two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

フォニーニ戦で書き逃したことと、反則について

思ったより反響があったので少し追加で書きたいと思います。

まず、昨日の試合は先日から話題になっているQMKパターンでサーブを取るか?という話に大きく影響しています。

QMKパターンあるのが救い こういうのもセカンド落としのパターンでつまりファーストを取れているからこれはブログで書く— twosetdown (@twosetdown) 2016年5月4日

さて、QMKを迎えるためにはどんなパターンが必要なのか?

という話ですが、テニスは原則サービスゲームを交互に打っていきます。

そのため、普通はサービスキープしてセットが終わるので、次のセットでは相手のサーブから始まるのが普通です。

ところが、こうならないケースが二つあります。

まず一つは、ブレークしてセットを終えると次のゲームではサービスゲームから始められるパターンです。

これは結果的にはよくできたルールです。5-4、6-5から勝負強くセットを取れれば次のセットも先にサーブを始められるというルールです。

そしてもう一つがタイブレークです。

タイブレークのルールは決まっていて、結果いかんにかかわらず、そして最後のポイントでどちらがサーブを打っていたかも関係なく、次のセットの第1ゲームのサーブは前のセットで後サーブを打っていた選手が打つ、つまり打つ順番を入れ替えます。

たとえばこんな感じです。

今年の試合でいえばイズナー戦がわかりやすい。

第1セットは錦織が2ブレークされ、最後はイズナーのキープで6-1となりました。

第2セットはサーブを順番に打つ考えから錦織から打ち始めます。

そしてタイブレークで錦織がセットを取って、次のセットはイズナーから先にサーブを打ち、5-6でQMKパターンが来ました。

ただその代わり、タイブレークの1本目はそのセットで先にサーブを打っていた選手から打っていくという風にルールで決まっています。このため、ミニキープで並んでいたためタイブレークでは錦織から見て6-5となり、私が「自動MP(SP)」と呼んでいる、ミニキープ数で並んでいるのに先にMPが来る状態を一発で取り切って勝つことができました。

さて、こう考えるとファイナルセットでリターンゲームでQMKパターンを迎えるためには次の3通りがあります。(3セットマッチの話です)

①2セット目が相手のサービスキープで終わる

②2セット目を相手のサービスをブレークして取る

③結果いかんにかかわらず、2セット目が相手から先サーブで、タイブレークで終わる

この3つです。

①はセットを落とす場面です。

すると、これは第1セットを取っていることが条件です。(3セットマッチでの話です)

②は第1セットを落とし、5-3の場面からブレークするようなケースですがこれはめったに起きないと言っていいでしょう。

③は2通りありますが、1セット目を落としてかつ相手先サーブから始まるケースは珍しいです。普通は1セット目を取り、2セット目がタイブレークにもつれて落とすパターンがほとんどです。

さて、ここまでまとめると最初のツイートの意味が出てきます。

これを第1セット取ったパターンから眺めてみましょう。

第1セットをサービスキープでたとえば6-3で取ったとしましょう。

すると次のセットは、相手のサービスキープで最後落としてもファイナルセットはQMKパターンです。

そして、タイブレークで落としてもファイナルセットはQMKパターンです。

唯一だめなのは、自分がブレークされてセットを落としたパターンのみで、それ以外のいかなるパターンでもファイナルセットがQMKパターンになります。

つまり第1セットを取れれば高確率でもつれてもQMKパターンに持ち込むことができるため、勝てるのです。

フォニーニ戦はまさにこのパターンでした(紆余曲折はありましたが)

1セット目 〇〇〇〇×〇×〇 6-2 フォニーニ先サーブで始まり錦織キープで終了

2セット目 ×〇×〇×〇××× 3-6 フォニーニ先サーブでフォニーニキープで終了

3セット目 〇×〇×〇×××〇〇〇〇 7-5 

1セット目を取ったことで2セット目がフォニーニキープで終わり、その結果ファイナルセットがQMKパターンです。

私がこのツイートをしたのはファイナルセットに入った直後。すでにこのパターンは見えていました。なお結果はもっとすごかった模様…

なのでテニスは1セット目を取れ!というのは、実は真実なのかもしれません。

セットを取って有利になる以上に、こういう見えない心理的プレッシャーをかけることにもつながります。

今シーズンの錦織は実は1セット目を取ったら無敗です。これで無傷の20連勝中です。

もう一つ。警告に関する話題です。

次の記事で触れますが、ディミトロフがとんでもないことをイスタンブール決勝でやってしまいました。

事実だけを書くと、ラケットを叩きつけてゲームペナルティを食らって0-5から1ゲームを落とし、テニスのボールの打ち合いではない状態で試合が決しました。

それがあったのが先週の日曜日。わずか1週間で2例目となったこのようなペナルティについて少し解説です。

ツイッターではウォーニングと書いていました。それに対して何人かの方から質問が来たのでやります。

私自身もうやむやにしながら言っていたところがあったので、こういう時はルールブックです。久しぶりにルールブックを読みました(今シーズン初です)。

するといろいろと興味深いことがあったので紹介します。

ルールブックは以下のページからダウンロードできます(ツアー公式です安心してください)

http://www.atpworldtour.com/en/corporate/rulebook

さて、ここによると、148ページの真ん中に反則した場合の審判のコールが書かれてあります。

Point Penalties assessed for violation of the Code should be announced in accordance with the following examples:

“Code Violation, Delay of Game, Warning, Mr.(last name).”

“Code Violation, Verbal Abuse, Point Penalty, Mr.(last name).” “Let’s play” (“Let’s Play” is optional).

“Code Violation, Verbal Abuse, Game Penalty, Mr.(last name).”

If instructed by the Supervisor, the announcement for a default shall be, for example:

“Code Violation, Unsportsmanlike Conduct, Default, Mr.(last name).”

私もびっくりしたんですが、「Let’s play」なんて言わないといけないんですね(オプションとは言っているが)

そしてこれを書いた理由ですが、なんとフォニーニ戦でもちゃんと主審が「Let’s play」と言っているんですね。審判すげえ。

で、これらの反則事項については151ページ「THE CODE」以降にまとめられています。

一般には「コードバイオレーション」と言われることが多いのですが、この項は試合中のペナルティーだけではなく、ウェアのロゴから罰金からとにかく規定だらけ。193ページまであるのですが今回は試合中の反則事項についてです。

2) Point Penalty Schedule

a) The Point Penalty Schedule to be used for Code Violations is as follows:

FIRST OFFENSE WARNING

SECOND OFFENSE POINT PENALTY

THIRD AND EACH SUBSEQUENT OFFENSE GAME PENALTY

However, after the third Code Violation, the Supervisor shall determine whether each subsequent offense shall constitute a default.

167ページ下段によると、試合の警告は次のように決まっているようです。

1回目の反則→ウォーニング(警告)

2回目の反則→ポイントペナルティー(1ポイント相手に献上)

3回目以降の反則→ゲームペナルティ―(1ゲーム相手に献上)

となり、ひどいようだとスーパーバイザーがdefaultを判断するようです。

ここでいうdefaultがなんなのかは読めなかったのですが、失格に相当するようなものだと推測されます。

さて、昨日のフォニーニは序盤からラケットを何度もたたきつけるなど、目をつけられる状態でした。

それがファイナルセットになり、6-5のチェンジコートの場面で1回目の反則が出ました。

理由がなんなのかはわかりませんでしたが(GAORAさんの実況がうるさい…)、はっきりと放送できないような単語を言ったAudible Obscenityか、他者(相手選手に限らない)をけなすような単語を言ったVerbal abuseのどちらかのように見えました。

そして0-30となったところでボールを客席に打ち込みました。これは定義通りボールをコートのある地面から理由なく外に打ったということでBall abuseの反則となりました。

これが2度目の警告となりポイントペナルティーとなって0-40、QMKが来たということでした。

びっくりしたのは警告のルールです。何度も言いますがコールが規定されていて、ちゃんと審判が実践していることですね。

ATPツアーで裁くことができる審判はごくわずかと言われていますが、やはりそれだけの能力があるんですね。

以上久しぶりの自由研究のコーナーでした。