two-set-down新章

two-set-down新章

スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

最近多いテニス界の誤解を解いてみる

こんにちは。

長い休息をいただきました。全仏予選も始まり、ぼちぼち気合を入れていかないといけません。

さて、驚くべきニュースはたくさんあるのですが、今日は少し趣向を変えてネタ記事です。

最近様々な場所で昨年までには聞かなかったような言葉を聞きます。

長きにわたってテニスを見てきた人ならば当たり前のような事実ですら多くの曲解によって間違いとされることも多くなってきた昨今、ここで間違いを訂正することは非常に大事なことだと考えネタ記事として取り扱います。

錦織圭は左利きが苦手

誰が言い出したかこの話。真っ赤な嘘であることは明白です。

おそらくきっかけはIWのロペス戦敗北後のあたりだと思われます。これに対しては明確なデータがありますので反論して終わりにしたいと思います。

錦織圭 生涯成績 220-112 .663

対右 188-94 .667

対左 29-15 .659

ちなみに対左と対右のデータを足しても生涯成績にならないのでは?と言われそうですが、ATPでは記録の残ってるデータしか扱ってないそうなので、利き手情報すらない下位選手との対戦データが詳細に残ってないからだと思われます。

ここで対左に1勝加えるだけであら不思議、対右と同じ勝率になります。

相性が悪いというのは統計的にここまでデータがたまっていれば1割以上、ちょっと厳しめに見ても5分(1割の半分)は必要だと思います。同じ勝率なのにどうしてこんな誤解が広まったのか…

加えて15敗のうちの7敗はナダルナダルの成績を除けば29-8で8割近い勝率になります。

むしろ左利きは得意な方だと思います。バックハンドを苦にしないので左利きのフォアクロスに打ち負けないのが要因ではと思います。

左利きというよりはナダルに、しかもナダルに負けるのはもはや当たり前なので結論としては左は得意ですよ。断言します。

錦織圭はビッグサーバーが苦手

マイアミのイズナー戦で聞き始めました。

これについては反証はいくらでもできるのですが、まず一つにはビッグサーバー街道と名を打ったメンフィス、もちろん苦しんだものの優勝したのは錦織圭です。

しかもやや予定していた対戦相手とは違ったとはいえ、特に最後の2試合、クエリーとアンダーソンというのは典型的なビッグサーバーです。

加えてメンフィスはボールも飛びやすく高速サーフェス。ビッグサーバー有利のこのコートで3連覇しており、2014年にはカルロビッチにタイブレ7-0を達成している選手がビッグサーバーが苦手?不可解です。

ちなみに錦織の対ビッグサーバー対戦成績を並べておきましょう。

2-0ミュラー

5-2ラオニッチ

3-3ロペス

1-2カルロビッチ

3-3クエリー

2-0(+1)アンダーソン

0-1イズナー

16勝11敗。ちょっと苦手な数字かもしれませんが、ロペス、クエリーは伸び悩んでいた12~13年対戦のデータがたくさん残っています。2014年以降の対戦に限定すると10勝4敗。キャリア勝率と比較してもそこまで悪くありません。

確かに初期のころはビッグサーバーは苦手だったかもしれません。リーチの短い錦織は相手サーブを攻略するヒントを試合で探していくしかありません。

カルロビッチにもデ杯で最初に当たった時はいいようにやられてしまいました(この時はカルロビッチのサーブ&ボレーが面白いほどに決まっていましたが)。イズナーもセカンドサーブ攻略に苦しんだ結果があの惨敗です。

しかしクエリーにはここのところ2勝、カルロビッチにもあのメンフィスでリベンジといったように複数戦えば次第に錦織がきっかけをつかんできています。たくさん対戦していて実力差もあまりないラオニッチに勝ち越しペースなのもこういった要因があるのではと思います。

ただ一つ言えるとしたら、ビッグサーバーと相手しているときに錦織はつまらない気持ちになっているということをウィンブルドンデシュッパー戦やラオニッチと当たる時に何度かコメントしています。

錦織はリターンから流れを作っていく選手で、逆にリターンゲームで何もできないとサービスゲームに影響が出てしまう選手です。

苦手かどうかはおいておいて、テニスとしてやりづらいのは確かかもしれません。ただ苦手と断定することは避けたいところです。

③ポイント、ゲーム、セットの誤用

テニスのカウントについての話です。

どうも最近のテレビ実況を見ていると、あるいはスポーツニュースなどを見るとテニスのポイント、ゲーム、セットカウントの誤用が目立っています。

まず、次にポイントを取ればサービスキープできるポイントのことをゲームポイント(GP)と言います。

反対に次にポイントを取ればブレークできるポイントのことをブレークポイント(BP)と言います。

ひどいところではこういったところでの誤用がありました。

セットの数え方です。

当ブログのタイトルであるtwo-set-downですが、全豪オープンの頃に誤用があったので紹介します。

「two-set-down」とは、セットカウント0-2のことです。「two-set-downからの逆転勝ち」とは、0-2からまくって大逆転勝ちすることのみを指し、単に2セット落として3-2で勝つ(例、デ杯の錦織×ラオニッチなど)は含まれません。

またこれに関してですが、twosetがdownしたというのが正しい英語解釈です。この場合のダウンはビハインド状況といったニュアンスの意味です。2セット分負けている、というのが近い日本語訳でしょうか。1ブレークダウンなども同じ使い方です。

また基本的にはテニスのゲームカウント、セットカウントはリードしている方から数えるという原則があります。

最近の報道では錦織主観のため錦織側から数えることが多くなっていますが、原則どちらがリードかを宣言してそちらからゲーム数をコールするのが正しい数え方です。

例えばラオニッチが5ゲーム、錦織が2ゲーム取った状態で第8ゲームを錦織がキープした場合のコールの仕方は

「game Nishikori, Raonic leads by 5 games to 3」(ゲーム錦織、ラオニッチリーズバイファイブゲームズトゥスリー)

※やや表記ゆれやbyが入っているかは怪しいですが、大筋は合っています

また「5 games to 3」というこの部分、音声を扱う日本メディアでは踏襲されていません。非常に残念です。

ゲームカウント5対3という表現を見てがたがたと崩れ去ったのは昔の話です。この間違った表現は訂正されるべきだと思います。

○対×以外のポイント表現は他のスポーツではほとんどないので、テニスが特殊というのが事実ではありますが、しかしだからといって間違っていいわけはありません。ゴルフのスコアで「+1」って書いてるからと言って「ぷらす1」と読まないのと同じ論理です。ワンオーバーと読みますよね。テニスもそうあるべきなのは間違いないことです。

他にあった誤用を解消するための用語集です。ご活用ください。

SFS(サービング・フォー・ザ・セット)…次のゲームをサービスキープすればセットが取れるサービスゲームのこと。

同様に、サービスキープすれば試合が取れる場合のゲームをSFM(サービング・フォー・ザ・マッチ)といい、サービスキープすれば優勝する場合のゲームをSFC(サービング・フォー・ザ・チャンピオンシップ)と特例で呼んだりします。

UE(アンフォースドエラー)…自発的に犯したミス。打点にしっかり入りながら、普通のボールをミスしたときにカウントされる。わかりやすいのはスマッシュミスなど。DFも一応入る。対義語にFE(フォースドエラー)という仕方のないミス(1stサーブのリターンなど)がある。FEとUEの線引きは難しく、その試合ごとに記録員の判断で決めているので1試合のスタッツとして残ってもATPが年間蓄積として公式スタッツには残していない。

DTL(ダウンザライン)…いわゆるストレートショット。ラインと平行に軌道が描かれるからこの名前がついている。対義語は一応挙げるならクロス。フォアで打てばフォアDTL。バックで打てばバックDTL。テニスは事情によりクロスラリーが多くなるので、DTLは難しい。しかし打つことができればラリーの展開を変えることができる。

④エア・ケイの誤用

エア・ケイってそもそもなんですか?この辺りがあいまいになってきている気がします。

もちろん100%正しい定義があるわけではないのですが、私の見解としては「フォアハンドでジャックナイフをサービスラインより前で打った時」ということにしています。

ジャックナイフという単語が出てきました。このショット名、知らない方も多いと思うので解説しますと、ジャンプしながらやや前に飛び出し、体重を乗せて打つショットのことです。

基本的にはバックハンドの時に使うことが多いショットで、フォアハンドで使っている例は錦織以外あまり見たことがありません。

ジャックナイフの利点としては高い打点から打ちこむことができるうえに、バックハンドの泣き所である高い打点をジャンプすることで低い打点に変えることができ、パワーショットを打つことができるという意味があります。

フォアハンドは普通片手打ちなので、可動域も広くジャンプしてバランスを崩すくらいなら普通に打った方がいいのであまり見ません。

しかしジャンプすることで相手の走り出すタイミングをずらす効果があり、錦織はこの側面から(身長が低いのも影響しているとは思いますが)フォアハンドでもジャックナイフを打つことがあり、これがエア・ケイの発端です(海外メディアが最初に言い始めたものと推測されます)。

また全豪OPではベースラインからこのようなフォアハンドを打ちましたが、あれは個人的にはエア・ケイではありません。

エア・ケイは基本的に浅いチャンスボールに対し相手がギャンブルの二択でディフェンスのために踏み出す一歩目を封じる、あるいはそれを見てから逆に打ち込むためのタイミングずらしの効果があるので、基本的には100%決めれるチャンスボールの時に繰り出しているもの限定だと思っています。

錦織はバックハンドで普通にジャックナイフを打つ時もありますが、これは「バックハンドのジャックナイフ」と普通に呼んだほうが正しいと思います。印象の問題かもしれませんが。

他にもBIG4の誤用とかギアを上げるとかいろいろ挙げだすときりがないのですが、主だった話はこの辺で終わりだと思うので終わりにします。

でもこの記事のネタはだいぶ前から溜まっていたので全部書ききれたかどうかは怪しいですね。もしかしたら将来的に追記するかもしれません。

今日中にイズナー戦も含めてコメントを返信できたらと思います。明日からいつも通りに戻ります。それでは。