two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

固定観念から打ち砕く!ガスケに初の勝利!(2016マドリード3R)

5/5 現地14:00~(日本時間21:00~)

Masters1000 Madrid Mutua Madrid Open

3R

[6]Kei Nishikori 6-4 7-5 [10]Richard Gasquet

試合前のプレビューです。

対ガスケですが、バックハンドを封じ込むことです。

フォアハンドは序盤きっちり機能していましたし、展開で打ったフォアクロスもいいところに決まっていたので、フォニーニ戦の逆をやればいいということです。フォアにくぎ付けにし、時折バックに展開する。

錦織は確かにガスケの伝家の宝刀バックハンドを封じました。しかしバックを打たせないのではなく、バックを打たせるがそれをポイントにつなげないという方法で封じ込めました。

狙いがピタッとはまった戦略勝ちと言っていいでしょう。

ガスケとの対戦は過去6回ハードか芝。特に直近の3回は、トップ10入りを意識し崩れてしまった13カナダ、のう胞手術前の最後の試合となった14ワシントン、終盤戦でぼろぼろだった15パリと、なぜか錦織の状態が悪い時の対戦が続きました。

6連敗と言いますが、最初の3回はそもそも錦織がトップ選手でなかったころの実力負け、そして後の3回は条件の悪さが招いた敗戦です。

ナダルの6連敗の状態よりは幾分勝ちは見えている感じでした。

ただ私は同一カードで3連敗以上する場合は明確な理由があると思います。ほとんどが実力差のケースが多いですが、それだけ戦えば一回は勝てるだろうというマッチアップは上位でも存在します。たとえばナダル×ベルディヒや、フェデラー×フェレールのようなカードです。どちらもBIG4が大型連勝しています。

でガスケと錦織のマッチアップも一応理由があると思っています。それがガスケのバックハンドです。

これは憶測にすぎませんが、錦織との対戦成績がいい相手として、ガスケ、ワウリンカ、T.ハースといった選手が挙げられます。

これらの選手に共通するのは、片手バックかつそのバックハンドが長所で、攻撃に使うことができるということです。

バックハンドが弱点であるフェデラーやディミトロフにはいい勝負ができています。

この差はなんなのかというと、バックハンドのクロスラリーをしたときにどちらが優位に立てるか、ということです。

そもそも両手バックハンドと片手バックハンドは、片手バックのほうが安定性には欠けるものの、左手を添えないため可動域が大きくなり、クロスのアングルショットが打ちやすいという一長一短な性質があります。

15全豪ではバックのクロスラリーからワウリンカがさらに厳しいコースにクロスを打ち、錦織のラケットが飛んだシーンが象徴的でした。

このように同レベルの選手であれば必ず片手バックハンドのほうが優位に立てます。

錦織はバックハンドのレベルが高いため、攻撃できない片手バックハンドは逆に攻めて優位に立てるのですが、どうしてもバックハンドのうまい選手と当たると打ち負けるケースが出ます。

そしてガスケは特にクロスラリーからコース変更してストレートに打つ技術がとんでもないです。彼が天才と呼ばれる所以だと思います。

12月に神戸で見てきましたが、全くラケットの出所がわかりません。スイングスピードが速く振りかぶりも深いので相手からはどこに打つか全くわからないです。

個人的には、バックDTLはガスケが1位、バッククロスはワウリンカが1位だと思っています。

そんなガスケに自由にバックハンドを打たせるとどうしても反応が遅れ、特にDTLでノータッチのウィナーを量産させた結果がここまでの6連敗だと思います。

ガスケの読めないDTLをどう封じるか?という私の答えが「そもそもバックハンドを打たせない」でした。

しかし結果は違いました。私はその理由についても事前に示唆していました。

読みが合わなくて反応が遅れウィナーになることが多いです。まずはフリーに打たせないことも重要ですが、クレーなのでどうしてもフリーで打つ場面が増えます。ここはマイナスポイントですが、強打が減速するので錦織が拾う確率も上がると思います。この辺がどっちに作用するかはやってみないとわかりませんね。

そうです、打たれても拾うことができる。

錦織は割り切っていました。

そしてバックのDTLを打たれても追いつき、そこからオープンコートのフォアクロスに打つことで一気にラリーの形勢を逆転させました。

試合を通じてバックハンド側同士のクロスラリーが多かったですよね。

錦織には意図があるとはいえなぜガスケは注文通りのラリーにお付き合いしたのか?

おそらく打てなかったんです。DTLを打ってもポイントにつながらない。

簡単にDTLを打つといいますが、なぜそもそもテニスはクロスラリーが多いのかと言えばそれだけコートに入る確率が上がるからです。そして来たボールをコース変更するのは難しいので、一旦クロスラリーを始めたら向かい合って打つほうがよい。このため、ストレートは簡単には打ちません。

DTLを打つリスクと、バックハンドに集めて錦織のミスショットを引き出す。

いろいろ考えた結果ガスケは後者を選択したのだと思います。

試合としてはただのクロスラリーが多かったですが、そこにはお互いの心理が見える激しい攻防が行われていました。

1ゲーム目。いきなりのバック狙いに驚きました。

ガスケがまだ上げきれない中、錦織はフォア逆クロスをガスケのバックハンドに集めます。

このフォア逆クロスに威力があった。さらに回転をかけることで片手バックの泣き所である高打点で打たせることを狙いました。

この結果、ガスケは得点パターンを失い差がついていきます。

1ゲーム目をブレークした後もしばらくその展開が続きます。ここで2ブレーク目を取りたかった…

5ゲーム目あたりからガスケが動きます。

ガスケとしてはバックハンドとバックハンドの打ち合いにさせて主導権を握りたいところ。そこで少し下がって十分な体勢でコントロールショットを打ち、錦織がバックハンドでしか打てないコースを突き始めました。

この結果、バックハンド同士の打ち合いのクロスラリーになりガスケがペースを取り戻します。

6ゲーム目であっさりとブレークバック。錦織がスコア以上に押していただけにあまりにももったいない落とし方となりました。

しかし驚いたのは第7ゲームでした。先ほど書いた錦織の次の矢がぴたりとはまったゲームでした。

15-0からガスケがバックDTLでそれまでのラリーから一気に球速を上げる強打。

しかしわずかに内に入ってしまったのと錦織の読みがよかった。完璧にフォアでカウンターショットを打ちウィナーに。

次のポイントもものすごいバックDTLが飛んだもののしっかりカバー。ロングラリーで最後は逆をついてポイントに。

そしてガスケがバックでジャックナイフを見せるもミス。このあたりも直近の2本が影響していると思います。

15-40のチャンスをしっかり取り切り、即座にブレークバックしてリードを守ります。

その後ガスケは再びバックハンドをうまく錦織のバックハンドに集め、SFSとなった第10ゲームは完全にガスケのペースでしたが痛恨のドロップミスなどもったいないポイントが目立ち、錦織がキープ。序盤かなり押していながら引き戻された格好で薄氷の第1セットとなりました。

第2セットに入るとガスケも1stサーブが入るようになり、ラリーの読み合いもつかめてきたかなかなか錦織がフォア逆クロスを打てる機会が巡ってきません。

またガスケは弱点であるフォアハンドが攻撃的。私が指摘していたフォアクロス主体ならやられていたかもしれません。

バックハンドを打たせ、かつDTLを打たせず、打たれても読んでカバーする。

これを錦織が守り続けました。バッククロスが続く時間帯でもうまくコースを突くなどしてなかなかガスケに有効打を打たせず、我慢のクロスラリーが続いた。浅い時もありかなりバックハンドでうまく打たれた時もありましたが、トータルで何とか踏ん張っていました。

第3ゲームでは40-15からリターンをうまく合わせました。

最後のポイントも逆クロスからのポイント。攻めを封じ込んで錦織がブレークしました。

そしてSFM2回目でなんとか取って勝ちました!!!

いやいやいや…

SFMのミスは正直イージーミスなのでたぶん気にしてたんだと思います。

6連敗もすればさすがに意識したでしょう。

ただ終盤ガスケも運動量が落ちました。けが明けの大会ということもありますが、何よりガスケは3試合目。下位シード選手は1試合多くこなしています。こういうところも上位シードの恩恵です。

いろいろありましたが、2回目のSFMではフォア逆クロスで展開するという取れるパターンを実践して取りました。落ち着いていたと思います。

ファンにとっても本人にとってもこれで肩の荷が一つおりました。

クレーでのガスケ攻略法は存分に見せてくれました。まだフォアハンドを攻めずに、です。

次のハードでの対戦が楽しみです。1セット目7ゲーム目のようなバックDTL打たれる→カバーしてフォアクロスカウンターというのは期待できません(減速しないのでウィナーになる)。どんな戦略を取るのか今から楽しみです。

次の対戦はキリオスです。過去2勝していますが、この大会のキリオスは要注意。なんと1stサーブを3試合通算で75%入れ、77%の1stwonと、60%の2ndwon、誰も止められませんでした。

特にワウリンカ戦ではワウリンカのサーブもよく、自分は4本のBPをしのぎ、BPが1度も来ない中タイブレークで上回って2セット勝ち。去年のフェデラー戦といい勝負強いです。

そして昨日のクエバス戦では、ファイナルセット1ブレークダウンから巻き返して逆転勝ち。

4-3の0-40と3BPを迎えた場面でクエバスが素晴らしいプレーで2本しのぎ30-40。厳しいかに見えた次のポイントで強烈なフォアストレートを叩きこみポイント。これが試合を決めました。

実に勝負強い。クレーコートであることを忘れさせるサーブ、フォアハンドの威力で勝ち上がってきています。

かなり危険な相手と言っていいでしょう。マイアミでも煽りましたが個人的にはそのとき以上です。

上位選手を次々となぎ倒して初優勝したマルセイユの時を彷彿とさせています。

油断は禁物。

本人もわかっているでしょうが、かなりタイトな試合が予想されます。

ただキリオスにとっては一度も勝ったことがない相手でかつリスペクトしていることもあり、マイアミでは終盤のサービスゲームで1stの確率が落ちました。

錦織としては複数ブレークが望みにくいだけに、クレーコートであることを忘れて虎の子の1ブレークを守っていくスタイルでプレーしていくことが必要になりそうです。

ラリーとしてはとにかくバックに集める。ガスケ戦でフォア逆クロスが機能しました。マイアミでもフォア逆クロスが機能していたのでまずはこのイメージでいいと思います。

ただマイアミの時は自由自在に左右に打ち分けたので、動かすことも時には必要になってきます。

今回も戦術が非常に楽しみです。キリオスも3度目の対戦、何かやってくるでしょう。

とにかく、簡単な試合にはなりません。

勝てば3年連続のマスターズ4強。文字通り、全大会で最も得意な大会になると思います。

錦織とマドリードの高速クレーはよく合っていると思います。遅すぎないため自分から展開してウィナーは打てるしクレー特有のディフェンスもできる。

今回はキリオスのサービスにも影響しそうですが、高速サーフェスがマイアミの時同様ウィナー量産を助けてくれると信じています。

今日勝つといろいろ大きい…なんとか勝ってほしい…