two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

デ杯降格という概念は「初めからなかった?」(ルール解読の闇)

※おことわり

この記事は2019年11月21日19:00現在の見解です。
何か意見が変わったり、間違いがあった場合は訂正が入る可能性があることを承知の上お読みください。

 

11/25追記

やはりこの後に書いた仮説で合っていました。デ杯公式がルール変更したにもかかわらず改定したルールブックをwebにアップしていませんでした。ほんと公式に振り回された一週間でした…思考過程を残しておく意味で、記事はそのままにしておきます。解決済みの問題です。

 

終わった。

ダブルス試合終了後、放送でも言いました。
もちろんクロアチア、チリが全敗して終われば日本は16位ですが、16位/17位のボーダー上に見えたコロンビアの成績を下回ったのは事実。この段階で暫定最下位になり、陥落回避は他力待ちでした。

 

しかし翌朝、事態は一変しました。
フォロワーさんから「別所で17位18位の降格ルールは撤廃され、予選ラウンドには確実に回れるのではという話が出ている」という話が出てきました。

 

本当かと疑ったのですが、何人かの方の議論や、実際にその方と意見を交換した結果、どうも17位18位は2020年予選ラウンドを戦える可能性が高そうということが分かってきました。以下、考えを変えることになった理由と、これまでの記事で紹介してきた説についての裏付けと、現在も残る疑問点についてまとめておきます。

 

<なぜ当初は17位18位を降格と判断したのか>

 

私のブログや発信を長く見ている方はよくご存じだと思いますが、「分からなくなったらルールブックを原文で読め」がポリシーです。

実際、当時あまりなじみがなかったファイナルズ通過の条件(2014年)やIPTLのルール(2015年)、旧デ杯のルールについても再三ルールブックを確認し、発信してきました。
ルールブックに定義されていないものは、決めようがないからこそ、細かいところまで先読みして補填されているものだからです。

 

もちろん新デ杯にあたってルールブックを確認しました。2019年2月のqualifing round(予選ラウンド)時にもですし、もちろん今回も確認のために再度読み返しました(記事書きましたからね)。

さすがにトーナメントのお金の問題とか、ボールパーソンがどう必要だとかは関係ないので、関係ある部分だけですがそこだけは集中して全部読むようにしています。

 

 

17位18位の話題が出てくるのは、F. COMPETITION DATES AND FORMAT 21. Finals Week (今回のファイナル)に関する部分です。

21.7 Promotion and relegation
21.7.1 Subject always to Regulation 2.4:
21.7.1.1 The four Nations that reach the Semi-Finals will automatically be entitled to participate in the Finals Week of the 2020 Davis Cup competition. 
21.7.1.2 The two Nations that finish the Finals Round Robin with the lowest number of points based on the count-back calculation will be relegated to the Zone Groups for the 2020 Davis Cup competition. Their placement in those Zone Groups will be determined according to the provisions on Zone Groups in Regulations 23-25. If a Wild Card is relegated, it will return to its original Zone Group. 
21.7.1.3 The other Nations in the Finals Week (i.e. those that finish in places 5-16) will be entitled to participate in the qualifying round of the 2020 Davis Cup competition. 

英語嫌いな方はめまいすると思いますので私の意訳を上げますが、

21.7 昇格と格下げ

21.7.1   2.4 のレギュレーションに従う
21.7.1.1 ファイナルベスト4の4か国は自動的に2020年ファイナルに参加できる(DA)
21.7.1.2 何度か紹介している順位付けの計算(count back calculation)で最も下の2ヶ国は2020年デビスカップ競技でゾーングループに格下げされる
21.7.1.3 ファイナルに出ていたその他の国、すなわち5位から16位で終えたチームは2020年デ杯競技の予選ラウンドに参加する資格がある

 

あとから振り返ると、「17位18位は予選ラウンドでプレーできない」と明記されたわけではありません。しかし、わざわざ分けて先に言及しているうえに、予選ラウンドと対比する形でゾーングループに格下げ(will be relegated to the Zone Groups for the 2020 Davis Cup competition)と、17位18位は特別扱いとして言及されています

さらにこのことを正しいと裏付けた原因として、2018年夏に新デ杯ルールがITFで可決された際に、ファンに向けたルール説明というところで動画が上がっています。

 

このツイートのリンクに、動画が貼られています。 

この動画でも、17位18位に相当するチームだけが、特別に色分けされているのが分かります。画像を貼ります(動画じゃないよ!)

 f:id:twosetdown:20191121194230p:plain

順番としては、2018夏動画→様々な情報収集→2019冬ルールブック読むだったので、私も「あーこれが降格に関する記述ね」と疑いも持たずに信じてしまっていました。

 

<17位18位は降格ない説の根拠>

 

今朝フォロワーさんからの指摘を受けて驚愕しました。
こちらのデ杯公式記事(2019年9月の記事)では、なんと5位から18位の14ヶ国が予選ラウンドに進出とはっきり書いているではありませんか。

www.daviscup.com

「The 12 winning nations from Group I this year will be joined by the 14 nations who finish in fifth-18th place at this November's Davis Cup Finals - from those 26 teams, two will be chosen as wild cards for the 2020 Finals, leaving 24 nations to battle it out in the Qualifiers for the 12 remaining spots in Madrid.」

 

 

さらに、この2020年2月予選ラウンド進出を決定するための、group 1の試合(2019年9月、全米後に行われたもの)のドロー表のページにも、5位から18位の予選ラウンド進出がうたわれています。

www.daviscup.com

 「The winners will contest the 2020 Qualifiers. These teams will also be eligible to receive a wild card into the 2020 Finals, along with the nations that finish in 5th-18th positions at the 2019 Finals.」

 

 <ルールブックと公式の謎を考える>

ではこの二つはなぜ両立しているのか?また、これをつなげるルールブックの文言は存在するのか?この辺りが盛んに議論されました。

その中で出た有力なポイントとして、E. WITHDRAWING FROM THE COMPETITIONの 17. Replacement of a withdrawing Nation に、WCが出た場合のリプレースはこのルールに基づくという記述がありました。

それによると(17.2.3)、前年ファイナル出場国からWCを出した場合は、次年度予選ラウンドの枠が1つ空きます。そこにはファイナル17番目の国(その次は18番目の国)をリプレースするという記述があります。

なんだこれか!!!謎が解けた!!!WC2枠を今回のファイナル組から出せば実質18位まで予選ラウンドに出れるの同義じゃん!!!

というのは甘い理解です。ここにはある決定的な「矛盾」が生じます。

そのあとの文章には、意訳すると「予選ラウンドのうち、ゾーン勝ち上がり国からWCがあった場合は、ゾーングループの国から補充する」(If the withdrawing Nation qualified for the qualifying round in 2020 as a result of winning its 2019 Zone Group I Tie, the highest ranked Nation from its Zone from among those Nations that lost their 2019 Zone Group I Ties based on the Davis Cup Nations Rankings at the time of the 2020 Qualifying Draw)と書いてあるのです。

例えば今年の具体的なケースで言うと、ゾーン勝ち上がりのオーストリアにWCが出ると、補充国は日本でもクロアチアでもなくなるのです。

????????

じゃあなぜデ杯公式は18位チームまで通過と言い切れるのか?謎は深まるばかりです。
そして以上のことを踏まえたうえで、先ほどの公式記事の引用を見たところ、まごうことなき決定的な矛盾を発見しました。

「The 12 winning nations from Group I this year will be joined by the 14 nations who finish in fifth-18th place at this November's Davis Cup Finals - from those 26 teams, two will be chosen as wild cards for the 2020 Finals, leaving 24 nations to battle it out in the Qualifiers for the 12 remaining spots in Madrid.」

ファイナル敗退5~18位の14ヶ国、ゾーン勝利12ヶ国の計26ヶ国から2ヶ国をWCとして選ぶ

 

ルールブック2019  21.3 Wild Cards

21.3.1 Prior to the Qualifying Draw, the Steering Committee will select two Wild Cards from any of the Nations entered in the Competition that meet one or more of the following criteria: 
21.3.1.1 the Nation has a Davis Cup Nation’s Ranking of 50 or above; and/or 
21.3.1.2 one or more of the Nation's Players is ranked in the top 10 of ATP singles players in the ATP rankings published on the Monday following the ATP World Tour Finals.

 

21.3のワイルドカードに関する部分は、ワイルドカード選出のためにその国に必要な資格の条件が書いてあります。そこによると、2つのうちいずれかの条件を満たすことが必要で
21.3.1.1 国別ランキング50位以上
21.3.1.2 その国の選手にシングルストップ10の選手がいる

です。
この文言に、その国が予選ラウンドにいる必要性は一切書かれていません。
ルールブックが正しいのであれば、ゾーン2にいるギリシャは、チチパスがトップ10にいますから有資格国であるはずで、これを棄却することはできません。
*1

なのに、26ヶ国から2ヶ国を選んでいいと言い切れるのはなぜか?そんな規定はルールブックのどこを探しても見つかりませんでした(「wild」で文書内検索をかけて、前後をすべて読んだ)

 

まるで2つ別のルールブックが存在しないと、こんなことは起こりえないのです。

 

 

え?

 

<仮説・ルール変更とデ杯運営のミス>

いろいろ悩んでいた夕方、この問題を一発で解決するある決定的な事実が判明しました。

 

 

というわけで、信用していたルールブックは何らかの改定が加わる前の過去のものだった可能性があるのです。

そしてそれどころか、ある事実に気が付きました。

先ほどのリンクの先にあったyoutubeには鍵のマークがついているのです。
そしてこの動画をITFyoutubeページにある全動画のページから飛ぼうとすると、その動画がないのです。

さらにそれに代わって、こんな動画がありました。

www.youtube.com

新デ杯公式が上げた5ヶ月前の動画には、下位2ヶ国についての説明が一切ありませんでした。

そして9月には、デ杯公式HPに、新フォーマットによるゾーングループの一元化についての説明が書かれた記事が上がっています。

www.daviscup.com

つまり、2019年の途中でWCと補充国、17位18位の取り扱いに関するルール変更が行われている可能性があるが、少なくともデ杯公式HPのルールブックは、掲載した2019年1月以降一度も更新されておらず、確認のしようがない。そしてそれは、最新のルールブックではない可能性がある

ということです。実際、先ほど示した記事など、2019年9月以降に発表されている公式筋の記事では、一貫して5~18位がすべて3月の予選に回り、WCは26ヶ国のうちから選ぶという表現になっています。

 

長々と書いてきましたが、まとめると推察込みですが

・ルールブックが一番偉いから、ルールブックを見た
・2019年1月段階のルールブックの解釈は当時間違ってなかった
・しかし、現状起きている現象はその1月段階のルールブックでは説明不可能
・しかし直近の情報から5~18位通過が正しく、ルールが変わった可能性が高い
・以上不可抗力な面もあったが、結果的に私は誤った情報を広く流してしまう結果になってしまった、本当に申し訳ないです

 

以上になります。
この内容に質問、嫌疑、訂正、意見などある方はコメント欄かTwitterまでよろしくお願いいたします。

*1:細かいのですが、実際21.7.1.2では If a Wild Card is relegated, it will return to its original Zone Group. と、低いゾーンからWC選出された場合、敗退すれば元のゾーンに戻るという記述がなされていて、今回のギリシャのような事例に対応していないと必要ない記述がわざわざ書かれています。本文の流れを切りそうだったので注釈にしました