2019 デ杯決勝ラウンド解説
こんばんは。
大興奮だった今年の最終戦の余韻も冷めやらないところですが、早くも今日からデ杯決勝ラウンドがスタートです。
TSDといえばデ杯(自称)、今回もきっちり追っていきたいと思います。
今年から新ルールでのデ杯ということで、思わぬ波乱も起きそうです。またホーム&アウェー方式ではなくなったことによる会場の空気の変化はどうか?選手側のやる気はどうか?など未知数の要素がたくさんあります。
宗教上WOWOWに入っていないので、観戦どうしようか悩んでいますが、どこかで実況もしたいと思っています。
さてみなさんが気になっているのがその新ルールと細かい展開予想だと思います。
ルールについては2月の抽選時にもまとめてありますので、そちらの記事も併せてご覧ください。
とはいえ読み返すのも面倒だと思うので、要点をかいつまんでこちらでも紹介します。
23ページ 21. Finals Week 、57ページ 59. Finals Weekからが今週1週間にまつわる各種ルールです。
・3ヶ国ずつ6つのグループに分けて、グループ内総当たりで、単2複1の3試合2本先取のタイを行う
・試合はシングルス1→シングルス2→ダブルスの順で行い、原則全ての試合を完結させる(後述するラバー勝率で有利不利が出ないようにするため)
・試合は3セットマッチ、ダブルスはアドバンテージあり
・1チームは3~5人、またはプレイングマネージャー+2~4人(ルールブック38.2)
今回は4人のチームの中にプレイングマネージャーと特に明記された監督はいないので、「代打オレ」はなさそうです。
・単複の連闘はあり
1チーム5人になってどこの国もダブルス専門選手を入れてきているので、連闘しなくても特に問題はないです。一昔前のチェコならベルディヒ・ステパネク方式だったのでしょうか*1
・シングルスの組み合わせは、選ばれた2名のうちランキングの高い方同士、低い方同士が対戦
2番手にプレッシャーがかかりやすいのは従来通りです。
・QF進出チームは各組1位+残ったチームの中で比較し、成績の良かった2チーム、この8チームでトーナメント(組み合わせは決まっている)
・成績順に並べて、QF敗退国も含めた5~16位が2020年2月の予選ラウンドに回り、17位と18位は2020年ゾーングループに降格(2月の予選ラウンドを戦えない)
・順位を決める条件は上から順に
①タイの勝利数
②ラバーの勝率
③セットの勝率
④ゲームの勝率
⑤それでも並んだ場合、チームランキングが上の国
というものです。
では総合7位、8位と17位、18位になりそうなチームはどんな成績なのか?を検討していきます。(前回の記事と同じ内容です)
デ杯グループステージは3チームでの争いとなるため
①2勝0敗、1勝1敗、0勝2敗の3チーム
②1勝1敗で3チーム並ぶ
この2つしかありません。
まず総合7位8位を考えると、2勝0敗のチームがグループで2つ以上発生しないため、2勝すればグループ1位(当たり前ですね)、1勝した場合7位8位で拾われる可能性が出てきます。つまり、1勝1敗のグループ2位のチームが総合7位8位の可能性を残します。
タイの勝利数は同じですから、ラバーの勝率が7位8位の条件決めになりそうで、ラバー3-0でタイを勝ち、ラバー1-2で負けるような国がこれにあてはまりそうです。
次に17位18位を考えると、グループ3位のチームは①のケースで0勝、②のケースで1勝です。②のケースはいわゆる3すくみですが、これが6組中5組以上で起きるとは考えにくく、現実的には①の0勝の国の中で成績の悪い2ヶ国が落ちるというのが結果になりそうです。
したがって、タイを1つ取ることができれば自動降格は逃れられる公算が高くなります。
仮にタイ0勝でも、そのような国が3ヶ国以上いればともにラバー1-2で負けるような比較的「粘った」国は助かる可能性があります。
つまり結論としては、見えているタイの勝敗は大事だけど、ラバー、セット、こういったところ一つ一つを粘る必要があり、勝つなら大差で勝つ。どちらのスタンスでも1ポイントたりとも油断できるポイントはないということが言えます。
というわけで、メンバーが確定したので確定版のドロー解説です。
A組
フランス(モンフィス、ペール、ツォンガ、エルベール、マウー、監督グロージャン)
セルビア(ジョコビッチ、ラジョビッチ、クライノビッチ、トロイツキ、ティプサレビッチ、監督ジモニッチ)
日本(西岡、内山、杉田、ダニエル、マクラクラン、監督岩渕)
大変厳しいブロックと言えるでしょう。
日本は錦織を欠き、それ以外はベストメンバーです。西岡のyoutubeによると、内山の単複連闘が示唆されているようですが、それだとかなりプレッシャーが大きく、2日で4試合することからどこかでダニエル杉田を使うほうがいいと個人的には思います。
とはいえ、西岡を除けば今一番シングルスで調子いいのは内山なのは間違いないので、悩ましいところです…
特に日本残留の肝はダブルス。内山/マクラクランの2017東京優勝ペアは強い。しかし、NAF優勝のエルベール/マウーペアという最悪の相手との激突。対フランスはかなりの高確率でタイ敗戦が予想される中、どこかで1勝をもぎ取れるか。このラバースコアを1-2にできれば、セルビアにストレート負けしない限り残留ではないかと個人的には思っています。
最初から残留狙いで行くのは精神上よくないとは思いますが、それほど厳しい相手です。降格すると2020年11月大会に出れなくなるので、初年度から正念場です。
セルビアはジョコビッチ頼み。まずそこで1勝をもぎ取り、どこかでもう1勝が必要。フランス相手には相手の自滅待ちになってしまうか。日本戦はシングルス2かダブルスでもう1勝狙いで、確率は半分以上あると思いますが絶対優位ではない印象です。
フランスの1位抜けが堅そう。ここが紛れるようだと、とんでもないことが起きそうです。
B組
クロアチア(チョリッチ、パビッチ、メクティッチ、ドディグ、監督Krajan)
スペイン(ナダル、アグー、カレノブスタ、Fロペス、グラノジェルス、監督ブルゲラ)
ロシア(メドベデフ、ハチャノフ、ルブレフ、ドンスコイ、監督Tarpishev)
今大会の死の組です。
ただし、戦前予想からクロアチアのチリッチ、ロシアのメドベデフが欠場となり、後退する形になりました。
スペインはNAFで優勝したチチパスに勝ったナダルがそのまま出場予定。地の利もあり、ダブルスも揃ってる。しいて言うならデ杯苦手なアグーが不安なくらいで盤石です。1位抜け候補、さらに優勝候補筆頭でしょう。
ロシアはメドベデフ欠場ですが、ハチャノフ、ルブレフがいる。十分でしょう。ダブルスをどうするか。ハチャノフ/ルブレフはダブルスをよく組んでいて、MS準優勝の経験もあるのですが、連闘になってしまうのが少しマイナスか。対クロアチア戦をきっちり勝ち切ることが必要になります。
クロアチアは厳しい。シングルス2番手が一切期待できない状況なので、チョリッチが相手のナンバー1、トップ10相手に孤軍奮闘するか、スペシャリストを揃えたダブルスがスペイン、ロシアから勝つか。一歩間違えると昨年覇者が降格です。
C組
アルゼンチン(シュワルツマン、ペリャ、Lマイヤー、ゼバジョス、監督ガウディオ)
ドイツ(シュトルフ、コールシュライバー、コプファー、クラビーツ、ミース、監督コールマン)
チリ(ガリン、ジャリー、Tabilo、Tomas Barrios Vera、Podlipnik-Castillo、監督マスー)
ここは意外な展開になりそうな予感。アルゼンチンがやや優勢ですが、絶対的ではない印象。今期好調のシュワルツマン、ペリャ、そしてダブルスにもマイヤーとゼバジョスを揃えていますが、会場はハードコート。
ドイツはズベレフが不出場を決めており、今期精彩を欠いているコールシュライバーが2番手見通し。全仏OP優勝、今年のダブルス界に現れた新星、クラビーツとミースはデ杯デビューですが、いきなりタフなシチュエーションで結果を出せるか。デ杯適性が分からない選手にゆだねるドイツは結構危ないか?
チリはチーム力では他の2ヶ国に劣りますが、メンバー自体がデ杯大好きそうなうえに、監督がチリの英雄マスー。ティームを今シーズンの躍進につなげた立役者が心強くバックアップしてくれます。あと相手が隣国アルゼンチンで、否が応にも盛り上がるのもプラスですね。アップセットを起こしてなんら不思議ではないです。この組が一番3すくみになりそうな気がしています。
D組
ベルギー(ゴファン、コペヤンス、ダルシス、Vilegen、Gille、監督Van Herck)
オーストラリア(デミノー、キリオス、ミルマン、トンプソン、ピアース、監督ヒューイット)
コロンビア(ガラン、ヒラルド、Aゴンザレス、カバル、ファラー、監督Pゴンザレス)
ベルギーのミスターデ杯、ダルシスはこれが引退大会。出場するかは微妙ですが、2015年2017年準優勝時にも大活躍したベテランがチームを引き締めます。
オーストラリアは新制度には反対姿勢のものの、デ杯に対しては高いモチベーションで入ってきます。パフォーマンス次第では優勝候補の一角でしょう。キリオスがきっちり仕事を果たせるか。新ルールは1勝の重みがより大きくなり、気持ちを切らして負けることは許されません。
WG相当のグレードに初登場となったコロンビアですが、やはり相手関係が厳しいか。ヒラルドもかつての力はなくなり、シングルスでの勝利は期待しにくい。今期ダブルス世界1位のカバル/ファラー組に残留を託す形になるか。日本との残留争いになる可能性も高く、注目されます。
E組
イギリス(エバンズ、Aマレー、Jマレー、Nスクプスキ、監督スミス)
カザフスタン(ブブリク、ククシュキン、ポプコ、ネドベジョフ、ゴルベフ、監督Doskarayev)
オランダ(ハース、Griekspoor、Van de Zandschulp、クールホフ、ロジェ、監督Haarhuis)
本命不在で混沌としたグループです。
イギリスは2015年優勝の立役者、アンディー・マレーがここに間に合いました。アントワープを優勝し、更なる復活劇へ向けての足掛かりにしたい大会です。
兄弟ダブルスはあるのでしょうか。ただジェイミーのほかにスクプスキ兄弟の片方、ニールがいます(なぜケンは呼ばれなかったのか…)。コンビネーションが悪いと怪しそうです。
エドムンドも不在で、1位抜けどころか2敗もありうるだけに難しい戦いになりそうです。
カザフスタンはいつもデ杯補正がかかりますが、中立地開催の今回はどうか。メンバーも手薄で内容次第では降格が待っています。
オランダもメンバーが微妙。ハースのランキングが落ちていて実質ダブルス頼みですが、即席ペアのクールホフとロジェが結果を出せるか。
F組
アメリカ(フリッツ、オペルカ、クエリー、ティアフォー、ソック、監督フィッシュ)
イタリア(ベレッティーニ、フォニーニ、ソネゴ、セッピ、ボレリ、監督Barazzutti)
カナダ(シャポバロフ、アリアシム、ポスピシル、シュナー(ラオニッチのリプレース)、監督ダンセビッチ)
こちらも死の組。近年ベスト8に名を連ねることが多い3ヶ国の潰しあいになりました。
アメリカはイズナー不在。若手のフリッツとオペルカに託します。
ダブルスではブライアン兄弟が不在となり、かなり手落ちの状態。クエリー、ソックあたりがダブルスに出場か。わずかですが組3位になる確率が高いか。 踏ん張りどころです。
イタリアはベストメンバー。今期大躍進のベレッティーニとフォニーニの2枚看板。さらにダブルスにはフォニーニもいけますし、セッピ、ボレリが構えて盤石。ただ気になるのはベレッティーニのデ杯経験の少なさ。適性が見えないだけにエースとして責務を果たせるか。簡単ではないでしょう。
カナダはラオニッチ欠場となりましたが、シャポバロフとけがから復帰したアリアシム。活きのいい二人が出ていきます。また長らくデ杯でネスターとダブルスを組んできたポスピシルもいます。どこからでも勝てるチーム、控えのシュナーも若く、勢いに乗れば面白いチームです。
繰り返しになりますが、日本はかなり降格圏に近い位置にいます。ラバー1勝すら重たく、チャンスは単複合わせて6試合しかありません。また水曜日に試合が終わるので、あとから終わる降格圏チームにボーダー目標とされてしまうため、その点でも厳しいです。
現地に応援に行かれる方は残念ながら少ないと思いますが、できる限りの声援をテレビからでも送り、何とか残留することを願いたいです。