【ドロー解説】2016カナダMSの展望
こんにちは。
あれ?7月ってテニス観戦的には休めるはずなのに…もうカナダですか…あっはい…
カナダMSが始まると、本格的な後半戦の開幕です。
私の定義では大会数、主要大会消化数の観点から全仏で前半戦終了としていますが、多くのファンはウィンブルドンが終わり、約1か月主要大会なしとなるのでウィンブルドンで前半戦終了としています。
ここからは日程も詰まっていて、厳しい戦いとなります。
カナダ→休み→五輪→シンシナティ→休み→全米→全米→デ杯入れ替え→休み→アジア250→東京or北京→上海→欧州250→バーゼルorウィーン→パリ→休み→ファイナルズ
もうちょっとこれなんとかならないんですかねえ…
ジョコビッチ、マレーといえどもこれをすべて取るのは不可能に見えます。
夏シーズンのプレビュー(もういくつか終わっているが)は別記事に書きますが、トップ10付近の選手には大きなチャンスが出てくる時期だと感じています。
そしていきなりそのチャンスがやってきたのがカナダMSです。
私の予想では五輪前の調整という感覚でカナダに出て、シンシナティを飛ばして全米に備える選手が多いのかなと思っていましたが、五輪ぶっつけになる選手も多数出る形になりました。
カナダMSを欠場した上位選手の一覧です。
マレー
ツォンガ
ガスケ
バウティスタ=アグー
クエバス
ロペス
コールシュライバー
ATP500のエントリーリストと言われても疑いません。
この中には、ナダルやガスケのようにけがからの復帰の状況も加味しての欠場となっている選手もいますが、マレーは完全に出れる大会を飛ばしています(ウィンブルドンから時間が必要だという理由を発表しているが、本来義務である大会を個人的事情で飛ばすのは異例)。さらにフェレール、クエバスなどは7月シリーズに出場しながら出場を取りやめています。
この結果、第2シードが5位のワウリンカ、第9シードが16位のイズナー、第16シードが26位のソックとなりました。
さらに本戦直接インのカットラインである44番目の選手が85位のエドムンド、前週の結果を含めて適用されるスペシャルエクザンプトが解放された結果、45番目の最終直接インにはプロテクトランキング89位、現ランキング426位のツルスノフが入っています。
異例です。こんなことほとんどありません。モンテカルロのエントリーリストのほうが締まっているくらいです。
それではさっそくドロー解説に移りましょう。
カナダMSは男女で別会場、男子は奇数年にモントリオール、偶数年にトロントで行われます。女子はその逆で、隔年開催です。
当ブログでは様々な混同を避けるために毎年カナダMSで表記しています。
本戦ドローは56、16人シードが付きます。
上位8シードは1回戦免除です。けがから復帰の錦織にとって、1戦飛ばせてかつ初戦が遅くなるのは助かりますね。
上位シードは火曜~水曜の登場と思われます。
①ジョコビッチ山
[1]ジョコビッチ
bye
(PR)ツルスノフ
(WC)ポランスキー
予選勝者
予選勝者
[14]ペール
[9]イズナー
セラ
クズネツォフ
予選勝者
コリッチ
ドディグ
bye
[5]ベルディヒ
年間GSを逃した失意のウィンブルドンから[1]ジョコビッチが戻ってきました。
一部報道では記者会見の「けがだったのでは?」という質問に意味深な回答をしたことから、けがを負っているという話も挙がっているだけに、今大会どのような入り方で来るのかが注目です。
不思議なことに08年地点で3位、GS1勝していたジョコビッチが過去の五輪では銅、4位に甘んじているだけに次の五輪に向けて序盤戦の勢いを取り戻しているかは重要になってきます。
初戦のミュラーは少し要注意。芝のニューポートでは決勝に進んでいますが、さすがにワシントンではペールに敗戦で16強。
通常のジョコビッチであれば難なく勝って行ける相手だと思います。
そのミュラーにワシントンで勝った[14]ペールが次のジョコビッチの相手。トリッキーな相手ではありますが、去年もシンシナティで当たっておりジョコビッチが難なく下しています。
万一ペールが敗戦した場合は予選勝者か地元WCのポランスキー。正直に言ってイージードローでしょう。
ここはジョコビッチの状態次第という感じです。
一方ウィンブルドン4強、逆転でのファイナル進出に向けさらに加速していきたい[5]ベルディヒは苦しいドロー。初戦のコリッチドディグは問題ないと思いますが、夏の北米シーズンの躍進に定評のある[9]イズナーを引いたのはきつい。
イズナーはワシントンでタイブレーク2本でジョンソンに敗れたばかり。やや心配ですが一方で体力的に余裕のある状況でのカナダ入り。このベルディヒとイズナーの3回戦は注目カードです。
仮にベルディヒは勝っても高確率でジョコビッチとのQF。大きなポイント獲得が望みにくく、ワシントンと五輪を飛ばした恩恵をあまり得ることができない状況です。
②ラオニッチ山
[4]ラオニッチ
bye
ルー
ズベレフ
ミルマン
予選勝者
フォニーニ
[15]ジョンソン
[10]モンフィス
ソウザ
ポスピシル
シャルディー
(WC)ダンセビッチ
クエリー
bye
[7]ゴフィン
地元でのマスターズを自己最高シードの4シードで迎えた[4]ラオニッチ。優勝も見えているだけに気合が入ります。
2014年の同会場では8強。しかしその結果では満足しないでしょう。さらなる上位進出へ可能性は十分です。
初戦はズベレフとトリッキー。チリッチなどのサーブのいい選手からも勝利を収めており、初戦は注目カードです。
その次の[15]ジョンソンは今週ワシントンで勝ち上がっていますが、マスターズの3回戦であることを考えれば与しやすい相手です。ジョンソンが勝ち上がれば疲労もあるでしょう。
一方[7]ゴフィンは初戦がクエリーとなりました。こちらも全米シリーズで毎年好調の選手。かつては賞金アップのボーナスがつく、7~8月のハードコートの成績で決まる「USオープンシリーズ」で優勝したこともあります。
クエリーはワシントンでモンフィスに惜敗してカナダ入り。休む時間もできたのでチャンスはあると思います。
その[10]モンフィスは1回戦免除なしとなり、悲願の500タイトル初獲得に向け、カナダはいったん考えずにワシントンで全力を出してくると予想されます。
ゴフィンとしてはこの二人に警戒。コンスタントに8強以上を積み重ねれば初のファイナル進出もあります。現在10位。全米までに追いつきたいところです。
ラオニッチとゴフィンのQFとなれば、ラオニッチ有利か。ウィンブルドンではゴフィンが2セットアップまで行きましたが、その後の内容といい、ラオニッチが休養十分であることも考えればラオニッチに分がありそうです。
③錦織山
[8]チリッチ
bye
カルロビッチ
フリッツ
ラモス=ビノラス
ディミトロフ
(WC)シャポバロフ
[11]キリオス
[13]プイユ
予選勝者
グルビス
ラム
予選勝者
デルボニス
bye
[3]錦織圭
マスターズ自己最高シードで迎える[3]錦織はいいドローを引きました。
初戦のデルボニスはここのところ成績がぱっとしていません。クレーコーターということもありハードでの公式戦は3月以来。
予選勝者は今回は100位以下の選手しかいません。気になるのはステパネクくらいでしょうか。しかし錦織と対戦するまでに3試合をこなす必要があり(おそらく3連戦濃厚)、どちらが来てもマスターズの1回戦免除の選手の初戦としては楽な相手だと思います。
次の3回戦は[13]プイユに要警戒。デ杯でベズリーにストレート勝ちするなど勢いは止まっていません。
ハレではプイユの自滅気味の2、3セットもあって錦織が勝ちましたが、けがを抱えて勝ったと楽観視するには早すぎるでしょう。こういう若手の選手は大会ごとに成長しています。
それ以外の相手だと、マスターズの3回戦ということを考えると非常に楽な相手です。
予選勝者は前述、グルビスは現在64位、ラムはなんと114位です。
ランキングだけで推し量るのはよくないというのは一般論ですが、直近の成績+年間の成績で判断しても、現在錦織の脅威になりうるのはプイユのみというのが結論です。
基本的には、まだ体調が万全でなければなんとか8強、体調が万全ならかなり上のラウンドを狙いたいところです。シンシナティではQFジョコビッチとか普通にありますからね…取れるときに取りたいです(これはジョコビッチ以外のこの大会に出ているすべての選手に言えることですが)。
[8]チリッチのブロックは激戦。ここのところタイブレークの勝率がよくニューポートでは優勝していて、さらにワシントンでも勝ち進んでいるカルロビッチが初戦の相手になるかもしれません。
またフリッツもアメリカのハードコートに戻ってきたことで息を吹き返すかもしれません。
さらにこのブロックには[11]キリオスがいます。けがが気になる時期もありましたが、休養十分、再び大会をかき乱す可能性は十分です。
錦織が健康であることを仮定すれば、このQFは誰が来ても面白いマッチアップになると思います。
理想的にはこの試合で力を入れ始め、SFでピークに乗り決勝をなんとか勝つ。決勝が難題ですが、やはり上位進出の可能性はある大会だと思います。
しかし口を酸っぱくして言えばあくまで健康なのが条件です。
公式ブログを見るとまだ痛みもあるようですし、正直私は過度な期待は一切していません。初戦までに棄権する可能性も0ではないと思っています。
④ワウリンカ山
[6]ティエム
bye
トロイツキ
アンダーソン
(WC)ディエス
エドムンド
予選勝者
[12]トミッチ
[16]ソック
クドラ
ヤング
ドルゴポロフ
ユージニー
ロベール
bye
[2]ワウリンカ
マスターズ初のボトムハーフの長となった[2]ワウリンカ。初戦のユージニーとロベールは与しやすく、次戦の[16]ソックが気がかり。ここはドルゴポロフもいて気になるラウンドです。
ウィンブルドンではデルポトロ相手とはいえ2R敗退。今シーズンまだGSで990pしか稼げていないワウリンカ。持ち味の勝負強さを取り戻すためにこの千載一遇のチャンスは絶対に生かしたいところです。
今期最多勝ペースで勝ちを重ねている[6]ティエムですが、ハンブルグは病気で大会前欠場、意気込んで臨んだ地元のキッツビュールでメルツァーに敗れ、ウィンブルドン以降勢いを失いつつあります。
しかし、ティエムはすでに500以下の大会はほぼポイントを埋めきっており、カナダで勝てば帳消し。初のファイナル進出に向けてカナダシンシナティ全米の結果は大きく意味を持ってきます。
初戦はまだ復帰後トンネルを抜けられないアンダーソンよりもトロイツキが上がってきそう。その次も[12]トミッチがやや気になるが、それ以外の選手が上がってくればしっかり勝てるはず。8強の180pを地道に積み重ねていくことが重要です。
ただシード2名が現在不安定なこともあり、大荒れの山になるかもしれません。
優勝予想
優勝 ジョコビッチ
準優勝 チリッチ
4強 ラオニッチ ワウリンカ
8強 ベルディヒ ゴフィン 錦織 ティエム
困ったときの安全予想再び。
ボトムハーフは予想困難。正直きつい。
そしてそもそも論ジョコビッチが体調万全なのかも不明。全仏優勝後の燃え尽き状態も不安。
しかし一方で対抗馬のラオニッチもジョコビッチに全敗中。ビッグサーブを止められると術がなくなっていくのはウィンブルドン決勝で証明されました。ジョコビッチもそれをやってくるでしょう。
今回躍進の可能性が高いと見ていたベルディヒ、ラオニッチがともに相性の悪いジョコビッチにあたったことで
・とりあえずジョコビッチ勝利のカードを切る
・ボトムはわからなさすぎて結局手堅く取る
という予想になりました。
錦織はどうでしょう。私は健康であることが確かなら決勝予想も考えましたが、これまでの私のけがからの復帰の知識と経験からすると、今回はまだ100%ではないという見方です。
何せ去年はヒラルド戦から4週間たったワシントンで大会中盤でもうMTOを取っていましたから。結果カナダSFまで持ったとはいえそのあとの結果はご存じのとおりです。
似たようなタイプのけがに見える今回、チリッチ戦の棄権から与えられた時間はわずか3週間半。そうなれば私の答えはこうなりました。
逆に今回はラッキードローをアーリーラウンドで生かす形でいいと思います。
しっかり8強に進んで180pを持ち帰る。ウィンブルドンでもできたわけですし、今回もきっちり取れるポイントを取ってファイナルを近づけるという形でいいと思います。
今年は3位以下が大混戦。こういった細かいポイントが年間最終順位を1つ、2つ上げることになっても驚きはありません。
大きく影響がない形で五輪、シンシナティ、全米につなげていけたら満点です。
大会は予選が土曜日、本戦は日曜日からのスタートです。来週のシンシナティも日曜スタートなので注意が必要です。
いよいよ、夏のテニス三昧が幕を開けました!!!