two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

自由席から指定席へ~錦織圭、2年連続ファイナル進出の重み~

こんにちは。

眠い。ガスケ戦が終わってロングスリープできずにもう朝です。今週は本当に厳しい一週間なので、たぶんパリは1秒も見れない気がしてます。

去年の異様な更新は昼時間を睡眠に回せたのでできた技ですが、開始時間が比較的遅いパリで今年それは絶対にできません。

たぶん更新も1回、2回できたら上出来な方です。絶賛忙しいので…

昨日のガスケ戦を見て思わず手で顔を覆った人はどれくらいいたでしょうか。

第1セットでは4-2リードから4ゲーム連続取られて4-6でセットを落とし、第2セットでは悪い流れを開幕ブレークで振り切ったのにSFS(サービング・フォー・ザ・セット)で2本のDFから簡単に崩れ、タイブレークでも5連続ポイントで2SPを握りながら6ポイント中わずか1ポイントしか取れず敗戦。

前記事のコメント欄にも書きましたがガスケはナダルに13連敗中。これで連敗記録は14となりましたが、何かその実績を象徴するかのような明らかなメンタルの差も感じるゲームでした。

ナダルは特別よかったわけではなく、後半戦調子を上げてきたガスケがしっかり食らいついていた印象がありました。なのにストレート負け。これは予想はされていても衝撃でした。

ガスケのフォアは攻撃力が少なく、とりあえず返す感じのようなボールが多い印象でしたが、いい意味で回転量が減って攻撃性を増していました。

ナダルはフォアストレートを読みから外して構えていることが多く(打たれても威力がないので追いつけるので)、ガスケはフォアストレートに打ってナダルを崩すような展開からポイントが取れていました。

勝てたゲームだろうと言うつもりはありませんが、もっと粘れた試合だったかなと思います。

ガスケの才能は再び感じました。トップ10付近に居座れるだけの力はあります。それを肝心の場面で発揮できなかっただけでした。

さてファイナル進出を喜ぶ前にまずはこちらの話題に触れておきましょう。

本日のバーゼル決勝は、1年9か月ぶりのフェデラー×ナダルです!!

古くからのファンにとってはついに待ちわびたカードだったのではないでしょうか。

2014年全豪以降対戦がなかった両者ですが、どちらかの早期敗退で同じ山にいながら対戦しないことが多く、「もうこの二人の対戦は見られないのでは」という声も出始めていました。

決勝に限って言えば2013ローマ以来約2年半ぶり。当時はナダル黄金期(バルセロナから全米までわずか1敗)だったので全くフェデラーは歯が立ちませんでした(この1週間前に錦織に負けたばかり)が、今回はナダルの苦手なインドア、フェデラーの地元と条件が違います。

フェデラー有利か?となりそうですが、フェデラーも今大会はそこまで調子がよくありません。

コールシュライバー、ゴフィンとフルセットを2試合こなしておりサーブのスタッツがよくないです。

そして何よりこの二人の対戦成績はナダルの23勝10敗。ウィンブルドンでの2年連続の死闘などその伝説にも近いライバル関係が話題にされますが、フェデラーのバックハンドという急所にナダルの得意のフォアハンドが当たってしまうため、この二人の対戦成績は想像以上に開いています。

特に前回の対戦の14年全豪はフェデラーが4Rツォンガ、QFマレーと連続撃破してタイトルも夢じゃないという空気でしたが、ナダルは4Rで錦織と接戦(ストレートではあるが)、QFディミトロフから1セット落としました。

フェデラー有利の声も多数聞こえる中ふたを開けてみるとナダルの圧勝。当時自分のテニスをしながらスコア観戦していた私が目を疑ったほどでした。そこまで絶望的に相性のある関係なのかと。

あの時以来の試合とあってテニスファンとしては本当に楽しみがつきません。

とりあえずガスケが負けたので、これで9位以下の選手はパリで逆転不可能となり、錦織、フェレール両名のファイナル進出が決定となりました!!!

最終2枠が同時に決まる…去年は錦織がフェレールに勝って錦織ラオニッチがファイナル進出となりましたが、今年は他力での決定となりました。

普通は他力です。テニスの大会の性質上、対象の下位選手がQFあたりで負けて決まることが多いので5~8位付近の選手は基本他力決定です。

錦織ファンにとっては初めての他力決定ですが、この位置にいる限りは毎年こんな感じです。

10年に一度の激しいファイナル争いを来年またやれば別ですが。もうあれは勘弁してほしい…

さてパリ前にファイナル8人が全員決まったことがあるのか?というのを調べてみました。

08年以前はファイナルのレースランキング≠ランキングポイントというシステムだったため、しかも優勝の加重が今に比べて大きかったため単純比較自体ができません。

08年だけ見やすいデータがあったので調べましたが、2~3人は未決定のままパリに入ったと思われます。

そして今と同じルールになった09年以降だと

09 2人

10 3人

11 3人

12 2人

13 3人

14 4人←!!

15 0人←!!!

がパリ前に決まっていなかった人数です。

いかに今年が異常だったかを表すデータでしょう。

「strong 9」という単語を前半戦の途中に提唱しました。ラオニッチがけがで離脱した後もツアーの主役はこの8人でした。

その証拠に500以上の大会はすべて彼らが手にしています。バーゼルフェデラーナダルですのでstrong 9の500連勝記録は18に伸びることも確定しました。

現状テニス界はよく言えば安泰、悪く言えば停滞の時期に入っています。

キリオス、コキナキス、コリッチ、そのほか大勢の若手が台頭してきた今年ですが、全くその頂に手が届く気配は見えません。

最年少優勝はベズリーと少し若返りましたが、最年少500優勝者はディミトロフ、錦織以下の世代ではいわゆる「RDN」(ラオニッチ、ディミトロフ、錦織)のみで、250優勝者を足してもトミッチ、ティエム、ベズリーあたりが加わるのみです。

今年のファイナルはラオニッチ、チリッチが抜けたことでさらに高年齢化しています。

上位層の撹拌が5年以上ほとんど起きていない現状はかなり危険な状態です。

そんな中、錦織圭は2年連続のファイナル進出を決めました。

今年は昨年ほどセンセーショナルなことはありませんでした。マスターズは4強止まり、GSは8強止まり、タイトル数も一つ減りナダルに勝利した以外に大きな達成事項はないと思います。

しかしこの1年彼はトップ選手としてその責務を全うしました。

昨年実質10枠(ナダル欠場+ラオニッチ負傷交代)あったファイナルの恩恵を得て初出場したいわば「自由席」をもらった錦織でしたが、BIG4+フェレールベルディヒが実質6年連続出場(8位以内に入りながらけがで欠場したナダルも実質出場という扱いにしている)しているファイナルでワウリンカとともに固定メンバーに入りつつある、つまり昨年得た自由席の切符が今年は指定席になったのです。

正直やや停滞気味とはいえ、2016年もファイナルに出ている姿を想像できます。

昨日の通過をもって、錦織圭は真にトップ選手の仲間入りをしたのだと思います。

何せファイナル2年連続出場は非常に難しいことです。

BIG4+フェレール以外では09年以降、デルポトロ、ソダーリン、ティプサレビッチ(ただし1年目は途中出場)、ツォンガ、ワウリンカしか達成していません。

そしてソダーリンはケガで1枠解放されて9位の8番目で通過しているので、2年連続8位以上フィニッシュと限定すると、デルポトロ、ツォンガ、ワウリンカの3人しかいません。

そこに錦織は並びました。そしてファイナル最年少出場。

世界的に見ても、錦織圭がいまだ次の新GS優勝者最有力と評価されている理由がここにあります。

彼のやっていることは確かに物足りなく感じるかもしれない、GS優勝する選手という目線なら。

ただ現実的な目線で言えば、若い世代の中で全く別次元にいることは明らかです。

本当に心配しなければいけないのは、自分より下の年齢の選手が上のランクになったときです。

しかしそれが来る気配は感じられません。

テニス界が高齢化する中、まだまだチャンスはあります。

そしてフェレールもおめでとう。ちょっと肘が心配なんですが、正式な出場者としてO2アリーナに帰ってきてくれることは明るい話題です。

パリはややつまらなくなりましたが、朗報が続いた昨日でした。