two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

伝説の瞬間と、差し掛かる焦燥感(その1)

7/16 現地14:00~(日本時間22:00~)

Grand Slam 2000 The Championships Wimbledon

Championship

[3]Roger Federer 6-3 6-1 6-4 [7]Marin Cilic

もちろんフェデラーは今大会の優勝候補筆頭でした。

しかし全盛期でもなしえなかった失セット0での優勝には驚きました。

まず試合を振り返りましょう。

この試合のポイントはやはりチリッチがどうやって今シーズン絶好調のフェデラーを攻略していくか、というところでした。

試合に勝つどころか1セットを取ることも遠い状況でチリッチが何をしてくるか。

そうなると、やはり考え方は勝った時のイメージ、作戦を大事にするということになります。

4ゲーム目、チリッチは仕掛けました。

お互いストロークが入らなかった1,2ゲーム目のあと、ついにチリッチの攻撃的なストロークが当たり始めます。

フェデラーとチリッチの対戦成績はフェデラーの6勝1敗。チリッチの1勝はあの14年全米です。

この時のチリッチは決勝の錦織戦でも見せたように非常に攻撃的でした。シンプルにハードヒットを決めていき、相手にチャンスを与えない。

結局、チリッチにとっては自分ができるベストのテニスを自分らしくすることがフェデラー攻略への最短ルートになる、ということです。

この地点までフェデラーはあまり1stサーブが入っていなかったため、実際リードするならここしかないという場面でした。序盤の山場でした。

そして迎えたBPもフェデラーセカンドサーブ。しかしチリッチはボディー気味の深いセカンドサーブのリターンをネットにかけます。

このBPがチリッチが得たこの試合最初で最後のBPになってしまいました。

そして次のゲーム、こちらも1stサーブが入ってなかったチリッチはストローク戦に苦しみます。

このゲームからフェデラーはスライスを使い始めました。これによって、強打で来ていたチリッチのリズムが崩れてしまったのかもしれません。

連続失点の後はチャンスボールをミスで0-40。2本しのぐものの再びバックハンドのラリーでミス。フェデラーが先にブレークします。

4ゲーム目まではチリッチのほうが押し気味だったものの、そのわずか3分後にはフェデラーが数字上リード。ここからチリッチの歯車が狂い始めます。

チリッチは1stサーブの確率を上げることができず、ストローク戦でもリスクを取らされた形でミスを量産。

対してフェデラーは少しずつチリッチのボールにアジャストしたのもありミスが減少。さらにチリッチがミス量産した結果ストロークで無理な攻めをすることもなくなり、一度ついた差がどんどんと広がっていく格好になります。

結果的には、そのまま1時間41分それが続いた形になります。

チリッチは足のけがもあり万全ではなく、精神的な状態もあまりよくなかったことは想像されます。

ただ、最初にゲームが動く流れを察知し、BPで悪いなりにもセカンドサーブをきっちり打ち、そして自分に振れた流れを一発でものにした。

フェデラーの勝負勘が光ったゲームでした。

チリッチも状態が悪いなりに3セット目は驚異的な粘りを見せました。

これまで4強もなかったというのが不思議なくらい、チリッチは芝のテニスにフィットしていて、さすが決勝まで上がってきたという内容でした。

ただこの日はコンディションと、何より相手が悪かった。

チリッチの今後のウィンブルドンタイトル獲得も十分にあるという2週間でした。

今更ここで触れることでもないですが、今回の優勝でフェデラーは男子選手として最多記録のグランドスラム19勝目、そしてサンプラス、レンショー(オープン化前)の7勝を抜いて最多のウィンブルドン8勝目。また年間GS2勝以上は04~07年、09年に続いて6度目で最多(そもそもGS12勝以上が5人しかいない…)、そのほか数多くの記録が更新されただけでなく、なんとこの勝利がキャリア通算1111勝目。どれだけ数字に愛された男なのでしょうか。賛辞の言葉がいくらあっても足りません。

また蛇足ですが、レースランキングでは3位以下を大きく突き放して2位。ナダルとは約500p差で、年間1位はほぼこの二人の一騎打ち。ナダルなら4年ぶり、フェデラーなら8年ぶりとなります。

そして、今日発表のランキングでは、1位マレー、2位ナダル、3位フェデラー、4位ジョコビッチ。ついに、ついにBIG4が1~4位に戻ってきました。

もちろんマレー、ジョコビッチの失効は多く、また両名にシーズン終盤戦の欠場が一部で示唆されていることからこの状態はおそらく1~2か月程度の一時的なものになりそうですが、それでも驚異的です。

初めて4人が1~4位を独占したのは2008年9月8日(全米OP明け)。それから約9年。まだBIG4はその力をテニス界に轟かせ続けています。

しかし、一方でこの優勝、このBIG4返り咲きが私の中で嫌な焦燥感となってきています。

9年前、当たり前ですが4人全員が20代、そして、ジョコビッチとマレーに至っては今のズベレフやキリオスと同じ年齢だった頃の話です。

そこから幾多の激闘が繰り広げられ、何度も各選手に「ピークは過ぎた、終わった」との評価が起きる中彼らは覆してきました。

今はジョコビッチとマレーもトンネルの中という感じですが、何かをきっかけに戻ってくることは十分に考えられます。

08年当時と違い、BIG4も年齢や様々な問題と闘いながらの状況となり、正直「支配力」とでも呼べるようなものは落ちていると言えます。

その証拠がランキングポイントです。

1位マレーは7750p。このポイントはBIG4全盛の時代なら3~4位の選手のポイントでした。

7750pは09年にランキングシステムが変わって以降1位の選手としては最小のポイント。09年はBIG4がすでに形成されていた時期。同じ尺度で見れるからこそ、これがすべてを物語っています。

フェデラーナダルは今シーズン驚異的ですが、昨シーズンの終盤戦がほぼ0pの状態。

ジョコビッチ、マレーは昨シーズン素晴らしい活躍でしたが、今シーズンはあまりにも物足りない結果。

この4人が1~4位です。

常々私は年間上位に行くためには年間通しての活躍が必要不可欠だと言ってきたにもかかわらずのこれです。

今の状態が、いかに異常かということがそれだけで分かる数字です。

ではなぜこうなってしまったのか、そしてこれからどうなっていくのか。それは後半戦へと続きます。

【week preview】2017week25ドロー解説

こんにちは。

なかなか安定して更新できないまま時間が経ってしまいましたが、今週から定期更新を欠かさないように努力…したいと思います…

さて、まずは報告です。こちらでの宣伝をあえてこれまでしていなかったのですが、このたびコミュニティFMラジオ局「湘南マジックウェイブ」の番組にテニスのコメンテーターとして不定期に出演させていただくことになりました。

新しい形での情報発信ということで非常にわくわくしていると同時に、向こうで当ブログの宣伝をしたので引くに引けなくなってしまいました…

2016年に更新方針を一応定めたのですが、長期間にわたり安定した更新が不可能な状況でした。

これからは出来る限りこの時記したように

・weekプレビュー

・weekレビュー

・ランキング試算

の要素は欠かさずに更新していけたらと思っています。

まずはweekプレビューからです。

来週は芝シーズンの第2週、ハレ/クイーンズです。

2015年にハレとクイーンズはATP500に格上げされ、ますます上位選手のウィンブルドン前哨戦としての意味合いが強くなりました。

ハレはテニス関係の服飾で有名なゲリー・ウェバー、クイーンズはロンドンのテニスクラブとエイゴンがスポンサーです。

エイゴンはチャレンジャーシリーズまで含めて芝シーズンの大口スポンサーです。

まず大会ドロー前に芝シーズンとしての状況ですが、クイーンズでは全仏優勝のナダルが体の回復のため(けがではない)欠場となりました。

さらにゴファン(ゴフィンから表記変更)は全仏オープンで負った足のけがにより前哨戦とウィンブルドンを欠場となりました。

Goffin.. (🎥Eurosport) pic.twitter.com/6cgk0SWsmH— doublefault28 (@doublefault28) 2017年6月2日

全仏オープンのコートは今のテニスの大会の中では極端に手狭で、クレーコートであるため下がってのプレーもあることから今回のゴファンのようなけがは対策を講じないとまた起きてしまうかもしれません。

地元の意向により屋根が一向につかないなど、全仏オープンは悪い意味で保守的な部分が多く、今後の大会の改善に期待したいです。

それからデルポトロも今週のデンボス、さらにクイーンズを欠場しています。全仏で臀部に痛みを負ったということで、期待はされていますがなかなか波に乗れません。

それではドロー解説です。まずはクイーンズから。

[1]マレー

ベデネ

(WC)Norrie

クエリー

バシラシビリ

ミュラー

マナリノ

[5]ツォンガ

[4]チリッチ

イズナー

ジョンソン

予選勝者

トロイツキ

ティプサレビッチ

ヤング

[9]キリオス

[6]ディミトロフ

ハリソン

予選勝者

(WC)ワード

メドベデフ

マウー

(WC)コキナキス

[3]ラオニッチ

[7]ベルディヒ

ダルシス

エドムンド

予選勝者

予選勝者

予選勝者

ロペス

[2]ワウリンカ

3連覇を目指す[2]マレー。達成されれば03~05年のロディック以来です。

そのマレーは初戦ベデネ。同国対決からのスタート。2回戦はクエリーに注意。記憶に新しい昨年ウィンブルドンでのジョコビッチ撃破が印象に残っています。ビッグサーバーで当たると怖いタイプです。QFにも左のビッグサーバーのミュラー、さらにウィンブルドンフェデラーを破ったことがある[5]ツォンガと、歯ごたえのあるドローになっています。

第2クォーターは激戦です。ウィンブルドン8強で昨年クイーンズではマレーとフルセットの激闘を繰り広げた[4]チリッチは少しずつ夏に向けて調子を上げてきています。躍進が期待されますが、初戦はイズナーとなりほぼ最悪のドローとなってしまいました。さらに次戦のジョンソンも嫌な相手です。

[9]キリオスはもともと第6シードだったソックの欠場によってドロー抽選後シードの位置にリプレースされました。ちなみにそのキリオスはもともと初戦ジョンソンの位置にいたのでチリッチのブロックは超タフでした…

キリオスはドローが変わったことで視界良好。シーズン序盤からの好調が祖父の死去によるテニス離れなどで止まってしまっただけに、再スタートを切りたいところです。

そして芝と言えばこの人、[3]ラオニッチです。昨年はクイーンズ、ウィンブルドンともに決勝で芝無敗のマレーに敗れただけで、かつて苦手と言われた芝コートにもしっかり順応し、持ち前のビッグサーブで今年も活躍が期待されます。

また、後述しますが失効ポイントが多く、夏シーズン中のトップ10落ちの危機も迎えているラオニッチ。正念場です。

ラオニッチは初戦がコキナキスとややトリッキーなカードになりました。コキナキスは錦織との全仏初戦以降も快調なテニスを続けているので、番狂わせがあるかもしれません。

さらに2Rには芝巧者のマウーです。マウーはツアー4勝、決勝進出6回のすべてが芝コートでの大会というスペシャリストです。サーブよしネットプレーよしのまさに芝コートにあったプレースタイルで、数々の番狂わせも起こしています。ラオニッチとしてはこの試合が一つ目のキーポイントになります。

[6]ディミトロフはシーズン序盤の勢いが止まってしまいました。しかし、14年もウィンブルドン4強に入ったことでしっかり踏みとどまり、パリまでロンドン争いに残り続けました。本来苦手ではないサーフェス。ディミトロフがどこまでできるかもこのブロックのポイントです。

全仏準優勝の[2]ワウリンカは疲労が心配。マレーとの4時間以上の激闘を超えて決勝では十分なパフォーマンスを出せませんでした。それから1週間。サーフェス変更もあり、あまり得意ではない芝。上位進出は期待しにくいでしょうか。初戦も芝コートでの優勝経験がある左のサーブ&ボレーヤーのロペスとかなりタフ。そこを乗り越えると上位進出は見やすいドローなのですが、果たしてどうなるか。

予想は難しいです。芝コートほど予想が難しい大会はないです、コートに順応できなければ上位選手でも簡単に負けますし、スペシャリストの番狂わせも名物です。

とりあえず、マレーとマウーの決勝進出と予想します。

マレーもかなり戻ってきたので地元の大会でうまくやれるのではないでしょうか。

続いてハレです。

[1]フェデラー

ルー

予選勝者

M・ズベレフ

ペール

F・マイヤー

シュトルフ

[6]プイユ

[3]錦織圭

ベルダスコ

ハチャノフ

シモン

カルロビッチ

予選勝者

(WC)ルブレフ

[8]ラモス=ビノラス

[7]バウティスタ=アグー

ベルロク

(WC)ブラウン

予選勝者

ソウザ

コールシュライバー

ロレンツィ

[4]A・ズベレフ

[5]モンフィス

ガスケ

(WC)T・ハース

トミッチ

R・ハース

フェレール

予選勝者

[2]ティーム

[1]フェデラーシュツットガルトでT・ハースにまさかの逆転負け。

しかしドバイでのドンスコイ戦同様、まだこの1試合での判断は早いでしょう。なぜか今年のフェデラーの2敗が100位以下の選手のみというのも面白いデータです。

ちなみに、ハレはATP500なのでWCか予選勝者の選手じゃないと100位以下の選手はいないです…

フェデラーのポイントは2回戦。今週も好調のM・ズベレフが相手になる確率が高そう。

ズベレフは芝に合っているサーブ&ボレーヤータイプ。全豪では簡単に攻略したフェデラーでしたが、サーフェスが変わったことでどうなるか。

QFは昨年チャンピオンのF・マイヤー、サーブがいいシュトルフ、昨年ウィンブルドンでデルポトロを破って躍進した[6]プイユと面白い相手がそろっています。このラウンドがフェデラーの今週の出来を表しそうな予感がします。

ウィンブルドン第8シードがほしい[3]錦織圭はタフドローです。初戦はダブルスを組むベルダスコ。全仏に続いての対戦です。

ベルダスコは芝でもマレーとフルセットの死闘を繰り広げるなど(結果的に、マレーのウィンブルドン初優勝時に最も苦しめた相手だった)結局ベルダスコの状態が当たるかどうかに依存します。

初戦というのが難しいところで、状態がいいか悪いかが錦織もベルダスコもわからないので何とも言えないです。

芝巧者のコールシュライバーなどノーシードにも危険な選手はたくさんいるので、最悪ドローという安易な表現は避けますが、タフであることには変わりありません。

2回戦ではハチャノフも楽しみですが、上位選手で対戦がない数少ない選手となったシモンとの初対戦に期待です。

QFはクレーコーターの[8]ラモス=ビノラスよりも、やはりカルロビッチでしょう。2年前ベルディヒ戦で3セットマッチのエース本数最高記録を更新した相性のいいコート。2週連続出場で今週決勝に行っているので気になるのは体力面だけでしょうか。

QFはカルロビッチが来るかどうかで難易度がぐっと変わりそうです。

なお、一部情報では錦織のウィンブルドン第8シード確保のためには最低でもベスト4が必要という話をどこかで聞いたので(あとで計算してランキング試算に反映します)、正直この状況は相当厳しいと言えそうです。

ボトムハーフは面白いカードが続きます。20歳でトップ10入りを果たした[4]ズベレフはその後苦しんでいます。昨年準優勝の縁起のいい大会で調子を取り戻したい。

ズベレフのポイントは2回戦、芝巧者のコールシュライバーです。ここを乗り切ると上位進出が見えてきます。

またこのブロックでは、WCでの出場、かつてこの大会でナダルを破ったブラウンに注目です。

なかなか好成績を続けられないですが、当たればトーナメントを駆け上がっていく力があります。

[2]ティームは全仏4強の後の初戦。2Rまでは視界良好でしょう。

QFはタフです。[5]モンフィス、ガスケ、先週フェデラーに勝ったハース、さらに芝は得意なトミッチと、誰が上がってきても厳しい。ここがティームのポイントになるゲームです。

優勝予想はフェデラーにします。先週のは見なかったことにして、やはりフェデラーの優位は変わりないでしょう。

ボトムは混戦模様という予想です。

更新することを癖にして頑張っていこうと思います。それでは。

【ドロー解説】2017マドリードMSの展望

こんにちは。

ブログに帰ってきました、twosetdownです。

私の現状については、これの一つ前の記事にまとめましたので、さっそく本題に行きましょう。

私があまり更新しなくなってからテニス界は大きな変化を遂げました。

その最たるところは、マレー、ジョコビッチの信じられない成績低迷です。

そして、おとといとんでもない発表がありました。ベッカーに続いて、長年ジョコビッチを指導していた精神的支柱、バイダコーチ他3人のチームスタッフが離れることになりました。これはマドリードMSからの適用ということで、ジョコビッチは目立ったコーチなしで大会を迎えます。

現状ジョコビッチは成績だけでなく、こういった内外の事情を抱えていることは疑いないのですが、残念ながらその真相は分かりません。ただ言えることは、あまりいい状態ではない、ということです。

そのジョコビッチに加えて、今週(エストリルなどの週)から復帰しているラオニッチとモンフィス、さらに、錦織はバルセロナを欠場した後の復帰戦。

様々な面から注目の集まる大会となりました。

マドリードマスターズは56ドロー、クレーの大会です。

ボールガールにモデルを起用するなど、最近できた大会ということもあり、斬新な取り組みを行っている大会です。

マスターズとしては4戦目、さらに全員出場義務の大会としてはシーズン初の56ドローの大会になっています。

このあとの解説を見てもわかりますが、序盤から好カードが目白押し。1戦必勝の度合いが強くなります。

特に上位8シードは初戦免除となり、勝つといきなり90p。絶対に初戦敗退だけは避けたい大会です(が、だいたい毎年誰か負けています)。

①マレー山

[1]マレー

bye

(WC)ガルシア=ロペス

(WC)コピル

M.ズベレフ

ガスケ

予選勝者

[13]プイユ

[12]ディミトロフ

コールシュライバー

カルロビッチ

バウティスタ=アグー

ダルシス

予選勝者

bye

[8]ティエム

[1]マレーはそろそろ主要大会での上位進出がほしい。すでにフェデラーナダルとはレースランキングで3000p近く差を開けられており、これ以上の独走を許すわけにはいかない状況です。

初戦はWCの勝者と対戦。この時期ガルシア=ロペスは一発当てることがありますが、以前に比べてテニスのレベルが落ちてきているので難しいか。コピルはビッグサーバーで、クレーでは厳しい。

マレーの最初のポイントは3回戦。[13]プイユとはこの1年に4回も対戦があり、すべてマレーが圧倒しているカードですが、プイユはブダペストで優勝。クレーのタイトルを手にしてやってきます。さらにガスケは杉田に敗れるなど復帰後不調のため、全豪で敗れたM・ズベレフが上がってくる可能性もあります。この難しい3回戦をどう乗り切るかが肝心です。

一方クレーシーズンに入っても好調、依然レース上位を走る[8]ティエムは昨年同様、ここからは主要大会でのゲインが必要不可欠。大事な大会になります。

幸い初戦の相手は比較的恵まれており、激戦ブロックを勝ち上がってきた3回戦がこちらも山になります。

[12]ディミトロフはかつて、当時1位だった王者ジョコビッチを破った大会ではありますが、それ以上にソフィア優勝の後一直線に下降している調子のほうが心配。

特に初戦のコールシュライバーはクレーで手堅く勝ち上がる選手。十分に番狂わせの起きそうなカードです。

さらにカルロビッチと、こちらもクレーでは手堅いバウティスタ=アグー。ディミトロフにとってはタフドローです。

ただ、初のファイナル出場に向けて、2014年同様ここでもしっかり食らいついていく必要があります。

ティエムが調子を維持し続けていれば、状態の不透明なマレーにまた勝つことも十分に考えられます。

②ワウリンカ山

[3]ワウリンカ

bye

ペール

カレノ=ブスタ

予選勝者

クエバス

マウー

[14]ソック

[11]ベルディヒ

予選勝者

R.ハース

エバンズ

A.ズベレフ

ベルダスコ

bye

[7]チリッチ

状況の読みにくいブロックです。

[3]ワウリンカは、IWで決勝に進み、今シーズンはこれまでとは少し違った戦い方をしてきています。かつてマスターズ決勝に進んだ大会でもある一方、14年は当時無名だったティエムに敗れるなど予測不可能。

そのワウリンカは親友ペールか、今期絶好調のカレノ=ブスタとの初戦になりました。

カレノ=ブスタは勢いが止まりません。モンテカルロではジョコビッチに、バルセロナでは杉田に敗れたものの、今週もエストリルで決勝進出。移動の疲れがなければ今週も勝ち進むかもしれません。

さらに[14]ソックも好調を維持しています。現在出場したマスターズでは昨年上海から4大会連続ベスト8以上。ただモンテカルロを外して出場したヒューストンでは4強。クレーシーズンに入って勢いが止まってしまうのかどうか、注目です。

また、もともと超がつくほどのクレーコーターだったクエバスもモンテカルロ8強と調子はよさげ。難しいブロックです。

さらに、[7]チリッチはイスタンブール決勝進出中。状態は上向きですが初戦がタフ。ズベレフかベルダスコ。今もっとも当たりたくないノーシ-ド選手上位の2名のうち、さらに調子がいいほうとの対戦となります。

チリッチとしては、まずはイスタンブールの決勝で勝ちたいでしょう。初戦敗退はよくないですが、なんとかイスタンブールで稼いで万が一負けた時の被害を最小限に抑えたいところ。[11]ベルディヒは、2回戦まではいいドロー。3回戦以降は出来次第というところでしょうか。

ここのベスト4は読みにくく、あらゆる有力選手に可能性があると思います。

ナダル

[5]ラオニッチ

bye

(PR)T.ハース

ミュラー

グラノジェルス

F.マイヤー

ハチャノフ

[9]ゴフィン

[16]キリオス

バグダディス

ハリソン

トミッチ

ソウザ

フォニーニ

bye

[4]ナダル

優勝候補筆頭でしょう、[4]ナダルフェデラーの欠場もあって第4シード。クレー3連勝に向けて追い風が吹いています。なんとアカプルコでクエリーに敗れて以降はフェデラーにしか敗れていない状態。そのフェデラーがいない今、ナダルを止められる選手は数えるほどでしょう。

そのナダルは15年に苦しめられたフォニーニか、クレーコーターのソウザとの一戦。昨年この大会で錦織をあと一歩まで追い詰めたフォニーニがやはり危険でしょう。当たった大会では上位を食う力があります。フォニーニの1回戦に注目です。

マイアミ4強、デ杯ではイズナーを撃破し、年度末でのトップ10入りを狙っていく[16]キリオスはクレー初戦。祖父が亡くなった影響でエストリルを欠場しましたが、しっかりと切り替えて大会に臨めるかどうか。きっちり照準を合わせたゲームではマイアミ準決勝のような高いプレーができることは証明されています。またこのマドリードではフェデラー、ワウリンカを撃破しており、錦織と死闘を繰り広げています。相性もよさそうです。今のクレーナダルに対抗できる選手の一人かもしれません。こちらも序盤にトリッキーな相手が続きます。3回戦でこの二人が激突すれば面白いカードになりそうです。

イスタンブール決勝進出と復調気味の[5]ラオニッチは厳しいドローになりました。初戦はハースかミュラーと計算しやすいですが、今期絶好調の[9]ゴフィンが待つ3回戦はタフ。さらにQFにはナダルかキリオスがいます。

またラオニッチは全仏前週のリヨンにも出場するため、今週から5週連続(全仏を2週間と思えば6週連続)の出場になります。

もともと足回りでのけがが多く、今回の離脱も足のけがだっただけに、このハードスケジュールをどう乗り切るかが復調のカギになります。

ゴフィンは比較的いいドローですが、グラノジェルスのクレーの試合がロングマッチになりやすい(2年前にモンフィスと3時間20分の試合をしている)ので、そこは注意が必要です。

ジョコビッチ

[6]錦織圭

bye

ラモス=ビノラス

シュワルツマン

フェレール

予選勝者

予選勝者

[10]ツォンガ

[15]モンフィス

シモン

予選勝者

ロペス

(WC)ロブレド

(WC)アルマグロ

bye

[2]ジョコビッチ

[6]錦織圭は復帰戦。心配は尽きませんが、本来バルセロナに到着していたのを直前取りやめでの欠場。テニスはすぐに再開しているので過度な心配は禁物です。

手首の状態についての考察は初戦を終えた時にと思っています。今地点ではわからないというのが正直なところで、あらゆる可能性を考慮する必要があります。

正直大きな大会の初戦でここまでの悲観的な状況になっているのは、16年全豪1回戦以来ではないかなと思っています。

ただあの全豪もツォンガを圧倒。ジョコビッチには敗れましたが、本当にふたを開けるまで何が起きるかわかりません。初戦がノビコフだったとはいえ、カナダMSの決勝進出もほとんどの人が予想していなかったと思います。何が起きるかわかりません。

今回のポイントはやはり初戦でしょう。モンテカルロ準優勝のラモス=ビノラスか、ブエノスアイレスで対戦したシュワルツマンとの対戦です。

シュワルツマンはいいテニスをしますがまだ上位選手に大番狂わせを起こしたことはありません。典型的なクレーコーターで、あまり怖くないというのが正直な感想です。ラモスも基本的にはそのタイプだったのですが、ここ数か月の活躍については疑いようがありません。モンテカルロ決勝は少し見ましたが、ディフェンスがいいという印象です。

南米クレーシリーズの錦織はフォアハンドの威力が出ず、相手を追い込む展開を作ることができませんでした。こうなるとラモスの戦術に捕まってしまいます。先に錦織のUEが出る展開だとしんどいです。

14年のようにしっかり追い込んでポイントを取る形か、16年のように守備から転じて得点するパターン、とにかく取れる形を作ることが重要です。

次戦は[12]ツォンガかフェレールの二択でしょう。フェレールは昨年序盤から信じられない成績下降に陥っていましたが、ついに今週エストリルで4強。復調の気配があります。

一方のツォンガは全豪8強のあとロッテルダム優勝と序盤戦を上々の滑り出しで抜けましたが、ここにきてIW初戦敗退、マイアミ欠場、モンテカルロ初戦敗退と、勢いが落ちてきています。

ここはフェレールが来ても驚きはありません。最後の対戦からちょうど2年。そろそろ再戦を見たいです。

一方先述の通りコーチなし状態の「ショック療法」と本人が銘打った[2]ジョコビッチは視界の開けたドロー。初戦はWC同士の勝者となりました。

ロブレドもアルマグロも実力者ですが、以前ほど大番狂わせを起こせる状態ではありません。さすがにここは切り抜けると思います。

次戦は[15]モンフィスかシモンでしょうか。実力者ですがモンフィスは復帰戦チュンに敗れておりまだ本調子には遠いか。シモンもジョコビッチともつれる試合はするものの、なかなか勝つことができません。

ジョコビッチとしては、不調の錦織も含めてSFまではかなりいいドローです。

優勝予想

ナダルが本命です。しかし、実はクレー全盛期のナダルでも前哨戦は1~2大会落としていることがほとんどです。

クレー前哨戦がマスターズ3大会になって以降では、ほとんどのケースでマドリードorハンブルグorローマ(マドリードが5月クレーに移行するまではその時期にハンブルグマスターズがあった)のどれかを落としています。

さすがのナダルも、2週連続のこのマスターズを連勝するのは難しいということでもあり、ジョコビッチマレーの不調、ナダルが落とし、フェデラーがいないとなると、BIG4以外にマスターズタイトル獲得のチャンスが一気に広がります。

形としてはBIG4を大きく突き破ってのタイトルにはならないのですが、それでも意味があります。

特にその初戴冠が若い選手であればあるほど、この戦国時代の今のテニス界に大きなインパクトを与える結果になります。

そして、私の予想もそれを反映しました。

予想

優勝 ティエム

準優勝 キリオス

ベスト4 ズベレフ ジョコビッチ

ベスト8 マレー カレノ=ブスタ ゴフィン ツォンガ

どうでしょう。今までの私からは考えらえない予想だと思います。

どうせ安全に行っても今のATPツアーでは全く当たらないので、調子のいいティエムの初優勝を予想しました。

マレーは手堅く勝ち上がりますがティエムにバルセロナ同様敗れる。第2クォーターはカレノ=ブスタ本命ですが、今週の疲れの分を考慮しました。ズベレフ、いいと思います。疲れのたまったチリッチに勝つ予想です。

ラオニッチーゴフィンのカードはゴフィンが勝利。錦織は、今はあんまり期待できないですね。8強予想にはできなかったです。比較的楽なドローをジョコビッチが勝ち上がるも、ナダル、ゴフィンと連勝して波に乗ったキリオスが決勝進出。決勝は迷いましたが、BIG4に2勝した分の代償としてガス欠かなと。

今回は予想しながら見てみるとかなり面白そうです(そして当たらない)

この2週間で、大変なことが起きそうな予感がぷんぷんしています。

two-set-down、新章始動

こんにちは。

長らくのお休みをいただきました。

twitterでお伝えしていましたが、関東に引っ越しました。

その準備などでバタバタしていましたが、少し落ち着いたのでこれからはきっちりこちらのほうも頑張っていこうと思います。

公私特に私の面がぼろぼろでした。とても何かをできる環境ではなかったです。

ただ、私は今年の最初に誓いました。

錦織圭が、本当に世界の頂点に行くなら、私はその時テニスの分析で世界の頂点に行く。」

残念ながら錦織は絶賛深い霧の中、という状態にはなっていますが、私は前に進みたいと思います。

それほどに、頑張ろうというエネルギーが帰ってきました。

経験則ですが、こういう時に前にできる限り進んでおくことが、停滞した時期に踏ん張れる要素になりうるからです。

正直更新できると甘い見通しを立て、皆様をがっかりさせたことも多数。twitterに簡易的な感想を述べている分をブログに回せたかもしれない。

皆様の評価はここ1年でかなり落ちたと思っています。

この記事を読んでも「またか、どうせ言葉だけでやらないだろう」と思っている方もいらっしゃると思います。

ですから、記事で皆様に伝えていく。それしかやるべきことはないのです。

思えば私は2014年10月にブログに戻ってくるときに、こんなことを言っていました。

「パリのドローが発表され錦織がツアーファイナルズに99%進めると私が判断した今日ブログを復活することにしました。

タイトルとか変えたのは気分です。もう一度一から頑張るつもりでやりたいと思います。そのあたりをタイトルで表現してみました。人生も2セットダウンからの勝負ですよね。そんな感じです。」

またしても私は2セットダウンの状態です。

もう後戻りはできません。

だから、必死に頑張ろうと思います。

奇しくもこの半年でテニス界は大きく変わりました。もう昔の価値観は通用しません。いわば、同じ装いをしたまったく別の空間になってしまいました。

two-set-down、第2期、新章の開幕です。

引っ掛かりの多い敗戦(2017ブエノスアイレス準優勝)

2/19 現地14:00~(日本時間翌日2:00~)

Argentina Open

Championship

[1]Kei Nishikori 6(4)-7 4-6 Alexandr Dolgopolov

試合感想の前に報告ですが、多忙な時期を抜けました。

いくつか大きめの残務処理も残っていますが、これからは(とりあえず以前よりは)定期的に更新できると思います。よろしくお願いします。

決勝の試合についてですが、とにかく残念だったという試合でした。

決勝に勝ち上がるまでの勝ち上がりも微妙な試合が2試合ありました。

ソウザ戦こそ会心のストローク戦を披露しましたが、シュワルツマン戦、ベルロク戦ともに苦しみました。

こうなってしまった原因はいろいろとありますが、ドルゴポロフ戦にも共通することとしてフォアが浅すぎたというのが最も致命的でした。

ハードコートだと浅いストロークでもパワーヒットすることで押し切ることができますが、クレーでは減速してしまいます。

遅くても跳ねるボールか深いボールを打てば相手から攻められることがないのがクレー。ここがハードコートと決定的に違う点です。

ナダルがクレーで絶対的な強さを失った理由もこのプレースメントが原因でした。切り札のフォアが浅くなることによって相手に拾われる確率が上がり、さらにナダルのボールは跳ねる分相手にとって打ち頃のボールへと変化してしまい、結果勝てなくなりました。

今週の錦織に起きていたのも、これと似たようなことだと考えられます。

そしてドルゴポロフは攻撃的な攻めを見せました。これがフィットしてしまいストローク戦でも苦しい場面が続いてしまったということです。

試合としては地味に大きかったと思っているのが1ゲーム目です。

試合のほとんどをリターンゲームで始めることが多い(トスで勝ってもリターン選択、相手がトスに勝った場合相手がサーブ選択=錦織リターン選択)錦織ですが、最近はブレークスタートになることが多かったです。

ここでもドルゴポロフのミスが続き15-40(うち錦織の失点もイレギュラーによるもので、ミスはなかったに等しい)となり、BPでもセカンドサーブが2つ続きました。

しかし1本目のセカンドサーブをかなり前で捉えようとした結果、ワイドの鋭いサーブに対応できず、次のリターンはうまく返したもののドルゴポロフのドロップがネットインという不運。一つ目の分岐点はここでした。

その後はドルゴポロフのサービスゲームに対してほとんどチャンスがない「ように見えました」。毎ゲームフリーポイントがドルゴポロフに入り、BPを握ることすらも難しい状況が続きました。

タイブレークでは一層その構造が強くなり、錦織は決して悪かったわけではないですが、ドルゴポロフのサーブをリターンすることもできず1stセットが終了。2セット目はブレークを許してしまい、なんと一度もブレークできずにドルゴポロフに敗れました。

もちろんドルゴポロフのプレーは素晴らしく、決勝に上がってくるプレーでした。トーナメントパフォーマンスとしてはここ数年でも有数の会心の出来だったと思います。

実際五輪の裏の週だった12年ワシントン以来の優勝。意外でしたが、ドルゴポロフはセンスでテニスをする分試合ごとにむらが出てしまう選手。誰にでも勝てますが、一方で誰にでも負けてしまう、そんなタイプの選手です。

4~5試合勝たないと優勝できないテニスツアーにおいて、いい時の調子が続くことが難しいという証拠なのかもしれません。

ですからドルゴポロフに錦織が敗れる、その事実自体は何回もやれば必ず起こりうることです。

ただ問題はその負け方でした。

華麗なストローク戦の打ち合いで敗れたのなら私は純粋にテニスで敗れた、ドルゴポロフの日だったと思い、いつも通りの次に切り替えよう、的なまとめでこの記事を締めていたと思います。

しかしそうではなかった。サーブで圧倒されなすすべなく敗れた。ここです。

過去5連勝し、最後に対戦したのも1年前とそう遠くはない。特徴的なクイックサーブに対しても柔軟に対応できたからのこれまでの結果です。ドルゴポロフのサーブが少し良かったとはいえ、それだけであそこまでサービスゲームがノーチャンスになったでしょうか?私はノーだと思います。

ではなぜそうなってしまったのか?答えは一つだと思っています。体が異常に重かった。

この試合、いやひとつ前の準決勝から、錦織のフットワークは格段にいつもより悪いように見えました。

なぜかはわかりません。全豪後休みもそこそこありました。クレーへのサーフェスチェンジもありましたが、そのハードワークだけで説明するにはあまりにも不十分です。

昨年マドリード→ローマの地獄のような連戦をベスト4、ベスト4で切り抜けた錦織が、まるで翼を失ったように横の動きが鈍くなり、しかも一発強打を打たれるとすぐに返球をアウトしてしまう。粘りが全くありませんでした。

さらに悪い時のクロスラリー偏重の組み立ても散見され、強打したいドルゴポロフに自由なボールを与えすぎました。

これが試合中ずっと続き、かつ終盤落ちてきたドルゴポロフに対してそれよりも錦織側が落ちてしまい、スコア以上に勝てる見込みが見えない試合でした。

ドルゴポロフのサーブはよかったようにも見えますが、1stは59%しか入っていませんでした(錦織は63%と実はドルゴポロフよりも入っていました!)。しかもクレーです。最も遅いはずのサーフェスでなぜあそこまでサーブだけがクローズアップされるゲームになってしまったのか。これをサーバー側だけを理由に語るのはおかしいでしょう。

正直、250であっても連続決勝、本来問題ないです。

ただ、過去5連勝中の対戦成績、第1シードで出た大会の決勝はすべて勝利、クレーで30位以下の選手に負けることは14年の覚醒以降けが以外の理由でなかった(もちろんドルゴポロフが66位とずいぶん低いランキングに落ちているのは、彼の実力に見合っていないことは認めるとしても)、いろいろな勝ちパターンが予想もしなかった負け方で崩壊しました。

ブリスベンのディミトロフ、全豪のフェデラーは、錦織も見せ場を作り意地を見ました。テニスの内容も大幅に悪かったとは言えません。ですから私は(機会は少なかったですが)ことあるごとに「問題ない、このままいけばよい」とコメントし続けてきました。

その2敗と比較すると、この1敗は非常に異質な負けに見えた、というのがここまで辛口のコメントになっている理由です。

私の嫌な予感が杞憂に終わればいいのですが…

ブエノスアイレスのコートは石が落ちていて、イレギュラーが多かったと本人も語っています。

不可解な動きの鈍さがブエノスアイレスの環境によるものであれば、リオで何事もなかったようにまた勝っていくと思います。

初戦のベルッチ戦は早くも明朝に迫っています。その答えは、もうすぐ出ます。

本年度もよろしくお願いします

年が明けました。

本年度もよろしくお願いいたします(書いてるのは2016年)。

いくつか2016年回顧の記事を並べた後は、スムーズに2017年の話題に移行したいと思います。

2017年の私個人のブログに対しての目標などです。

①閲覧数2000万

②記事数200

③定期記事を更新し損ねない

④ランキング試算48週1ミス以内

まず①ですが、これはかなり厳しい目標です。

2015年にぎりぎり達成できたか否かですが、今年度は2月まではあまり更新できないのと、もちろん錦織が1年間ツアーで活躍できなければ、残念ながら私の記事の内容にかかわらず閲覧は減ると思います(笑)

なので、自分でコントロールできる要素/できない要素ともに厳しい条件です。

ちなみに、スポナビブログで一番読まれているのがプロ野球死亡遊戯さんの通算7000万なので、1年で2000万がいかに無謀な目標かは明らかです。

②も1~2月と12月のオフシーズンに更新数が伸びないことを考えると、厳しいです。

ちなみに2014年は46、2015年は169、2016年は60記事でした。

2015年も終盤はかなりきつかったので、ちゃんとペースを守ってやれば不可能ではないかなと思います。

今年は14~15年に書くはずだった、温めてた持論の話、テニスの戦術的な話とかもしたいと思っています。

③ですが、いっとき更新すると言って結局できなかった

・ウィークレビュー

・ウィークプレビュー

・ランキング試算

これを上げ続けることです。

序盤はランキング試算だけとりあえず優先する予定で、これは日曜~月曜に必ず更新できるようにします。

落ち着いてからは全部更新できるようにします(なので200記事はそんなにきつくはないという予想)

④ですが、ほんとはノーミスと言いたいんですが、週に1回以上のペースで膨大なデータを更新し続けてノーミスはきついかなと。

ほんとはノーミスがあるべき姿なんですが。30位までの情報を1年間続けるのは難しいです。

そして最後に

⑤独自の分析ツール製作

です。

これまでテニスの分析は、様々な方がいろいろな手法を使って行ってきました。

私も、いろんな見方をこれまで示してきたと思います。

ですが、それらは確立された手法ではありませんでした。私もBPPとかあのキリオス戦以降使っていない…

年末にスポナビブログで書かれていたいくつかの記事も見ました。

いろいろと、思うことがありました。

そこで、今年はテニスの試合を見るにあたって気を付ければいい新しいポイント獲得率などの指標を研究し、公開していこうと考えています。

またそれにあたって、独自のインターフェースを開発し、ポイントを記入することで勝勢、次に狙えばいい作戦などを返してくれるようなアナライズシステムを作りたいと考えています。

ビジネス目的ではなく、本当にただの趣味です。

これがどれだけ難しいかはわかっています。考えなければならないことはゆうに100を越えます。

ランキング、プレースタイルの相性、調子の時間変動、確率の分散、統計数と信頼性などです(少しこの辺も記事にしたいです)。

私はかねがね疑問に思っていました。

野球ではセイバーメトリクスで議論が行われるようになり、確立された手法で様々なアプローチから選手の評価を再構成し、そしてチーム作りに生かされています。

日本では残念ながら今のところスポーツは選手の個人主体、パーソナリティばかりが注目される現状です。

しかしこのセイバーメトリクスの例にあるように、スポーツは、もっとデータを正しく見ることで面白さを作り出せる、新たな付加価値を作り出せると思っています。

日本でできないわけではなく、まだその文化が定着していないだけで、誰かがその手法を確立すればいいのです。

黙っているだけではだめです。私がテニスでそれをやる。そのための一年にしたいと思っています。

錦織圭が、本当に世界の頂点に行くなら、私はその時テニスの分析で世界の頂点に行く。

これを強く宣言して、今年の年頭所感とします。

今年も多数のメディアで情報発信していきますが、引き続きよろしくお願いいたします。

BIG4に肉薄できるからこそ見えた「明確な差」(2016WTFRR2戦目~SF)

こんばんは。

2016年も年の瀬になってしまいました。

私の方はと言えばほとんど毎日年の瀬状態で、ついにATP公式を1週間以上見ないことも普通になってしまいました(WTF期間中も、です)。

ゴールはまだ遠いですが、少しずつ見えてきています。

一刻も早く自分のことを片付けて、また元の状態に戻したいです。

楽しみにされている方にはたくさんご迷惑をおかけしていますが、あと少しの辛抱です。

さて私もびっくりしているのですが記事がWTFワウリンカ戦で止まっているので、それ以降3試合の錦織を先に振り返ってから、年間振り返りに移っていきます。

まずマレー戦。見事でした。今シーズンのベストマッチの一つと言っていいでしょう。

試合展開としては初戦で勢いを出した錦織と年間1位を狙うマレーのがっぷり四つの攻防でした。

第1セットは錦織がラリーの主導権を握り、チャンスも来ます。

しかしBPでのレベルの高いラリーにこの脱帽です。

BPのボールはGAORA解説にあったように上下スピンコース全部変えながらミスを引き出してるんだが届かないなんというレベルの高さ— twosetdown (@twosetdown) 2016年11月16日

当たり前ですが同じような球種ばかりで打っていたらプロですから返せてしまいます。

どうやってミスを引き出すか?といえば、深いコースに打って跳ね上がりを打たせて返しにくくするか、球種を変えて対応するためのスイングを変えさせることでミスを誘います。

これをBPで難なく彼らはやってのけます。この試合を象徴するにふさわしい一本でした。

タイブレークでは錦織が先行し、6-3とします。

しかし6-5としてからの最後のプレーです。チャンスボールをバッククロスで前で叩き込んだ錦織でしたが、横に大きく切れていくボールに対してマレーがなぜか追い付き(!)そして最も適切なコート奥に返球します。

この最後のボール、もう少し待って走り出しを見てから打ったほうがよかったんでしょうが…文句は言えないでしょう。

マレーの予想、返球力、すべてが噛み合ってのポイントでした。

このあとは両者セットポイントを入れ替えながらのデュース合戦。8-9からのスマッシュは心臓が止まりかけました。

前に落ちたチャンスボールを叩いた錦織でしたが、叩きすぎて大きくワンバウンドした後マレーに拾われ、下がりながらのジャンピングスマッシュ。インドアの暗いコートにデ杯のミスを思い出した人も多かったのではないでしょうか。

結局最後はマレーのミスで錦織がタイブレーク11-9でセットを先取。準決勝進出に向けて大きな1セット獲得です。

ただ驚くべきはこの後でした。ほんのわずか、それを致命傷と呼ぶにはあまりにもわずかな錦織の落ち込みに乗じてマレーが1ゲーム目をブレークします。

驚きました。普通ならばタイトな1セット目を落としこの高いプレー内容。逆転は難しいかに見えますがマレーはいとも簡単にブレークしました。

その後はお互いキープが続きますが、やや疲れが見えてきます。

無理もないです。普通なら2セット終わってもおかしくない1時間20分の第1セットのあとに同じプレーを求めるのは難しい。

しかしここでマレーがとんでもない作戦を出してきました。

途中までじり貧のラリー、ミスもお互い増えてきていたにもかかわらず突然マレーが攻め始めました。

これが体力フレッシュな全豪ならわかるよ、わかるでもこの人、北京から7週で20試合目で無敗なんだよ…— twosetdown (@twosetdown) 2016年11月16日

開いた口が塞がらないとはこのことでした。

何か見てはいけないものを見ているようなそんな感覚でした。

最もこの地点のATPツアーで体力的に厳しいはずの男が、ここで攻める選択をして完璧に実行してくる。

しかし、これが私たちが長年見てきたBIG4そのものでもあります。

2012年、全豪OPQFに進出し、当時QF進出者ではデルポトロと並んで若手の部類にいた錦織。

ツォンガを撃破し、飛ぶ鳥を落とす勢いだった錦織をあっさりと3セットで片づけたのがマレーでした。

それだけではありません、BIG4はこの時ベルディヒフェレール、デルポトロ、錦織という4人に対し失セット1、セット12-1でSFに勝ち上がりました。

そしてそのマレーが当時「BIG4最弱」(この当時のマレーはGS優勝なし、最高2位の時代)という共通認識で、実際この後の準決勝では、ジョコビッチ×マレー、フェデラー×ナダルがそれぞれ4時間50分、3時間40分の熱戦。決勝では歴史に語り継がれる5時間50分の死闘を制してジョコビッチが優勝。

そうです、BIG4はレベルの高いプレーを、2試合続けられる。しかもそのレベルは誰にも到達できないもので、さらにフィジカルも異次元。

そんなテニス史に残る伝説の選手が4人揃っているのが今の時代です。

一方錦織に隙があったとすれば、ドロップショットの多用でした。

アクセントとしてドロップショットを使うことに何ら問題はないですが、精度を欠き、ドロップを打ったポイントではほとんどポイントを獲得することができず、マレーを走らせる以外に効果がありませんでした。

しかもこのドロップショット、有利な場面でコースを散らすために打つのではなく、ラリーの組み立ての途中で苦し紛れに打っているボールが多く、いわゆる「逃げ」の姿勢が垣間見えました。

このドロップミスがブレークされたゲームで出てしまいました。

マレーは徐々にペースアップを図っていましたが、錦織はしっかり食らいついていたと思います。

だからこそドロップショットが目立ってしまいました。

難しいゲームでした。勝てたゲームだったのかもわかりません。

レベルが高いからこそ、なんとでも言えてしまう試合が存在するということはこれまでも言ってきましたが、今回もそんな試合でした。

ペースアップしたマレーから土壇場で1つブレークを返すなど、トップ選手としての錦織のプレーに疑いはありません。

しかし結果は負け。多くを持ち帰ったゲームだと思います。

時間も経って安易な分析になっていますが、おそらくかなりマレーとの試合でやるべきことは陣営も分かってきていると感じました。

15年ごろは「マレー苦手なのでは?」という私の意見でしたが、マレーがやってくる錦織対策を対策し返すことで、錦織がしっかり地力を上げて、最近ではゲームが壊れることがほとんどなくなりました(五輪SFはさすがに疲労を考慮に入れないといけない)。

ただこの試合以上に錦織の現状について考えることになる試合が2つ続きました。

チリッチ戦は1セット目を取ってから大崩れ。この試合は残念ながら私はまだハイライトしか見れていません。映像も持ってないので、確認は不可の状態です。

そしてジョコビッチ戦。この試合は世界の多くの見方が「ジョコビッチのベストゲーム」という解釈でしたが、私は違います。

確かに目の覚めるようなボールをジョコビッチはたくさん打っていました。コースを読まれて叩かれました。

しかし一方で、そんなボールをジョコビッチは簡単にミスしているように見えました。なんでもないボールをネットにかけました。マレーと違い、そこそこの休息もあったはずなのに、です。

事実このスタッツが証明しています。

It took just 66 minutes for @DjokerNole to finish off Nishikori. Will his freshness be a factor when he faces #Murray on Sunday? #ATPFinals pic.twitter.com/BNzSXnqSNz— Tennis TV (@TennisTV) 2016年11月19日

ジョコビッチストローク戦ではほぼウィナーと同数のUEを打っています。14ゲームとゲーム数も少なく、あれだけ試合が淡白だったことを考えるとそこそこ多い数字です。

もちろんレベルの高い試合でできていたことを次の試合もやることが簡単でないのは明らかで、錦織に求めすぎなのかもしれませんが、少なくとも前半戦のジョコビッチと比較すると見劣りする要素もたくさんあったのに、どうしてあそこまでゲームが壊れてしまったのかという気持ちが消えません。

事実これだけの短い試合でありながら錦織がUE23本(DFを抜いた本数)も打っているのがすべてで、この時錦織は攻め全振りの状態にして、リスク度外視でボールを打っているように感じました。

それをジョコビッチはコースを読み切って、カウンターの要領で返し続けることでポイントロスを防ぎ、攻めれる時だけ攻める。やることがはっきりしていました。

なぜコースを読まれたのかはわかりませんが、攻めを全振りにすると悪い癖とかが出て読まれるのかなーなどと思ったのですが、かなり推測の域を抜けません。

とにかくリスクを取らされているのは常に錦織で、サービスポイントを取れなければポイントを取る形が作れない状況、一発に頼るしかない。

さながら年明けの全豪OPを見ているようでした。悪い意味で、逆戻りしました。

ただ今回はこうなってしまったのが疲労の影響なのは否めませんが、今回のジョコビッチであれば意外とじり貧ラリー戦に持ち込んでもそこそこ粘れた(少なくとも今回の結果よりは)ので、結局最後までそれを試すことがほとんどなかったのがとても残念でした。

年末のインタビューでも錦織はジョコビッチが一段飛び抜けている、と一貫して発言していますが、テニスツアーを見ているとそんなことはないと私ははっきり言えます。

今のジョコビッチは残念ながら(原因はいろいろあるでしょうが)、前半戦の誰も手が付けられない状況からは数段落ちているというのが現状です。上海SFアグー戦、パリQFチリッチ戦でもそうでしたが、簡単に後サーブのキープを失敗してセットを落とし、なんでもないラリーからミスします。

こういう抽象論はよくないのですが、王者のオーラ、覇気のようなものが消えてしまっているように思います。

そのジョコビッチに対して、疲労がたまっている錦織がどんな風に攻略していくのか?ジョコビッチのプレーに疑問符が生じ始めた後半戦に入ってから初めての対戦。私はかなり楽しみにしていましたし、事実やり方をうまく考えればチャンスもあったと思っているだけに試合を終えてかなりがっかりしています。

奇しくも全米マレー戦勝利→ワウリンカ戦、そして今回のWTFマレー戦→チリッチ戦と、錦織は1試合フル+1セットまでは頂点に立つことができるいいプレーを続けられても、そのあとガクッと落ち込んでいます。

先ほどBIG4はBIG4同士で2試合高いレベルのプレーを続けられると書きました。

今シーズンを終えて、なおのこと錦織圭のテニスに疑いがなくなった、本当に強くなったと感じる一方で、ここから頂点に立つには、やはり心技体の「体」なのかな、と感じました。

このわずか0.5~1試合の燃料タンクの差が、大きな差です。

では具体的にどうすれば?というと、私はフィジカルとかスポーツ医学に詳しくないのでわかりません。

勝ち上がりの運に恵まれるか、疲労をためないで終盤戦に入れるようにプレーを改造するか。

とにかく、このギャップを埋めないといけません。

デ杯マレー戦から、私は次のようなことを言っています。

2014年に皆さんが描いていた「GSを取る錦織圭」、そのあまりにも高い要求だったものがいよいよ皆さんの前に姿を現したと言っていいでしょう。

チャンスは、必ず来ます。ピーキングを今回のようにしっかり合わせ、割けるところにリソースを割き、そしてGS本番と同じように中1日で試合すれば、フルスロットルでGS取れるプレーが5時間持つということが証明されました。

マスターズはわかりませんが、GSではこれをQFでギア入れ始め~SFトップギア~決勝惰性で行けば取れます。取れるイメージが私は湧きました。

そうです、トップ選手でも信じられないプレーのピークは、たった2~3試合程度しか続かない。

その2試合をどこで使うか。あとはそれだけです。