにフェレールが楽です。ラコはほとんどツアーで勝っていません。2回戦はどっちにするか迷ったくらい決め手がない=フェレールを倒せるとは思えない、3回戦もトロイツキ以外に勝てそうな選手がいない(が錦織が普通に勝っている)、4回戦はチリッチ…対抗シードのマイヤーも勢いがなく最も楽なブロックで、トップハーフでは残りのBIG4が強すぎるのですがその分体力温存が期待できます。

バブリンカは相手を見ると普通のメンバー、むしろいいくらいに見えますがシモンと2勝2敗、ガルシア=ロペスには昨年の全仏で負けており、バブリンカ個人としてみるとややタフなカードになっています。

シードの二人が順調に勝ち上がってくると苦戦するかもしれませんが、そうでなければ楽に勝ち上がれると思います。

ジョコビッチは相手はあまり関係ないのでよほどの相手が来ないとという感じです。問題はQFからのハードモードにあります。

フェデラーは4回戦のみが異常に厳しいです。クレーのカルロビッチは怖くないですし1~3Rは比較的楽なのですが、その分4回戦がという感じで、もしモンフィスではない選手が上がってくれば少々調子が悪くてもすんなりベスト8まで行けそうです。

マレーはキリオスがけがさえなければ危険です。ゴフィンとイズナーも厄介で、結構厳しい組み合わせだと思います。

ベルディヒはシード選手次第で一気に楽ドローという感じです。ツォンガは果たして全仏で輝けるか。もしベルディヒに勝つようなら好調錦織にも普通に勝ってしまいそうですが。

ナダルは明確にタフです。2回戦が8人の中で最も厳しいのと4回戦も嫌な予感がしています。ちなみにナダルが全仏で唯一負けたことのあるラウンドが4回戦です。

あえて8人を4回戦までのタフ/イージーで比較して並べると

フェレールジョコビッチベルディヒフェデラー=バブリンカ>錦織圭ナダル=マレー

くらいでしょうか。全仏のイズナーは想像以上に厄介なんですよね。2013年のイズナー×ロブレドを見た私としてはイズナーに注目しています。

ただそんなに差はないと見ています。ナダルとマレーは厳しいカードがありますし、フェデラーは4Rがモンフィスの時のみ超厳しいですが、みんな勝ち上がってくるものと信じ、安定した予想ですがベスト8にこの8人を並べます。

モンフィス…いや大博打でモンフィス予想でもいいんですけど。他の選手の中で最も可能性があると思います。

さて、第1~8シードまでの現時点での当たりたくない順(TSD的に)を並べます。

ジョコビッチ>>>マレー=ナダルフェデラー錦織圭ベルディヒフェレール>バブリンカ

後半は難しいので議論を擁しますが、上位3人について、加えてベルディヒくらいまでは概ね納得されるのではないでしょうか。

ジョコビッチは言うまでもないです。そして力のあるマレーとRG補正のいるナダルはこの位置です。

ベルディヒは本来対トップ10の話ではもっと下でもいいと思うのですが、しかしどうも不気味です。野生の勘がそう言ってます。

こう考えるとトップとボトムで大きく差がついたのがお分かりかと思います。

そして結論から言えばナダルは2Rでアルマグロ/ドルゴポロフ、4Rでディミトロフかそれに勝った誰か、QFでジョコビッチ、SFでマレー/フェレール、決勝でボトムの誰かを倒さないといけない、非常に厳しい戦いだということが分かります。

これまでならこれで平等になった、いいハンデだといってそれで優勝してきたところですが、今回のこのタフドローはさすがに堪えます。今年こそナダル帝国が終わりを迎えるのか…トップハーフも毎日注目です。

一方ボトムハーフは錦織、ベルディヒに決勝進出の大チャンスが迫っています。ローマで決勝に進んでいるのでフェデラーはもう少し上でもいいかもしれませんが、5セットマッチを戦えるのかという疑問がどうしても付きまといます。IW決勝でもそうでしたが、いいプレーを続けられる時間帯が短くなってきています。5セットのGSで体力も含めうまくゲームマネージメントができるかは疑問が残ります。

波乱の多い全仏、ついに優勝候補筆頭は間違いなくジョコビッチに移った今大会、2週間後頂点に立っているのは誰なのか、楽しみに待ちたいところです。