two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

ATP race to Tokyo 2021(4月5日付)

こんばんは。

 

マイアミはフルカシュの優勝という結果になりました。

勝ち上がりを見るとBIG4不在の大会でBIG4以外の強豪を次々と倒しての優勝。納得です。
フルカシュの場合はまだまだこれから。BIG4といい勝負をすることが次の目標になってくると思います(通算0-3、セット数1-8)。

 

また錦織はモンテカルロをスキップし、バルセロナからクレーシーズンを始動することになりました。
ランキングの観点から言うとあまりクレバーな選択とは言えませんが、昨年不完全燃焼に終わったクレーを万全の状態で迎え、大暴れに期待したいです。

 

race to Tokyoでは動きがありました。

・前回の記事で紹介した小数点以下切り上げ問題が決着しました。5日のランキングではマイアミ(と同週のチャレンジャー)が50%失効し、ロペスのポイント計算式に12.5+12.5+12.5という部分が存在するようになりました。この結果が純粋に足し上げた37.5ポイントの切り上げである38ポイントではなく、ばらばらに切り上げて足し上げた39ポイントになっていました。

したがって、今回のrace to Tokyoから小数点表記を廃止し、整数で処理するようになりました。

twosetdown.hatenablog.com

 

 

また五輪関係で動きが2つありました。

一つはイズナーが五輪不参加を表明したことです。

2020年大会でも不参加表明だったイズナー。例年北京を選択しているイズナーですが、日本で見れるのは19年のユニクロのエキシビが最後なんてことになってしまうのでしょうか…

現地で見ていましたが、あのビッグサーブはぜひ生で見てほしい。

 

そしてもう一つ。東京五輪のエントリー基準となるランキングは6月7日、全仏OP終了後のランキングとなっていますが、その全仏に開催延期の可能性が出てきました。

ATP/WTA/ITFとしても早く通常のスケジュールで回したい中での2年連続のこういう判断になると厳しい。また秋にずれ込んでアジアシリーズや欧州インドアが割を食う形にならないかも心配です。

決定には政治的要素が絡むので見守るしかありません。

 

 

それでは今週のrace to Tokyoです。

 

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イズナーが五輪不参加を表明したため、アメリカの5番手であるクエリーが対象選手になりました。クエリーはデ杯出場要件を完全に満たしていて、出場意思があればDAできます。

マイアミで活躍したフルカシュ、シナー、ブブリク、コルダ、ルーズヴォリが上昇しています。またチャレンジャー優勝のMagerもジャンプアップ。ATPランキングの方ではイタリア人選手が10人トップ100に入るという快挙が達成されました。

錦織も3ランクアップでAlt3を維持。40pを加点(2019マイアミ5p→45p)して差を詰めていて、actual56番目のベセリとわずか35ポイント差まで迫ってきました。

正直全員が五輪に出るとは到底思えないので、錦織の五輪出場もかなり安全になってきましたが、やはり当確を出したいのでもう少し上げたいですね。
そもそもこれくらいはまだランキングが落ちるということですから、巻き返しておかないとトップ10を狙うどころではないです。

 

 

今回でプログラムの運用も確立できたので、次回からは決勝の結果が出たらすぐアップできると思います。それでは。

ATP race to Tokyo 2021(3月22日付)

こんばんは。

 

いやーATPも困ったもんですよ。なんと2020年から通算して4度目のランキングに関するルール変更です。*1

大手のランキング計算サイトもこの改正に四苦八苦。独自のプログラムを組んでいる人たちですので簡単に変えられずルール対応に苦しんでいて、今日現在でも正確な数値を出せていません。

既におなじみplumさん(Twitter:@plum_vk)と私はそれぞれ個人の計算チャートで問題なく動作することを確認しています。まさに正確性が売りのメイドインジャパンクオリティといったところでしょうか。

 

ルール改正の詳細と選手への影響は木曜日に別記事でアップする予定です。

 

さてこれで影響を受けたのはATPランキングだけではありません。私のrace to Tokyoの試算プログラムも抜本的な見直しを強いられました。

アカプルコ/ドバイの週の段階で実はある程度出来上がっていましたが、念のためポイントが半分になるルールとマンダトリー解除の実際の運用を22日付ランキングで確認して、問題がないことが判明。そこから再度チェックを行い、なんとか今日公開に至りました!


こちらが最新の22日付race to Tokyoです。

 

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次回マイアミ後の回で詳しく再度説明しますが、現在のランキングポイントから2019シーズンのIW1週目~全仏2週目までの大会のポイントを50%にして全てノンマンダトリーに変更。ただし19年ローマと全仏は完全失効、代わりに20年ローマと全仏を50%にして処理しています。これが2021年6月7日付ランキングの基礎点です。

またこれから全仏まではマンダトリー大会が一つもないため、19大会のベスト(19-20年で残ってるマンダトリー+残り大会のベスト)で計算しています。

 


なお、現状では確定できない要素が2つあります。

①20年ローマ・全仏のポイント処理方法
20年にローマと全仏に出場し、19年のポイントを置き換えられなかった場合、19年のポイントが100%失効した時に20年の成績が復活するかどうかがルールブックを読んでも判断できませんでした。

具体的には錦織の例が分かりやすく、19全仏360p、20全仏45pを獲得しましたが、現在採用されているのは19年の360pです。
21年の全仏が終わればこの360pは全て失効されますが、仮に21年に1Rで敗退だった場合、20年のポイントが復活して22.5ポイント(50%されるため)が入るのか、21年1R敗退の10ポイントになるのかどうかということです。

私としては、ATPの新ランキング制度を公式が「Best of」と表現していることから、常に同一大会について2年間のどちらかいい方を採用するという意味と捉えていますので、21年大会終了後、20年の成績は21年の成績に関わらず一旦復活し、20年21年で比較されてベストな方が採用されると考えています。ローマの結果が出て確定するまでは、race to Tokyoのポイント計算もその仕様で行います。

それに、錦織の例だと分かりにくいですが、例えばある大会で19年360p、20年180p獲得した選手がいた場合に、21年に10ポイントだったとして、その180pが採用されなければ何のために無理して20年の大会に出たのか分からなくなってしまいます。そういったことを考えても私の説が正しいのではと推測しています。

 

②小数点の切り上げについて
22日発表のランキングでは、小数点以下のポイントを切り上げしています。
例えばある大会で45pを獲得した場合、50%にした後のポイントは23pで計算されています。
今後小数点以下のポイントが大量に発生した場合、個別にポイントを切り上げて足し上げるのか、全てを合算した時に小数点を切り上げるのかが今の段階で分かりません。
これはマイアミが終われば確定します(IW+マイアミで両方小数点の成績になる人が出るため)。今週の表では小数点付きで計算していますが、4/5以降は対応したルールで計算を行います。

 

以上2点についてご了承頂きたいです。また主に①について、ルールブック解釈など何か情報を持っている方がいらっしゃいましたら、コメントかTwitterで意見を頂けると非常に助かります。

 

なおrace to Tokyoの表の見方については前回の記事で解説しましたので、そちらを参考にしてください。


表を見てわかる通り、ついに100位までの表に錦織の名前が初登場しました。現在74位。Alt3の位置です。
ロッテルダム、ドバイで計180p加算。錦織は出場大会が少なく、しばらくは他の選手に比べてrace to Tokyoのポジションが上がりやすい状況にあります(言い換えると、それだけ失効した時にダメージを食らいやすいということでもあります。五輪関係なくとにかく成績を残すことが重要です)。
全豪が終わった段階では錦織の五輪出場にはこれから最低でも300ポイント必要で赤信号という見解を出していましたが、200ポイント近い加点で一気に黄信号まで戻してきた印象です。

なお、先日Twitterのフォロワーの方から質問で「五輪にPRは使えないのか」と聞かれましたが、ATPルールブックを読む限りでは、錦織は復帰後9ヶ月以内までにしかPRを使えないため、復帰後10ヶ月以上経っている五輪には使用できないと考えています。


その他前回の表と比較して目立つところを紹介します
・カラツェフは既に安全圏ですが、さらにジャンプアップ。
・フチョビッチ、アリスがボーダーから圏内に上げました。
・2020年版や今年年明けにはボーダーよりだいぶ上にいた西岡が落ちてきています。今シーズンの出だしで相手が厳しかったとはいえ勝ちを積み重ねられず、欧州に入ってからもピリッとしません。今後も続くようだとボーダー以下転落もあり得ます。

 

残り2ヶ月ちょっとですが大きな大会がたくさん残っているため逆転の可能性はまだまだあります。ボーダー上の選手も油断できません。

実際このうちどれくらいの選手が出るかも分かりませんしね…なんやかんやで100位くらいまでエントリーできても不思議ではないです。

 

当ブログでは当確が出揃う全仏1週目後半まで毎週更新していきます。海外向けファンのために英語版の運用もしたいなと思っています。まだまだプログラムに改良も必要ですし*2他の作業もあります。

 

ありがたいことに先の仕事の話も来ています。五輪まであと4ヶ月。できる限りのことをやります!

*1:1度目の改正が22ヶ月ルール(8月)、2度目が24ヶ月ルール(10月)、3度目がIW中止などによる週ずれ解消目的の2週間の延長(1月)、そして今回3月に4度目でした

*2:自分でも苦笑いしてるのですが、ついに計算ファイルの容量が2MBを超えました。数字と数式しか入れてないんですよ…?

ATP race to Tokyo 2021(2月22日付)

こんにちは。

今週(全豪終了後)からいよいよあの企画が帰ってきます。東京五輪の出場権争いについて検討する題して「race to Tokyo 2021」です。
昨年と違う試算をしているのでタイトルも新しくしました(ブログのタグは同じにしています)

え、五輪?ないでしょ?と思われるかもしれません。
現状では難しいと思いますが、中止が発表されるまでは、何が起きるかわかりません。我々個人の感情だけでは決まらないものである以上、ある前提で進めていきます。
ランキング試算でもそうですが、常に起きうるすべてのパターンを想定して動かないといけません。中止延期の正式発表が出るまでは五輪は「行われるもの」です。

2020年版race to Tokyoから約1年経ち、再び2021年7月五輪の当落を決める全仏終了後のランキングのリミットも近づいてきました。※延期後のルールも全仏後最初のランキングが基準です

今回はまず全豪終了時点での試算表をアップします。表のスタイルは最後までこれで行こうと思うので、まず表の読み方をみなさんに覚えてもらうところから始めていこうと思います。

 

2021年はパンデミック対応特別ルールになっているため、ランキングの計算が複雑です。
3ヶ月先のランキングの基礎点の計算をするだけでも複雑なのに、特殊ルールのせいでさらに難しい計算になっています。そのあたりの細かなところが気になる方も当ブログの読者にはたくさんいらっしゃると思いますので、後日別記事で解説します。

なお、同じようなrace to Tokyoの計算を ATP Open Era & Live Rankings (openerarankings.com) もやっていることは把握していますが、おそらく向こうの計算プログラムのアルゴリズムが原因で重大な計算ミスがあることを私は発見しています。なのでOERさんと計算結果、順位が異なっていますが私の計算が正しいと考えています。その理由についても後日解説記事で説明しようと思っています。

 


それでは試算表です。
スマホでも見やすいように4枚の画像に分けました。

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rankはこのrace to Tokyoにおけるランキング(2021年6月7日付け基礎点)です。
moveは先週との動きです(今週は便宜上変動なしとしました)。
そしてactualが五輪のエントリーリストを作った場合の順位です。

五輪エントリーリストから漏れるケースは
・デ杯出場要件を満たさない
・本人が欠場の意思を示した場合
のいずれかです。

昨年であればティームが欠場意思に該当したわけですが、2021年五輪には出場の意向(ありがとう!)とのことでリストに入れています。
また、昨年はイズナー、エバンズも欠場を表明していましたが、五輪延期後の動向が報じられていないため一旦リストに組み入れました。

このリストの意義は当確情報を出すことが最重要事項ですので、欠場とこちらで判断した選手がやっぱり出るとなった時にボーダー付近の選手の当確を取り消すことの罪が重いため、それを避ける目的で不透明な人は全て出場するものとしています。

この後も解説しますが、例えばアンベールはデ杯出場0回ですがリストインしています。現状のランキングからパネル申請が通りそうな気もするし、さすがに0回だとダメそうな気もします。そういった選手も全てリスト化することで間違った当確を出さないようにしています。

また、actualのところにEUが書いてある選手が一人います。これは大陸枠の欧州枠資格選手です。
欧州の大陸枠は、出場権を持たない国のうちで最上位と定義されていますので、今の表であればハンガリーのフチョビッチが該当します。これはボーダー付近のランキングの変動で頻繁に変化します。おそらく最後の1枠が決まるまで確定しないと見られます。

他の大陸枠については後日解説します(ルール自体は2020年版と変わっていません)が、この表には入ってきません。


次にポイント右の記号は国別ランキングです。
五輪のルールではシングルスは1ヶ国最大4人ですので、DAできるランクにいても国別5位以下は出れません。

続いて重要なのが選手の背景色についてです。

青…デ杯3回出場ルールを完璧に満たしており、クリア
緑…デ杯3回ルールを満たしていないが、パネル申請で通りそう
黄…デ杯に一度も出場していないが、パネル申請が通る可能性もある
オレンジ…国別ランキング5位以下
赤…長年国別ランク上位を維持しながらデ杯に一度も出ていないため、パネル申請が通らない

オレンジ、赤の選手は出れません。特に赤の選手(ディミトロフ、アルボット)は確実にアウトです。信号と同じように色が暖色系に近づけば近づくほど厳しいというイメージで作りました。

配色の都合上、去年の表と赤オレンジの色を逆転させたので注意してください。


緑の選手で分かりやすいのは錦織で、16入れ替え戦、20予選ラウンドに出場。あと1回分足りませんが、これは19年ファイナルなどを公傷扱いでクリアできるのでOKでしょう(というか、たぶんそこから逆算して20予選ラウンドに無理やりエントリーしたはずなのでさすがに大丈夫)。

黄色の選手は名前を見ると分かるようにここ1~2年で出てきた選手で、デ杯に出ていないのはしょうがないところがあります。カラツェフなんかが分かりやすいですね。こういった選手に対してパネルが救済するわけですが、ジャッジした実例を探すことが困難で正確な判断ができません。またそういった選手に五輪出場の意思があるかどうかすらも不明です。そこで一律に全てパネルがクリアと判断するものとしました。


その他、とりあえず表を読むのに最低限必要な事項だけ書いておきます。

・表の順位とポイントは、表を出した時点から6月まで一切の加点がなかった場合の2021年6月7日付ランキングです。

・6月7日付ランキング基礎点は、これからのマスターズ、GS全てに出場し0ポインターがついた最悪のケースを考えています。全仏までの期間に義務大会はマイアミ、マドリード、ローマ、全仏が残っていますので、19-4=15大会のポイントで算出しています*1※ATP公式ルールで決まっていて、今年は特例でbest18ではなくbest19でランキングを計算しています!

・錦織を100位以下の付録で付けました。この辺りのポイントには多数の選手がいるため、正確な順位の計算を諦めました。実際ボーダーとのポイント差だけが見たいと思うので、正確な順位は必要ないと思います。

 

今確実に言えることは、錦織はかなり加点しないと五輪に出れません。
開催国枠は日本の選手が一人もDAしなかった際に最上位の選手に与えられる枠であるため、西岡がDAラインに入っていて使えません。仮に西岡がDAラインから落ちても西岡を上回る必要があります。

ボーダーは欠場によって下がる可能性があるので正確な数字はまだはっきりしませんが、やはり今のボーダーとの差、300ポイントは最低でも稼いでおきたい。
そもそもこのランキングは全仏終了時のランキングを示していて、錦織はここから加点しなければ、あっという間にトップ100陥落もあるという恐ろしいデータを示しています。

ランキングを戻すのが大変なことは2018年のシーズンで痛いほどわかっていると思います(テニスを取り戻した春以降、プレーの実力にランキングが追いつくまでに半年かかりましたね)

時間はありません。これは煽りでもなんでもなく事実です。ランキング2年制の影響であまり気づかれていませんが大変な状況にあります*2

 


他に付録で書いておいてほしい選手がいればコメント欄かTwitterで教えてください。だいたい取り入れるつもりです。


次回week8(シンガポールコルドバモンペリエ)終了時のランキングも表のみの掲載とします(表を作るだけで相当時間がかかり疲れました。休ませて…)

ボーダー争い、新ランキング計算の細かなところについては3月以降具体的に解説していきます。


以上です。
何か質問等ある方もコメントかTwitterで質問ください。
おそらく世界で唯一の正確な五輪ボーダー試算、全仏か再延期/中止が決まるまでお付き合いください。

*1:なお、IWは中止ではなく延期の措置になっていますが、カレンダー上全仏までに入れるとは到底思えなかったので除外して考えています

*2:もっとも、それがなければ今頃はPRをあと何枚使えるかとか、そういう議論になっていたはずでこれでも助かってるほうなんですよね…

ATPカップ2021 プレビュー

まず最初にお知らせです。
今年もATPカップ2021のABEMA中継に連動して、ABEMATIMESでの記事を執筆します!

今年は試合中に起こった出来事についての記事を書く予定です(大会の情勢に応じて変更あり)

昨年はこんな記事を書いていました。

SNSでも話題になったモルドバ監督(アルボット父)について

times.abema.tv

↓クレジットは出ていませんが、実は速報記事も書いていました

times.abema.tv

 

昨年は約15本程度、主な担当は予選のシドニー会場で、ずっと試合を見るか原稿を書き続ける大変な一週間でした。雑誌などへの寄稿は1ヶ月程度先の納期でじっくり書いていくものですが、webメディアの記事は速報性、SNSで拡散した時に「化ける」か、動画リンクとの関連性など、求められていることが全然違うのでとても勉強になりました。
今年は去年の反省を活かしてもっとスムーズに進められたらと思います。

余裕があったら別でブログを更新したい!*1

 

ATPカップについては書くと長くなるので、昨年との変更点(注意点)、各組展望と優勝予想だけ書いていきます。

 

今年のATPカップのポイントは「短期決戦」です。予選ラウンドの2位通過で拾われるパターンがなくなり、必ず各組1位通過しか決勝トーナメントに進めないのが昨年との大きな違いです。

では3チームの中でグループ1位になれるパターンにはどんなものがあるのか?実はごく限られたパターンしかありません。

①チームスコア2-0の場合
A国 2-0
B国 1-1
C国 0-2
最も起こりうるパターンです。

②チームスコア1-1で並んだ場合、いわゆる「3すくみ」が起きた場合
A国 1-1
B国 1-1
C国 1-1
このケースでは α.ラバー勝敗 β.セット率 の順番で順位を決めます。
途中棄権などの特殊なパターンを除くと、α.ラバー勝敗 については、4-2, 3-3, 2-4 の3チームが出るパターンと、3-3で3チームが出るパターンの2つしかありません*2。前者の場合はラバー4-2のチームが1位、後者の場合はセット率勝負になります。セット率でも並んだ場合はゲーム率ですが、ここまでもつれることはおそらくないと思います。Twitterでは万が一そうなりそうな場合のみ解説する予定です。
正直3すくみになってしまうとラバー勝敗やセット率というかなりシビアな条件になるので、チームで1敗したらほぼ敗退と思っておいた方がいいです。 ※例えば初戦を0-3で落とした場合、次戦3-0勝利かつ他のカードの結果待ちとなるので絶望的です

なので決勝トーナメントも含めて、1敗したらほぼ終わりの変則トーナメントを戦っているというのが今大会のイメージと捉えておきましょう。

 

各組の簡単な展望です。

グループA(RLA、デイセッション)

セルビア ドイツ カナダ

正直どこのチームが上がってきてもおかしくないです。
前回優勝のセルビアがいますが、前回は出来すぎの部分もあり(後述)今回厳しいブロックに入ったことで敗退の可能性もあると思いますジョコビッチがエキシビを棄権したのも逆風。日程が過密なこともあり、昨年のような勢いで向かっていけるか疑問です。

昨年死の組グループFに入り大ブレーキとなってしまったドイツは、ズベレフが成長しており今年は再度見直したいチーム。シュトルフ、クラビーツ/ミースと役者は揃っており、久しぶりの国別対抗戦ベスト4以上も視野に入っています。

そしてここのところ国別対抗戦で好成績が続いているカナダ。3本柱のうちのシャポバロフ、ラオニッチが揃いました。ダブルスを即席ペアで組むというウィークポイントがあるものの、今年も上位進出が十分に狙える布陣だと思います。

 

グループB(RLA、ナイトセッション)

スペイン ギリシャ オーストラリア

昨年の雪辱に燃えるスペインは今大会全チームの中で最も強いメンバーを揃えました。どこからでも勝利が期待でき、大崩れもなさそう。優勝候補筆頭と言っていいでしょう。

ギリシャは昨年の大会を見ても2番手、ダブルスで相当後れを取っており厳しいか。チチパス連闘策でグループを抜けるだけでも至難の業です。

オーストラリアは最大のアップセットを起こせる力があります。昨年ベスト4、その時のメンバーがほぼ揃っています。なぜランキングで直接DAできなかったのか不思議なほどです。躍進の鍵はデミノー。オーストラリアシリーズは大得意。選手としてブレイクしたのもこのシリーズで、昨年のこの大会ではズベレフ、シャポバロフを倒し、ナダルにもあと一歩のところまで迫りました。しかし、そのナダル戦とエバンズ戦、決勝トーナメントでは悔しい2敗を喫しただけに今年の奮起が期待されます。

おそらくスペインとオーストラリア戦の勝者が決勝トーナメント進出だと思います。明日の夜からいきなり大一番です

 

グループC(JCA、デイセッション)

オーストリア イタリア フランス

大混戦です。オーストリアは全米を制覇したティームが率いますが、2番手、ダブルスとも力不足が否めず、0-2で大会を去ってもおかしくないです。

個人的に今大会のダークホースだと思っているのはイタリア。イタリアは国別対抗戦でいつも力以上のものを見せてくる印象です。昨年けがで欠場だったベレッティーニが出場。フォニーニを2番手に回せているのは大きく、ダブルスにはボレリもいます。この混戦のグループなら勝ち上がり最有力ではないでしょうか。

フランスはテニス大国として今年こそ決勝トーナメント進出を狙っていきたいです。隔離明けのロジャーバゼランがマウーとのペアで出場することになるでしょう。去年のフランスはなんとダブルスで全敗しており、ここが決勝トーナメント進出へのポイントです。また今のところ、ペールとフォニーニが対戦することになっており、いろんな面で大注目です!!!

 

グループD

ロシア アルゼンチン 日本

ロシアはメドベデフ、ルブレフとシングルスが強力。この二人で4連勝×2をやって優勝しても驚きはありません。一方ダブルスには専門職がいないため、1-1で回った場合は二人で組んで出ることになると思います。できる限りこの「最後の切り札」を温存することが優勝への条件になりそう(優勝予想で後述)。

アルゼンチンは昨年QFの借りを返す戦いになりそう。シュワルツマンとメドベデフが試合中口論になったあの試合から1年。こちらはダブルスにも選手を用意しているため、なんとかダブルス決着に持ち込んで勝てば決勝トーナメント進出もありそうです。

日本は正直厳しい。錦織の状態が不透明であるだけでなく、昨シーズン大躍進を遂げた西岡の相手がルブレフ、ペリャと厳しい。昨年ATPカップでの西岡のパフォーマンスは圧巻でしたが、同等か、それ以上のものが求められます。錦織がトップ10級のパフォーマンス+西岡がキャリア最高クラスのプレーで1勝以上をもぎ取りダブルス勝負に持ち込むしか道がありません。

 

優勝予想です。

グループ勝ち抜け Aカナダ Bスペイン Cイタリア Dロシア

準決勝 ロシアdef.カナダ スペインdef.イタリア

決勝 スペインdef.ロシア

 

根拠は各国2番手以降の「枚数」です
スペインは2番手のアグー、ダブルスにはカレノブスタ/グラノジェルスが控えています。エースのナダルも含めて、全てのカードで安定して勝利が期待できるメンバーが揃っています。
そしてロシアはメドベデフ、ルブレフのダブルエース体制。近年の最終戦経験者を2名擁するこの2チームは一つ抜けています。
え、TSDよ、セルビアは?と思われるでしょうが、今回セルビアはA組通過すら微妙なのではと予想しています(予想では思い切ってそうした)。なぜなのか?もちろん根拠はあります。

昨年のセルビア優勝までの道のりを振り返ってみると、ジョコビッチの6連勝(しかも後半はシャポバロフ、メドベデフ、ナダル相手!)は見事としか言いようがないのですが、実はそれ以上に陰ながら優勝に貢献した選手がいます。2番手のラジョビッチです。
ラジョビッチは大会通算4勝2敗。負けた相手はペールとアグーのみで、ジャリー、アリス(南アフリカ)、アリアシム、ハチャノフに勝利していて、この大会ずっと好調を維持していました。
この結果何が起きたか。ジョコビッチのダブルス温存です。
特にラジョビッチがQF、SFを勝ったことで、ジョコビッチは毎日連戦の決勝トーナメントでシングルスのみを戦いながら決勝へ向かいました。
一方ナダルはゴファンとの死闘に敗れ、そのあとのダブルスに出場して勝利。準決勝ではデミノーとまた激闘を繰り広げて勝ったものの、その消耗量は相当なものだったと思います。 ナダルはそれでも決勝のダブルスに出てくるだろう、と私は当時予想していました。国別対抗戦のナダルは別格。本人の想いから言っても出るはずだ。
しかし結果は、決勝のダブルスでジョコビッチが登板、ナダルは出場せず。そしてペアから想定される下馬評を覆してセルビア優勝。もし疲労度が逆だったら結果はどうだったでしょうか。

 

では今回、セルビアは同じパフォーマンスが出るかというとかなり懐疑的です。
ラジョビッチの予選対戦相手はシュトルフ、ラオニッチとかなり厳しい相手です。昨年と同等の状態で入っていないと連勝は難しいでしょう。そして変則トーナメントシステムと説明した今大会、チームスコア1敗でもしたらほぼ敗退が決まる状況で序盤からダブルス連闘策となれば、さすがのジョコビッチでも厳しくなる。ドイツにはGS優勝ペアのクラビーツ/ミースも控えています。*3
決勝トーナメントに上がっても準決勝のラジョビッチの相手はルブレフ/ペリャ/西岡のいずれかです。

ということで今大会はシングルス2枚の総合力(+ダブルス)が堅いチームを決勝進出予想にしました。
決勝はスペイン予想にしました。予想ではナダルがダブルスを一度も使わない(もしくはギリシャ戦のデッドラバーで使う)まま決勝に来ているため、最後の切り札として使用することを想定しています。
一方ロシアは準決勝で死の組Aグループの勝者と戦う予想にしています。勝ち上がるにしてもシングルスで死闘を繰り広げてのストレート勝ちか、ダブルス連闘して辛くも勝ち切る形をイメージしています。 この疲労度でさらに決勝のダブルスで連闘はさすがにやってないでしょう。逆に言えば、ロシアの優勝条件は予選まで全てダブルス連闘を温存して、十分な体力を持って決勝に入ってダブルス勝負(もしくはシングルス2勝しちゃう?)。予選から勝ち上がり方にも注目です。

 

まだまだ厳しい世の中ですが、こうしてテニスのある日々が再び始まりました。
BIG4時代も終盤に差し掛かっています。昨年はそのBIG4率いるチームが若手中心のチームをギリギリ退けて優勝しました。デミノーが、シャポバロフが、あと一歩まで迫りました。
今年もこの「BIG4対若手勢力」の戦いが男子テニス界のキーワードになっていくでしょう。

 

テニスは、今年もやっぱり面白い。

そんな1年の幕開けになることを期待しています。

*1:と書いてるときはいつもだいたい無理になっている気が…(自分で否定していくスタイル)

*2:細かい考察略、複雑ですが一つずつ論理的に整理していくとこうなります

*3:クラビーツ/ミースは国別対抗戦の成績がかなり悪いのが気がかりです…強いはずなんですが何か理由があるのでしょうか…

ATP race to Tokyo(3月9日付)※デ杯出場回数更新


こんばんは。

デ杯ウィークが終わりました。心底疲れました…

しかもIW中止で慌ててます…果たしてツアーは続けられるのか…

「我々はテニスを見ていくことと予防しかできません。 やれることをやっていきましょう。」
なんて前書きを下書きに残していたのですが、テニス見れなくなるとは思わなかった…

 

 

3月9日付のrace to Tokyoを見る前に、この話題に触れておきます。

デビスカップ3月の試合が終わりました。これが五輪までの最後の出場機会となります。そのエントリー状況を反映した結果、olympic qualificationの記号が一部選手に対して変更となりました。

 

×→△の選手

ダックワース、コプファー、ロンデロ、ポール、ワイルド

さすがにデ杯招集回数0回では、パネル申請も通らないだろうということで、これまでrace to Tokyoでは黄色表示、また記号では×と表記していました。

対象の選手は現在ボーダー付近を争っており、出場しておいたほうがITFに顔が立つので、大きな1回出場です。

これで国別4番手以内かつ出場可能性のある選手で×はディミトロフ、アルボット、アンベール、ケツマノビッチ、サングレンだけになりました。ディミトロフ、アルボットは常に国別ナンバーワンでありながら0回なので間違いなくアウト。アンベールはフランスなので様々な考慮がなされるでしょうが、仮にアンベールが出なくても、他の5番手以下の選手がボーダーよりはるかに上で、結局その選手に割り当てられるだけなので、ボーダーの位置には影響は出ません。
ケツマノビッチは今回WCのため試合のないセルビアなので、最大限の配慮をすれば出れないことはないのでしょうが、11月にも出ていないので心象は悪いか。同様にアメリカも今回サングレンを招集できたのに招集しなかったのでこれも厳しい。一応ボーダーを高く見積もるために出れる前提で話を進めますが、現実的には難しいでしょう。

また、国別5番手以下の×で注目の選手はシナー。ボーダーすれすれかつイタリア5番手で、今後の状況次第では出れそうですが、今回出なかったので五輪は厳しいか。イタリアはフォニーニ、ベレッティーニ、ソネゴ、セッピ、トラバグリアと△以上の選手は揃っています。

 

  

△→△(回数増加)
錦織、フリッツ、オペルカ、ソネゴ

錦織は名前だけ貸す形で近4年で2回目の出場、これで2019年11月に出るはずだったという主張でほぼパネルは通りそうです。が、IWを早々にアウトしながらチームには帯同し、ノルマだけこなすというなんとも印象の悪い結末に…

アメリカ勢は回数を積み重ねて、3回には足りないもののほぼ間違いなくパネル通りそうです。こちらもUSTAが配慮した感じのメンバー構成でした。

ソネゴもここ1年で2回の出場。ランキング推移の経緯から言っても間違いなくパネル通りそうです。

 

△→〇(条件クリア)

チチパス、ブブリク、バシラシビリ、チリッチ、コバリク

チチパスはフィリピンに遠征。きっちり勝ち切ってWG2昇格を決めました。
試合もデ杯の緊張感はありつつも、オフコートではフィリピンのファンからサイン攻めに。すべてを完璧にこなして五輪条件(2回出場)*1もクリアです。 

ブブリクも近2年で3回の出場。ニューカマー申請に頼ることなく、回数できっちりクリアしました。

バシラシビリは普通にデ杯に出ていますが、2019年のタイに出ていなかったためここで近2年1回の条件クリア。チリッチは19年ファイナルをけがで欠場していたため、これで近2年の条件クリア。コバリクもクリアしました。  

 

それでは以上のことを踏まえて、3/9付のrace to Tokyoを見ていきましょう。


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80位以下で小さな動きがありましたが、ほぼ変わりありません。
デ杯ウィークということで、デ杯の試合がなかった6ヶ国の選手+代表漏れした選手が試合していて、ジョンソンがIWチャレンジャー、マナリノがモンテレーCHでそれぞれ優勝して、ポイントを伸ばしました。

これでジョンソンは五輪に選ばれる可能性も出てきましたね…サングレンがパネル申請だめな場合のパターンもあるのでかなり確率高いんですが、どうするのでしょうか。本人は前回メダルを獲得したため今回は消極的だそうです。 

次回はIW終わりなので2週間後ですが、0ポインターが加算されるだけになるかもしれないですね。そのあたり、race to Tokyoの計算に関わる話も少ししようと思っています。それでは。

*1:ギリシャはゾーン3時代が長かったため規定により2回に減免されている

ATP race to Tokyo(3月2日付)


こんばんは。

昨日に引き続いて3/2付けのrace to Tokyoです。

3/2はドバイ、アカプルコサンティアゴの3大会などの結果が追加されました。
早速表を見ていきましょう。
なお、読者の方からの指摘により、フチョビッチとバラズスの国別ランクを逆にしていたことに気づきました。大変申し訳なかったです。今回から修正されています。

 

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ドバイでジョコビッチアカプルコナダルがそれぞれ優勝し、上位勢安泰の結果。あまり大きな変動は起きていません。

気になるのは2位争いで、race to Tokyoは実質全仏後のランキングを示唆している表。つまり、メドベデフに2位挑戦のチャンスが来ているということです

ただ4月からはご存知の通りクレーシーズン。ターゲットになるナダルの独壇場です。メドベデフはIW、マイアミの2大会で一旦2位に躍り出て、クレーで粘りながら僅差に持ち込んで、WBの失効でとらえるというイメージになりそうです。

そういった意味でもアカプルコナダル優勝は大きい。BIG4が15年間守り続けている2位の聖域。果たして今年中に破られるのか、守り切るのか、注目です。

 

アカプルコ優勝のフリッツはこれで当確ラインへ。さらに表の上ではアメリカナンバー1になりました。
2016年に錦織との決勝を戦ってから色々とありましたが、ようやくアメリカを代表するテニス選手になったというのは嬉しいですね。

その他、ポールが躍進。デ杯の出場もあって五輪が見えてきました。

サンティアゴではワイルドが優勝し、初めてリスト入り。今後の結果次第では五輪もあるかも。デ杯にも名を連ねています。
準優勝のルードはボーダー想定の800pを突破。ちなみに、お父さんは1996年アトランタ五輪に出場していて、親子二代出場が見えてきました!

 

また、ボーダー争いでは嬉しいニュース。内山がドバイ予選を勝ち上がり、本戦でも1勝。貴重な65ポイントを手にしました!

65ポイントはチャレンジャーではなかなか稼げないポイント。本戦でPRのルーに当たったのは正直ラッキーでしたが、きっちり活かしました。
600ポイント台に到達し、当面のトップ100以上は確定。チャレンジャーで稼ぐか、ツアーにチャレンジしていくか難しいランキング。加えてコロナウイルス関連で遠征への制限がかかりそうで、内山の動向には注目です。

 

 

3/9付けは月曜日に更新です。チャレンジャーの結果が一部更新されるだけですので、3/2と大差ないと思います。どちらかというと、オリンピック出場のためのデ杯出場回数の表のアップデートの方が重要になりますね。それでは。

2020デビスカップ予選ラウンドプレビュー

こんばんは。

いよいよ長い2日間、デビスカップ予選ラウンドウィークが開幕です。
制度移行年だった2019年は予選ラウンドの開催のみでしたが、今年からWG1プレーオフとWG2プレーオフも開催され、世界各地で全36試合が行われます。

予選ラウンドを中心に展望していこうと思います。

なお、日本戦の需要が高いため、一部試合についてメンバーがまだ出ていませんが先に公開します。メンバーが発表され次第、追記していきます。 

 

 

[1]クロアチア×インド(ザグレブ、インドアハード)

クロアチア
チリッチ
Gojo
Serdarusic
ドディグ
パビッチ

インド
ナガル
ギネスワラン
ラマナサン
ボパンナ
エス

R1 Gojo×ギネスワラン
R2 チリッチ×ラマナサン
R3 パビッチ/スクゴール×ボパンナ/パエス
R4 チリッチ×ギネスワラン
R5 Gojo×ラマナサン 


クロアチアは2019年ファイナルラウンドでは事故的な敗戦。のちにベスト4以上の成績となったスペイン、ロシアと対戦。チリッチを欠いては勝負になりませんでした。
2020年はリスタートの1年。ホームでインドを迎えます。会場は以前ATP250のザグレブ大会が行われていたコートです。この大会ではチリッチが4回の優勝。これは心強いですね。そのチリッチがエースです。
一方、チョリッチは欠場。五輪資格を満たしているのですが、少し欠場理由が心配です。2番手はファイナルでも戦ったGojoですがインド相手に勝利を収められるか。

インドは久しぶりのWGグレードへの進出に挑みます。なんと今大会には今シーズン引退を表明しているパエスが出場。クロアチアの強豪相手にどんなテニスをするか、注目です。
試合はチリッチ以外でクロアチアが1勝できるかが焦点。もしインドがお家芸のダブルスを取るようだと、まさかもあるかもしれません。

 

 

ハンガリー×[2]ベルギー(デブレツェン、インドアクレー)

ハンガリー
フチョビッチ
バラズス
ピロス
Marozsan
Nagy

ベルギー
コペヤンス
ベメルマンス
デグリーフ
フリーゲン
ジル

R1 バラズス×ベメルマンス
R2 フチョビッチ×コペヤンス
R3 バラズス/フチョビッチ×ジル/フリーゲン
R4 バラズス×コペヤンス
R5 フチョビッチ×ベメルマンス


ハンガリー第二の都市で行われます。
ダルシスが引退したベルギーは、エースのゴファンが欠場。五輪出場回数には足りていて問題はないのですが少し心配。
錦織不在時の日本と同じように、総合力が問われます。
ダブルスはATPカップでも活躍したジル/フリーゲン。コペヤンス、ベメルマンスも代表経験が豊富。十分に勝てるチームです。

しかしハンガリーも黙ってはいない。近年では最も強い代表メンバーになっています。フチョビッチに続いて、バラズスもトップ100に食い込んできました。ホームの力もあり、十分にアップセットを起こせる環境が出来上がっています。

 

 

コロンビア×[3]アルゼンチン(ボゴタ、インドアクレー)

コロンビア
ガラン
ヒラルド
ゴンザレス
カバル
ファラー

アルゼンチン
ペリャ
ロンデロ
マイヤー
ゼバジョス
ゴンザレス

R1 ガラン×マイヤー
R2 ヒラルド×ロンデロ
R3 カバル/ファラー×ゴンザレス/ゼバジョス
R4 ガラン×ロンデロ
R5 ヒラルド×マイヤー

 

南米対決です。どちらもちゃっかりハードがこなせる選手が揃っていますが、コロンビアはクレー選択としました。
カバル/ファラーの強さは言わずもがな。デ杯での勝率の低さが気になりますが、そこ以外の2勝をどうとっていくかというところになりそうです。

アルゼンチンはシュワルツマンが不在。さらにペリャもけがのため既にIWを欠場することが発表されており、緊急登板も難しいか。もちろんデルポトロも不在で、一気に厳しい状況になっています。ここは押し出されたエースとなったロンデロが重要な立場に。何勝かが勝敗の分かれ目。力のある優勝経験チームですが、この難しいタイを乗り切れるか。
そして、南米同士の一戦。デ杯ならではの過激すぎる応援合戦にも注目です。

 

 

[4]アメリカ×ウズベキスタン(ホノルル、インドアハード)

アメリ
フリッツ
オペル
ポール
B・ブライアン
M・ブライアン

ウズベキスタン
イストミン
スルタノフ
Fayziev
Nabiev

R1 オペルカ×イストミン
R2 フリッツ×Fayziev
R3 ブライアン/ブライアン×Fayziev/イストミン
R4 フリッツ×イストミン
R5 オペルカ×Fayziev


リゾート気分になれるか。ハワイ開催です。
アメリカのデ杯開催地って癖ありますよね。かつては野球場でやったこともありましたし。
デ杯公式によると、スポンサー契約が決まっていて、予選ラウンドは2022年までハワイで開催されることが決まっているようです。

アメリカは若手メンバーで構成。五輪資格に向けて出場回数の足りていないフリッツ、オペルカ、ポールが代表入り。一方デ杯出場のないサングレンはノミネートせず。そしておそらくキャリア最後のデ杯となるブライアン兄弟が登場します。チーム勝利は濃厚で、その場合次のタイは引退後の11月ですので、最後の試合になると思いますし、そのつもりで臨むでしょう。花道を飾れるか。監督はマーディ・フィッシュです。

ウズベキスタンは大黒柱のイストミンがランキングを落とし、苦しいチーム状況。アメリカの勝利は盤石か。

 


[5]オーストラリア×ブラジル(アデレード、ハード)

オーストラリア
ミルマン
トンプソン
ダックワース
ボルト
ピアース

ブラジル
モンテイロ
メネセス
ワイルド
RODRIGUES ALVES
デモリナー

R1 トンプソン×モンテイロ
R2 ミルマン×ワイルド
R3 ダックワース/ピアース×RODRIGUES ALVES/デモリナー
R4 ミルマン×モンテイロ
R5 トンプソン×ワイルド


オーストラリアは一旦ベストメンバーに近い構成を組みました。ダックワースはデ杯初招集。東京五輪代表入りを見越しての招集です。
しかしキリオス、デミノーがけがのため欠場を発表。出場予定のなかったピアースを緊急招集。
ミルマンを中心としたチームとなります。1番手で臨むのは初めてとなるミルマン。全豪以降ドローに恵まれず、復帰戦勝利がない中での重圧に打ち勝てるか。

ブラジルはメネセスがITF枠での出場を見越して召集されました。これで東京五輪シングルスに出場することになると思うので、是非チェックしておきましょう。
そして注目は初代表のワイルド。ダビドビッチを3時間半の激闘で倒し、さらにサンティアゴでツアー初優勝と期待の若手です。今回はハードですが、どんなテニスをするのか。戦前の予想と異なり、かなりブラジルにもチャンスが出てきました。

オーストラリアはホームで地元の声援に応えられるか。今回も闘将ヒューイットが監督です。今シリーズ最大のアップセットを防ぐことができるか。

 

 

[6]イタリア×韓国(カリアリ、クレー)

イタリア
フォニーニ
ソネゴ
Mager
トラバグリア
ボレリ

韓国
イ・ダクヒ
ナム
Y・チョン
ソン
H・チョン(あのヒョン・チョンではない)

R1 フォニーニ×イ・ダクヒ
R2 Mager×ナム
R3 ソネゴ/トラバグリア×ナム/ソン
R4 フォニーニ×ナム
R5 Mager×イ・ダクヒ


イタリアでもコロナウイルスが猛威を振るっていて、直前ですが無観客試合が決定しました。

イタリアはベレッティーニをけがで欠くことにはなりましたが、それ以外はメンバーが揃いました。またリオで準優勝のMagerが初代表。トラバグリアも出場となります。
ダブルスには安心のボレリも控えて、盤石の布陣です。

韓国は2008年以来のWGグレードへの挑戦となりますが、アジア勢苦手のクレー+エースのクォンが不在ということで厳しい。ここはホームのイタリアの電車道でしょう。

 


[7]ドイツ×ベラルーシデュッセルドルフ、インドアハード)

ドイツ
シュトルフ
コールシュライバー
コプファー
クラビーツ
ミース

ベラルーシ
ゲラシモフ
イバシュカ
Zgirovsky
Borisiouk
Vasilevski

R1 シュトルフ×イバシュカ
R2 コールシュライバー×ゲラシモフ
R3 クラビーツ/ミース×ゲラシモフ/Vasilevski
R4 シュトルフ×ゲラシモフ
R5 コールシュライバー×イバシュカ


ドイツはズべレフを欠くものの、それでも勝利へは問題なしか。シュトルフ、コールシュライバーがいます。またコプファーは初代表で五輪出場を見越しての招集。
ダブルスにはスペシャリストのクラビーツ/ミースと鉄壁。ATPカップではズべレフの不調で敗退したドイツですが、ここは問題なく勝ち上がるでしょう。

ベラルーシもゲラシモフがプネーで活躍、イバシュカも力があり、何とか一泡吹かせたいところ。初日に1勝できるかがまず最初の分岐点になりそうです。

 

 

[8]カザフスタン×オランダ(ヌルスルタン、インドアハード)

カザフスタン
ブブリク
ククシュキン
ポプコ
ネドベジョフ
ゴルベフ

オランダ
ハース
Van De Zandschulp
グリークスプール
クールホフ
ロジェ

R1 ククシュキン×ハース
R2 ブブリク×グリークスプール
R3 ゴルベフ/ネドベジョフ×クールホフ/ロジェ
R4 ブブリク×ハース
R5 ククシュキン×グリークスプール


デ杯巧者というワードがあるかは分かりませんが、シングルスランク以上に力のあるチーム同士の地戦となりました。
カザフスタンのエースはブブリク。「テニスは仕事としてやっている、テニスは嫌い」など、感情を真っ正直にコメントすることから最近話題になっている選手。
しかし、カザフスタンにとってデ杯は重たい存在。これまでも数々のアップセットを起こしてきた、重要かつ普段よりも力を発揮できる大会です。ブブリクもここは仕事と割り切って、先輩に倣って普段以上に集中してプレーできるか。
メンバーは揃っていて、カザフスタンやや優勢ですがオランダも侮れません。

オランダはハースがかなりランキングを落とし、トップ100不在。しかしグリークスプールは昨年11月のデ杯でマレー相手にあと一歩まで追い詰めました。クールホフ/ロジェの鉄壁ダブルスも構えて、勝機は十分にあります。

 

 

[9]スロバキア×チェコブラチスラバ、インドアクレー)

スロバキア
マーティン
ゴンボス
コバリク
ポラセク

チェコ
ベセリ
ロソル
KOLAR
KOPRIVA
FOREJTEK

R1 コバリク×ベセリ
R2 マーティン×ロソル
R3 ポラセク/Zelenay×Forejtek/Kolar
R4 マーティン×ベセリ
R5 コバリク×ロソル


スロバキアは4人チームながら強いです。マーティン、ゴンボス、コバリクは100位台前半より上の選手ばかり。さらにポラセクはここ1年で2回のGSベスト4。ドディグと組んで最終戦にも出ました。監督は元トップ15、ドミニク・ハーバティ。懐かしい名前です。いいチームですし、勝ち上がれば本戦でも台風の目になる予感。

一方かつて時代を作ったチェコベルディヒ、ステパネクの引退以降ぱっとしません。
今回もベセリが直前にツアー優勝してなんとか体裁を保っていますが、かつての勢いはまるでなし。ここは地の利も活かしてスロバキアが優勢ではないでしょうか。

 

 
[10]オーストリア×ウルグアイグラーツ、インドアハード)

オーストリア
ノバク
オフナー
ロディオノフ
メルツァー
マラック

ウルグアイ
P・クエバ
M・クエバ
ロンカデリ
Behar
Llanes

R1 ノバク×M・クエバ
R2 ロディオノフ×P・クエバ
R3 マラック/メルツァー×Behar/P・クエバ
R4 ノバク×P・クエバ
R5 ロディオノフ×M・クエバ


オーストリアはクレーではなくインドアハードを選択。これはクレー巧者が揃うウルグアイの弱体化を狙っての選択でしょう。
絶対的エースのティームは欠場。五輪に出場しないため今回の出場は意味がないことが影響したでしょうか。すでにIWに入っています。

メンバーはきっちり揃っているオーストリアですが、P・クエバスが大当たりすればウルグアイにもチャンスありか。そのクエバス以外の3試合をきっちり取ることが、オーストリアには求められます。

 

 

[11]日本×エクアドル(三木、インドアハード)

日本
錦織圭
内山靖崇
添田豪
マクラクラン勉
綿貫陽介

エクアドル
ゴメス
キロス
ヒダルゴ
エスコバー
マーチ

R1 添田×ゴメス
R2 内山×キロス
R3 マクラクラン/内山×エスコバー/ヒダルゴ
R4 内山×ゴメス
R5 添田×キロス


コロナウイルスの影響で無観客試合となります。2018年9月入れ替え戦以来のホームでしたが、無念の観客なし。地の利を生かせないことは残念です。
ただ環境は日本向きです。アジアCHを戦ってきた内山、添田には慣れ親しんだコート。さらに開催時期はまだ肌寒いことが想定され、ホームアドバンテージは確実に存在します。*1

日本は錦織がエントリーしていますが、これは五輪出場を見据えてのエントリー。現実的にはリプレースも含めて試合に出なさそうです。実質名前だけ貸している状況で、チーム内の空気感が悪くならないかが心配です。

そして更なる暗雲が。西岡が渡航制限のかかる前にアメリカに向かうため、日本滞在を断念。欠場することになりました。

この選択は誰も責められません。西岡はIW、マイアミをDAしていて、政治に振り回されて強制欠場して0ポインターを受け入れるのはやってません。プロとしての決断、支持します

そして一方、そのIWとマイアミの予選がありながら国内に残って戦う選択をした内山、添田の選択も支持します。ならば残るものは何か。全力応援です


内山はツアーで戦い、ドバイ予選突破してベスト16。添田も昨年秋から調子を上げていて、絶対に活躍してくれるという期待感があります。
マクラクランもバンブリッジとのダブルスでは着実に結果を残しており、貴重なダブルス専としての強い戦力になります。
サポートメンバーの綿貫に出番があるかは分かりませんが、昨年の神戸CH優勝者。そう、このコートを得意としています。急なピンチに、考えられる限りで最強の助っ人がやってきました

 

一方のエクアドルは、意外とハードコートがこなせるメンバー。キトのクレーの印象が強いですが、こてこてのクレーコーターはいません。

しかし力の差は歴然としています。出場メンバー5人の合計でチャレンジャー優勝1回、チャレンジャー準優勝4回。対トップ100成績は6勝41敗。最高でも70位台の選手にしか勝ったことがありません。
デ杯日本チームとの対戦は、ヒダルゴが添田と一度対戦したのみで、その時は添田が勝利。ほぼノーデータで、出てきたものに対して対応していく形になりそうです。

19年中国戦の苦い記憶が新しいですが、あの時はアウェー。今回は地球の反対からの遠征+ハードコートですし、紛れが起きる確率は低くなっているはずです。いやもう政治やらなんやらで紛れは起きすぎてるので、もう本番では起きないと思いたいです。油断は禁物ですが、今の日本チームなら大丈夫だと思います。

しかし!!!!
ファンの応援は必要不可欠です。
現地でなくとも、応援は確実に選手たちに届きます。
テレビの前で赤い服を着てみんなで応援しましょう。

幸いWOWOWが無料中継をやってくれるようです。ありがたい。BSアンテナがある方なら誰でも見れます。
また、開催期間中は有志の方の企画で、プロ選手を招いた配信(ビデオ会議ルーム)が行われます

RemoteCheer - Tennis Tribe.JP


私もここにいる予定です。
松井俊英選手など、多くの選手ゲストも来るなど、当日は相当賑わうことが予想されます。ぜひ一丸となって、日本チームを応援しましょう!

 

 

[12]スウェーデン×チリ(ストックホルム、インドアハード)

スウェーデン
M・イメール
E・イメール
エリクソン
Soderland
リンドステッド

チリ
タビロー
バリオスベラ
Malla
ソト

R1 M・イメール×バリオスベラ
R2 E・イメール×タビロー
R3 エリクソン/リンドステッド×バリオスベラ/タビロー
R4 M・イメール×タビロー
R5 E・イメール×バリオスベラ


スウェーデンはソダーリンが監督就任。難敵チリを迎え入れます。
インドアハードを選択し、南米チリの力を落とす作戦に。
チリのエースガリンは、2月シリーズのMVPと言えそうなほどの素晴らしい活躍。しかし地元チリのサンティアゴの大会でけがのため途中棄権。今回メンバーから外れることになりました。
チリは昨シーズンガリンとジャリーの2枚看板でファイナルまで進みましたが、今年は厳しい状況。かなり厳しい。
また、バリオスベラは五輪ITF枠有資格者。こちらもプレーする可能性があり注目です。

スウェーデンはイメール兄弟がチームの中心。ボルグ、エドバーグらを輩出したかつてのテニス王国が、8年ぶりにデ杯WGグレードに戻ってこれるでしょうか。

 

 

 

その他の国の話題です。
今回からWG1プレーオフ、WG2プレーオフが開かれる開催週になりました。
それぞれ24ヶ国がホームアンドアウェーで対戦し、勝者と敗者を決定します。
詳しい制度については以前説明した記事があるのでそちらをどうぞ。

 

twosetdown.hatenablog.com


すべてやってるときりがないので、有力選手の情報を中心にまとめました。

WG1プレーオフ

ボスニアヘルツェゴビナ南アフリカの好カード。しかしアンダーソンがけがで欠場し、これで4年間の出場0となり五輪の可能性がほぼ絶たれる。

フィンランドの監督にニエミネン!しかも選手兼監督!!!出る気なのか

・スイスはワウリンカが出場せず。五輪へ向けてアピールをしなかったが、五輪には出れるのだろうか…
ノルウェーATPカップとほぼ同じ布陣。来年の予選ラウンドに上がってきそうなチーム。チェックしておきたい。

 

WG2プレーオフ

ブルガリアではディミトロフがメンバー入りせず。これで五輪は絶望視。ATPカップで活躍したクズマノフらがチームを引っ張る。

ポーランドはフルカシュをエントリーせず。ジュクがエース。これでも香港には勝てそうだが…
そしてあのヤノヴィッツがデ杯エントリー!!チャレンジャーでも準優勝と調子は上向き。
監督はダブルスの名手フィルステンベルグ!!!

ギリシャがチチパス、ジョージアがバシラシビリを招集。これで二人ともあと1回足りていなかったデ杯出場をクリアし、五輪出場権を正式に獲得。

 

さあ、長い2日間の始まりです。倒れないように頑張ります。

*1:ただしエクアドルの主要地域は高地なので、思っているよりは暑くないそうです