two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

錦織のバーゼル欠場はむしろ良好なサイン

こんにちは。

まずはこの話題から行きましょう。錦織バーゼル欠場です。

多くの方の反応を見ると悲壮感の漂う空気を感じ取りました。

仕方ありません。楽天、上海での敗戦の直後にケガで大会を欠場。事実だけたどればおそらくほとんどの人が不安に思うでしょう。

しかし私はこのニュースを聞いたとき「よかった」とさえ思いました。いやむしろ、この判断で錦織陣営を高く再評価したというのが正直なところです。

なぜなのか?それは様々な理由があります。

①ツアーファイナル出場は確実

錦織陣営がバーゼル欠場を判断したのは実はプレスリリースされた前日とかではないと私は思っています。その決定的な証拠はこの後説明しますが、その地点でも錦織がファイナルに出れないパターンは宝くじを当てるような確率になっていました。

ファイナルは1勝200p。ボーナスステージです。残り大会も少ない中そこに照準を合わせていくのは至極まっとうな判断と言えます。

バーゼルに出る意味は、実はない

このブログ読者の中にはバーゼルに行かれる予定だった、もしくは欧州在住で行かれる方もいるのではと思います。そういう方には忍びないのですが、個人的にはバーゼルに出る理由は一切ないと思っていました。

まずは連戦の回避です。

今年はデ杯に出てしまったので、サーフェス変更も含めて疲労度は昨年とあまり変わっていません。

年末のこのシリーズは東京(北京)→上海→休み→バーゼルバレンシア)→パリと、5週で4大会に出場するのがほとんどの選手のデフォルトになっています。

ほとんどの選手がこの選択をしているこの時期はマドリード→ローマ→休み→全仏(2週)と並んで年間の中で最も厳しい時期です。

じゃあ本当に出る意味があるのか?前者はすべての大会がビッグポイント、そして出場義務の発生している大会です。

ところが後者はATP500が2週。楽天OPは凱旋大会だし出場義務の問題があるので(後述)必要でしょうが本当にバーゼルはいるのか?

そこでポイントになってくるのはバーゼルのエントリーリストです。

1 Federer, Roger SUI 2

2 Wawrinka, Stan SUI 4

3 Nishikori, Kei JPN 6

4 Nadal, Rafael ESP 7

5 Raonic, Milos CAN 9

6 Simon, Gilles FRA 10

7 Gasquet, Richard FRA 11

8 Anderson, Kevin RSA 12

9 Isner, John USA 13

10 Cilic, Marin CRO 14

11 Goffin, David BEL 15

12 Karlovic, Ivo CRO 18

13 Dimitrov, Grigor BUL 19

14 Thiem, Dominic AUT 20

15 Troicki, Viktor SRB 21

16 Seppi, Andreas ITA 25

17 Sock, Jack USA 29

18 Kohlschreiber, Philipp GER 34

19 Dolgopolov, Alexandr UKR 35

20 Mayer, Leonardo ARG 39

21 Gulbis, Ernests LAT 70

22 Rosol, Lukas CZE 85

23 Benneteau, Julien FRA 126

24 (SE)

25 (Q)

26 (Q)

27 (Q)

28 (Q)

29 (WC)

30 (WC)

31 (WC)

32 (WC)

ベネトーが欠場を発表し、繰り上がりでコリッチもここに加わっています。

パリマスターズのカットラインは45位くらい。錦織が優勝するためには、48ドローのマスターズとほぼ同等のドローでノーシードに2勝し、ラオニッチ、アンダーソン、ガスケ、イズナーの下位5~8シードに1勝し、さらにフェデラーワウリンカナダルといった強豪選手かそれを破った調子のいい選手に2勝必要なのです。

はっきり言って今の錦織には無理ゲーです。2014年でも優勝は無理と断言するかもしれません。それが肩のけがも抱えていれば…答えは明らかでしょう。

そして優勝したからと言って500p入るわけではありません。わずか320pしか入らないのです。

今シーズンの錦織は順調に「ドサ回り」の大会で勝ち続けた結果、500以下の大会で採用されているのは

バルセロナ500

ワシントン500

アカプルコ300

メンフィス250

ハレ180

東京180

となっており、ベスト4の180p獲得では実は1ポイントも加点できません。

決勝進出だと(それでも厳しいのですが)300-180で120p、さてこの120p、実はマスターズ8強の180pより少ない数字です。

ではマスターズ8強を達成するには?と言われそうですが、マスターズでは下位選手としかベスト8までは当たりません。それにバーゼルのQF(5~8シードとの対戦)はエントリーリスト上では9~12位の対戦となり、マスターズの3回戦と全く同じ難易度です(執筆後1日が経ち、やや対戦相手のレベルは上位選手の欠場で落ちた模様)。

つまりバーゼルで4連勝>マスターズで2連勝というのが難易度の大小関係なのに、バーゼルのポイント加算<マスターズのポイント加算という奇妙な現象が発生しています。

そこまでしてバーゼルに出るのか?答えは決まっているでしょう。今回に限っては。

③実はがんばったら試合に出れるけど回避した?

今回の欠場、ちょっと違うところがあると思いませんか?

古参ファンであればわかりますが、錦織のけがは今までだとコートに立てないレベルか、立てたとして全く試合にならないというタイプで大会を欠場することが多かったと思います。古くはひじのけが、最近であれば2014マドリードの最後の数ゲームなど。

ところが今回、楽天のチリッチ戦でMTOを受けてから、ペール戦、キリオス戦、アンダーソン戦と実力者に対して確実に試合をしたうえで勝ったり負けたりしていました。

そうなんです、たぶんバーゼルにも出れないことはなかったんじゃないかなというのが私の感想です。アンダーソン戦で致命的に痛めた感じはなかったので、今回は大事を取っての欠場なのではと思うのです。

なぜこれを強く理由に挙げるのか?それはこの「大事を取っての欠場」というのが今までの錦織にはなく、実はフィジカル強化によって体が強くなったから、今までだとあっという間に長期離脱していたけがだったのが戦える程度にはまだ大丈夫な状態になっているのではという気がするからです。

そしてワシントンでも早くからMTOを取っていながらカナダでナダルに勝利したり、今回も結構長くいい試合ができていたりと、錦織が不調を訴えてから戦える時間が長くなってきていることにもこれは見えていると思います。

1年間欠かさずトレーニングしているということらしいので(いくつかのメディアなどのソース)、そろそろその効果が出始めているといってもいいのではないでしょうか。

さてそんなわけで錦織は欠場を発表しました。そうなると今度はけがの程度の心配がささやかれますが、これも私は重度のけがではないとみています。

というのも上海が終わった後、拠点のブラデントンに戻って練習している姿が公式アプリではアップされているからです(どんな練習だったかは有料会員ではないのでわかりません…)

普通に考えればここで私も気づくべきでした。上海→アメリカ→バーゼルという移動はジェットラグも招きますし、普通にバーゼルに出るなら拠点に戻らずバーゼルに早入りしてセレモニーなどにも出ながら調整したほうが無難です。

ですから実は拠点に戻ったことが発表された10/20の数日前(つまり上海で敗退した地点くらい)にはもう欠場を決めていたのでは?というのが複数の強い状況証拠から示唆される私の見解です。

バーゼルの欠場は500の直前欠場なので本来ペナルティーになるところですが、おそらく木曜か金曜あたりにバーゼルに入ってファンとの交流活動などを2日程度行い、そのままパリに移動するものと思われます。

2014年のバレンシア欠場と全く同じですね。おそらく0ポイントペナルティーを回避しながら最小限のコストでバーゼル回避ができたのだと思いました。

そんなわけで私はバーゼル回避は納得していますし、こういう確実に判断できるチーム機能が残っているのを見て再びチーム錦織に強い信頼をもらいました。

多分試合できない体ではないと思うんです。ただ総合的な判断から欠場する。その会場に行って見たかったファンには残念でしたが、それ以上に大きな意味のある欠場だと思いました。

なんだかんだ長くなったのでウィーン他今週の大会は別でまとめます。それでは。