デ杯ゾーングループの改訂について
こんにちは。
今日の記事は閑話球題シリーズには含んでいないものの、実質閑話球題シリーズと言えるほどのマニアックな話題です。
今年もこのコーナーが帰ってきました。たぶん世界で一人しかしていないデ杯ランキング試算です。
さて、今回ランキング試算をする前に、ある重要な点について触れておく必要があります。
それは「今回の大幅改正で、ランキングは対戦相手を決めるファクターとしての機能が少なくなった」という点です。
どういうことなのか?これはデビスカップのゾーングループに関してのルール改正が効いてきています。ランキング試算に入る前に、こちらを説明していきます。
多分これを理解しないと、試算で言っていることが一切分からなくなります。
前座のはずだったんだけど、内容が濃いので別記事として立てることにしました。
2018年までの旧ルールでは、デビスカップはWGとWG入れ替え戦を除けば、世界地図で3つにわかれたゾーン内の国としか対戦することはありませんでした。
図にするとこんな感じです。(パワポで作った)
だから日本は欧州や北米南米との対戦実績が少なく、WGや入れ替え戦で毎回のようにchoice of ground by lot(開催地くじ決め) になっているんですね。
本当はグループ4もあるのですが、説明の対比の都合上ここで切っています(ヨーロッパとアフリカは参加国が多いので、本当はゾーングループ3は2つに分割されていることもお断りしておきます)
さらに、年間最大4つのタイ、多くの国が2~3のタイをフルに使って、降格昇格を決めていました。
例えば2018年のアジアオセアニアゾーン・グループ1のドロー表を貼りますが、参加国6のうち、自動降格1、入れ替え戦進出2、何も起きないが3となっています。(表ではインドウズベキスタンが入れ替え戦へ、ニュージーランドが自動降格)
この傾向はどこのゾーンでも同じで、グループ1であれば入れ替え戦定数の2分の1というわずかな国だけが自動降格し、それ以外は何も起きないか入れ替え戦進出となっています。あまり動きにくいんだなという直感理解を持ってください。
しかし、2020年以降の新ルール(英語名global format)ではこうなります。(公式の図より)*1
分かりづらい!!!と思われた方ご安心ください。私のパワポ図形式に直すとこうなります。
ちゃっかり名前も変わっているのですが、これまで〇〇ゾーン・グループ1/2と呼んでいたものが、「ワールドグループ1/2」と一つにまとまったものと思ってください。
グループ3以下はこれまでと同じく、ゾーンごとに総当たりリーグ形式で行って、上位が昇格、下位が降格します。
しかしワールドグループ1、ワールドグループ2は大きく事情が異なります。なんとホームアンドアウェーによる1発勝負。勝てば上のグレードとのプレーオフ、負ければ下のグレードとのプレーオフに臨むという過酷なルールです。
じゃあ実際に選手たちはどんな感じで戦っていくのか?これをイメージしやすい考え方として、「階段のフロアと踊り場」の類推を提唱、紹介します。
今回の改正によって、ワールドグループ2以上のグレードに所属する国の動きは、①春(全豪後かIW前週?)に行われる試合と、②夏~秋に開催される試合の2つに参加するというものになります。年間最大2週間しか拘束されなくなるというのが新ルールが目指す負担軽減の形そのものです。
そして、デ杯公式の図をもう少しわかりやすく私のパワポ図に落とし込むとこうなります。
デ杯公式の図では、開催時期と形式が違うためにファイナルズ、ワールドグループ1/2、グループ3/4を別の位置に書いていますが、現実的には、このようにある場所にとどまることなく、上がっては下がってはを繰り返すような動きになります。
そしてこれを階段のフロアと踊り場の関係に振り替えます。
4階建ての建物のうち
4階…ファイナル
3階と4階の間の踊り場…予選ラウンド
3階…ワールドグループ1
2階と3階の踊り場…ワールドグループ1プレーオフ
2階…ワールドグループ2
1階と2階の踊り場…ワールドグループ2プレーオフ
1階…グループ3
とします。夏~秋に1階~4階でそれぞれ戦います。敗者は階段を下りて踊り場へ、勝者は階段を上がって踊り場に行きます。
翌年春、その踊り場でタイマン勝負をします。勝った方が上の階へ上がり、負けた方は下の階へ下ります。以下これの繰り返しです。
4階の場合は、最上階なのでそこにとどまり続けることができます(ベスト4かWC)。
このように、フロアと踊り場を行ったり来たりしながら上を目指すのが新デ杯のシステムです。
さて、デ杯ではランキングをもとにシード付けをしています。
2018年までの旧ルールでは、昇降格があった場合、ゾーングループのドローを抽選する際のシードは前年の成績ではなく、すべてランキングに基づきます。
また、WG入れ替え戦のドローも同じで、ゾーン勝ち上がり国でもランキングが高ければシードになります。実際、2013年の日本×コロンビアのWG入れ替え戦は、どちらもゾーン勝ち上がり国でありながら日本がシードになっています。*2
しかし、新ルールでは必ず「階段を下りてきたほうがシード、階段を上がってきたほうがノーシード」となります。これはフロアでも踊り場でも同じように適用されます。
つまり、ゾーングループ1(3階)からゾーングループ1プレーオフ(2階3階の踊り場)に降りてきた国と、ゾーングループ2(2階)からゾーングループ1プレーオフ(2階3階の踊り場)に上がってきた国では、ランキングにかかわらず前者がシードになります。
※11/26追記 どこかで上記の記述を英文で読んだのですが、再度様々な資料を読み返したところ、その該当する部分を発見できなくなりました…少なくとも2020年のWG1プレーオフとWG2プレーオフでは、上記のルールっぽいのですが、念には念を入れて2020年版ルールブックでの説明を待ちたいところです…
なおこれが予選ラウンドにも適用されるかは不明です。ファイナル敗退国が14で、ワールドグループ1勝ち上がり国が12。そこからWCを選ぶので、必ずしもファイナル敗退国×ゾーングループ1勝ち上がり国と12対12で組めるとは限らないからです。この部分は前の記事に書いたように、新たなルールブックを確認することができないために現在検証不可能です。日曜日にドロー抽選があるので、そこでシード付けのルールがはっきりすると思いますので待ちたいと思います。
11/25追記
予選ラウンドのシードは、その日までのファイナルの成績を加味したランキングで決定されるようです。ルールブックが更新され次第文章でも確認します。通常ATPツアーがそうであるように、ドローは一番直近の大会の成績を加味せずに2週間前までの成績で行います。
しかしデビスカップは、旧ルール下ではSF/入れ替え戦のタイが終わってから次年度のドロー抽選を行っていました。これに対応する形で抽選を行ったのが今回ということでした。そうすると、WGSF/入れ替え戦までの成績を加味してランキングを決める必要があり、大会後に出るランキングを一部前倒しで発表してそれをシード付けの材料にしたと考えるのが腑に落ちそうです。
というわけで、ランキングが使われるのは
・ゾーングループ3以下の総当たりの組み合わせ抽選
・ファイナルの組み合わせの時のポット(1~6、7~12、13~18のグループ分け)
・予選ラウンドのシード付け
だけになります。
デ杯公式も記事で「The Davis Cup Nations Ranking will no longer be used to determine which group a nation is playing in.」(デ杯チームランキングは、どこのグループでプレーするかということにもう使われることはありません)と表現しています。
以上、ゾーングループの解説でした。
ここまで前座なのに、スライド作ってたらお昼過ぎになってた…
さて、次の記事が本当の本番です。世界初(?)、新ルールでのデ杯チームランキング試算に挑みます。