two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

ATPカップ2021 プレビュー

まず最初にお知らせです。
今年もATPカップ2021のABEMA中継に連動して、ABEMATIMESでの記事を執筆します!

今年は試合中に起こった出来事についての記事を書く予定です(大会の情勢に応じて変更あり)

昨年はこんな記事を書いていました。

SNSでも話題になったモルドバ監督(アルボット父)について

times.abema.tv

↓クレジットは出ていませんが、実は速報記事も書いていました

times.abema.tv

 

昨年は約15本程度、主な担当は予選のシドニー会場で、ずっと試合を見るか原稿を書き続ける大変な一週間でした。雑誌などへの寄稿は1ヶ月程度先の納期でじっくり書いていくものですが、webメディアの記事は速報性、SNSで拡散した時に「化ける」か、動画リンクとの関連性など、求められていることが全然違うのでとても勉強になりました。
今年は去年の反省を活かしてもっとスムーズに進められたらと思います。

余裕があったら別でブログを更新したい!*1

 

ATPカップについては書くと長くなるので、昨年との変更点(注意点)、各組展望と優勝予想だけ書いていきます。

 

今年のATPカップのポイントは「短期決戦」です。予選ラウンドの2位通過で拾われるパターンがなくなり、必ず各組1位通過しか決勝トーナメントに進めないのが昨年との大きな違いです。

では3チームの中でグループ1位になれるパターンにはどんなものがあるのか?実はごく限られたパターンしかありません。

①チームスコア2-0の場合
A国 2-0
B国 1-1
C国 0-2
最も起こりうるパターンです。

②チームスコア1-1で並んだ場合、いわゆる「3すくみ」が起きた場合
A国 1-1
B国 1-1
C国 1-1
このケースでは α.ラバー勝敗 β.セット率 の順番で順位を決めます。
途中棄権などの特殊なパターンを除くと、α.ラバー勝敗 については、4-2, 3-3, 2-4 の3チームが出るパターンと、3-3で3チームが出るパターンの2つしかありません*2。前者の場合はラバー4-2のチームが1位、後者の場合はセット率勝負になります。セット率でも並んだ場合はゲーム率ですが、ここまでもつれることはおそらくないと思います。Twitterでは万が一そうなりそうな場合のみ解説する予定です。
正直3すくみになってしまうとラバー勝敗やセット率というかなりシビアな条件になるので、チームで1敗したらほぼ敗退と思っておいた方がいいです。 ※例えば初戦を0-3で落とした場合、次戦3-0勝利かつ他のカードの結果待ちとなるので絶望的です

なので決勝トーナメントも含めて、1敗したらほぼ終わりの変則トーナメントを戦っているというのが今大会のイメージと捉えておきましょう。

 

各組の簡単な展望です。

グループA(RLA、デイセッション)

セルビア ドイツ カナダ

正直どこのチームが上がってきてもおかしくないです。
前回優勝のセルビアがいますが、前回は出来すぎの部分もあり(後述)今回厳しいブロックに入ったことで敗退の可能性もあると思いますジョコビッチがエキシビを棄権したのも逆風。日程が過密なこともあり、昨年のような勢いで向かっていけるか疑問です。

昨年死の組グループFに入り大ブレーキとなってしまったドイツは、ズベレフが成長しており今年は再度見直したいチーム。シュトルフ、クラビーツ/ミースと役者は揃っており、久しぶりの国別対抗戦ベスト4以上も視野に入っています。

そしてここのところ国別対抗戦で好成績が続いているカナダ。3本柱のうちのシャポバロフ、ラオニッチが揃いました。ダブルスを即席ペアで組むというウィークポイントがあるものの、今年も上位進出が十分に狙える布陣だと思います。

 

グループB(RLA、ナイトセッション)

スペイン ギリシャ オーストラリア

昨年の雪辱に燃えるスペインは今大会全チームの中で最も強いメンバーを揃えました。どこからでも勝利が期待でき、大崩れもなさそう。優勝候補筆頭と言っていいでしょう。

ギリシャは昨年の大会を見ても2番手、ダブルスで相当後れを取っており厳しいか。チチパス連闘策でグループを抜けるだけでも至難の業です。

オーストラリアは最大のアップセットを起こせる力があります。昨年ベスト4、その時のメンバーがほぼ揃っています。なぜランキングで直接DAできなかったのか不思議なほどです。躍進の鍵はデミノー。オーストラリアシリーズは大得意。選手としてブレイクしたのもこのシリーズで、昨年のこの大会ではズベレフ、シャポバロフを倒し、ナダルにもあと一歩のところまで迫りました。しかし、そのナダル戦とエバンズ戦、決勝トーナメントでは悔しい2敗を喫しただけに今年の奮起が期待されます。

おそらくスペインとオーストラリア戦の勝者が決勝トーナメント進出だと思います。明日の夜からいきなり大一番です

 

グループC(JCA、デイセッション)

オーストリア イタリア フランス

大混戦です。オーストリアは全米を制覇したティームが率いますが、2番手、ダブルスとも力不足が否めず、0-2で大会を去ってもおかしくないです。

個人的に今大会のダークホースだと思っているのはイタリア。イタリアは国別対抗戦でいつも力以上のものを見せてくる印象です。昨年けがで欠場だったベレッティーニが出場。フォニーニを2番手に回せているのは大きく、ダブルスにはボレリもいます。この混戦のグループなら勝ち上がり最有力ではないでしょうか。

フランスはテニス大国として今年こそ決勝トーナメント進出を狙っていきたいです。隔離明けのロジャーバゼランがマウーとのペアで出場することになるでしょう。去年のフランスはなんとダブルスで全敗しており、ここが決勝トーナメント進出へのポイントです。また今のところ、ペールとフォニーニが対戦することになっており、いろんな面で大注目です!!!

 

グループD

ロシア アルゼンチン 日本

ロシアはメドベデフ、ルブレフとシングルスが強力。この二人で4連勝×2をやって優勝しても驚きはありません。一方ダブルスには専門職がいないため、1-1で回った場合は二人で組んで出ることになると思います。できる限りこの「最後の切り札」を温存することが優勝への条件になりそう(優勝予想で後述)。

アルゼンチンは昨年QFの借りを返す戦いになりそう。シュワルツマンとメドベデフが試合中口論になったあの試合から1年。こちらはダブルスにも選手を用意しているため、なんとかダブルス決着に持ち込んで勝てば決勝トーナメント進出もありそうです。

日本は正直厳しい。錦織の状態が不透明であるだけでなく、昨シーズン大躍進を遂げた西岡の相手がルブレフ、ペリャと厳しい。昨年ATPカップでの西岡のパフォーマンスは圧巻でしたが、同等か、それ以上のものが求められます。錦織がトップ10級のパフォーマンス+西岡がキャリア最高クラスのプレーで1勝以上をもぎ取りダブルス勝負に持ち込むしか道がありません。

 

優勝予想です。

グループ勝ち抜け Aカナダ Bスペイン Cイタリア Dロシア

準決勝 ロシアdef.カナダ スペインdef.イタリア

決勝 スペインdef.ロシア

 

根拠は各国2番手以降の「枚数」です
スペインは2番手のアグー、ダブルスにはカレノブスタ/グラノジェルスが控えています。エースのナダルも含めて、全てのカードで安定して勝利が期待できるメンバーが揃っています。
そしてロシアはメドベデフ、ルブレフのダブルエース体制。近年の最終戦経験者を2名擁するこの2チームは一つ抜けています。
え、TSDよ、セルビアは?と思われるでしょうが、今回セルビアはA組通過すら微妙なのではと予想しています(予想では思い切ってそうした)。なぜなのか?もちろん根拠はあります。

昨年のセルビア優勝までの道のりを振り返ってみると、ジョコビッチの6連勝(しかも後半はシャポバロフ、メドベデフ、ナダル相手!)は見事としか言いようがないのですが、実はそれ以上に陰ながら優勝に貢献した選手がいます。2番手のラジョビッチです。
ラジョビッチは大会通算4勝2敗。負けた相手はペールとアグーのみで、ジャリー、アリス(南アフリカ)、アリアシム、ハチャノフに勝利していて、この大会ずっと好調を維持していました。
この結果何が起きたか。ジョコビッチのダブルス温存です。
特にラジョビッチがQF、SFを勝ったことで、ジョコビッチは毎日連戦の決勝トーナメントでシングルスのみを戦いながら決勝へ向かいました。
一方ナダルはゴファンとの死闘に敗れ、そのあとのダブルスに出場して勝利。準決勝ではデミノーとまた激闘を繰り広げて勝ったものの、その消耗量は相当なものだったと思います。 ナダルはそれでも決勝のダブルスに出てくるだろう、と私は当時予想していました。国別対抗戦のナダルは別格。本人の想いから言っても出るはずだ。
しかし結果は、決勝のダブルスでジョコビッチが登板、ナダルは出場せず。そしてペアから想定される下馬評を覆してセルビア優勝。もし疲労度が逆だったら結果はどうだったでしょうか。

 

では今回、セルビアは同じパフォーマンスが出るかというとかなり懐疑的です。
ラジョビッチの予選対戦相手はシュトルフ、ラオニッチとかなり厳しい相手です。昨年と同等の状態で入っていないと連勝は難しいでしょう。そして変則トーナメントシステムと説明した今大会、チームスコア1敗でもしたらほぼ敗退が決まる状況で序盤からダブルス連闘策となれば、さすがのジョコビッチでも厳しくなる。ドイツにはGS優勝ペアのクラビーツ/ミースも控えています。*3
決勝トーナメントに上がっても準決勝のラジョビッチの相手はルブレフ/ペリャ/西岡のいずれかです。

ということで今大会はシングルス2枚の総合力(+ダブルス)が堅いチームを決勝進出予想にしました。
決勝はスペイン予想にしました。予想ではナダルがダブルスを一度も使わない(もしくはギリシャ戦のデッドラバーで使う)まま決勝に来ているため、最後の切り札として使用することを想定しています。
一方ロシアは準決勝で死の組Aグループの勝者と戦う予想にしています。勝ち上がるにしてもシングルスで死闘を繰り広げてのストレート勝ちか、ダブルス連闘して辛くも勝ち切る形をイメージしています。 この疲労度でさらに決勝のダブルスで連闘はさすがにやってないでしょう。逆に言えば、ロシアの優勝条件は予選まで全てダブルス連闘を温存して、十分な体力を持って決勝に入ってダブルス勝負(もしくはシングルス2勝しちゃう?)。予選から勝ち上がり方にも注目です。

 

まだまだ厳しい世の中ですが、こうしてテニスのある日々が再び始まりました。
BIG4時代も終盤に差し掛かっています。昨年はそのBIG4率いるチームが若手中心のチームをギリギリ退けて優勝しました。デミノーが、シャポバロフが、あと一歩まで迫りました。
今年もこの「BIG4対若手勢力」の戦いが男子テニス界のキーワードになっていくでしょう。

 

テニスは、今年もやっぱり面白い。

そんな1年の幕開けになることを期待しています。

*1:と書いてるときはいつもだいたい無理になっている気が…(自分で否定していくスタイル)

*2:細かい考察略、複雑ですが一つずつ論理的に整理していくとこうなります

*3:クラビーツ/ミースは国別対抗戦の成績がかなり悪いのが気がかりです…強いはずなんですが何か理由があるのでしょうか…