東京五輪テニスの出場条件について④race to Tokyoを運用します
この記事は東京五輪テニス競技の大枠を事前に理解しようというシリーズの4番目の記事です。 先にこちらの記事を読むことを推奨いたします。
というわけで、ここまで3回やってきてやっとこの議論ができるということで、今回が最終回です。
過去3回は、今回のランキング予測の意味と細かなルールの前提を知ってもらうための回でした。ここまでが半分、今回が残り半分というくらい重要な最終回です。
大変長らくお待たせいたしました。思った以上に表を作成し、きれいに成型するのに時間がかかってしまいました。
本題に入りましょう。
五輪エントリーの基準となる日付である2020年6月8日は、全仏終了後の月曜日です。
つまり最後の全仏で一発逆転可能。16強で180pですから(ATPの話)、800~1000p付近がボーダーである以上なんとでもなります。NAFボーダーに対してのパリと同じ感じですね。
結局、その全仏後のランキングを予測することが五輪出場ボーダー読みに繋がってきます。ではその特定の週のランキングを予測しているところはあるのか?結論から言うと私は一つしか知りません。最近LIVE ATPよりも信頼度が高いのでは?と思っているopen era rankingsです。
ここでは昔のランキングも計算されていて、順次アップデートされていくそうです。そのうちATPよりも正確になるかも?*1
しかしここのランキングでさえも、既に不出場を表明しているティームなどの分を飛ばしてボーダーを読んでいるわけではなく、厳密には不正確な状況となっています。
そこで、それらの出場可否まで込みでの完璧なボーダー読みをここのブログでやっていこうという大きな取り組みを行います。
ランキング試算は基本しないと言っていましたが、今週から不定期にこの試算をやっていきます。題して「race to Tokyo」です。
もうお分かりかと思いますが、そこで重要になってくるのが③で紹介したあの表です。あの表によって、上位選手でもデ杯出場回数のため出場できない選手を弾き、さらに各選手のキッツビュール/アトランタのエントリー状況(五輪の裏の週)を加味して、正確なボーダーを読んでいくのがrace to Tokyoです。
2/24現在、出場しない/裏の大会に出る意思を示している選手の一覧です。
ティーム…裏のキッツビュールに出場
クエリー…出ない意向
Sam Querrey to skip Tokyo Olympic tennis tournament
エバンズ…個人の考えにより、出ない意向
Dan Evans says he is unlikely to play at Tokyo 2020 Olympics | Sport | The Guardian
イズナー…USハードコートシーズン優先のため、出ない意向
John Isner reveals the reason for skipping the Tokyo Olympics
以上4名となっております。
それでは実際に、ロッテルダム/ブエノスアイレス/ニューヨークまでの結果を加味した2/17付のランキングを見てみましょう。*2拡大して見たい人も多いと思うので、4枚に分けました。
なお2/17ランキングなので、西岡の準優勝のポイントなどは入っていません。間違えないように注意してください。
表の見方について説明します。
rankはrace to Tokyo上のランキングです。actualは欠場を表明している選手+資格を満たさない選手を省いたランキング(エントリーリスト想定)です。2/17のボーダーはククシュキンで、531ポイントです。
moveは前週とのrankの変動です。actualの変動ではありません、ご注意ください。
国別ランキングの国名は五輪コードで書いています(間違ってたらごめんなさい)。だいたい雰囲気で分かるとは思いますが、スロバキアがSVKでスロベニアがSLOです。間違いやすいのはこの辺かなと。補足しておきます。
表の枠を囲っている色についての解説です。
薄い青で囲った選手は条件を満たしていて、かつこのままならクリアしている選手です。
薄い緑で囲った選手は、1回以上のデ杯出場経験があり、パネル申請が必要な選手です。
薄い黄色で囲った選手は、キャリア中のデ杯出場経験がないため、パネル申請が通りにくそうな選手です。
薄いオレンジで囲った選手は、デ杯出場条件を確実に満たせない選手です。今のところDA圏内はディミトロフのみですが、アルボットも該当しますし、今後報道ではっきりする可能性もあるので一応分類しておきます。
薄い赤で囲った選手は、デ杯出場状況のいかんにかかわらず、国別にDAできそうな選手の中で5番手以下の選手です。
薄いグレーで囲った選手は、オリンピック欠場意向の選手です。
また、「EU」はITF枠のヨーロッパ枠で、56番以内に入らない選手の中で、他に誰も同じ国の選手がエントリーしていない国の1番手に与えられます。この段階ではイメールです。
解説しなければいけないポイントが多いので、順に説明していきます。
・黄色選手の動向について
現在DA圏内で黄色の表示になっているのは、アンベール、サングレン、ケツマノビッチ、コプファー、ダックワースです。
アンベールについてはご存知の通り最近ランキングが上がってきて、しかもフランス人選手。フランスの層の厚さは言うまでもないので、なんとでも申請できそうではありますが、果たしてどうなるか。本人が五輪出場の意向があるかもわからないので、FFT(フランステニス協会)がどういうイメージで考えているのか次第だと思います。ガスケ、ツォンガが逆転できるかも注目です。
サングレンはこの4年間100位付近をうろついていて、アメリカ人選手なのでデ杯招集も普通にしていたらかかりません。
今回3月の予選ラウンドでは、アメリカは回数の足りていないオペルカ、フリッツ、ポールをパネルへのアピールのため(?)招集したものの、サングレンは呼ばれず。これをITFとUSTAの間でどう説明するのかが焦点です。本人の意向次第では、外れる可能性もそこそこあるのかなと思います。そもそもUSTAがどこまでメダル意識してるかですね…衰退の一途をたどっているアメリカテニス界。出たい人に出てもらう方向にシフトしてそう。
ケツマノビッチは年齢的にニューカマーなど使えそう。セルビアも層が厚いのでここは問題なさそうか。
コプファーはドイツの層の厚さから考えると意思があれば出れそう。ただしこの選手の場合ボーダーを守り切れるかの方が焦点。ここからが正念場です。
ダックワースはオーストラリアの層の厚さを考えると行けそうではありますが、主戦がチャレンジャーなのでここからどうポイントを積み上げていくか。
今のところ、ボーダーを高めに見積もる必要があるのでこれらの選手は全てDAできるものと処理しています。有識者の方と議論した結果結論が出るようであれば、順次色を変えて対応していきます。
・オレンジ色のディミトロフですが、③でも紹介したように厳しいので外しました。海外メディアも出場は厳しいという論調で、本人も諦めている?意向だと紹介していました。
・赤色についてですが、5人目以降で弾かれる該当国はフランス、スペイン、アメリカ、イタリアです。
かつてに比べてトップ選手の出身国もバラエティ豊かになり、かなり少なくなった印象です。
なおアメリカはイズナー、クエリーが不出場のため、6番手までを通常色、7番手以降を赤にしています。
・フェデラー、ワウリンカは出場できるものとしました。ただし色付けのルールにのっとり、パネル申請が必要であることから緑色表記にしました。
DA圏外の有力選手についての取り扱い
・錦織はアカプルコの週までテニスをしないため、これ以降のエントリーではしばらくPRが使えるようです。
これが事実だとすると、五輪DAをランキングで弾かれることはなくなります(五輪でPRは使用可能)。
再度ここでも書きますが、錦織はパネル申請は必須、その際デ杯出場が1回か2回かは申請の通りやすさに影響するため、エクアドル戦での出場は望ましいというのが私の見解です。
ITFがどこまでパネル申請をきっちりやっているかは不透明です。五輪開催国日本のスターにはそれなりの便宜が図られることは想定されますが、それでも謙虚な姿勢は見せておくべきというのは皆さん共通の認識だと思います。
・デルポトロは復帰が夏となるため、ポイントを稼げないためDAでの参加は不可。デ杯要件は満たしているので、本人の意思次第でPR使用で出場となります。
本来ボーダーはこのデルポトロも加味するべきだとは思っているので、次回以降動向を見て追加するかもしれません。
・アンダーソンはPRが使えるかもしれませんが、南アフリカのナンバー1を維持しながらデ杯に一度も出ていないので、ほぼ確実にパネル申請を通りません。なので今後は議論から除外します。
・マレーはDAラインから遠くないところにいるので、DAもまだ可能です。いつ復帰するかによりますが、マレーが貢献枠になるのか、DAになるのか、はたまた出ないのか。64人の枠のうち最後の1枠のキャスティングボードを握ることは間違いないと思います。動向から目が離せません。
ということで、ここまで長い説明になりましたが五輪出場要件と現状の整理を行ってきました。
race to Tokyoは随時アップデートしていきます。ブログとTwitterでそれぞれ公開していく形になると思います。
ここまで真剣にやってるのは私だけだと思います。オリンピックは私にとってもこれまでの活動の集大成。しっかり追っていきたいと思いますし、色々準備はしています。あとお仕事ください