two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

閑話球題2019 ①あの頃のネクストジェネレーションファイナル 前編

こんにちは。

2019年も色々ありましたがテニスシーズンもあと少し。
錦織はシーズン終了を発表し、あまり観戦に身が入っていない人もいるかもしれません。

 

錦織ファン達は不安よな。

TSD 動きます。

 

という(ちょい古めの)時事ネタを使いたかっただけなのですが、TSD、本当に動いています。

 

最近ananに投稿しましたが、他にも本当はWB後にNumberwebに1本出せるように進めていました。が、十分にデータを集めて自分の中で議論し、ゴーサインを出してから出そうと思っていたら、時間が取れずに先延ばしにしてしまい、機を逸して自分でボツにしました。

全米も上げれるはずだったのが、台風15号の停電によって電子機器にアクセスできなくなり、こちらも機を逃す結果に…

年末のどこかで違うネタで一本上げようと思っていますが、それだけでは私も納得いかないし、もっと私の発信をブログでと思われている方もいらっしゃると思います。

 

6月にはマニアックなデータを公開していく、というお知らせをしたばかりですが、どこまでをブログに、どこからをNumberwebに出すかの線引きが結構難しく、かえって筆不精になってしまいました。

 

それだけでなく、これまでのNumberの記事でもそうだったのですが、「ここのデータ、有用なことが書いてあるのに記事紹介ではわずか2行で終わっている…」といったこと、多かったと思います。

例えばこんな記事。

 

number.bunshun.jp

 

「実は錦織のキャリアを振り返ると、初期の頃はサービスから始めることが多く、10試合以上連続でサービスゲームから始まることもあった。 だがトップ選手になってからはリターン選択の割合が大幅に上昇。通常はコイントスに勝った選手はサーブを選ぶことが多いため、2014年以降、錦織の試合開始1ゲーム目がリターンゲームになる試合の割合はなんと73%にのぼっている。」

 

10試合連続でサービスから初めていた頃はいつなのか?73%は多い数字なのか?考え出すときりがないでしょう。

 

 

Numberwebには暗黙の「字数制限」があります。当たり前ですが、あそこに1万字の記事を書いても、ページ更新だけで何回クリックしなければいけないか…読者視点だと読む気失せますよね。

私はだいたい2000字くらいを平均値として原稿を出しています。そうすると、マニアックなデータをいくらでも載せたいのですが、それではあっという間に字数オーバー。大衆の求めていることともかけ離れてしまいます。

ではそれをどこで公開するのか?定例記事の更新をやめたこのブログの出番がここでやってきました。

ここには字数制限もないし、読む人はマニアばかりです。一部の人がついてこれなくても構わない。そんなスタンスでデータを公開していきます。

Numberに載せなかった(載せられなかった)細かいデータから、様々なことに踏み込んでいくということ、さらに、一旦Numberwebに出すことを一切考えずに、ひたすらマニアックなテーマについて集中的に研究してみて、それを公開する。こういうことをやっていきたいと思います。

 

幸い、11月から年始まではテニス観戦が落ち着くので、じっくり時間をかけて取り組めます。試合があるとそっち見ちゃうのはファンの悪い癖。

というわけで、2014年に大好評だったあのシリーズの名前を使って、長期連載シリーズを始めます。

題して、閑話休題2019」

繰り返しになりますが、今回は少々マニア向けです。まだテニス観戦を始めたばかりの人(もうあまりいないでしょうね…)は2014年シリーズを先に読むことをお勧めします。今でも結構有用なことが書いてあるんですよね、あの当時の記事。

 

 

記念すべき第1回は、公式の発表にヒントを得た内容です。
tennistvから、もし2006年にネクストジェネレーションファイナル(以下NGF)があったらこんなメンバーでしたというツイートがありました。

 

今見ても豪華です。ここからGSウィナーが4人、GS決勝経験者が6人。全員がトップ10を経験しました。
これがいいとこ取りなのはなんとなくわかるのですが、ではこの公式のように、過去20年間NGFが開催されていたらどんなラインアップだったのか?
そのメンバーを並べてみると、何か見えてくるのでは?と思いました。

実際、なかなか面白かったです。書きながら笑顔になりました。

 

各年のNGF出場メンバーの抽出方法ですが

①パリ開幕日のATPランキングポイントを基準とする
これは厳密に考えると、違いを生みます。race to Milanでは、1月1週~パリ前週までのポイントで計算するのに対して、ATPランキングは前年パリ~11月チャレンジャー~パリ前週までを加算するので、ポイントを過大評価する可能性があり、これがずれを生みますが、いちいち計算するとそれはそれは大変な時間を要するので、誤差を認めてこうしました。
2017~19年はrace to Milanで、データのない2016年以前はATPランキングポイントで計算しました。

②有資格者は(開催年 - 21)年より後に生まれた選手
今のルール通りです。例えば、錦織は1989年12月29日生まれなので、2010年まで資格がありました。

③けがや明らかに欠場してそうな場合も含める
例えば、2006年のナダルはマスターズカップ(当時の最終戦の名称)に出場しているため、今年のチチパスみたいに欠場していることが想定されますが、こういったケースも無視して、とにかく有資格者で上から順に8人を出場者として抽出しました。1人欠場した際の8番目ということで、わかりやすいように次点も載せました。

④WCは無視
Tennistv公式に倣って、単純に上から8人を出しました。今のルールでは8人目はイタリア人WCですが、開催地がミランで固定になっている今だけなので、この改変は許してほしい。

 

そのため、確定している現実である2017年、2018年にズベレフが、2019年にチチパス、シャポバロフ、アリアシムが出場したことになっていますが、現実はそうなっていないので、その点はご了承ください。

 

で、色々データを漁ったらおもしろすぎたので、初回から早くも前編後編に分けることにしました。今回は直近10年、2010~2019年について振り返っていきます。後編で2000~2009年の振り返りと、この20年間の傾向相関について議論していきます。

それではまず2010~2019年を見ていきましょう。参考として、その年の21歳以下の選手の成績をトピックス形式で紹介しています。

一番左の数字はその時のATPランキング、ptsはランキングポイントか、レースポイント、yearは生まれた年、ageは年齢です。ただし、08年以前はランキングポイントの計算方法が今と違うので参考程度にしてください。また、生まれた年ごとの世代区分で議論するため、大会施行日の年齢とここで書いている「age」の数字は違います。例えば2010年に錦織は出場していて、それは20歳11ヶ月での出場となりますが、「21歳世代」として扱っています。11月後半~12月生まれの選手がこれに影響します。

 

2019

2019   pts year age
7 チチパス 3910 1998 21
18 デミノー 1730 1999 20
19 アリアシム 1681 2000 19
28 シャポバロフ 1495 1999 20
46 ティアフォー 1060 1998 21
56 アンベール 932 1998 21
63 ルード 931 1998 21
55 ケマノビッチ 901 1999 20
73 M・イメール 763 1998 21

 

※ATPランキングとrace to Milanのポイントがずれているため、 この数字で合ってます。ミスではありません

若手トピックス・チチパスが全豪ベスト4、シャポバロフがパリ準優勝、アリアシムが大躍進

今年はチチパスがNAF出場。アリアシム、シャポバロフ、デミノーがトップ20を経験し、数年前までの有資格者が次々とトップ10、トップ20入り。一気に若返った印象がある1年でした。

欠場があったので、仮想のボーダーはケマノビッチ。イメールとダビドビッチ、そしてWCのシナーは落ちていますから相当熾烈でした。

しかし後編で示しますが、それでも普通くらいの印象。近年が若手不作の時代だっただけです。その記録をこれから辿っていきます…

 

2018

2018   pts year age
5 ズベレフ 4950 1997 21
16 チチパス 2175 1998 20
29 シャポバロフ 1450 1999 19
33 デミノー 1308 1999 19
44 ティアフォー 1055 1998 20
49 フリッツ 974 1997 21
76 ルブレフ 760 1997 21
80 ムナー 661 1997 21
79 フルカシュ 636 1997 21

 

※ATPランキングとrace to Milanのポイントがずれているため、 この数字で合ってます。ミスではありません 

若手トピックス・ズベレフが2年連続MS優勝、チチパスMS準優勝、デミノー台頭

昨年はズベレフがNAFのため、シャポバロフがけがのためそれぞれ欠場。仮想ボーダーはムナーです。次点がフルカシュですから、この年もタフだった。大会が2年目になり、若手台頭の機運も出たことで厳しい戦いになっています。

上では触れていませんが、22歳となり出場資格を失ったNGF初代王者のチョンが全豪ベスト4に入っています。正しい出世コースですね(なおその後けがで苦しむことに…)ハチャノフもパリMS優勝しています。

 

2017

2017   pts year age
4 ズベレフ 4490 1997 20
35 ルブレフ 1219 1997 20
44 ハチャノフ 1045 1996 21
49 シャポバロフ 971 1999 18
51 チョリッチ 931 1996 21
54 ドナルドソン 890 1996 21
55 チョン 805 1996 21
63 メドベデフ 772 1996 21
78 ティアフォー 662 1998 19

 

若手トピックス・ズベレフが1990年代生まれで初のMS優勝、この年齢の選手が本家最終戦に出るのは8年ぶり

NGF開催初年度。ズベレフが出ていれば優勝だったか。

ボーダーはメドベデフ。大会でも3位に入っています。この頃はまだ普通のフラット打ちの若手って感じだったんですけどね…(当時実況していた)

次点はティアフォーで、2番手がチチパス。この年楽天予選決勝で当たった二人で、チチパスが日本で知名度を上げるきっかけになった大会でした。

そしてここからが、本当の若手冬の時代です。NGF創設は、こうした停滞が続いていたことへのカンフル剤の意味もあったのだと痛感するほどの数字ですので、皆さんも驚愕してください。

 

 

2016

2016   pts year age
14 キリオス 2460 1995 21
21 ズベレフ 1745 1997 19
40 エドムンド 1075 1995 21
47 チョリッチ 980 1996 20
54 ハチャノフ 873 1996 20
73 フリッツ 729 1997 19
97 西岡 620 1995 21
102 ティアフォー 590 1998 18
108 メドベデフ 573 1996 20

 

若手トピックス・キリオスが20歳でツアー優勝、フリッツが18歳でツアー準優勝、ズベレフが8年ぶりとなる10代優勝

さて、ここからが妄想の時間。この年にNGFがあったらという想定の元見ていきましょう。

トピックスを見てわかる通り、一気に達成事項が小さい話題になりました。
ズベレフが8年ぶりに10代優勝。その前はチリッチですから、相当な時間が経っていることが分かります。
ボーダーもトップ100を割りました。再びトップ100になるのは2008年までさかのぼります。本当に空白の時間です…

西岡は資格最終年の21歳でNGFに出場できていました。1年前から大会があれば…
キリオスも同じで、割を食った印象です。

ただ、メンバーを見てわかる通り、この8人+メドベデフは全員が3年以内にツアー優勝を達成しています。結構豪華なメンバーで、これを知ると西岡への期待値がかなり上がります。

錦織は数十年~百年に一度の選手なので除外するとして、日本人選手がある程度若い頃から世代の中心としてツアーでやっていけるかどうかは、この西岡の上昇曲線が一つの指標になりそうです。

 

 

2015

2015   pts year age
30 キリオス 1260 1995 20
46 チョリッチ 916 1996 19
51 チョン 830 1996 19
79 コキナキス 661 1996 19
82 ズベレフ 647 1997 18
84 プイユ 645 1994 21
107 エドムンド 533 1995 20
123 コペヤンス 459 1994 21
132 E・イメール 441 1996 19

 

若手トピックス・キリオスが2度目のGSベスト8、チョンがアジアCHで無双、チョリッチがマレーに勝利

 

あれ???

ここである事実に気づきます。
本来であれば中心にいるはずの21歳世代、1994年生まれが全然いません。

現在よくATP世代議論で語られる「ロストジェネレーション」の幅は様々ですが、一番きついのがこの世代です。プイユが筆頭ですが、そこから先の名前が他の年と比べると弱い。

今全盛期を迎えているはずの94年生まれ、25歳の選手は今日現在、トップ50にたった一人しかいません。2番手のトンプソンは60位付近。

この頃からすでに傾向は出ていて、数年下のチョリッチやズベレフに先を越されているのです。

 

 

2014

2014   pts year age
37 ティー 1024 1993 21
53 キリオス 830 1995 19
70 ベセリ 743 1993 21
93 チョリッチ 592 1996 18
137 ズベレフ 397 1997 17
151 キュブラー 356 1993 21
158 コキナキス 330 1996 18
160 デリッチ 328 1993 21
164 ダニエル 326 1993 21

 

若手トピックス・キリオスがナダルを破ってWBベスト8、ティームがワウリンカに勝利、ズベレフがハンブルグベスト4

お気づきの通り、この時期はもう優勝とかの話題がないので、アップセットの話題ばかりになります…

この年は93年生まれが21歳で、世代トップのティームがいますが、こちらも2番手以降はさっぱり…現在トップ50に入っているのはティームと50位付近のロンデロのみ。ティームいなかったら94年世代より悲惨です…

ちょうどこの年は「Young Guns」キャンペーン最盛期。これより少し上の錦織、ラオニッチ、ディミトロフらが活躍した年で、一応ティームとかキリオスも若手ひとくくりで含まれていましたが、やっぱり91/92付近に明確に線引きがあるんですよね正直…92~95年までの世代に明確な名前を付けられないんですよ。代表選手が少なすぎて。

 

 

2013

2013   pts year age
55 トミッチ 890 1992 21
87 ベセリ 608 1993 20
90 クドラ 600 1992 21
94 ソック 585 1992 21
105 ハリソン 542 1992 21
119 シュワルツマン 461 1992 21
137 アルグエロ 405 1992 21
138 ダックワース 398 1992 21
142 ティー 384 1993 20

 

若手トピックス・トミッチシドニー優勝

ここで92年世代が登場してきます。MS優勝者のソック、翌年にチャレンジャーファイナルを制したシュワルツマン、そして2011年から3年連続出場しているトミッチが出てきます。

93,94年世代よりはややネームバリューがありますが、こちらも結局27歳になってもトップ10経験者はソックのみ、現在トップ50には3人(シュワルツマン、バシラシビリ、クライノビッチ)しかいませんから、決していい世代とは言えないですね…

こうした世代が19~21歳にいる結果、ついに最上位選手のATPランキングは50以下となりました。

 

 

2012

2012   pts year age
49 トミッチ 825 1992 20
55 ディミトロフ 796 1991 21
66 ハリソン 710 1992 20
72 クズネツォフ 660 1991 21
164 クドラ 323 1992 20
166 ソック 319 1992 20
173 アンドレオッシ 297 1991 21
178 ベロッティ 284 1992 20
179 シュワルツマン 284 1992 20

 

若手トピックス・特になし

91年世代が入ってきたこの年、やはり注目はディミトロフです。

ディミトロフは2010年から3年連続出場となっており、この時ナンバー1争いをしていたジョコビッチやマレーから4歳下。ベビー・フェデラーという人気先行も考えると、次世代ナンバー1として推されるのは当然だったなということが分かります。

ただこの世代も、現在のトップ50はディミトロフとカレノブスタのみということで、厳しい世代です。

一つ一つを並べるとふーんで終わりますが、現25~28歳世代、4年分の選手が集まってもトップ50に7人しかいないわけですから、これはロストジェネレーションと言われても仕方ないですね…

ついに若手トピックスもなしになりました。調べたけど見た限りでは本当になかったんだもん…

なおこの年の2月から、ATPはYoung Guns」キャンペーンを始めました。当時選出されたのは錦織、ラオニッチ、ディミトロフ、ハリソン、ドルゴポロフ、トミッチ、ヤングです。この辺の世代のメンバーとしては、悪くないチョイスだったと思います。

 

 

2011

2011   pts year age
29 ラオニッチ 1290 1990 21
41 トミッチ 985 1992 19
71 ディミトロフ 691 1991 20
75 ハリソン 672 1992 19
102 ティー 548 1990 21
114 ベランキス 505 1990 21
120 ポスピシル 474 1990 21
133 カレノブスタ 392 1991 20
136 ギアネッシ 384 1990 21

 

若手トピックス・ラオニッチがツアー初優勝

90年生まれの世代が入ってきました。
やはりこの世代の筆頭はラオニッチサンノゼを優勝してその後3連覇。翌週のメンフィスも準優勝すると、数多くの大会で好成績を収めてATPの「ニューカマー・オブザイヤー」を受賞。一気に若手世代の先頭を行きます。

この世代で今頑張っているゴファンはまだブレークする前なので、実はNGFには一度も選出されていなかったことになります。ちなみに90年生まれには、ヤノヴィッツ、ペリャ、シュトルフ、エバンズなどがいます。

そして2010年、事件が起きます。

 

 

2010

2010   pts year age
115 ディミトロフ 491 1991 19
119 ベランキス 484 1990 20
120 錦織 467 1989 21
128 ヤング 441 1989 21
152 ペール 366 1989 21
157 ラオニッチ 345 1990 20
159 デルボニス 335 1990 20
165 スクレル 319 1989 21
177 ハリソン 295 1992 18

 

若手トピックス・特になし

信じられないことに、トップ100から若手の名前が消えました。

89年生まれの選手が最年長。もちろん世代筆頭格の錦織も名を連ねています。

錦織について詳しい方はこれ本当にあってるの?と思われるでしょう。なぜならこの年錦織は年末トップ100だったから。しかしこのランキングの元になったのは2010年11月8日のランキング。錦織は11月22日にトップ100に入りますので、これで合ってます。

参考にした日の前後ではトップ100に入っている選手もいるので、やや恣意的であることは触れておくとはいえ、この低レベル化は異常です。今年はNGF参加者8人ともトップ100だったわけですから、これだけでも全然違うことが分かりますよね。 

 

 

前編はちょうどいい区切りなのでここで切ります。では00年代はどうだったのか?なんとなく想像できるとは思いますが、GSQFかな?と言い始めること間違いなしなので、こうご期待を。