two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

挑戦者としての入り口、完敗は仕方ない(2016マイアミ準優勝)

4/3 現地13:00~(日本時間翌日2:00~)

Masters1000 Miami Miami Open presented by Itau

Championship

[6]Kei Nishikori 3-6 3-6 [1]Novak Djokovic

気が付けば、6連敗してたんですね。

負けるまで気が付きませんでした。

6度も当たっている気がしなかった、というのにはいくつか理由があります。

ここのところの6連敗の対戦は

2014パリSF      2-6 3-6

2014ファイナルSF  1-6 6-3 0-6

2015ローマQF    3-6 6-3 1-6

2015ファイナルRR  1-6 1-6

2016全豪QF     3-6 2-6 4-6

2016マイアミ決勝  3-6 3-6

でした。

この中でマイアミがいかに異質だったかがわかります。

それは、マイアミだけがしっかりと勝ち抜いてジョコビッチとの対戦を得たということです。

ファイナルに関しては1/2以上の確率で対戦するので無視、14年パリは上位シードのフェレールを破っていますが、当時対戦まで行きそうなイメージは多くの方が持っていたと思います。実際翌週にはフェレールが前年の600pを失効しランキングが逆転しましたし。

さて一方、今回ドローが発表された地点でジョコビッチとの対戦を描けていた人はいったいどれくらいいたでしょうか。

私はドローが逆山になったので、もちろん決勝まで行けば十中八九当たるでしょうが、そんなところまで行けるイメージはありませんでした(マレーをボトムハーフ勝ち上がり予想にしてましたね)。

そこが違うところです。今回は、自分でジョコビッチへの挑戦権を獲得し、決勝で戦った。

この地点で100点です。いや120点でもいいと思います。5MPを止めて決勝進出していますし、私は満足しています。

しかし一方で、みなさん満足しなかったと思います。私もです。

これは奇妙なことです。

1大会で稼いだ大会としてはあの全米以降最大の大会であったマイアミに対してほぼ全員が不満を抱いている。実に奇妙です。

もっとできる、とかでもなく、何かわからないもどかしさ。

すでに各所でどうすればよかったかは議論されていますが、ここでも振り返ってみましょう。

錦織のゲーム最初の選択は決して間違っていなかったと思います。その証拠こそがブレークスタートです。

1ゲーム目の錦織はキリオス戦からのプレーを持続させていました。

ラリーをつなげながら、適切なタイミングで攻める。錦織の中ではディフェンシブというか、長めのラリーをとる戦術で行きました。

しかし私はブレークスタートしても顔色一つ変えませんでした。

次のサービスキープに成功すれば立ち上がって喜ぶつもりでした。

それほど私はサービスゲームに重要性を感じていました。

その第2ゲーム。いきなりミスで0-30となり、このゲームを落としました。

さっき触れたように、キリオス戦の錦織のサーブもあまりいいとは言えませんでした。

DFをしないことももちろんですが、それ以上にセカンドサーブがどうなるか。そして1stサーブもポイントです。ここでどれだけフリーポイントが作れるか。

ティエムもゴフィンも、接戦の陰にはいいサーブがありました。

しかしそれを錦織に求めるのは難しいです。何ゲームブレークで止められるかは試合のカギです。

試合前のプレビューです。不安視していたことが的中しました。

そしてもう一つこのゲームを落としたのが痛かったのは、あの全米以降、初めて錦織が明確にリードできるチャンスを失ったからです。

全米以降、部分的にジョコビッチを追い詰めたことがあります。

しかしそれはすべてビハインドのカウントでの話。ローマQFが象徴的なように、最後はジョコビッチにゲームコントロールされて負けるというパターンがあります。

これを裏付けそうなジョコビッチの発言が全豪でありました。

「(錦織のいい時間帯は)嵐が過ぎ去るのを待った」

あの試合でも結果はジョコビッチのストレート勝ちだったものの、連続ブレークなど錦織はかなり食らいついていました。

それに対してのこのジョコビッチの発言に、私はジョコビッチの対錦織戦におけるマインドセットを見い出しました。

つまり、嵐が過ぎ去る=錦織がいい時間帯が来ることを認め、万一それが起きてもゲームを持って行かれないようにセーフティーリードを保つ

こういう考えがあるのではと思っています。

だからジョコビッチは序盤からきっちりリードをとり、総合的に勝つ。

ある種私が常々言っている「6-4ペース」というものを忠実に守ってるのかもしれません。

そのジョコビッチ相手にもし2-0という確実なリードが取れれば、ジョコビッチは少なからず焦ったと思います。

ブレークされ、キープされた。

この事実はかなり重かったと思っています。それができなかったのは本当に痛かった。

そしてもし2-0なら1セット目を勢いで取れていたと思います。

さすがにトップ10相手にセットダウンすれば厳しかったですし、おそらくいったん落ち込むであろう第2セットの錦織のプレーによって第2セットは取れるでしょうが、その間に蓄積された試合のデータで第3セットギアをあげた錦織が一気に決める。

そんな展開はあったと思います。

つくづく惜しかった。このゲームは皆さんの想像以上にこの試合の結果を決定づけたゲームだったと思います。

その後は大きな差こそなかったもののじわりじわりとジョコビッチが錦織を追い詰めていきました。

特に苦しかったのがサービスゲームのフリーポイントがなかったこと。

プロ選手同士はよほどラリーに不得手がない限り普通ポイント獲得率は5割です。

ましてやジョコビッチ。各ゲーム1ポイント以上のフリーポイントは必須条件だった。

だからといってエースを取りに行こうとかそういうわけではありません。

1stの確率を上げる

プレースメントをよくする

球速を上げる

この3つはお互いに相反する関係にあって、どれかをよくしようと思えばどれかが下がるいわゆる相対的なものです。

私が錦織のサーブに対して不満があるとすれば、この3つを総合した「合計値」のようなものが低いということです。

例えばベルディヒは錦織よりサーブの確率自体は悪いです。しかしあの球速があるので入ればエース級になることが多いです。だから結果的に総合的ややビッグサーバー寄りというプレースタイルになっています。

このようにどれかがよければ結果的にサービスキープがしやすくなるわけです。

ところがこの日の錦織は入れに行っているようにも見えるサーブだけどそんなに確率もよくないし、プレースメントもよくないからリターンを崩すこともできない。

これでは、世界最高のリターンを持っているジョコビッチに対し、戦略なしと言われても仕方ありません。

せめてどれか一つでもよければ実は結果は結構違っていたのではと思っています。

結果サービスゲームで特に押すこともできないので、9ゲーム中5ブレークされ、約5割のキープなのです。

ジョコビッチを崩すためのラリーの戦略

この試合を見ていて頭を抱えました。

錦織がミスをするから?違います。ジョコビッチがミスをしなかったからです。

しかもここでいう「ミスをしない」とは錦織が攻めたボールに対してFEをしなかったということです。

ウィナー/UEは皆さん聞いたことがあると思いますが、攻められたからどうしようもなくミスした(例えば強打されてやっと届いてコートに返せなかったようなフレームショットを想像してみましょう)時、そういうミスをUE(unforced error)に対して、FE(forced error)と言います。

この試合で象徴的だったのが、

クロスラリー→錦織がフォアクロスに仕掛ける→ジョコビッチ開脚ディフェンスで追いつく→その返球がフォアストレートで錦織虚を突かれ崩される→以下チャンスボールをジョコビッチ仕留める

というパターンです。決してこの錦織のフォアクロスは甘かったとは思っていません。

かなりいいボールを打ったのに倍返しされた感覚です。

普通これだけ攻めたらウィナーないしFE、悪くともチャンスボールが返ってきます。

チャンスボールが返ってくれば攻め続ければいいですし、その過程でコート内で打てるようになるのでますます角度はきつくなり、最終的にはウィナーになるのですが(錦織クレーでありがちな展開)、ジョコビッチの場合そうならないので単に錦織がフォアクロスの打ち損になり、一人だけリスクを取らされた格好になっています。

はっきり言って反則です。普通そのリスクをとった対価に見合うだけポイントをとれるから錦織はトップ10にいるわけです。誰もが認めるストローク力があります。

しかしむしろそれが刃となって返ってくるのが対ジョコビッチ戦です。

錦織はウィナーが取れないしUEもFEすら取れない。これでどうやって勝つんでしょうか?

…………………

………………………

困りました。私ですらコート外から見てるのに答えが出ません。

これこそが、ジョコビッチがナンバー1たるゆえんです。持ってる技術が違いすぎるのです。

私が提示できるのは、今のところさっきの論理の逆の発想です。

ジョコビッチにUEがない?だったら打たせればいい、リスクを取らせればいい。

ジョコビッチからウィナーが取れない?だったら取りに行かなくていい。

ジョコビッチ相手に先に仕掛けるのは自殺行為?だったら仕掛けなくてもいい。

これを忠実に実行した試合を私は知っています。そうです、シモンです。

あの全豪の試合は負けこそしましたが、現状もっとも今年のジョコビッチを追い詰め、苦しませた試合でした。

この時のジョコビッチは先に打たされミスした。

ジョコビッチ本人の状態の悪さもあったでしょうが、先に触れたように、UEがないならUEを作らせればいいし、自分が真ん中に返してUEを減らせばいいのです。

結局どうすれば?ということですが、実は答えは簡単です。

練習して強くなればいい

いやいや世界6位を前にそんなことを言うのかと言われそうですが、じゃあ逆にジョコビッチと錦織が同じ実力なのでしょうか?

そう思っているとしたら過大評価です。同じ実力なら6連敗することはないでしょう。

明らかに違います。ジョコビッチの開脚ディフェンスは反則だと言いましたが、反則な理由は誰もまねできないから。確固たる技術があるからです。

で先ほどシモンの例を出したように、私はそんなジョコビッチに対して真っ向から立ち向かい、そこでクロスを打ち切って勝とうなんて思っていません。

ジョコビッチが強くてそういう技術を持っているのはわかる、リターンが優れているのもわかる。それを全部上回ろうとしたらおそらく誰も勝てないテニスマシーンみたいなものが出来上がってしまいます。

26歳の錦織にそれを求めるのは無理です。

部分的に勝っているわけですから、その「部分」を広げればいいのです。

ジョコビッチが錦織のいい時間帯を認めているように、錦織もジョコビッチにブレークされることを織り込み済みにすればいいのです。

1ブレークされても2ブレークで勝つ。ただし絶対に2ブレークされない。

たぶんジョコビッチに勝つには、こんな勝ち方しかないのかなと思っています。

何度も言うように、錦織がGSで今後勝つとしてもブレークはされると思います。

別にサンプラスがリターンうまくてアガシがサーブよかったように、実は1位選手の特徴は確固たるナンバー1である理由+総合力です。

その総合力も全部が均一化されているなんて幻想で、微妙にどっちのほうが上とかあります。

だからこそ、錦織はブレークされるという局所的なサーブのウィークポイントをほかでカバーできるようにするために、サーブもストロークも平等に向上させる必要があると私は思っています。

さて、ここまでの3か月を振り返ると、過去最高のスタートと言っていいと思います。

ブリスベンアカプルコはいただけませんが、今シーズンの戦略だと割り切ると

・主要大会ベスト8以上を3連続

・その時負けた相手はすべてBIG4

・BIG4と4回対戦(3か月スパンでは過去最高の試合密度)

・最も苦手と思われるマレーに地元イギリスで善戦

・この間けがなし、20試合以上をこなしながら終盤の足の痛みのみ(ゲームは壊していない)

ネガティブポイントをあえて探るならその取りこぼし2大会とIWナダル戦でしょうか。ナダル戦はもう少し何とかしたかったですね。

しかしこうしてすべてをフラットにみると、過去最高のシーズンと言い切る理由は明らかでしょう。

全豪で不運にもジョコビッチと当ったのが悔やまれるくらいで、全豪の上位らしい勝ち明かり型、マレー戦の善戦という内容にやっとレースポイントが追いついた感じです。

今シーズンの今後の目標は年初に書いたBIG4対戦12回ですが、この過程でたくさんジョコビッチと当たることです。

去年はマレーだったジョコビッチに負けてしまう役をまずは買って出る、いわば挑戦者決定戦を勝ち上がることです。

現状ジョコビッチの1強は誰もが認めるところで、正直昔の4大大会のように挑戦者決定戦方式にしてほしいくらいです笑

しかし現実はトーナメント方式なので、とにかくジョコビッチと当たるラウンドまで勝ち上がる。そうすればおのずとランキングは上がり、おそらく2位でフィニッシュするのではと思います。

かなり高い目標ですが、今シーズンの大荒れ模様を鑑みると、勝っていけば必ずチャンスは出てきます。間違いないです。

まず当面は上にいるナダル、ワウリンカをクレーシーズンで捉えることが目標かと思います。

ブレイクスルーの機運は高まってます。あとはその時を待つだけです。