錦織史上、ファイナルで最も内容のいい快勝(2016ファイナルRR1戦目)
11/14 現地14:00~(日本時間23:00~)
Barclays ATP World Tour Finals
Round Robin Group McEnroe Game1
[5]Kei Nishikori 6-2 6-3 [3]Stan Wawrinka
オンコートインタビューでの錦織の言葉がこの試合のすべてを表していました。
「スタンに時間を与えなかった、ソリッドなテニスを心掛けた」
まさに、狙い通りの作戦がそのままずばりはまっての快勝。これは大きい勝利になりました。
ではなぜ錦織はワウリンカに対し「時間を与えない」ことを心掛けたのか?それはO2アリーナであり、ワウリンカ対策として有効な戦略だったからです。
ワウリンカはなぜテニスの試合に勝てるのか?という原始的な問いを考えた時に、私は即答で「ためて後ろから打つ、それが世界トップクラス」と答えます。
ワウリンカは代名詞のシングルバックハンドに加え、フォアハンドにも威力があります。
しかしそれはしっかりと打点に入り、十分な体勢で貯めを作って打つことで初めて現れます。
錦織が時間を与えないと表現したのはそこで、要するに打たせなければいい。そのためにはどうするか。自分がボールを前で捉え、ワウリンカに考える時間と足を止める時間を与えない。
それはまさに、2年前の覚醒期のテニスでした。
そしてそれをO2アリーナに2年ぶりに錦織は持ってきました。
もう一つワウリンカ対策としてキーになるのはバックハンドです。貯めて打たれなくても単発で威力のあるボールは打てます。
ここで影響したのが、今回のO2アリーナのサーフェスでした。
2015年のベルディヒ戦で書いているように、元来O2アリーナは低速かつあまりバウンドしないサーフェスでした。
この時スライスショットの重要性を解説しています。
実はジョコビッチ戦の地点で私は気づいていました。
錦織がスライスでイーブンのラリーに戻していたのは何もベルディヒ戦が最初ではありません。
パリでは見えなかった(ほとんど見れてないが)O2アリーナに対応したテニスが機能したのです。
(中略)
ボレー、アプローチが甘すぎでした。O2アリーナは減速しやすいサーフェスなので、叩き付けるなら思いっきり打たないと返されてしまいます。
あれで錦織のほうが歯車がおかしくなった感じでした。
しかしどうでしょう、今日のラリーはとても速く、またお互いに前で打ちあい激しい内容でした。
全く同じ会場とは思えない内容でした。
そしてそれは昨日から続いていました。
ジョコビッチ×ティエム戦を見ていた当時の実況です。
コートかなり速く感じるバブは打点に入りづらくなるから不利と見るラオもサーブ返された場合不利(ただしサーブは有利)— twosetdown (@twosetdown) 2016年11月13日
バブ戦の見立ては昨日の試合を見てだいぶ変わった。従来のO2で効いていた戦法はあまり意味がなさそう。早め跳ねるサーフェスというあまり慣れてない環境に対し効果的な戦法がカギになる。— twosetdown (@twosetdown) 2016年11月14日
すでにこの地点で予想していました。錦織が自分のテニスをできれば勝てるということを。
そしてワウリンカがO2で6勝6敗といい成績で来ている(負けたのはすべてBIG4ばかりで仕方ない、他は全部勝ってる)のにもこのO2の減速し、打ち頃の打点に入りやすいワウリンカ向きのサーフェスというのが少なからず効いていたのでは?と思っていました。
つまり今回条件はかなり錦織に向いていました。
加えて全米も第1セットは寄せ付けず取っていましたし、かなり以前に比べてワウリンカに勝つ方法はしっかりと描けるようになってきました。
試合は序盤からワウリンカがいきなりスロースタート。しかし錦織もリターンミスしてお付き合い。その後序盤は動きがありませんでした。
ワウリンカは簡単なミスを重ね、特にセカンドサーブからほとんど攻撃できず、下がってリターンしているにもかかわらずバックアウトしてしまうなど精彩を欠いていました。
対して錦織はストローク戦こそ主導権を握れているものの、アグレッシブさが裏目に出るミスが少し出たのと、とにかく1stサーブの入りが悪く、固まって6連続1st失敗といった感じで、BP0で終わったのが不思議なくらいサーブに安定感はありませんでした。
ワウリンカはセカンドサーブになると苦しく、また深いコースに速いボールを集められ続け、なかなか自分の間合いでボールを打つことができずフラストレーションをためます。
そしてあっという間に1セット目を落とすと、2セット目は錦織の飛びついたリターンをワウリンカがウォッチミスしてブレークを献上。その後も勢いを取り戻すことができず、眠ったままのワウリンカを錦織がわずか67分で料理しました。
ワウリンカは膝にテーピングがあり、「アイアン・スタン」とはほど遠い状態。常に何があってもおかしくない気持ちで私は見ていましたが、現実問題としてクラッチできるエネルギーはなかったように思います。
マッケンローグループは非常にタフで、チリッチマレーの内容次第ではワウリンカ3連敗もありうるというような内容でした。
これで年末3位争いは混とんとしてきました。
5250ラオニッチ
5115ワウリンカ
4905錦織圭
ラオニッチに勢いがあり、今後も勝ち星を重ねそうなのでかなり有利ですがまだわかりません。
錦織は、優勝するとかぎりなく3位に近づきます(ラオニッチ決勝進出の場合無理なパターンあり)。
いずれにしてもRR換算ではラオニッチワウリンカと2勝差。次の勝利もなんとかもぎ取りたいところです。
ただ、初戦をこれだけの快勝で終え、体力消費も少なく、テニスの内容もいいところが多く、今のところは問題なしです。
次戦はチリッチとマレーの勝者になると思われます。日本のテレビに配慮して次も23時かな(2014年はそうだった)。
何やらやってくれそうな、そんな予感がします。
準決勝進出に向けても、2位通過候補のワウリンカをセット0-2、さらに大量のゲーム差をつけました。
1-2で三つ巴になっても、拾われる可能性が高くなりました。
後は次戦を待つだけです。すでに私の中では勝つイメージを持っています。今年のO2アリーナだからこそ、勝つ方法です。
【ドロー解説】2016ツアーファイナルズの展望
こんばんは。
いよいよ日付が変わって今日日曜日から、テニスのお祭り、バークレイズ・ATPワールドツアーファイナルズが開幕します!
詳細な大会フォーマットについては過去の記事を参考にしてください。
2014プレビュー
2015プレビュー
最終戦はポイントの稼げる大会ですが、それ以前に「テニスのお祭り」です。
上位8人/チームしか出場できず、毎試合レベルの高い試合が1週間で単複合わせて30試合見れるという大会です。
今シーズンはいろいろと不安視されるところも多いですが、まずは1年間どんな時期も戦い抜いてきた選出選手と、惜しくも敗れてしまった選手に敬意を表してから始めたいと思います。
会場のO2アリーナは今年で8年目。そろそろ他都市への移動も考えられるところですが、今のところそういった動きは見られていません。
収容人数、試合コートは1つ、照明や各種電光掲示板付きととにかく環境が特殊。まずはドロー解説に入る前に09年以降のファイナル(=O2アリーナ)での成績をまとめたいと思います。
1.マレー 8-10 4強×2、RR3位×3、RR途中棄権×1
2.ジョコビッチ 24-6 優勝×4、4強×1、RR3位×2
3.ワウリンカ 6-6 4強×3
4.ラオニッチ 0-2 RR途中棄権
5.錦織圭 3-4 4強、RR3位×1
6.モンフィス 初出場
7.チリッチ 0-3 RR4位×1
8.ティエム 初出場
※RRはラウンドロビン(予選リーグ)のこと
O2になってからのこの7年間、BIG4支配の時代が続いている中、実はファイナルに限ってはジョコビッチ優勝4回、フェデラー優勝2回、ダビデンコ優勝1回となっていて、BIG4別に比較すると
ジョコビッチ→優勝4回(上海時代に優勝+1)
フェデラー→優勝2回準優勝3回(上海時代に優勝+2、準優勝+1、ヒューストン時代に優勝+2)
ナダル→準優勝2回
マレー→決勝進出なし
という成績になっています。
O2アリーナを得意としているのは、インドアが得意なジョコビッチ、フェデラーの2名。
対して錦織にインドア2敗(全米は途中から屋根つきでインドア相当)したのが象徴的なマレーは、地元大会でありながら決勝進出すらありません。
さらにナダルはシーズン終盤けがで欠場したり調子を落としていることが多く、(本人比で)インドアシーズンは苦手。
ここ4年中3年がジョコビッチ×フェデラーの決勝カードでした。
今大会は必ず
・O2アリーナ初勝利(レンドルグループから誰か確実に)
・初の準決勝進出
・初の決勝進出
が出る大会です。
例年の固定メンバーが残念ながら外れてしまったことで、結果が興味深い大会になりそうです。
マッケンローグループ(A組)
[1]マレー
[3]ワウリンカ
[5]錦織圭
[7]チリッチ
すでにメディア等でも死の組という表現が出回っていますが、100人に聞いても100人がそう答える、ドロー上起きる可能性のあった最も最悪の厳しいブロックです。
インドア補正もあり、錦織にはチャンスがあります。
メンフィス4連覇もそうですが、既出の通りこのO2アリーナでマレー勝利と、O2のインドア環境にも慣れていて(3年目)、まだファイナルで敗れたのは先ほどO2大得意としたジョコビッチ、フェデラーのみです。
この間に錦織はベルディヒ、フェレール、マレーに勝って通算3勝4敗。
5割切っていると悪い印象を受けますが、ファイナルの仕組み上、2勝1敗RR勝ち抜け→準決勝敗退でも2勝2敗の5割。
つまり決勝付近まで行かないと勝率が5割を超えることはなく、非常に難しい中3勝4敗は健闘しています。
その通算勝率が5割の[3]ワウリンカは読めません。
過去毎年予想を裏切る好成績を挙げています。
ワウリンカの過去3年間のアジアシリーズ以降を見ると
13 (全米SF→)デ杯PO1勝→クアラルンプールSF→北京2R→上海QF→バーゼル1R→パリQF(500p)
14 (全米QF→)デ杯SF1勝→楽天1R→上海2R(初戦負け)→バーゼル1R→パリ3R(170p)
15 (全米SF→)デ杯PO1勝→メズQF棄権→楽天優勝→上海8強→バーゼル1R→パリSF(1090p)
16 (全米優勝→)サンクトペテルブルグ準優勝→楽天欠場→上海3R→バーゼル8強→パリ2R(初戦負け)(340p)
と、15年を除けばおおよそ低迷した成績であることがわかります。
このデータからRR敗退予想にした年もありましたが、13~15年ではすべてRRで2勝1敗。ファイナルにきっちり合わせてきています。
やはり錦織としては初戦のワウリンカ戦が大きな山場になると思われます。
サッカーW杯でも予選リーグは初戦が大事と言われますが、こう考えても初戦はかなり重要です。RRを通過できるかはほぼここで決まるという見通しを立てています。
[1]マレーにとっても厳しいブロックです。今シーズン絶好調の後半戦で敗れたばかりの錦織、チリッチに加えて、通算成績が五分に近い(マレーから見て9勝7敗)ワウリンカとの対戦です。初の年間1位に向けてはおそらく決勝進出が最低条件。ジョコビッチがRR敗退すれば別ですが、その確率が薄いことを考えれば自力で勝ち上がるしかありません。
[7]チリッチはバーゼルからずっと調子がよく、今大会のダークホースであることは間違いないでしょう。
ただ2年前に、インドア得意だしジョコビッチ以外がベルディヒワウリンカなら勝って4強に行くんじゃないか?と思って予想を立てたらあっさり裏切られ、まさかの0-3(獲得セット0)で敗戦したことも考えると、なかなか難しいのではと思います。
またデ杯決勝も控えており、チリッチにとってファイナルに割ける体力・精神面がどれくらい残っているか。ここに依存すると思います。
正直このグループは読みにくいのですが、おおよそ次の要素に依存します。
・マレーの疲労度
・マレーのO2適性度(ネガティブ面として機能するか否か)
・ワウリンカの疲労度(試合はこなしていないが、全米後から疲れを口にすることが多い)
・ワウリンカのO2適性度(ポジティブ面として機能するか否か)
・錦織の疲労度
・チリッチの疲労度(パリのSFではさすがにフィジカルが落ちていた)
・チリッチのモチベーション
これのどれがどれくらい効くかはやってみないとわかりません。
正直どんな結果になってもおかしくありません。
ここ2年しかテニスを見ていない人は、ファイナルの結果はほぼ上位から順当にという感じになっていてある程度予想可能というイメージがありますが、過去にはダビデンコの優勝や、ナルバンディアンが決勝フェデラーに2セットダウンから逆転勝ち(05年当時決勝は5セットマッチ)、などシーズンの流れからは予想できない波乱も多い大会です。
今回マレーのRR敗退もゼロではないと思います。それほど厳しいです。
レンドルグループ(B組)
[2]ジョコビッチ
[4]ラオニッチ
[6]モンフィス
[8]ティエム
[2]ジョコビッチはこのグループ唯一のWTF勝利経験あり、さらにほかの3人に対して通算全勝。
楽勝でRR通過…と言いたいところですが、今は不安しかありません。
好調とはいえチリッチに、そして上海ではアグーに負けており、全米では2つの棄権というドロー運で決勝へ。
ここのところのジョコビッチは元気がありません。
また2011年には序盤戦快調に飛ばし、全仏SFまで開幕から無敗という記録を作ったものの、終盤はけがに苦しんでWTFでは2敗。年間6敗で終えたジョコビッチでしたが、バーゼルでの錦織への敗戦も含め終盤は散々でした。
私にとって重なるのはこの2011年です。
ジョコビッチ盤石には変わりありませんが、相手を下回ればあっさり負けるのがテニスでありファイナル。3勝0敗も本当に実現できるかは不透明です。
ジョコビッチが3勝0敗だったと仮定すると2位争いは混沌とします。
[4]ラオニッチが有力と見ています。けがからの復帰を心配する声を聞きますが、
・当初の回復予定日数より早くコートに出て練習をしている
・ファイナルの選手関係の仕事はすべてこなしている
・そもそも軽いけががあったとはいえ、マレーとの試合の前日にはツォンガを2セットで圧倒していた
こういった事実からも、ラオニッチ有利と見ます。
しかしあまりにも足が動かなければ話は別です。
[6]モンフィスはレンドルグループの台風の目という予想です。
会場がお祭り騒ぎになり、演出も豪華なファイナルでモンフィスが躍動しないわけがありません。
いつも以上に会場を盛り上げるプレーを見せてくれるものと期待しています。
[8]ティエムは初出場ということもあり、また最近のプレーレベルから考えると厳しそうです。
予想
非常に難しいですが
マッケンローグループ
1.マレー(3-0)
2.錦織(2-1)
3.ワウリンカ(1-2)
4.チリッチ(0-3)
レンドルグループ
1.ジョコビッチ(3-0)
2.ラオニッチ(2-1)
3.モンフィス(1-2)
4.ティエム(0-3)
準決勝
ジョコビッチ、マレーが勝利
マレーが優勝
かなり安パイを切っているのはいつものTSDさんだから。
錦織×ワウリンカがまず最大のカギとなるマッケンローグループ。おそらくここで勝ったほうが2位通過でしょう。
ただもし第2戦で錦織がマレーに勝ち、ワウリンカがチリッチに勝つとなんとその地点で錦織のグループ1位が決まります(なんでそうなるかは説明略、ルールで決まっています)。
錦織陣営としては、まずここを目指したいところです。
というのも年末4位、3位の挑戦にはSF進出だけではなく、SFで勝つことが条件になってきます。
陣営としては、もしファイナルのターゲットを3位もしくは4位獲得にするのであれば、RR3勝してあとはワウリンカラオニッチの結果待ちにするか、2連勝で1位通過を確定させ、3戦目の実質デッドラバーとなるチリッチ戦をやや流してSFに備えるという2パターンを想定するべきです。
いずれにしても2連勝スタートを切ると相当見えてきます。というのもRR1位を確定させた瞬間、高確率でジョコビッチとの対戦を避け、ラオニッチorモンフィスorティエムの2位通過選手との対戦が決まるからです。
マッケンローグループは日程的に不利となり、RR3戦目と準決勝の間にインターバルがないので、RR3戦目をどう捉えるかは非常に重要です。
マレーとジョコビッチの1位争いですが、私はマレーがグループを通過さえすれば問題なく行くと思っています。
そして今のマレーなら、ジョコビッチにテニスでしっかり勝てると信じています。ジョコビッチに準決勝or決勝で勝って、誰もが納得する形で1位を決めてほしいです。もちろんそこでジョコビッチが勝てば高確率でジョコビッチが1位なのでそれでもOK。
とにかく、準決勝以降でぜひこの二人の対戦を見たいです。
大会は日曜からのスタートです。8日間、あっという間です。
レポートは限りなく厳しいことを先に断わっておきますが、見れたら見たいと思いますし書きたいと思います。それでは。
チャンスは逃したが、立派な準優勝(2016バーゼル)
デルポトロ戦はいい内容でした。トップ10同士のぶつかり合いというテニスでした。
現在のところ、復帰以前の全盛期よりもウィークポイントとなっているバックハンドを主体にラリーを組み立てる、というのが対デルポトロ戦の基本戦略になると言っていいでしょう。
デルポ戦のポイント・バックハンドへの配球・サーブを読む基本的には全豪ツォンガ戦と同じ戦略でいいと思うなおフォアが比ではない速さ・重さなので要注意— twosetdown (@twosetdown) 2016年10月28日
バックハンドへの配球は、スローサーフェスなのを無視してスライス多様で低弾道から浮いたバックの返球を叩いて仕掛けるあるいは単にアングルを突きたい最後にはオープンスペースのフォアサイドに打ち込むのだが、厄介なのは中途半端なボールを送るとカウンターのランニングフォアで一撃される— twosetdown (@twosetdown) 2016年10月28日
これは試合前の私の率直な展望ですが、錦織はこういったバック攻めが得意です。その具体例が今年の全豪のツォンガ戦であったり、さらにスピンでフォア逆クロスを打ちまくったクレーでのガスケ戦だったりします。
これをデルポトロ相手にやる。ただし高い精度が必要です。
そんなことはデルポトロも理解しているわけで、必ず回り込みのフォアハンドを打ってきます。
ですからたまにはフォア側に走らせることも必要。しかしこれも甘いとランニングフォアを打たれ、決められます。
簡単に書いてますがランニングフォアは精度が悪くなり、球足も遅くなるのが普通ですがデルポトロはそうならない。
この一撃必殺のフォアハンドをどんなラリー展開からでも打つことができ、大柄なのにフットワークもよく、かつサーブも速い。
どこから手をつけていいかわからない総合力の高さ+一撃必殺のパワーショットを持っているところがデルポトロの魅力であり、だからこそ全盛期BIG4と幾多の好勝負を繰り広げてきたゆえんでもあります。
このデルポトロに対し私が先述した作戦を忠実に実行したというのがこの日の錦織。
バックハンドクロスで角度をつけ外に追い出し、返ってきたクロスのボールを特に回り込みのフォアDTLで崩すパターン。ランニングフォアを打てないほど厳しいコースを突くことでデルポトロの攻めを封じ込めました。
タイトだった1セット目を何とかもぎ取ると、第2セットはデルポトロに疲れが見えます。
フォアハンドに精度がなくなり、苦しみます。
一方錦織にもUEがやや目立ち、お互いにBPを迎える展開となりますが、錦織がBPでいいプレーを見せ踏ん張ります。
そのままサービスブレークされることなく勝利。高いレベルでの試合をきっちり勝ちきり、4強に進出しました。
これをやってほしいというプレーをそのまま実現していました。
そうすれば勝利の可能性は高いと見ていましたが、プレーレベルを落とさずにそれを最後までやり切りました。
これで今シーズンはガスケに続いて、長らく未勝利だった選手からの初勝利を達成。
現トップ50では、未対戦の選手とソウザ以外からはすべて勝利を挙げたことになりました。
未対戦選手の中に実力者シモンがいることがちょっと驚きですが。そろそろ当たってほしいです。来年のデ杯であるといいんですが。
準決勝のミュラー戦は苦しみました。
ミュラーはベテランですが、左のビッグサーバーとサーブ&ボレーヤーという、現在では希少価値の高いプレースタイルでツアーを戦っています。
私はこの試合、2つの試合が脳裏によみがえりました。
1つは15IWのロペス戦、そしてもう1つは13ウィンブルドンのセッピ戦です。
この試合の2つに共通する負けた原因は何か?それはずばりスライスショットです。
ロペスは現在の上位選手の中では最もミュラーにタイプが近い選手であり、
・左利き
・サーブよい
・ネットプレーができる
・バックハンドでスライスを多用する
といった感じで、主要なプレーにだぶるところが多い。
錦織が難なく切り抜ける可能性もありましたが捕まってしまいました。
そしてもう一つ。実は決勝でのゲーム内容について考えるにあたって重要なのが13ウィンブルドンセッピ戦です。
この試合、そしてミュラー戦ともに錦織はスライスを多く拾いました。
セッピ戦は錦織のキャリア史上いまだ2度しかないセットカウント2-1から逆転負けした試合です。
なぜ敗れたのか?そのキーとなるのがスライスショットです。
スライスショットはバウンド後の跳ね返りが低く、滑るボールです。
そのため足腰をぐっと落として拾う必要があり、特に芝コートでは滑りやすいサーフェスとの相性に加え、フットワークも難しく、足腰に負担がかかりやすいのです。
錦織はのちにペールにあの全米に敗れるまで、先に2セット取れば必ず5セットマッチで勝っていました。その唯一の取りこぼしとなったこの試合、終盤の錦織は踏ん張りが利かずミスを連発しました。
ミュラー戦ではミュラーの疲れや守備範囲の減少などもあって、タイブレークを取ってから流れを変えることができましたが、決勝ではそうはならなかったということです。
ミュラー戦について少し振り返っておくと、MPでのロブが印象的ですがやはりサーブです。要所の苦しい場面でサーブが来たことでフリーポイントを稼ぐことができました。
これはその前のデルポトロ戦やチリッチ戦の多くの場面に対しても言えることで、今大会サービスブレーク4回で済み、この間のブレークポイントセーブ率は22/26=85%。まるで1stサーブのポイント獲得率みたいです。
しかもこのセーブ内容がエースやサービスポイントによるものが多いこともポイント。
以前ブレークポイントは非対称という話をしたときに、アドサイドの重要性について述べました。
私の印象論ですが(たぶんあってるはず)、このBPでのセーブに大きく貢献したのがアドサイドでのワイドへのフラットサーブです。これが隅にぴたっと決まったことが大きかったです。
決勝のチリッチ戦ですがまずはチリッチを讃えたい。
あれだけのハイレベルなプレーをされてしまえばお手上げです。見事でした。
500の決勝にここまで集中してくるのかというくらい声も出していましたし、勢いを感じました。
対する錦織は2セット目でBPのSPを取りきれないなど、クラッチできませんでした。
終盤さすがにチリッチも落ちてきていたのですが、このパターンで逆転に成功した15ワシントン、15東京の再現とは行きませんでした。
私の勝手な推測ですが、チリッチは対錦織戦の時、序盤から飛ばすタイプのように思います。
特に最初から押し切って勝った14全米決勝をチリッチはいいイメージとして持っていて、それをやってきているように感じます。
実はその対戦以降、すべての対戦でチリッチは1セット目を取っています。5試合連続です(棄権勝ちしたウィンブルドンも一応含む)。
その前は錦織に1セット目を取られることが3試合続き、すべて敗れています。
事実この5試合を振り返ると、評価不能のウィンブルドンを除けば、4試合ともチリッチの1セット目の内容は非常によかった。基本的には1セット目から惰性でプレーして、落ちどころを錦織が仕留めたのが15ワシントン、東京の2試合でした。
15ワシントンSFレビュー
15東京QFレビュー(感想のみ)
その落ちどころがきたのが2セット目5-4のSPでしたが、これは錦織が仕留め損ねました。
すべて錦織の平易なUEで終わってしまいました。組み立てるでもなく、なんということはないラリーのボールでのミスです。
この地点でチリッチは一定確率でミスをする状態でさらにセカンドサーブを連発。BPの3本もすべてラリーになりましたが取れませんでした。
これと似た構造を感じたのが全米ワウリンカ戦。BPのチャンスが来ていることはわかっているけど得点できない。
あの時も疲労でした。だからこそ今回は疲労の影響を考えてみたかったのです。
MPのDFについては直前のタイムバイオレーションを気にしているという意見もありましたが、私は全く気にしていませんでした。むしろ試合後そんな論調が多くてびっくりしています。
私は単純にタイブレークの地点でチリッチが2本セカンドを叩いていずれも決まっていたので、回避するためにいいセカンドを打とうとしてDFしてしまったという風に感じました。
この日の錦織のセカンドサーブは数年前に叩かれていたころのセカンドサーブでした。非常に浅く、甘く入ったボールは逆にチリッチの高い打点の打ち所に行きました。体重を乗せて簡単に強打されました。
今シーズン幾多のピンチを救ってきた深いセカンドサーブが出ず、
・BPでクラッチできない
・平易なストロークでネット(調子悪いとこのパターンが多いように感じます、去年終盤とか)
・セカンドサーブが浅く叩かれる
とまるで少し前の錦織を見ているようでした。
何か試合後は錦織の限界論など、500の決勝でGS覇者に負けたというありふれた事実とはかけ離れた議論も出ていますが私は全く心配していません。
いろいろあってのトーナメントです。すべて優勝できるわけではないですし復帰戦ですから上出来です。
大会序盤危ない場面も多数ありながら、年末4位挑戦権を十分に得た状態でパリに入っていますから問題なしです。
私もQFを一つの山としました。今大会の目標はテニスの感覚を取り戻しデルポトロにあわよくば勝利することでした。高いハードルはデルポトロに勝ったからこそ出始めた話。一つ山を越えたからといって勝てるわけではない、そんなにテニスは甘くないです。
パリではラオニッチより1勝多く勝つことがツアーファイナルズ4シード獲得の条件になります。
最もわかりやすい例としては、今回久しぶりに錦織とラオニッチは同じ山にいるので、QFでの直接対決で勝つことです。
ただ錦織の疲労と今のラオニッチの状態では、直接対決が起こる確率はかなり低そう。決着はもう少し前と見ています。
ラオニッチは現在好調のカレノ=ブスタが上がってきた場合(執筆地点では未定でしたが更新現在彼らの試合が始まります)初戦、錦織は体力次第ですがウィーン決勝進出のツォンガと当たる3回戦が山になります。
ポイント差以上にラオニッチ有利です。錦織はこの疲労を抱えた状態で初戦のトロイツキorマナリノ(トロイツキに決まりました)に勝つことは最低条件。さらにいくつかの勝利が必要です。
ただこれもデルポトロに敗れていれば4強が必須条件でした。特にミュラーに勝ったゲームは大きく、疲労はためたとはいえまだチャンスがあります。
パリは面白い大会になりそうです。
・マレーの1位獲得はあるか?
・ジョコビッチがインドアで復活できるか?
・レギュラーシーズン4位争い、ラオニッチと錦織の争い
・残り2枠をめぐるファイナル争い
・フェデラーが全豪17シードに落ちるかどうか?(現在16番手相当、基本他選手の結果次第)
などです。
例年以上に重たい大会になりそうです。
モンフィスのスキップは残念ですしファイナルが心配されますが、それを補ってなお余りあるほど話題に事欠かない大会です。
水曜に上記の見所についてもう少し触れられたらと思います(願望)。
バーゼル1回戦の感想など
バーゼル1回戦を録画で見ました。
なんだかんだ楽天OPは見れていないので、生で見に行ったデ杯ダブルス以来の試合でした。
内容としては序盤は低調でした。
ラジョビッチのいいプレーもありましたが、錦織は終始ボールを強くヒットすることに集中していたように感じました。
内容よりも、実戦が久しぶりということで打感を取り戻すことを重視した印象でした。
こういうときは感覚のずれによるぎりぎりのアウトが増えます。惜しいショットがあってもラインを割ることが多く、錦織のミス多めで進行します。
ただ徐々にアジャストしたことに加え、ラジョビッチの1stサーブの確率が全体的に悪く、それがセット終盤の押していく流れにつながったと思います。
1本目のSPはサーブでしのがれましたが、その次のポイントがこの試合のハイライトでした。ラジョビッチがコースを突く厳しいショットを打つも、錦織がディフェンスでうまくかわし、たった1球ラジョビッチが厳しく返せなかったところを突いて攻守転換。ディフェンスからのポイントで流れをつかんでそのままセットを取ります。
正直内容はほぼ五分という状況から軽く1セットを取り、これで勝負ありでした。その後は地力の差が出ました。快勝です。
いつものことですが復帰戦は内容より勝利。その中で快勝し、かつ感覚も取り戻せそうな内容でしたから満点と言っていいでしょう。今のところ心配はありません。
今大会は、QFでゴフィンかデルポトロと厳しいドローになっているので、勝ち上がりは運の要素も入ってくると思います。気楽に見たいと思います。
そのほかのことについてです。
まずは今シーズン終了となった選手の話題から。
ナダルは05年以降では最悪のシーズンになってしまいました。結果的に全仏を棄権することになった手首の怪我が治らず、来シーズンに向け早めの撤退となりました。
五輪に出ていなければ…というところですが、ロンドン五輪を怪我で欠場したナダルにとって2度目は考えられなかったでしょう。ロンドンでできなかった旗手も務め、ダブルスでは親友ロペスと組んで金メダル。
一つ一つの判断は決して責められるものではなかっただけに、今は早期回復を祈るしかありません。
これにより、残り3枠がモンフィス・ナダル・ティエムに確定かに見えたファイナル争いは混沌としてきました。
モンフィス・ティエムの通過は近くなりましたが、その分8枠目が熾烈です。
8枠目についてはベルディヒ有利で進んでいましたが昨日の敗戦で一気にわからなくなりました。
決着はパリの木曜日くらいになりそうです。
そしてキリオスは処分という形で今シーズン終了です。
楽天優勝後の上海で疲れがたまっていたからか無気力プレー。
これに対しついにATPが動きました。
昨年カナダMSでのワウリンカに対する試合中の発言により厳重注意と執行猶予処分になったキリオスでしたが、二度目はありませんでした。執行猶予なしの出場停止処分となりました。
この処分は
・原則8週(先週~11月末のチャレンジャーの大会までの6週間+全豪2週)の出場停止
・ただしATPの用意するカリキュラム(セラピストの処方など)をこなせば3週に軽減
となります。
この8週、実質キリオスが出場しないであろう11月チャレンジャーを含んでおり、重い処分に見えて実は軽い処分です。
さらに言えばキリオスは1月はエキシビションのホップマンカップに出場することが決まっており、1月の出場停止もあまり影響はありません。
ATPポイントを稼げないと言えばそれまでですが、ATPポイントの剥奪がなく、重い処分のように見えて過疎週を加えることによる軽い処分、さらに普通はないであろうATP会長からのオフィシャルコメントもついており、これはATPのキリオスに対する期待の表れだと思っています。
キリオスは以前「テニスは偏見だらけの終わったスポーツ」という趣旨の発言をしています。
今回の処分を自分に対する偏見と思わず、むしろチャンスであると思ってほしいです。
さらに今シーズンの若手躍進の象徴、ズベレフはストックホルムでシーズンを終えました。
ただこれは規定路線で、昨年もこの時期にシーズンを終了しており、肉体改造に取り組むようです。
来シーズンは19歳~20歳のシーズンでのトップ10入りという偉業への挑戦も待っています。楽しみです。
上海マスターズはマレーの優勝で終わりました。
この大会のハイライトは準決勝でしょう。ジョコビッチとバウティスタ=アグーの対戦。
この試合、アグーのフラットショットがよく決まりました。先に仕掛け、ジョコビッチを崩していきます。
不思議だったところと言われればすべてかもしれません。スタッツではほぼ差はなく、ジョコビッチがストレート負けするようなスタッツには見えませんでした。
さらにアグーがSFMを落とした後、ジョコビッチは簡単に自分のサービスで0-30にするなど、挙げればきりがないほど不思議なことがたくさん起きました。
メンタルの切り替えもうまいジョコビッチですが、発散した後の表情やプレーにもどこか不自然な空気を感じました。
いつものジョコビッチがそこにはありませんでした。普通にテニスをして、普通に負けてしまった…上位勢にいいテニスをされて負けたのとは違う、ぽかっと穴があいたような感覚でした。
全仏優勝以降のジョコビッチは本人のコメントからもモチベーション不足という趣旨の言葉が出ており、どこか変な感じでしたが、そのすべてを感じさせる試合でした。
これから得意のインドアシリーズに入ります。復調と3年連続の年間1位あるか。王者の正念場です。
一方その1位を狙ってマレーは好調を維持しています。
モンテカルロ以降全米以外ではすべての大会で準決勝以上。負けた相手もGS優勝者かそのクラスの上位選手ばかりです。
この勢いが続けばマレー悲願の1位はすぐそこです。最短でパリでの1位達成があり、年間1位はファイナルズまでの自力全勝で可能です。
マレーにとってはまだ決勝進出すらない鬼門ツアーファイナルズで勝てるか。本当の戦いがここから始まります。
テニスシーズンもあと5週間となりました。
バーゼル/ウィーン、パリ、ツアーファイナルズ、デ杯決勝と続きますが、話題は尽きません。
楽天など、最近の状況について
まず最初に確認しておきたいことがあります。
楽天OP開幕前に、錦織の出場について懐疑的だったり、怪我の心配があるから出るのはやめようといった意見があったでしょうか?
答えはおそらく99%以上の人がノーだったと思います。
怪我についての議論はあると思いますが、後述する理由もあり、私は今回の怪我については「偶発的な怪我」という感覚です。
本人もコメントを残していますが、楽天に入った地点では「コンディションは万全だった」とのこと。
今回の棄権は今までの錦織にはあまりなかった不思議な怪我であることを切り分けて、怪我についての議論は行うべきです。
と同時に、議論を避けるようで申し訳ないですが、私も捉え切れていないところが多すぎて、また回復期間が予想がつかないこともあって、コメントでスポーツ医学に詳しい方からコメントをいいただいてもたぶんあまり実のある話はできないかなあと思います。
大会についてはいろいろと大変なことが起きていますが、とりあえず無事に終わりそうでなによりです。
アジアシリーズは今年に限らず選手が疲れた状態でやってくることもあり、ツアーの抜本的な改革がない限り、今年のような棄権ラッシュはまた起きることもあるでしょう。
そしてエントリーリストが過密になるので(今年は特にその影響が強い)、初戦からシード選手も30位付近の選手と対戦することになり、シードダウンも起きやすい環境です。
そんな中、今大会は出場選手の層が厚く、錦織、ベルディヒのシードダウンこそあったものの、ベスト4はモンフィス、キリオス、チリッチ、ゴフィンと500準決勝にふさわしいメンバーです。
きっちりと大会が盛り上がったのは錦織以外の選手招待が例年にも増して成功したことの現れだと思います。
ワウリンカ、デルポトロが欠場し、錦織、ベルディヒが早期敗退してもこの層の厚さ。
さらにお客さんもそれに応えたと思います。錦織のいない準決勝であそこまで席が埋まっていたのは衝撃でした。
つい数年前は仕事帰りでふらっと寄れるような有明でしたが、GS以外の大会としては異例なほど埋まっていました。
マスターズのセンターコートですら、平日はかなりがらがらなこともありますから…
とにかく、今日の決勝で初優勝が決まります。ゴフィン、キリオスのどちらになっても将来的に見ればトップ10に必ず入ってくる選手。これまでの歴代優勝者にも引けをとらないと思います。
あと数時間ですが、無事に閉幕することを祈っております。
さて、錦織についてはとりあえず来週の4位復帰が決まりました。
また、ツアーファイナルズ進出は上海欠場でもなお決定的で、あと1週間のうちに通過のアナウンスが出ると予想されます。
ただ短期的な結果に一喜一憂するというよりは、まずは全豪第4シードに向けて1つ1つ勝っていく。そこに尽きると思います。
これはラオニッチについても同様で、今回ナダルが北京で稼げなかったこともあり、4位争いについてはややリードをとる形になりました。
ただし、短期的な結果に一喜一憂することが無駄だとしたのは、おそらく4位争い及び年間順位はすべてツアーファイナルズの結果で決まると思っているからです。
1勝200p、最大1500p入りますから、それまでの結果はあまり影響ありません。ここで上位に進出した選手が年間順位でも上位に来ます。それほど接近しています。
上海のドローが出ていますが、時間があれば解説ということで。
乱文なのでお分かりだと思いますが、とてもとても時間がありません…
そんな中でも、ブログしか見ていない人もたくさんいるわけですから、こういった形でも適度に更新していきたいです。
【ドロー解説】2016楽天/北京の展望
こんにちは。
更新がかなり厳しくなってきています。すいません。
あと半年くらいはこのような状況が続きます。
テニス観戦的に忙しい時期と更新がしやすい時期がかぶることを祈るしかありません。ほぼ運頼みという状況です。
たぶん短い文章だったらもう少し更新できると思うのですが、それでも更新していくべきか、難しい判断を強いられています。
さて楽天と北京のドローが出ました。
ドローリリース前に両大会に大きな発表がありました。それぞれ大会のディフェンディングチャンピオン、ワウリンカとジョコビッチの欠場が発表されました。
ワウリンカについては全米で優勝し、優勝後の記者会見ではかなり疲れていたとしながらも予定通り翌々週のサンクトペテルブルグ(ATP250)に出場。しかし決勝でズベレフに敗れました。
この後の記者会見で「疲れがたまっている、残りの出場大会を見直したい」として、相当疲れていることを公言していました。
このうち、MS2大会を飛ばすわけにはいかず、また今年はフェデラーが欠場することにより地元バーゼルも休みにくい状況。そのため、楽天が欠場する大会になってしまったということです。
決して楽天運営は悪くありません。いろいろなことが複合的に重なってしまった結果の不運でした。
出場を楽しみにしていましたが、これはワウリンカを尊重したいです。
全米で優勝した後サンクトペテルブルグに出ることにはやや疑問がありますが
・同一週にガールフレンドのベキッチが出ていた
・エントリー地点ではレースランキングは9位ベルディヒと290点差、全米優勝してなければまだファイナル争いの渦中にいることが予想される
・ワウリンカは今年メスからサンクトペテルブルグに出場大会を変えたばかりで、疲れを理由に断りにくかった
などいろいろと理由があります(「全米優勝したから」でおそらく許されたとは思いますが…)
一方ジョコビッチはショックでした。シンシナティを欠場した時の理由が手首でしたが、今度は肘のけが。ここに来て満身創痍です。
ジョコビッチは2013年にナダルに1位を取られて以降、14年前半戦で1位奪還してからずっとここまで1位をキープしています。
しかし背後にはマレーが近づいています。
全米の結果でやはりマレーは厳しいという論調が増えましたが、今後ジョコビッチが得意のアジア・欧州インドアシリーズで満足な結果を残せなければ、来年序盤に1位交代の可能性も十分にあります。
レースポイントではマレーに対し約2000pの余裕があるので、WTFまでにきっちり戻せば大丈夫そうですが…
医師からは「状態がよくなるまでプレーしない方がよい」と診断されているとのこと。まずは上海に出れるかどうかが焦点です。
また、これにより北京で無敗記録が続いていたジョコビッチがいなくなったことで、北京でもレース争いの中心にいる選手が500pを取る可能性が高まりました。
一方楽天OPもディフェンディングチャンピオンのワウリンカが欠場しているのですからこの500pも大きい。
当初の見立てよりも、かなり重要な週になってきました。
選手としてはこのあとすぐに上海があることもあって、どう2週間をマネージメントしていくか。特に長く勝ち残った選手は1週目でできる限りゲインしたいところです。
楽天OP
楽天OPは日本で唯一のATPテニストーナメント。過去の優勝者にBIG4などがいる、アジアで最も歴史と伝統のあるトーナメントです。
今年も例年通り32ドロー、8シード、予選勝者4人、WC3人(4枠だが、4枠目は使わないことが多い)の形式で争われます。
[1]錦織圭
クリザン
ソウザ
ベズリー
アンダーソン
(WC)西岡良仁
[5]ゴフィン
[4]チリッチ
ペール
予選勝者
ベルダスコ
(PR)モナコ
フリッツ
予選勝者
[8]ロペス
[6]キリオス
予選勝者
ロベール
予選勝者
グラノジェルス
バグダディス
[3]ベルディヒ
[7]カルロビッチ
デルボニス
(PR)ティプサレビッチ
(WC)ダニエル太郎
シモン
コールシュライバー
(WC)杉田祐一
[2]モンフィス
地元日本の大会で初めて第1シードとなった[1]錦織圭。優勝が期待されるところですが、序盤からタフな相手が続きます。
初戦のアルマグロは3年前にこの楽天OPで敗れた相手。簡単ではありません。
しかしアルマグロが本戦インぎりぎりに入っているからにはやはり理由があります。今シーズンは20勝18敗。やや恣意的ですが今期優勝した1大会を除けば勝率は5割を切ります。
序盤から厳しいですが、やはりアルマグロを乗せないことがカギになってきます。
次戦候補のクリザンも今期ATP500を2勝していますが、それ以外の成績で見ると4勝11敗。けがもあって全くポイントを稼げていません。
QFは現在スランプに入りつつある[5]ゴフィンよりは、ノーシードのアンダーソン、ベズリーのほうが勢いがありそう。どちらも一発がある選手です。
総じて、錦織の序盤戦は錦織自身というよりは相手次第でタフ~イージーまでどんな可能性もありうるという、非常に評価の難しいドローという印象です。内容次第では、まさかの敗戦~5時間程度で3連勝まであると思います。
[4]チリッチは初戦昨年ファイナリストのペールとの対戦。しかし最近の状態を考えるとチリッチがしっかり勝ち上がりそうです。ここもベルダスコ、ロペス、フリッツなど気になる選手がいますが、昨年もQFまできっちり進んでおり、両者大きく取りこぼさなければ、昨年のQF、錦織とチリッチのカードが実現しそうです。
一方初のファイナル進出に向けて第2シードを生かしたい[2]モンフィス。初戦は杉田です。
モンフィスと杉田は今年の全豪で対戦したばかり。この時はモンフィスが大差で勝利していますが、杉田はこのあと一気に力をつけました。今やれば結果はまた違ってくると思います。
モンフィスはその次がタフ。14年楽天OPでベスト4と相性がいいシモンと、実力者コールシュライバー。トップ30常連の2人のどちらかとの対戦となる2Rがキーになってきます。
QFは[7]カルロビッチが濃厚か。ダニエルは楽天OP初勝利がほしいですが、初戦の相手はティプサレビッチ。
ティプサレビッチは久しぶりの日本ですが、残念ながら深センでSF途中棄権。もしかするとダニエルはLLとの対戦になるかもしれません。
有明に久しぶりの登場となった[3]ベルディヒですが、初戦のミュラーはかなり危険な相手です。
2004年には当時10位のナルバンディアン、2015年には12位のアンダーソン、10位のシモンにストレート勝ちで4強です。有明の速いサーフェスにフィットしている選手の一人です。
このタフな初戦を超えると次も14年にフェレールに勝ったグラノジェルスと12年4強のバグダディス。厳しい相手が続きます。
逆転ファイナルへわずかな望みをつなぎたい[6]キリオスはいいドローを引きました。ベルディヒとは何度も対戦しており、いいテニスができれば勝てるチャンスがあります。
優勝予想は難しく、優勝予想が出そうな選手は軒並み序盤で厳しい相手を引いており、例年以上に優勝するのが大変な大会です。
特に錦織の評価は難しく、一応全米後シングルス公式戦なしで休んでいるので本命にしたいですが、序盤の評価が難しいというのが本音です。
モンフィスもATP500を優勝したことがなかったのですがワシントンで勝ったのでそれもなくなった一方で、デ杯outの理由が公式的にはけがなので心配ですし、ベルディヒは調子を上げてきていますが3週連続。チリッチもいい時はいいですがピリッとしないこともあるので、14年のようなシード総崩れから大激戦まで何でもありうるというのが現状です。
とりあえず、地元日本の大会なので、結果に真摯な公正な報道を心掛けてほしいと思います。このラインナップなら、何が起きても私は驚かない、それくらいハイレベルな大会です。
行ける人がうらやましい…
北京
北京五輪の跡地を使って行われるチャイナ・オープンは女子との共催です。
女子はATPでいうとマスターズ格の大会。しかし男子も例年BIG4の招待に成功しており、レベルの高い大会になっています。
今年はジョコビッチに加えツォンガ、イズナーが欠場となっています。
[1]マレー
セッピ
予選勝者
クズネツォフ
ガルシア=ロペス
予選勝者
予選勝者
[7]バウティスタ=アグー
[4]ティエム
A.ズベレフ
ソック
(WC)ジャン
トロイツキ
フォニーニ
クエバス
[5]フェレール
[8]ガスケ
クエリー
カレノ=ブスタ
ペジャ
ジャズーリ
(PR)F.マイヤー
[3]ラオニッチ
[6]プイユ
(WC)ルー
ディミトロフ
ジョンソン
ラモス=ビノラス
予選勝者
ロレンツィ
[2]ナダル
[1]マレーは悲願の年間1位もまた見えてきたので、この大会の結果は非常に重要になってきました。
序盤は予選勝者が多く楽なドローを引いており、デ杯後に軽く足の治療をした影響がなければ難なく超えてくると思います。
[4]ティエムのブロックはティエム次第か。連戦からかプレーレベルも落ちてきていて、成都ではQFでラモスに敗れました。
初戦はサンクトペテルブルグで初優勝したばかりのズベレフ。厳しい相手です。
このブロックはシードの[5]フェレールがあまり状態がよくないため、実力者のクエバス、フォニーニ、トロイツキ、ソックなど横一線の状態です。
一方ボトムハーフは厳しい。[2]ナダルは全米後初のシングルスですが、その敗れた相手[6]プイユとQFで対戦します。
プイユはメスで初優勝と勢いに乗っており、今大会も躍進がありえます。
ナダルは2Rまでは典型的なクレーコーターとの対戦が続きます。ここで調子を上げたいところです。
ファイナル進出をこの大会で決めるか。[3]ラオニッチは他選手との条件も絡みますが上位進出でそのチャンスがあります。またパリのシードに向けても大事な大会です。
ただラオニッチはサンクトペテルブルグでサーブ不調のままユージニーに敗戦。まずはフィジカルが戻っているかがカギ。
[8]ガスケは全米8強を失効し、ランキングを落としています。もう一度上位に戻るためにきっかけの大会にしたい。
優勝予想は難しいですが、マレーが序盤いいドローなのと、ティエム次第ではトップ10との対戦なしで決勝に行けることもあり、SFがトリッキーですがマレーでしょうか。
ナダルはここで優勝して年末6位争いから抜け出し、錦織、ラオニッチに追いつきたいところ。ここからは昨年の失効地獄が続きます。
書く場所がなかったので最後に書きますが楽天はデルポトロも欠場になりました。残念です。デ杯でキャリア最長試合を戦った上に、1日のインターバルもなくダブルスに出たことによる疲労が理由です。
正直アルゼンチンの起用には疑問符が残ります。これも日本のテニスファンにとっては不運でした。コントロールのしようがないですから。
しかし北京も欠場者が相次いだように、この時期は疲れがたまりやすく、このようなことはこれまでも何度もありました。
残念ですが、ツアーカレンダーが変わらない限りたぶんこれからもこういうことは起きます。
とりあえず、至急ファイナル争いと終盤戦の展望は書いていこうと思います。あと有明行きたかったです。それでは。
【現地リポート】デ杯入れ替え戦に行ってきました
9/17 13:30~
Davis Cup by BNP Paribas
World Group Play-off Japan(Home,[8]) vs Ukraine
Rubber 3
Kei Nishikori/Yuichi Sugita 6-3 6-0 6-3 Artem Smirnov/Sergiy Stakhovsky
Rubber 4
Taro Daniel 3-6 7-5 6-1 Artem Smirnov
Rubber 5
Yoshihito Nishioka 6-2 6-2 Danylo Kalenichenko
Japan 5-0 Ukraine
かれこれ錦織の公式戦を見に行くのは3年ぶり。3年前もデ杯でした。
エキシビションのIPTLでは見ましたが、公式戦となると話は別。いわゆる「覚醒後」の2014年以降では初観戦となりました。
公式戦でさかのぼれば、2012年デ杯1Rビーンズドーム以来4年半ぶり。待ちに待った関西凱旋です。
本当は3日とも観戦するはずでしたが、金曜日はどうしても無理だったので土日の観戦となりました。
初日はシングルス2試合。オーダーから意表を突いた展開となりました。
まず、日本チームは錦織をシングルスから外すという大英断に出ました。
理由は植田監督がのちに説明している通り疲れのたまった錦織を温存するため、ですが、戦略的に練られたオーダーだと感じました。
プレビューでも書いた通り、このオーダーはは錦織を温存できるだけでなく、ダニエル、西岡に任せられる、そういった意味合いもあります。
試合後のオンコートインタビューでは「正直自信はなかった」と語っていましたが、全く勝てない見込みなら組めないオーダーです。私が監督ならおそらく錦織に懇願していたと思います。また日曜日の松岡修造さんの一人しゃべりの枠でも「自分はこんなチャレンジなオーダーはできない」と修造さんが語っていました。
また、ウクライナのチームメンバーを見ると、今回のウクライナチームはかなりがたがたしているということが予想されました。
ドルゴポロフが不在になることは、ドルゴポロフがテニス協会と仲が悪いため予想されたことでしたが、ダブルス国内トップのモルチャノフもメンバーから外れ、代わりに入ったのはスミルノフとカレニチェンコという正直私ですらまったく名前を知らなかった選手でした。
ここで日本が負けるパターンを考えたいのですが、主に2つあると思っています。1つが日本のシングルス2番手が相手国に勝てず、ダブルスも落とす、これが最もあるパターンで、次が錦織に勝てるエース格の選手が登場し、普通に負ける、です。
前者は2015カナダ戦など多数で、後者は2016イギリス戦が具体例です。
一方、勝ちになるパターンのほとんどが、第5ラバーで勝つというもので、2015コロンビア戦、2013コロンビア戦です。
例外はダブルスで勝った2014カナダ戦です。錦織2勝+ダブルス1勝ですが、これは錦織がダブルスに出ているので特殊な例です。
こうして考えると、相手チームから見た日本チームに勝つ方法は、シングルス錦織以外の3ラバーを取り切る
というのがほとんどの国での最適解になります。
錦織に直接対決で勝てるのは、トップ10かそれに近い実力を持っている選手がいるイギリス、セルビア、スイス、フランス、チェコ、カナダなど限られた国です。少なくとも、入れ替え戦に大陸予選勝ちぬき側から出てくるような国でこれに該当する国はないと言っていいでしょう。
そこでウクライナのオーダーを日本が錦織を出した場合とそうでない場合で比較しながら見てみましょう。日本の2番手はダニエルにしましたが、西岡の可能性もあります。
予想 現実 ウクライナのオーダー
1 錦織 ダニエル スミルノフ
2ダニエル 西岡 マルチェンコ
3西岡杉田 錦織杉田 カレニチェンコ/スタコフスキー
4 錦織 ダニエル マルチェンコ
5ダニエル 西岡 スミルノフ
どうでしょう。第1ラバー予想は錦織×スミルノフになっていますが、過去2敗しているとはいえここにスタコフスキーを投入しても、あまり結果が変わるとは思いにくいのは明らかです。
つまり、ウクライナはこの地点で、第1ラバーをいわゆる「捨て試合」にして、第5ラバーにスタコフスキーを投入してスタコフスキーの体力温存を図ったのでは?と思われます。
しかし現実は第1ラバーにダニエル。ウクライナから見るとシングルスは理論上どのラバーでも勝てるようになってきました。
そこでウクライナは作戦変更し、デ杯ではあまりない初日のオーダー変更に踏み切ったのです。
これはリスクがあります。ボレーのうまいスタコフスキーがダブルスから外れることは考えにくく、この地点でウクライナはベテランのスタコフスキーに5セット3連投という暴挙を課すことになりました。
しかしウクライナは初日に2-0にできる可能性がぐっと上がりました。私もオーダー変更を聞き、初日は2-0から0-2までありうると思いました。
その初日で流れを掴んだのは日本でした。
ダニエルは攻撃的なプレーが光り、特にスタコフスキーの横を抜くパッシングショットが冴えわたりました。
第1セットのSFSをブレークして追いつくと、タイブレークを取り切ってセット先取。
さらに第2セットでも勝負強さを見せ、連続でタイブレークを取って勝負あり。
初日はかんかん照りとなり、この時期の大阪としてはかなり暑い方でした。日本選手のほうが暑さには慣れているので(といってもダニエル西岡は日本を出ている期間が長いですが)ウクライナの選手には厳しかったかなと思います。
3セット目は一方的な展開となりダニエルが勝利。奇襲をしかけてきたウクライナの気持ちを折る大きな勝利でした。
これで勢いが付きました。続く西岡も全米ベスト16のマルチェンコ相手にいいテニスを披露します。
すると試合は持久戦の様相に。1セットずつを取り合うとお互いに運動量が落ちてきます。
マルチェンコも、全米から通算して5試合目の5セットマッチ。疲れもたまっていたようで我慢比べの展開となります。
4セット目はショートポイントで決めたいので前に出るしかなくなったマルチェンコから西岡がパッシングショットを連発。逆転で取り、3-1で2戦目も日本が制します。
初日のいい流れを引き継いだ2日目は、錦織と杉田の急造ダブルス。一方ウクライナも初結成となるスミルノフとスタコフスキーのペア。
試合序盤は、ウクライナの杉田を狙い撃ちするという戦略がはまり杉田に硬さが目立ちました。
こう書くと聞こえが悪いですが、シングルスプレイヤーが参戦し、ダブルススペシャリストや不得手な選手と混在することが多いデ杯ダブルスでは常套手段です。2014年カナダ戦では日本もダブルス名手のネスターではなくダンセビッチを集中的に狙いました。
しかしここで杉田が奮起しました。
この日の杉田は素晴らしいプレーが多かった。自分にボールが集まり、試合の成否が決まるプレッシャーを感じながらもいいプレーが長い時間続きました。
特にパッシングショットとショートクロスの精度がよかったです。
錦織はあまりボールが回ってこなかったこともあり、なかなかリズムをつかむことができずミスも目立ちましたが、要所ではリターンエースやバックDTLでのパッシングショットなど見せ場を作りました。
これに対し、ウクライナがあまりやることがなくなってしまい、途中一方的な展開で11ゲーム連取となる場面もありました。
最後は若干日本チームにもミスが目立ちもつれましたが、アドサイドで錦織がリターンを構えることで、重要なカウントでウクライナがプレッシャーを感じ(なぜアドサイドが大事なのかはバルセロナ決勝記事を参照)DFを犯すなどウクライナは終始苦しい展開でした。
最後は錦織がボディーへのサーブを決めウクライナがリターンミス。日本が4年連続のワールドグループ残留を決めました。
3日目が完全にデッドラバーになるのは、2014年ワールドグループQFのチェコ戦以来2年半ぶり。日本3-0でのデッドラバーは3年半ぶりで、入れ替え戦以上のグレードでは史上初となります(ワールドグループと地域ゾーンが明確に棲み分けされて以降の記録に限定する)。
記録づくめとなった快挙に、ちょっと振り回されたのは観客の方だったかもしれません。
席数が少なくチケットが高騰する中、錦織も出ず勝敗も決まった3日目になるというのは予想外でした。
錦織目当ての人には残念でしたが、しっかりコート上でインタビューに応じ、松岡修造さんが雨の間1時間以上トークでつないでくれたので楽しめたのではないでしょうか。
私も少しその時の実況を残していますので気になる方はツイッターを参照ください。
2時間半遅れで始まったデッドラバーはダニエル太郎と西岡良仁のシングルス。
京都チャレンジャーにはあまり顔を出さない二人なので、実は私は生で見るのは初だったりします。
ダニエルはこの日攻撃的なプレーが好調だったスミルノフにかなり苦しめられます。
ソックにも勝ったループボールを交えたダニエルの粘りのテニスでしたが、この日は雨が上がった後ということもありボールが重たく、高い打点で打たせることができず逆にスミルノフに叩かれてしまうような形になりました。
またリターンをうまく拾っていたのですが、スミルノフが左利きのサーブを生かし、アドサイドでワイドに逃げていくサーブを打って、これが序盤は全部決まっていました。外に追い出しての3球目攻撃もあって、ほとんどBPも握ることができない展開となりました。
転機となったのはダニエルがパッシングショットのチャレンジに成功した第2セット第7ゲームでした。
このあたりからダニエルの粘りが勝り始め、少しずつ流れが変わりました。
ブレークバックされたのは痛かったですが、きっちり12ゲーム目をブレークしてセットオールに。その後は耐え切れなくなったスミルノフが簡単なミスを積み重ね、ダニエルが逆転勝利。なんともダニエルらしい勝ち方でした。
西岡はカレニチェンコとの対戦。カレニチェンコはこれがデ杯初登場。
カレニチェンコはやや緊張もあったのがプレーが安定しませんでした。
一方西岡はフォアハンドに威力がありました。きっちり回転がかかっており、スピードもありました。終始ペースを作り、カレニチェンコを寄せ付けませんでした。
今回の勝利は記録づくめの勝利となりました。
・西岡は初のデ杯での勝利
・杉田は初のダブルスでの勝利
・初の4人全員が有効ラバーで勝利
・入れ替え戦以上のグレードでは初の3-0決着
・錦織代表入り以降、入れ替え戦以上のグレードでは初の錦織1勝以下での勝利
・錦織代表入り以降、入れ替え戦以上のグレードでは初の錦織シングルス0勝でのチーム勝利
錦織以外で2勝、しかもシングルスでの勝利。
日本に新しい勝ちパターンができたこと、加えて急務の課題である日本シングルス2番手の成長。
これが結果となって表れた今回の勝利は日本テニス史に残る歴史的な勝利です。
今後ドロー運次第では、デ杯ベスト4も現実味を帯びてきたと感じます。
ここからは現地で思ったことなどです。
・修造さん、すごかった
さっきも少し書きましたが、3日目は11時開始の予定が雨が止まず、中止もあり得た中開始を待つことになりました。
この間は止み間に、コート上の水を抜くためにスタッフと綿貫陽介くん(ジュニアの有望株で、今回日本チームに帯同)が出てきては戻るといった状況で、再入場が可能なので結構な人が外に出ていたと思います。
そしてここで出てきたのが松岡修造さん。デ杯2日間を振り返り、雨を羨みんで自虐ネタを披露、客席にいた少年をコートに上げて夢を語らせるなど面白いトークを続けながらなんとかつなぎ、WOWOW実況の鍋島さんにバトンタッチするも結局コートの水抜きをWOWOWの電波に普通に乗せ(びっくりしました)、解説に戻りました。
キャラ上いろいろ言われますが、今のテニス業界でこれができるのは修造さんしかいません。
本人も「テニスを見なくても面白くなるような大会作りをしたい」とこの時のトークで言っていましたが、こういったMCによって試合待ちの退屈さを減らすことに成功していました。
率直に、すごかったです。
・植田監督、よく仕事している
五輪の時に日本チームに帯同し、選手の特徴を記録していると思われるノートを持参し試合中も記録。もしかしてこの人はすごい人なのでは?と思っていましたが、現地でその凄さを実感しました。
ダブルスの試合前、曇り空だったのが晴れ間が見え始めると、すぐに近くにいたコーチ(トーマス嶋田さんだったかな?)と空を見ながら会話を始めました。
実はダブルスの最初の8ゲームのうち7ゲームは、サーバー側ではなく太陽が目に入らない側のサイドのチームがゲームを獲得していたのですが、こういったことも視野に入れながら分析していたのかなと思います。日本チームは晴れ間に積極的にロブも上げていましたし。
また、とにかくポイント間のジェスチャーが大きかった。ウクライナの監督はほとんど座っていたのですが、リードしても全く勢いを変えることなく立ち上がって手を叩いていました。コートチェンジ中はマッサージもしていました。
あと、どのゲームだったか忘れたのですが、杉田サーブの15-30の時に「変化、つけよう」という声がはっきり聞こえました。
ポイント間はわーわーなっているのでコートレベルでないと聞こえないところも多いので、たぶん本当は各ポイント何かアドバイスしてるんだろうなと思いました。
・観客について
結構周りは初めて来た人も多い印象でした。
「なんでまっすぐ狙わないんだろう」→ダブルスの戦型です
「あの人(スタコフスキー)はなんでにらんでるんだろう」→錦織が前で取った時にタッチネットしたように見えたからです
など、結構初心者だなーって感じの人がいました。
でもいちいち直接言うのはあまりにも野暮だしよくないと思ったので、赤いレプリカ代表Tシャツで観戦玄人感を出しつつ、正しいマナーで応援してこういうのがスタンダードっぽいよということを背中で示しました。
初観戦で不快に思われたらよくないですからね。まずはその人にとって気持ち良い空間で見てもらう。本当は最初から学んだうえで来てほしいけど、全員がそれというのは無理なのはわかっているし、少しずつ分かってもらえればと。
今回は関西で久しぶりの公式戦、かつデ杯ということでいろいろと環境が特殊でした。いずれにしても今回いろいろと観客について議論するのは難しいのかなあと。
少なくとも、ウクライナの太鼓応援団の人に乗っかったり、実質エール交換みたいな感じで楽しくやっていたので、全体としていい空気が作れていたかなと思いました。
・綿貫陽介くん
今回はデ杯サポートメンバーに全米ジュニアシングルス4強の綿貫陽介くんが参加しました。
3日目はコートの水抜きを手伝うなど、およそ選手とは思えないこともしていました。
しかし練習ではボールを打ったり球拾いをしたり、フューチャーズを回っていたら決してできない経験をしたと思います。
まだまだ若いですが、修造さんの即席インタビューコーナーでは今後のことも語っていました。彼の将来のデ杯代表入りにも期待です。
さて、来年のワールドグループ16ヶ国が出揃いました。
シード国はアルゼンチン、クロアチア、イギリス、チェコ、スイス、フランス、ベルギー、セルビア
ノーシード国はオーストラリア、カナダ、ドイツ、イタリア、日本、ロシア、スペイン、アメリカです。
シード国とノーシード国が1回戦を戦います。
日本から見た戦いやすさで言うと
フェデラーワウリンカ抜きスイス>マレー抜きイギリス>>ジョコビッチ抜きセルビア>>ベルギー>クロアチア>チェコ>アルゼンチン>フェデラー抜きスイス>>イギリス>セルビア>>フランス>スイス
です。2番手シングルスが勝てるかどうかと、錦織が第4ラバーで勝てるかどうかで分類しました。
安定してきついのはフランス。どうあがいても2番手がトップ20クラスの選手で固めてくるので、今の日本チームでもきついでしょう。
スイスはフェデラーワウリンカが出てくれば厳しいんですが、果たして今回は出てくるのか…
アルゼンチンはデルポトロに加え2番手が強い。
楽だと言えるのはベルギー以下ですかね。ベルギーはゴフィンに次ぐ2番手が100位付近の選手なのに加えて、錦織がゴフィンに対し相性がよさそうなので。錦織2勝+第5ラバーで勝つという王道パターンが見えやすい。
あとはBIG4が出ない3か国のパターン。イギリスも次は日本ホームになるので、マレーが出ない可能性もあり、出なければ錦織の2勝が期待しやすいです。
デ杯入れ替え戦などの結果と来年の組み合わせ展望は、ドロー抽選がある木曜日以降に行います。