two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

2020デ杯ルールブックの新ルール対応改定について

こんばんは。

2月シリーズも終わっていよいよ3月、デビスカップウィークです。

2019年からルール変更により、3月のタイを予選ラウンド/入れ替え戦タイ、夏~秋にそれぞれ本番のタイとすることになりました。

2019年は移行年だったため、行われなかったイベントなどがありましたが、今年2020年からは定常的な動きになります。

2019年はそのルール変更の動きに対応できていなかったのか、ルールががばがばだったり、そもそもルールブックが公式HPで更新されなかったりと混乱を招きました。私もその影響を受けて間違った情報を流してしまいました。改めて申し訳なかったです(回避のしようはほぼなかったですが)。

 

というわけで、2020年デ杯が始まる前にはちゃんとルールブックを読み込もうということで待ち構えていたのですが、つい先日2020年ルールブックの英語版が公開されました。

https://www.daviscup.com/media/314796/314796.pdf

気になる方は現物をすべて読んでほしいのですが、この記事では制度変更点である、WG1/WG2プレーオフの開催や、ドローに関する情報、その他気になった点を抜粋してまとめました。

なお、補足として、私は一応飛ばし読みも含めて最後まで全部読んで意訳しました。翻訳ミスもゼロではないので、一部原文を載せるようにしました。

 

A.COMPETITION(競技)

ここでは大筋が書かれていますが、1.2で構成要素として何が行われるかを記載する部分で、WG1/WG2プレーオフが初めて言及されています(1.2.2)。

 

B.MANAGEMENT OF THE COMPETITION
C.PERSONNEL

運営関係の話なので割愛します。

 

D.ENTERING COMPETITION(競技への参加)

ここでは出場資格に関する話が書かれています。目立った変更点は見られませんでした。

 

E.WITHDRAWING FROM THE COMPETITION(競技からの撤退)

今回、中国がルーマニア戦を棄権しましたがそれとは関係ないルールです

ここでうたわれているwithdrawは、デビスカップ競技からの半永久的な離脱、撤退のことで、それに対する措置が書かれています。そのタイだけを行えるかどうかの判断は、もう少し後の項で定義されているようです。

 

F.COMPETITION DATES AND FORMAT (競技日程とフォーマット)

20.Qualifiersでは、予選ラウンドについての記述が書かれています。ブログで紹介していなかったけど重要なルールについて紹介します。

まず20.1.1では予選ラウンド資格国が定義されていて、20.1.2と合わせて「前年ファイナル5~18位国+前年WG1勝ち上がり国」の26か国が対象、そのうち2ヶ国がWCであることが読み取れます。

20.1.1 Subject always to Regulation 2.4, the Nations participating in the Qualifiers will be 24 Nations from the following 26 Nations: 
20.1.1.1 the 14 Nations from the 2019 Finals Week that did not progress to the semi-finals; and
20.1.1.2 the 12 Nations that won their Group I Ties in the 2019 Davis Cup competition. 
20.1.2 Two Wild Card Nations will be selected from these 26 Nations to participate in the Finals Week for the 2020 Davis Cup Competition, and they will not take part in the Qualifiers.

 

20.2.1では、原則デ杯ウィークの金土の2日間で開催されることが言及されています。土日の方が集客は見込めるんでしょうが、次のツアーへのトランジットや、雨天順延への対応から仕方ないですね。

20.2.2では、基本ルールが定義されていますが、2019年と同様です。シングルス4ダブルス1の3本先取。すべて3セットマッチ。タイブレークありで、ダブルスはアドバンテージあり。

20.2.2 Each Tie will consist of four singles matches and one doubles match. Each match (singles and doubles) will be played to the best of three tiebreak sets, and doubles matches will be played with regular ad scoring.

 

そして注目点は20.4.2です。ホームアンドアウェー方式のタイで直近2年連続対戦があった場合、その国同士は対戦しないというものです。つまり、予選ラウンドで同じ国と3年連続対戦することはないと規定されています。

この規定はWG1、WG1プレーオフ、WG2、WG2プレーオフの項でも同様の記載が確認されています(22.6の中)。このゾーンにいる国は年間2回しか試合がないため、同じ国とばかり当たると昇降格において有利不利が出やすいための配慮だと思われます。

 

続いて21.Finals Weekではファイナルについての記載。

基本的ルールは変更なし。つまり、また今年も4時まで試合する可能性が高いです…

順位決定方法についてもcount back calculationを用いるとあり、これも同じです。

21.3 のWC選出方法ですが、国別トップ50か、その国にシングルストップ10の選手がいる場合が対象になります。正直予選ラウンドに出てくる国で50位以下になることはほとんどないと思うんですよね。

21.4 ファイナルのシードは1,2が前年決勝進出チーム。2020年ファイナルでいうとスペインとカナダです。3~6はデ杯ランキングに基づくシードです。

21.4.1 Six Nations will be seeded for the Finals Week. Seeds 1 and 2 will be the finalists of the previous edition of the Davis Cup competition and seeds 3-6 will be determined by the Davis Cup Committee in accordance with the most recent Davis Cup Nations Ranking at the time of the World Group I and II Draw.

 

21.5ではドローの振り分け方が説明されていて、私が「ポット1」「ポット2」「ポット3」と勝手に呼んでいる、1~6番目のグループ、7~12番目のグループ、13~18番目のグループから1チームずつ入ります。

21.5.2 The round robin groups will be drawn as follows: 
21.5.2.1 Seeds 1-6 will be placed in round robin groups A-F, respectively;
21.5.2.2 The remaining Nations will be ranked from 7 to 18 in accordance with the most recent Davis Cup Nations Ranking;
21.5.2.3 Nations ranked from 7 to 12 will be drawn randomly into round robin groups A-F, taking position 2 in such group; and
21.5.2.4 Nations ranked from 13 to 18 will be drawn randomly into round robin groups A-F, taking position 3 in such group.

 

続いて22.World Groups I and II (including Play-offs) – general で、WG1/WG2グレードのルールです。ここが新設されました。

だいたいのルールについては予選ラウンドと同じルールなので割愛します。3セットマッチ5試合3本先取の形式です。

 

さて、重要なのが昇降格に伴うドロー抽選の扱いについてです。

22.6がその項になっています。

そこによると

22.6.3.1 WG1プレーオフは2019WG1敗戦国と2019WG2勝利国がそれぞれ対戦する
22.6.3.2 WG2プレーオフは2019WG2敗戦国と2019WG3勝利国がそれぞれ対戦する

とあるのに対し、

22.6.6 WG1とWG2のシード国は以下のように決定され、抽選される

22.6.6.1 最新のデ杯ランクに基づいて12ヶ国をシードとする
22.6.6.3 12~24番目の国(おそらく誤植、13~24が正しい)がランダムに(シード国に対して)割り当てられる

 

22.6.3 Nations shall be drawn as follows:
22.6.3.1 World Group I Play-offs: The 12 Nations that lost their Group I Ties in the 2019 Davis Cup Competition shall be drawn to play the 12 Nations that won their 2019 Group II Ties;
22.6.3.2 World Group II Play-offs: the 12 Nations that lost their 2019 Group II Ties shall be drawn to play the 12 Nations that won their 2019 Group III Ties.

 

22.6.6 Nations shall be seeded and drawn for each of World Group I and World Group II as follows:
22.6.6.1 12 Nations shall be seeded based on the most recent Davis Cup Nations Rankings at the time of the Draw;
22.6.6.2  Seed 1 will be placed on line 1; seed 2 on line 3; seed 3 on line 5; seed 4 on line 7; seed 5 on line 9; seed 6 on line 11 and so on in the same order;
22.6.6.3 Nations ranked 12 to 24 will be drawn randomly.

 

ということで、シードのつけ方が本戦とプレーオフで違います。WG1プレーオフ/WG2プレーオフについては、サッカーJ1J2の入れ替え戦のように、必ず上のグレードの国を倒さないと上に行けません
一方、WG1/WG2については、対戦相手国が同じタイミングで昇格した国同士/降格した国同士での対戦も原理上あり得ます。2013年入れ替え戦でゾーン勝ち上がり同士の日本とコロンビアが対戦したようなことが起こりうるということです。

以前デ杯公式が「もうデ杯ランキングはこのグレードでは使わない」と言っていたのに、あっさり嘘つかれてますね。もう信じられない!!!

 

23のゾーン3/4の説明でちょっとびっくりしたのは、ゾーン3ではヨーロッパとアフリカの国が別々のゾーンに分かれるのに、ゾーン4では1つの枠組みになっているということです。

グローバルフォーマットになったことで、特定の大陸のゾーン3以下の国の数は、年月が経てば結構増減する可能性があります。その緩衝材となるのがゾーン3のようです。

 

そして今回のルールブック翻訳で一番笑ったのが24です。

24. Davis Cup Nations Ranking

ここではデ杯チームランキングについての解説がある!これでデ杯ランキングの計算方法も分かって最高のルールブックだ!と思って読みました。すると…

24.1 Nations will start the Competition with their 2020 Davis Cup Nations Ranking. The ranking points attributable to each year of the Davis Cup competition will be determined by the Davis Cup Committee. The process for determining Nations' rankings is set out on the ITF Davis Cup website at https://www.daviscup.com/en/rankings/rankings-explained.aspx

 

 

はい?

なんと「あとはこのページ(下線部)に書いてるから見といてね」(意訳)と書いてありました。ルールブックとしていいのかよそれで…そういうところだぞITF

 

 

少し飛ばしてG.ORGANISATION OF TIES/EVENTS に移ります。

デビスカップタイの運営についてですが、ここは今回のビーンズドーム開催にも関わる話なので少し紹介しておきます。

無観客試合の有無までは読めなかったのですが、開催権の行使(いわゆるchoice of ground)については、28.2で定義されています。

かなり長いので省略しますが、緊急事態の開催地変更については、Twitterで紹介した28.2.2よりも、28.2.5の方に詳しく書いています。

28.2.5 A Nation with Choice of Ground may lose its choice at any time if the Davis Cup Committee considers that it is not possible or practicable for the opposing Nation to reach or play at the venue chosen for the Tie, due to (for example) an incident such as war, political unrest, terrorism or natural disaster. In such cases(以下略)

 

具体例として戦争、テロ、自然災害などが挙げられていますね。非常事態だったらITFが介入してchoice of groundの権利を失う(はく奪される)よってことです。

 

今回はJTAITFで話し合って無観客試合となりましたが、もっと状況がひどければあらゆる可能性があったということですね。

 

あとは個人的にメモ代わりに残しておく重要ポイントです。

H.TEAM NOMINATIONS
36.1 ファイナルの出場メンバー〆切は28日前、予選ラウンドは10日前

2/25に立て続けに各国の出場メンバーが発表されたのは、この〆切間際だったからのようです。

 

J. PRE-TIE EVENTS
47. Tie/Event Draw 47.1 予選ラウンドは24時間前までに実際に試合に出すオーダーを発表する(意訳)

ということで、今回だと木曜日までにはメンバーが出ます。

 

L.HOW A TIE/EVENT IS DECIDED

55.3 Dead match policy

いわゆるデッドラバーポリシーですが、2日制になったので以前と変わっています。

55.3.1 3戦目で決着→4戦目はやる、5戦目はやらない
55.3.2 4戦目で決着→5戦目はやらない
55.3.3 4戦目がけがなどで試合完結しなかった場合→5戦目はやる
55.3.4 いずれのデッドラバーも、3セットマッチ、3セット目は10ポイントタイブレークで行う

日本×中国戦が該当しなかったので、知らないルールたちでした…

 

あとしょうもないですが、17位18位の特別な意味付けはなくなったのに、count back calculationのところの説明である57.2.4でその説明を消し忘れてますね。書かれてるけど意味のないルールになっています。

 

 

以上、2020年版ルールブックを読んで気になったところの解説です。

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