two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

明日の3位決定戦を前に起きそうな誤解を全力で解く

おはようございます。

先ほど準決勝の2試合目が終わり、デルポトロが決勝に進出しました。

この結果を見て、驚いた方も多いのではないでしょうか。

そして様々な感情が浮かんできたと思います。

またメディアもBIG4との再びの直接対決、盛り上がらないわけがありません。

ですがその前にいくつか整理しておかないといけないことがあります。

もしこれから書くことを知っていなければ、我々は3位決定戦について大いなる誤解をしてしまうことになるからです。

まず、準決勝の錦織戦ですが、敗戦の原因の大きな部分を占めるのが錦織の疲労です。

ミスの原因を疲労に求めているだけでは?と言われそうですが違います。

錦織のフットワークは、QFのモンフィス戦と比較して、格段に落ちていました。

これは

・錦織が飛びつくようにリターンすることが皆無だったこと

・一歩目の反応飛び出しが遅く、昨日なら取れていたようなボールがウィナーになってしまったこと

・ディフェンスのスライスカットをする判断が速い(機動力が落ちているので、こういうディフェンスに頼らざるを得ない)

こういったところに出ていました。

もちろん疲労だけではありません。錦織を封じ込めたマレーの戦略は見事でしたがそれは単純な試合記事でじっくり解説します。しかし私はリオ時間生活をしているので、この後寝てからの更新になります。

本当は、そのマレーの戦略をたっぷり書いた記事を朝に更新する予定だったのですが、その予定を急きょ変更せざるを得ないほどのもう一つの準決勝となったからです。

そして錦織の原因は疲労にあります。

準決勝からほぼ1日経ちますが、劇的に回復する可能性は低いと思っています。

3位決定戦も疲労との戦いになると思います。

仮にナダルがどう来ようと、錦織がUE(アンフォースドエラー、自発的ミス)連発で負けてしまうという可能性がそこそこありえます。

そして準決勝について触れなければいけません。

この準決勝、デルポトロはジョコビッチを破った時のように素晴らしいプレーでした。

そしてこのデルポトロに対してナダルは対抗しました。強烈なフォアハンドを何度も受けながら、時にはカウンターショットを打つこともありました。

ファイナルセット4-4からデルポトロがブレークして5-4。勝負ありかと思われた次のゲーム。ナダルの神がかったプレーでラブゲームブレークバック。0-30からネット際の攻防を制したナダルは渾身のガッツポーズを決めました。

pic.twitter.com/kZUp5xcz4w— doublefault28 (@doublefault28) 2016年8月13日

生で見ていましたが錦織の絡まない試合で大声が出たのは久しぶりです。4-4以降の攻防は開いた口が塞がらない、誰もこの試合の結果を予想することができない、何が起きてもおかしくない、そんな試合でした。

正直、今シーズンのATPツアーベストマッチだと思います。

五輪はATPツアーではないという粋じゃない突っ込みはやめていただいて…

本当にそんな試合でした。生で見れて本当によかったと思っています。

そしてここで確認したいことがあります。

準決勝のナダルのプレーは、錦織の3~5段は上でした。全く次元が違いました。

あれだけのデルポトロの猛攻をしのげたのはナダルだからこそです。他の選手ならもっと大差で敗れていたでしょう。

試合に敗者を決めることに、終わりが来ることに、これほど悲しいと思ったことがあったでしょうか。

それほどの両者の気迫、執念、勝ちたいという気持ちが伝わってくる試合でした。

しかし勝者は無情にも一人です。今回はデルポトロが勝ちましたが、繰り返しますがナダルがよくなかったわけではありません。

しかしおそらくメディアは「錦織メダルへ挑戦」となるでしょう。

これは仕方のないことです。メディアにはメディアの仕事があります。

だからこそ私はこの場所を使って伝えたいと思います。

明日錦織が銅メダルを手にかけることは、非常に難しいという現実があることです。

そんなに厳しいの?ということですが、これは実際に見てもらった方が早いと思います。

NHKのウェブページに見逃し配信があります。誰でも見ることができます。

全部見ると3時間の激闘ですので全部見なくて全く問題ないです。ファイナルセット3-3から。これだけ見てください。私がここまで口酸っぱく言っている理由が必ず分かります。

3-3からなら40分程度で見れます。ちょっとした時間に見てみてください。

逆にナダル強すぎ側に煽りすぎと言われるかもしれません。

分かっています。

ただ、準決勝第2試合を見た人にとっては、これは脚色でもなんでもなく、多くの方が同意していただけると信じています。

それでも錦織なら勝つんじゃ…それも分かっています。

しかし現実的に考えて、いまだナダルには不調時に勝った一勝のみで、今シーズン成長した錦織が2度返り討ちにあっている相手です。

BIG4、ラファエル・ナダルは、強い。

ナダルも気落ちはあると思います。そして、1週間で単複10試合戦ってきた疲労もあります。

しかしそれでも、覆らないのでは、と思います。

えっナダル10試合も戦っていたのかと驚かれる方もいます。じゃあ錦織は3時間ゲーム1試合やっただけじゃないかと言われるでしょうが、私はこれを含めても、錦織のほうが疲労が大きくなる影響が一つあると思っています。

UEは、相手とは関係ないからです。どんな相手であろうが、1ポイントあげる行為なのです。

疲労もあって錦織はサービスゲームでもUEを打つことが多かったです。UEを打つということは、相手の調子に関係ありません。

仮に錦織と私が試合をしても、錦織が勝手にUE100本打てば私は勝てます。

テニスとはそういうスポーツです。

ナダルとの調子いかんにかかわらず、UEを打ち続ければ錦織は負けます。

そしてなぜか錦織は対BIG4になると、途端にUEが増える傾向にあります。

この壁こそがBIG4の壁なのかもしれません。自滅とも取れますが、「気」を吐いているのがBIG4とも取れます。

錦織に限らず、多くの選手がその「気」に負けてしまいます。

この壁を超えないと、相手がどういう条件であろうが、負けてしまいます。

そして最後の伝えたいことです。

今回のナダル対戦が決まって非常に憂鬱になられている人たちがいます。ナダルファンです。

日本全体が錦織の悲願の銅メダルへ!となる流れの中ナダルを応援する意思を表明することに複雑な心境を抱えている様子が、ここ数時間でも多数見られています。

最近テニスファンの中で「放送で海外選手を優先するか日本人選手を優先するか」という問題が議論されたことがあります。このような問題が起きる背景には、他のスポーツには全く起きないある前提が潜んでいます。

海外選手のファンがかなり多数を占めている時代がつい最近まであった

これです。

錦織の登場まで、日本選手のファンは少なく、特にBIG4を中心とした海外選手のファンがATP/WTAツアーのファンの大多数を占めていました。

ところがここ3年で状況は変わり、特に今回の五輪は錦織を応援する人のほうが圧倒的多数です。これは揺るがない事実でしょう。

しかしテニスファンはたくさんいます。今回ナダルを応援したいという人はたくさんいるでしょう。

私はそれを悪いこととは思いません。

これは他のスポーツにはない文化です。

今オリンピックの解説を聞いていても、ほとんどが日本人寄りです。錦織戦もそうでしたね。

普通であれば、たとえば「バドミントンの対戦相手のインドの選手のファン」なんていうのはいても数人くらいでしょう。なので日本人寄りの実況、解説でも何の批判も出ません。

その結果暗黙の前提として、中立性を保つと言っていながらも各種場面で日本人寄りの優先、応援姿勢、実況解説などが取られます。

しかし、テニスではそれは違います。

この文化はおそらくテニス観戦にある程度染まった人以外は決して知らない文化であり、明日も盲目に錦織を応援する人が圧倒的多数です。

そのような方から心あらぬ批判を受けるかもしれません。しかし気にしてはいけません。その人たちのほとんどはテニスがそんな特殊な文化を持っていることを知りません。

一応ここでメッセージを書いていますが、1億人みなが私のブログを見るわけでもないですから力は微力です。

だからこそ、お願いがあります。

ここを読んでいただいている熱心なテニスファンの中だけは、公正中立に、勝者を称え、敗者の健闘をねぎらう。

この姿勢をお願いしたいと思います。

我々も、テニス同様フェアプレーの精神でいきましょう。

勝者にふさわしい選手が銅メダル、そして決勝では金メダルを獲得できるよう、ATPツアーのファンとして私も祈っております。