two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

今年一番の試合と感じた全米決勝

こんにちは。

昨日頑張ったら更新できそうな気もしたんですが休みました。別のことをしていました。

そういえば心配されている方も多いと思うのですが一時に比べてだいぶ体調もましになってきました。

どうも原因がささいなことだったようですが、しかし解決が見えてきたのは朗報です。

さて全米決勝戦ですが一応中盤まではずっと見てました。すごい試合でした。はっきりと今年のATPツアーの中で最もクオリティーの高い試合だったのではないでしょうか。

細かいことをだいぶ忘れてしまったのですが、試合を振り返っていきたいと思います。

プレビューで話していたジョコビッチのプレー選択ですが、早い展開で打ち合うことを選択し、基本的に終始速いストロークの応酬という形だったように思いました。

特にフェデラーが甘くボールを入れてしまうとカウンターのような形で一気に厳しいコースに持っていく技術はさすがです。ジョコビッチは守備の選手ではないということをいつもフェデラー戦で実感させられます。

本来攻撃と守備どっちでもできるのですが、リスクを負って強く攻めてミス連発して悪くしたらだめなので、最大が低くなる代わりに最少を高くする、というのがいつものジョコビッチのうまいところですが、フェデラー相手だとドバイ決勝のように押し切られることも多いので今回は攻めていきました(ドバイでも激しい打ち合いでしたが)

また今回ジョコビッチにとって幸運だったのは試合前に雨で試合開始が遅れたことにあると思います。

ナイトマッチが得意なのではなく、水を吸ったコートはバウンドの時に球の勢いを吸収するので、少しフェデラーの攻撃力を弱めてしまったのではないかという考えです。逆にジョコビッチはそれを見て球足が速すぎて守備をかいくぐられる可能性が減ったことを考慮して一貫した攻めのスタイルだったのかもしれません。

試合展開としてポイントになったのは次の場面だと思います。

・第2セットの終盤戦

・第3セットの第8~第9ゲーム

第2セットの終盤戦はフェデラーが第1セットやや押し込まれていた状況からプレーを取り戻し、互角の戦いになりつつありました。

第1セットではフェデラーの1stサーブの確率が悪く、フリーポイントがあまり作れなかったことで何度もBPのピンチを迎えました。フェデラーがしのぐものの試行回数が多くなればそれはブレークされる回数も増えるわけで結局フェデラーも一旦は追いつくものの総合的にはジョコビッチ。第1セットを6-4で取ります。

正直この差が続くとレベルが高いとはいえ差はついていくばかりと思っていましたがそうはなりませんでした。

第2セット、フェデラーのサーブの質が上がっていきます。相変わらずジョコビッチもうまくラケットに収めればしっかりとリターンを打っていきますが、それでもフェデラーは動じません。BPを与えずにゲームが進んでいくと今度はジョコビッチが苦しくなってきます。幾度となくBPを迎えます。

ただここからのジョコビッチがすごかった。サービスポイント、甘いボールを見逃さない仕掛け、ディフェンスで粘り抜く…驚くべきなのはBPをしのぐために取ったジョコビッチのプレーが一通りではないということです。

例えばビッグサーバーであれば1stが入らなければ2ndになり、そこからほころびになって失点します。

ディフェンシブなプレーヤーはリスクを負った攻撃や予測不可能な攻撃に翻弄されウィナーを許したりミスしたりして失点します。

ところがジョコビッチの場合、様々な方法でポイントできるので結果的に本当に落としたくないポイントで失点しないのです。私は今回のフェデラーのBPでのプレーを見てそんなに悪くはなかったと思っているだけに、ここはジョコビッチ側にその理由を見出したいと思っています。

第2セットはしかし第12ゲームでついにフェデラージョコビッチを捉えました。15-40のチャンスを掴み1本凌ぐも30-40からフェデラーはフォアの逆クロスを打ち込みます、耐え切れずジョコビッチはアウト。第2セットをものにして大歓声に包まれます。

ただどうもウィンブルドンと同じ空気を感じていました。やっとフェデラーが第2セットを取って追いつくもやはりここで実は勝負は終わっていた、という感覚です。

5セットマッチのこの二人の対戦はここ2年で3回目ですが、過去2回を振り返ってもそんな印象を受けていました。

ところがフェデラーはさらに加速します。これまでと違いさくさくの勝利を続けてきた効果がここに出ます。ジョコビッチも譲らず、第3セットは4-3とフェデラーがキープしたところで第8ゲーム、ジョコビッチサービスゲームになります。

ここでフェデラーはいいプレーを重ね、何度となくデュース。GPとBPが入れ替わるような10分を超える長いゲームになります。

このゲームが正念場というところでやはりジョコビッチです。BPでミスを一切犯さず、この難局を切り抜けました。ただ唯一残念だったのはBPでチャンスボール気味のボールをフェデラーがふかしてアウトにしてしまった1ポイントです。あれがもし決まっていれば…試合は違う展開だったでしょう。

そして次のゲーム、嫌な空気が流れる中40-15からフェデラーのボレーミスなどもあって追いついたジョコビッチがあっという間にブレーク。勝負は実質ここで決しました。

第4セットは都合で見ていませんが、フェデラーがSFC(サービング・フォー・ザ・チャンピオンシップ)を止めるなど見せ場もたくさんあったようですがジョコビッチが最後までリードを守りきり、4セットで決着をつけました。GS通算10度目の優勝です。

この試合の勝敗を分けたのはなんだったのか。直接的にはBPをしのいだジョコビッチのプレーでしょうが、それだけで語るには浅いでしょう。

まず、試合のプレーレベルが非常に高かった。この試合を再現するためにはこの二人を呼ぶしかないほどのレベルの高さがありました。

フェデラーのサーブ、そしてジョコビッチのリターン、フェデラーの新戦術SABR、ネットプレー、お互いに(あれだけの速い打ち合いで)ミスの少ないラリー…

正直マレーですらこのレベルに到達しているのかが疑い深いほどでした。

そしてこれだけの最高の試合を見れたことはテニスファンとして非常に嬉しいことですが、と同時に憂慮すべき点もあります。この最高の試合は円熟期に入っている28歳とレジェンド34歳の試合だということです。

正直に言えばBIG4が全員30代になる2年後、それでもジョコビッチがNO.1の座を降りていないように思えたからです。

フェデラーは限りなく今回GSに近かったと思います。それでも届かなかった…それをジョコビッチが上回った、それだけのことです。

本当に二人ともにGSタイトルをあげたいくらいですが勝負は残酷。どちらかを決めないといけなかったあの場面でジョコビッチが勝者として選ばれたということ。紛れもなく今大会においては、そして今シーズン全体を通しても「最強」という言葉がここまでしっくりくることはないでしょう。

さて全米OPが終わり、1位ジョコビッチのレースポイントはすでに12785。正直このポイントですでに現行制度が始まった09年以降だとシーズンオフのポイントと比較して2011年ジョコビッチに続いて史上2番目に高いポイントです。

今年の主要大会ですべて決勝進出。一切の取りこぼしのないジョコビッチは本当に最強と言わざるを得ません。

誰がこの男を止めるのか。しかも失速してしまった11年と違いここ一番で結果を出しました。これからは彼の得意なインドアシリーズです。

そして当然のようにジョコビッチの今年の年間1位は確定しました。今からフェデラー、マレーの2名が上海+パリ+ファイナルを優勝しても3500p。500以下ではおそらく1000程度しか稼げないので5000p以上離しているジョコビッチはまさに数字上なにがあっても1位確定なのだと思います。

ATPはとにかく発表が遅い(あらゆる可能性を考慮してから120%確実なのを確認して発表しているものと思われます)ので、その状況で9月に1位確定というのは本当にすごいことです。

全米が終わるといよいよファイナル争いに焦点が変わってきます。公式のランキング表示もレースランキングに切り替わりました。去年はこれでメディアが誤報を流したりと大変でしたが今年は大丈夫でしょう。

先ほどバーゼル/バレンシアのエントリーリストが発表され、事実上パリはみんな出場なので最終戦までのスケジュールは(突発のWC(ワイルドカード)参戦を除き)確定しました。

明日はファイナル争いのスケジューリングと展望です。先に言っておきますが錦織は99%大丈夫だと思います。

それよりも各大会にいろいろ注目すべき点が出てきたのでその辺を解説していこうと思います。それでは。