【ドロー解説】2016リオ五輪の展望
こんにちは。
先ほどリオ五輪の開会式が終わり、やっと私も五輪モードになってきました。
旧ブログ時代からの方は知っている方も多いですが私はもともとスポーツ観戦は雑食派。4年に1回×2回、観戦のピークを持ってくるというのが普通だったのですが…
正直、今回誰が出るのか他競技を全く把握できていない始末。メダル予想もしようと思ったんですが断念しました。
この4年で私のスポーツ観戦のウェイトも大幅に変わりました。
深く広くが私の観戦スタイルだったのですが、「狭く、その代わりとことん深く」に変わりました。
今大会、他競技のことも少し記事にできたらなと思います。
さてここからはテニスです。残念ながら上位選手にも多数の欠場が目立ちますが、それでも豪華なメンバーが揃った五輪が開幕します。
今回のテニスはレギュレーションがやや特殊です。
・3セットマッチ、ファイナルセットタイブレークで決着(前回まではファイナルセットはGS5セット目の1ブレーク差つくまで方式)
・ただし男子シングルス決勝のみ5セットマッチ
・同一国の選手が2人以上いる場合、3、4人の場合は同じクォーターに、2人の場合は同じハーフに入らないようにする(同国選手の同士討ちをできる限り避けるため)
・ダブルスは男女複すべて同じ国の選手と組む(たとえばドディグ/メロのようなペアは不可能)
・シングルスは64ドロー(ATPの大会にはない、基本56ドローか48ドロー)
・ダブルス選手のシードにシングルスランクの成績が加味される(ATPツアーはシングルス主戦の選手でも必ずダブルスランキングを使ってシード付けする)
通常のツアーとは違った方式です。あと3位決定戦があるのも面白いですね。一度大会で負けた選手がもう一度コートに立つのもツアーファイナルズとデ杯とここだけです。
メンバーとしてはATP500よりは締まっていますが、マスターズからは程遠い欠場者の多さで、4年前にポイントがあった時の750pというのがしっくりくるような大会密度になっています。
今回ポイントがないのはなぜなのかはよくわかりませんが、ATPとITFの関係が悪いためだというのはおそらく事実でしょう。
ATPは今年スケジュールを変更することで実質2年間大幅なスケジュール変更を強いられ、ランキングの失効の関係からも同じ週に同じ大会を安定して開催したいだけに大きなダメージです。
一方のITFも五輪にプロを招待することが使命。0pになってしまったことは大きな痛手です。
それではドロー解説です。
今回ほど4つの山に分ける意味が出る大会もないでしょう。当たり前ですがメダリストは1つの山から1人しか出ません。
①ジョコビッチ山
[1]ジョコビッチ
(PR)デルポトロ
ソウザ(ポルトガル)
ハース
トンプソン
エドムンド
(ITF)ダニエル太郎
[14]ソック
[10]バウティスタ=アグー
クズネツォフ
ルー
ロレンツィ
(PR)ヤノヴィッツ
ジャズーリ
[5]ツォンガ
悲願の金メダルを狙う[1]ジョコビッチは大変な幕開けとなりました。初戦はデルポトロ。
デルポトロはウィンブルドンでワウリンカを倒しており、当たれば上位を倒す力があります。
またこのカードは前回五輪の3位決定戦のカード。この時は準決勝でフェデラーと死闘を演じたデルポトロが体力負けすることなくジョコビッチに勝利しました。
今回ジョコビッチはしっかり6試合を勝つためにピーキングを合わせてくるだろうという読みだったので、いきなり初戦から強敵が来ることでペースを崩されそうです。
現状デルポトロはバックハンドがあまり回復していないので、丁寧に行けばジョコビッチがしっかり勝つと思いますが、デルポトロの強力なフォアハンドに主導権を握られるとまさかという可能性もあり得ます。
初出場となったダニエル太郎は[14]ソックとの初戦。サーブ主体としたソックのテニスに付き合ってしまうとチャンスは生まれません。持ち前の粘りにプレーで少しずつプレッシャーをかけていきたい。
[5]ツォンガはカナダを飛ばして復帰戦。ウィンブルドンから十分に時間は作りましたが状態は未知数。しかしチャンスはあります。
対抗シードの[10]バウティスタ=アグーは下り坂の状態。けがからの復帰戦ともなり、ノーシードにも際立った強豪選手はおらず、難しいブロックと言えそうです。
ツォンガが持ち前の実力を発揮すれば8強まではしっかり行けると思います。
QFでジョコビッチとツォンガのカードとなれば面白いでしょう。ツォンガは一発がありBIG4との対戦成績もいいです。ウィンブルドンでもマレーと5セットの試合をしたばかり。
②ナダル山
[3]ナダル
デルボニス
セッピ
マルチェンコ
(PR)ベイカー
(ITF)杉田祐一
コリッチ
[15]シモン
[11]クエバス
バシラシビリ
ブラウン
ベルッチ
ジュムール
セラ
(ITF)グロス
[8]ゴフィン
[3]ナダルは前回ロンドン五輪での出場がけがで叶わず、北京金以来8年ぶりに五輪に戻ってきました。
先ほどの開会式で嬉しそうに旗手を務め、一安心したテニスファンも多かったのではないでしょうか。
そのナダルは単複3種目(ミックスダブルスも込み)、すべて出場となっています。
ただナダルは復帰戦です、「キャリア史上最大の決断だった」と語った全仏以来の試合。ウィンブルドン、カナダを飛ばしてでもこの五輪に何とか間に合わせてきました。そんなナダルは「リオでなければコートに立っていない」という趣旨の発言をしており、まだ100%ではないという情報が入っています。
3種目出場は明るいですが同時に不安もあります。正直私も初戦が終わってみるまでナダルの結果を予想するのは困難を極めます。あくまで手首の状態がいいことを仮定して話を進めていきます。
ノーシード勢は問題なく勝って行ける相手かと思います。序盤戦に苦戦することは手首の状態が良ければないと思います。
日本の杉田はブライアン・ベーカーとの対戦。才能を期待されながらけがから何度も復帰している選手です。初戦ということで可能性で言えばシード選手よりはあるという感じでしょうか。ベイカーの状態が全く分からないので何とも言えません。
[15]シモンはリオに向かう途中でパスポートを忘れるというミスをしてしまいましたが、無事リオについています。
そのシモンとナダルの3回戦ですが、現状のシモンの状態から行くとこれもナダルにとっては脅威ではないと思います。
一方好調[8]ゴフィンはデ杯に続き国のかかった大会で成績を出したいところ。ナダルのけががまだ厳しいという予想をする人の中にはメダル予想にゴフィンを挙げる人もいます。
対抗シードの[11]クエバスは依然調子を維持していますが、ここはハードコートの大会。ゴフィンの速いテンポのテニスにはやや分が悪そうです。
この山はナダル次第という感じです。3位決定戦の対戦相手の山になる可能性も高く、注目です。
③錦織山
[6]モンフィス
ポスピシル
ドゥトラ・シルバ
(ITF)ファビアーノ
(ITF)アルボット
ガバシビリ
ディミトロフ
[9]チリッチ
[13]コールシュライバー
ペリャ
クドラ
(ITF)マーティン
べランキス
ミルマン
ラモス=ビノラス
[4]錦織圭
初のメダルを狙う[4]錦織の初戦はラモス=ビノラス。ノーシード中最高ランクの選手ですが、ランキングほどは脅威はないです。ラモスはクレーコーター。3年前に一度負けていますが、マスターズの2R初戦と思うことが大事かと思います。ある程度しっかり合わせていかないと負けますが、今シーズンの錦織であれば、入り方を間違えなければ大丈夫だと思います。
次戦のミルマン×べランキスの勝者ですが、ミルマンだと初対戦。べランキスは同世代でジュニア時代のライバルで、ツアーでは1度対戦していて錦織が勝っています。
どちらも一発がある選手というわけではないので、ここも当たりやすい相手だと思います。
3回戦で対戦濃厚の[13]コールシュライバーは全豪で対戦してストレートで勝ったばかり。しかしあの時は1回戦でコールシュライバーが不調でしたが、今回当たった場合2回勝ってきたコールシュライバーとの対戦となり、前回とは少し違ってきます。次戦がタフであることも考えると、ここで少しずつ上げていきたいです。
一方[6]モンフィスのブロックは激戦。対抗シードは9~12シードで最も力のある[9]チリッチ。さらにカナダで8強に入ったばかりのディミトロフもいて、この3人の争いが激しい。1回戦のチリッチとディミトロフの結果がこのブロックの流れを決めそうです。
モンフィスは2週連続10試合をこなして1週休んでの五輪。まずは体力がしっかり回復しているかがカギです。
QFがおそらくタフマッチになりそう。順調に上がってきたら大一番になりそうです。
④マレー山
[7]フェレール
イストミン
ドンスコイ
シュトルフ
エリアス
[PR]コキナキス
[地域]キング
[12]ジョンソン
[16]ペール
ロソル
フォニーニ
エストレラ=ブルゴス
[地域]バシッチ
トロイツキ
[2]マレー
前人未到、五輪連覇を狙う[2]マレーはトロイツキとの初戦。なかなかタフです。次戦はモナコが濃厚か。しかしそれ以外は特に危険な選手がいないという印象。[7]フェレールはなかなか調子が上がってきません。また[12]ジョンソン、[16]ペールもぱっとしない成績が続いており、マレーを倒すには至らないという予想です。
初戦のトロイツキ戦を抜けていけば、マレーは4強までは堅いのではないでしょうか。
メダル予想
いつもの安全予想です。
金 ジョコビッチ
銀 マレー
銅 ナダル
4位 錦織
ベスト8 ツォンガ ゴフィン モンフィス ジョンソン
安全に行きすぎじゃないですか
正直今回下位シードに波乱があっても上位シードに波乱があるように見えません(ナダルの手首による棄権と状態の悪いフェレールを除く)。
今回は16シードが32位のペールで、ノーシードは33位のラモス以下。ディミトロフ、トロイツキはチャンスがありますが、ベルダスコなどの下位にいても上位を喰える選手が、軒並み国の人数制限か欠場となっているので大きな波乱は起きにくいと思います。
ナダルも手首万全で来れば正直錦織はきつい。この後の記事でも繰り返しますが錦織は今期対BIG4は8連敗。8連敗です。
この壁を破らないとメダルには手が届きません。
ただ一方で、ここは五輪です。
かつて04年アテネ五輪ではGS最高4回戦が1回というチリのマスーが突然優勝、3位にはF.ゴンザレスとチリ勢が占めてフェデラーがメダルを逃したり、08年にはそのゴンザレスが2度目のメダルを獲得するなど波乱も多い大会です。前回五輪もマレー金、フェデラーとデルポトロの死闘、そこからデルポトロがジョコビッチに勝って銅メダルなど誰が予想できたでしょうか。
現状テニスファンの意見も大手ブックメーカーもジョコビッチ、マレーの2人が頭抜けているという見解で一致していますが、ふたを開けてみないとわかりません。
そして錦織が0pの大会に、しかもこのアメリカシリーズの連戦の中五輪に出場することに否定的な意見も多く見られますが、私は一貫して出場を後押ししています。
この世論、前にも似たようなことがありませんでしたか?そうです、あの3月デ杯です。
そしてあの時とめったに起こらない「ある共通点」があります。
日本を背負い試合に出る
この条件が揃ったとき、これまでも錦織はとんでもない成績を出してきました。
15で臨んだロンドン五輪でフェレールを破って8強。12年前半は全くいい成績が出ていなかっただけに自信回復につながりました。
13年9月のデ杯ではショッキングな全米1回戦負けから立ち直るきっかけとなりました。
そして今年のマレー戦。その後の成績は言うまでもないでしょう。
五輪というファクターは錦織にとってプレッシャーではなくプラスに働くはずです。過去の結果がそう証明しています。
期待は個人的に高いですが、それでもメダル獲得の確率は30%くらいと見積もっています。そのことは認めなければいけませんが、カナダの時のなるようになればいいという状況からはだいぶ話が変わってきました。
まずは一度負けても許されるSFまで進むことが必要です。一戦必勝です。