two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

まさかの2つの圧倒劇、舞台は万全の状態で整った(2015全米SFレビュー、決勝プレビュー)

こんにちは。

いやー衝撃でした。まさかの結果となりました。準決勝2試合から振り返っていきます。

まずはジョコビッチ×チリッチ。こちらは試合開始数ゲームでだいたいゲーム展開が予想できる形となりました。

ジョコビッチは開始から特に上げるわけでもなく自分のプレーを淡々としていた印象でしたが、チリッチはフルセットを2試合戦い、もうジョコビッチに対抗できる力は残っていないという感じでした。動きも悪く、どうしてもミスも早くなる。13戦全敗のジョコビッチ相手ということでリスクを負ってしっかり強打していく印象でしたが、なんとほとんどのボールをジョコビッチは深くミスなく返してしまうため、攻めてもダメ、じり貧でラリーを続けてもだめということで打つ手がなくなっていきました。

好調だと手が付けられなくなる1stサーブも確率が悪く、どの方向からもジョコビッチを崩せません。結果サービスゲームが安定しなかったことで完全にゲームが壊滅。全くポイントを取ることができず第1セットはベーグル、第2セットも1-6で落とします。

第3セットではなんとかブレークバックできましたが時すでに遅し。サービスゲームが戻らないのでまたたく間にブレークバックされチリッチはなすすべなく敗れました。

6-0,6-1,6-2というきれいに数字を並べた最終スコア。これは記録がある限りではおそらく最も差がついたスコアとなりました(確認した限りでは01年全米SFでヒューイットがカフェルニコフを4ゲームに抑えている)し、近年で最も圧倒的に差がついた試合であった13年全豪SFのジョコビッチ×フェレールですらフェレールは5ゲーム取っています。

正直「早起きしたのに早起き返せ」というくらい大差のついた試合でした。

GSの準決勝ってもっと普通死闘ですよ?去年のジョコビッチ×錦織とか振り返ってみても普通ないですね…

そして注目の一戦、フェデラー×ワウリンカでしたがこちらも衝撃の結果となりました。

最初は激しい打ち合いとなり、お互いに打った方が取れるというウィナー合戦。面白い戦いが始まったなという印象でした。

流れが変わったのは第3ゲーム、ワウリンカがリードしていたところでフェデラーが新技「SABR」を使ってポイントを取り、ここで流れを変えました。最初のブレークポイントを取り切ると、次のゲームはワウリンカが一転攻勢。0-40とするもここでフェデラーは全く動じずサーブから芸術的な攻撃で難なくピンチをしのぎます。

このセット、お互いに激しい攻防があったものの、フェデラーがすべてのサービスゲームをキープして4本のBPをしのぎきったのに対し、ワウリンカは第3ゲームのたった1本のBPを防げずにフェデラーが6-4で1stセットを取り、連続セット獲得を26に伸ばします。

ただこの地点でもまだ勝負はわからない感じでしたが、ここから少しずつ差がついていきます。

第2セット、激しい打ち合いだった展開からペースを変えるためかワウリンカはクレーでのプレーのように下がって守りながら強打を打っていくスタイルに変更しました。ただこれが結果的に逆にまずかったように思います。

ワウリンカが下がったことでフェデラーはのびのびと攻めのプレーをできるようになり、ラリーからのネットプレーも使うようになりました。これで一気に主導権はフェデラー。この頃からややワウリンカのミスが目立つようになり差がついていきます。

結果フェデラーがBPも与えず2つのブレーク。6-3で第2セットを取り連続セット獲得は27に。

第3セットも流れは変わらず、ミスの少ないフェデラーに対してワウリンカは気落ちもあってかミスがどんどん早くなり万事休す。6-4、6-3、6-1とこちらはスコアをよくしていって11試合連続ストレート勝ちで決勝に進みました。

さて決勝はジョコビッチフェデラーになりました。最も予想されたカードでした。そして頂上決戦にふさわしいカードです。

正直五分かなあと思います。今のところどっちが有利ということはないでしょう。

チリッチの自滅感があったとはいえジョコビッチは相当プレーレベルを戻してきた印象で、こういう時の方が決勝でいいパフォーマンスができるものです。

対するフェデラーウィンブルドン同様SFがピークになってしまうのでは?という心配がありますが今回のSFは相手がよかったというよりはワウリンカのミスでさらにゲーム展開が楽になっただけなのでガス欠はあまり心配ないと考えています。

失ゲーム数は8ですが実は速い展開のテニスだったこともあって試合時間はあれだけの大差だったジョコビッチ戦とそんなに大差ありませんし、6試合中5試合を100分(1時間40分)以内で勝ち上がっている今回は本当にラストチャンスの気配すらあります。

また今回はシンシナティで勝ったばかりというのもポジティブです。あのワウリンカですらフェデラーのサーブを破っていません。今大会のフェデラーは82ゲーム中80ゲームをキープしています。

カギはジョコビッチフェデラーのサーブにどう対抗していくかでしょう。ウィンブルドンでは完全に攻略してフェデラーストロークミスが多かったのもあって複数のブレークに結び付けましたが、今回はそううまくいくでしょうか。

一方フェデラーシンシナティ1stセットタイブレークの大事な場面で「SABR」を披露し、ポイントにつなげました。

今回もどこで使ってくるかがポイントです。

ジョコビッチセカンドは決して簡単に返せるものではありません。ある意味ジョコビッチのストロングポイントでもあるこのセカンドサーブの攻略は一つポイントになってきます。

そして個人的に注目なのはジョコビッチが下がって打ち合うのか、フェデラーワウリンカ戦の序盤のように前で超高速ラリーに持ち込むのかどちらの選択を取ってくるのかということです。

ジョコビッチはチリッチ戦を見る限り守備に回ってもしっかり堅いディフェンスを見せてくれそうですが、今回のフェデラーは守ってもミスして助けてくれる感じでもなさそうです。

しかし全米のコートは速い感じがあるので、早い展開で勝負してもフェデラーの方が上を行きそうな気がします。今年のドバイ決勝などがその好例です。

ジョコビッチはどっちの戦術でも勝ちに持って行けるので、この辺をどう切り替えてくるのかというのが全体の流れとして大事になってきます。

さて、もうどちらが勝っても大記録達成なのですが、優勝した場合の記録についてここで確認しておきましょう。

ジョコビッチの記録

ジョコビッチが優勝するとGS通算10度目の優勝、これはフェデラー(17回)、サンプラスナダル(14回)、ボルグ(11回)に次ぐ史上5人目の達成です。

・今回の決勝進出ですでに史上3人目の同一年全GS決勝進出を決めているジョコビッチ。今日優勝すると3優勝1準優勝となり、これは69年レーバー、06年フェデラー、07年フェデラーに次ぐ史上3人目、4回目の快挙です。

また3優勝(4大会目の結果は問わない)と範囲を広げても69年レーバー、88年ビランデル、04年06年07年フェデラー、10年ナダル、11年ジョコビッチに次ぐ快挙で、一人で2回達成となるとフェデラーに次いで史上2人目の快挙です。

・ここの所2大会連続でのGS優勝者は出ていません。

なんと最後の連続GS優勝は11ウィンブルドン→11全米→12全豪のジョコビッチ以来4年間出ていません。

フェデラーの記録

フェデラーが優勝すれば文句なし、史上最多の18度目のGS優勝です。

フェデラーの全米決勝は6年ぶり、この時はデルポトロに敗れており、最後に優勝したのは08年です。04~08年まで5連覇しているフェデラーはその時以来7年ぶりの優勝を狙います。

同一選手が7年ぶりに優勝するのはオープン化以降では史上初の快挙です。

フェデラーウィンブルドンでは毎年好成績ですがその他のGSではなかなか勝ち上がれず、ウィンブルドン以外での決勝進出は11年全仏以来、優勝となると10年全豪までさかのぼります。

・オープン化以降に限るとフェデラーの6度目の優勝は現在5回優勝で並んでいるサンプラスを抜いて史上最多となります(オープン化以前では7回優勝が最多)

・もしフェデラーがストレート勝ちで優勝すれば、前哨戦から連続31セット獲得となり、自身2度目の失セットなしでのGS優勝(史上3人目)、全米OPでは史上初となります。

彼らは記録が多すぎて絶対に何かを逃している気がする…

とにかく記録ずくめの決勝戦は明日朝5時開始です。雨がちらつくという話も出ていますが屋根なしで行われる最後の年、どんな決勝になるのでしょうか。

ここからは他のカテゴリーの話です。

・男子ジュニアダブルスで日本の綿貫がベスト4に入りました。ジュニア世代は相変わらず結果を出しています(以前には西岡も躍進している)

車いす部門では国枝・上地の両名がダブルスでは敗退してしまったものの、シングルスでは決勝進出です。

国枝は第1シードを守ってライバルのウデとの対戦、上地はランキングを落としノーシードでの参戦でしたが第1シードを破ってこちらもシードを破ってきたダブルスペアのホワイリーと対戦します。

・女子シングルス決勝ではペネッタがビンチを破りました。ペネッタはこれを区切りに近いうちに引退するようです。これからはフォニーニが頑張る番ですね。

ミックスダブルス決勝ではパエス/ヒンギスが優勝。ヒンギスはどこまでダブルスの優勝回数を伸ばすのでしょうか。恐るべきベテランです。ミルザと組んだ第1シードでの女子ダブルスは今日決勝です。

・男子ダブルス決勝ではエルベール/マユがマレー/ピアースにストレート勝ちで悲願の初GS獲得です。

2014年から通算して8大会連続全く別のペアがGSを取る荒れたダブルス界になってきました。

エルベール、決勝で4人の中で一番いいプレーをしていたように感じました。まだ24歳、今後が楽しみです。

一方兄のマレーはウィンブルドンに続いて2回目のGS準優勝です。しかし弟のアンディーも決勝に来てから5回かかりました。まだまだ諦める段階ではないでしょう。まずは初のファイナル進出がマレー/ピアースの目標となります。

というわけで明日が楽しみです。それでは。