最高の舞台は整った、要塞都市バルセロナ頂上決戦!(2016バルセロナSFレビュー、決勝プレビュー)
4/23 現地13:30~(日本時間翌日20:30~)
ATP500 Barcelona Open Banc Sabadell
SF
[2]Kei Nishikori 6-3 6-2 [6]Benoit Paire
問題なく勝ちました。
プレビュー通りの隙を見せないテニスを見せて錦織が完勝しました!
試合前プレビューが長くなりそうなのでペール戦はさっくり行きます。
実はそんなに特筆すべき点はない試合でした。
というのも、ペールはテニスが崩壊してしまい、錦織はやるべきことをやった、簡単に言えばそれだけのことだったからです。
第1ゲーム、いやその前にこの試合の開始前、いきなり戦いは始まりました。
錦織はトイレットブレークに向かいます。これは確か全豪でもありましたよね。
試合前にトイレットブレークする選手はほとんど見たことがないのですが、錦織はリズムをつかむためか、それともペールを動揺させるためだったのか、ここで落ち着くための休憩に入ったのですが…
なんと、トイレのカギが開いていなかった?ため、いったん戻ってくることに。
ここで主審のモスカレラさんが、いや行ったほうがいい、と認めたことで、再び錦織はトイレに。
この地点でペールはすでにイライラしており、試合前の駆け引き(と、言えるかはわかりませんが)で錦織が優位に立ちます。
実は錦織のこの余裕を見て、今日は大丈夫だと思っていました。この落ち着きがあるなら3度目の敗戦はないと。
試合は序盤錦織がリターンをとらえきれずもったいないミスがあり、ストロークでもミスしてくれるペールからなかなかブレークを取れません。
一方のサービスゲームは安定していました。持ち前のクレーでの展開力に加えて、1stサーブの確率がよく、大きなピンチを招きません。
ペールは1st、2nd問わずアタックしてきましたが、錦織を脅かすには精度が不足していました。
動きがあったのは第5ゲームでした。2ndサーブが固まった場面でしっかりラリーからポイントを重ねあっさりとブレークに成功します。
第9ゲームではアドサイドから連続リターンエースで30-30とすると、ここでペールが連続DFであっさりとブレークを献上。錦織が先にサーブで第2セットを始めることとなり、大きな第1セット終盤となりました。
第2セットは嫌な立ち上がりとなります。
第1ゲームはスムーズに40-0としたところでペールがセカンドをリターンエース。
普通に次のポイントで切れれば問題はなかったものの、ここで錦織が2本連続UE。この内容もあまりいいものではなくこれまでと違った異質なミスに「まずい」と思いました。
この試合ペールにとって最初のBPが来ますが、サービスエースで取ることができピンチを脱します。
40-0からなんとなく追いついてブレークされるとペールを乗せてしまっていただけに、BPまで行ったとはいえ止めたこのゲームは大きく、確実に流れが来る予感がしていました。
ペールはさっきのをなんとなくブレークして乗りたかったところここは実は錦織チャンスと見てる— twosetdown (@twosetdown) 2016年4月23日
そして次のゲーム、なんとラブゲームブレーク。
最後のポイントは狙い通りインパクトのタイミングをずらしてペールの読みを外したパッシングショット。あえて狭いコースを一閃したこのバックハンドは見事でした。
次のゲームは不運でした。ペールのギャンブルリターンが連続ではまったうえに、サービスポイントだったものが誤審でリプレイザポイントとなり失点。UEらしいUEは1本しかなく、錦織は責められない場面でした。
ペールはこのブレークで吠えました。確かに嫌な流れも来つつありましたが、決定的に何かが変わったわけでもなく、1stサーブの入りがそこまでよくなく、ストロークもまだまだ荒かったペールに怖さはなく、そのうちまたチャンスが来る、その程度にしか私は感じていませんでした。
結果ペールは息を吹き返すでもなく、30-0からベースライン近い位置で謎のハーフボレーを2本して失点するなど、正直解説不可能なUEを連発してあっさりとブレーク献上。このもらったブレークを錦織はしっかりと活かしました。
次のサービスゲームからはペールのリターンの精度も落ち全く勝負にならず、最後はMPからスーパープレーで粘ったペールですがこういうプレーに継続性はなく最後も謎のボレーミス。なんとも微妙ですが勝負としてはこれで終わりました。
勝因はいろいろあると思います。
・クレーでペールのサーブが弱体化、さらに確率も悪かった
・セカンドアタックが全米の時よりもよくなかった
・ペールがポイントにできるバックハンドの展開が作れなかった
・錦織の1stサーブがよかった
・カウントごとの適切なプレーをペールが行わずに安定感を欠いた
・錦織がほとんどのゲームでもつれず、サービスゲームで不利なカウントを作らなかった
こういったところでしょうか。ペールが爆発することを恐れ、相手のプレーを気にせずに自分のテニスを披露し、その上でペールを封じ込めました。完勝と言っていいでしょう。マッチポイントの終わり方以外は非常にすっきりした試合でした。
さて、この後の決勝はナダルとの直接対決です。
もう言うまでもないですが、先週今週とナダルは全盛期の勢いを取り戻してきています。
一方で錦織はバルセロナ14連勝。この3年間でサービスキープ率89%、ブレーク率48%という驚異のスコアで勝ち続けています。
まさに真のバルセロナチャンピオンを決めるにふさわしい対決です。
試合展開予想です。
マッチレポートが書けなかったIWですが、ナダルのスピンボールに錦織が苦しんだ形でした。
ただこれはIWの補正を考慮に入れないといけません。バルセロナでは同じようにはいきません。
そして特筆すべきはナダルの1stサーブです。90%近い確率で入れ続け、これに対して錦織が効果的なリターンを打てませんでした。
昨日のSFの試合を振り返ると、ナダルは下がってプレーするコールシュライバーに対し物理的優位を保ち、打てるタイミングでは次々とフォアハンドを打っていきました。
下がってカバーするコールシュライバーからウィナーは量産できませんでしたが、形自体はしっかりと作っていたと思います。
一方攻め込まれた時も持ち前のディフェンスでしのぎ、特にカウンターショットがかなり戻ってきたという印象です。
下がって打ちこむ分どうしても反応してディフェンスするまでの時間が稼げるため、コールシュライバーはウィナーがとれずUEが増えました。
しかし、この結果を見ると錦織は決して勝てないわけではないな、と思います。
今週の錦織は例年同様、しっかりと前で捉え、展開をしています。コールシュライバーの後ろからズドン、というテニスとは違います。
そしてこの錦織のプレーはすでにナダルに通用することは証明済みです。おととしのマドリード決勝です。
あのナダルを翻弄し、負け寸前まで追い込んだテニスは今のテニスと何ら変わりありません。
さらにいうとナダルも微妙なミスがたまに出始めました。2週連続10試合目。疲れも見えてくる頃です。もうすぐ彼も30歳なのです。
1stサーブの確率も今週では最も低い65%となりました。少しずつ、ほころびも見え始めています。
高い攻撃力で最後まで妥協せず続けることができれば、必ず勝てます。それができる確率はそんなに高くはないことは認めますが。
あの時と違いナダルもディフェンスがよくなりました。特にバックハンドでつないでいたところから攻めれるようになったことでその難易度は一気に上がっています。
クレーテニスの面白さはとにかく1ポイント1ポイントに戦略、考え、そして何より陣取り合戦の要素が加わってくること。
サーブ一球で決まるのではなく、オープンコートを作って理詰めで崩していく。最高峰のラリーは本当に見ていて面白いですし、だからこそ世界最高峰のストロークを持っている錦織にはフィットするサーフェスです。
以前はフィジカルが先に限界を迎えることが多かったですが、今週は試合時間も短く、特に大怪我もなし。というか、年初からずっとですよね。
今シーズン最も奮い立つ試合です。すでに私は武者震いが止まりません。
ここ2年はナダルのクレーシーズンの不調もあり、難攻不落だった要塞都市バルセロナのトロフィーは比較的簡単に錦織の元に手に入りました。
05年から12年まで、10年に欠場したバルセロナを除いて出た15大会ですべて優勝。8年間4月開催の大会で負けることがありませんでした。
このことから、「4月はナダルの月」などと表現されることもありました。
モンテカルロ、バルセロナはまさにナダルの城。歴史ある大会、都市でもあることからまさにこの2つの町は要塞です。
しかし14年、ここに颯爽と現れたのが錦織圭。
ナダルの敗戦もあってバルセロナで一気に新クレーコーターの称号をほしいままにしました。
ただナダルを直接倒さず取った2つのトロフィーはいわば「無血開城」の結果なのです。
そうです、3度目の挑戦、ここ3年間で最も厳しい対戦相手 ―ラファエル・ナダル―
無血開城ではなく、自分の手で、そしてこの先の飛躍のために、今シーズン最大といってもいい重要な決戦、間もなく開幕です。
BIG4に決勝で勝ち優勝する。これはATP500ですが、さながら今後起こるであろう全仏決勝戦の「前哨戦」です。
#alwaysfight