two-set-down新章

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スポーツナビブログ「とらきちの悠々自適生活」 「two-set-down」に続く3代目のブログ。two-set-downのブログの記事の置き場も兼ねる。

まさにアウェーの洗礼、将来へつながる大きな勝利(デ杯WG予選ラウンド)

厳しい戦いでしたが、日本デ杯チームが11月のデ杯本戦への進出を決めました!!!

 

戦前の予想では日本チームの3連勝という見立てもありましたが、2つの大きな誤算がありました。

まず1つ目がアウェーの洗礼でした。

今回は日本チーム久しぶりのアウェー。錦織加入後、これでもかとホームが続き、特にここ7年(12年の1つ目のタイ含む)でホームアウェーは今回の中国戦を含んで12-4。カナダ、コロンビア、イギリスで3連続アウェーが続いた以外はすべてホームでした。

そのうち、この時のアウェーを経験したメンバーはダニエル、西岡、内山で、西岡はいわゆる「捨てダブルス」のみ。デ杯と言えば有明や靭で応援する、というのも悪い意味で定着してきていた矢先の今回の中国遠征でした。

 

中国チームはきっちり準備していました。今回のデ杯に焦点を合わせてきました。世界ランクトップ100なし、ダブルスのスペシャリストも「見た目上」なし。ツアータイトル経験ありを単複ともに2名ずつ揃える日本に勝つには相当な何かが必要でした。
しかし「ホームである」ことで、一気に可能性が開きます。

私見ですが、デ杯で大きなアップセットが起きるときに、アップセットを起こす国がホームである確率は、5割をはるかに超えていると思っています。

日本ホームが続き、ホームの恩恵を感じることが難しいですが、実際日本ホームの時に吹く神風のようなものはあると思います。

逆に中国は今回それを活かしました。高速コートに日本勢が手を焼く中、プレーがベストフィットしたリー・ジェが大きく立ちはだかりました。

初日は見れませんでしたが、2日目の結果から言っても、西岡が対応する前にあっという間に試合が終わってしまったというのが正直なところでしょうか。

第2ラバーのダニエルも危なかったと思います。結果はストレート勝ちですが、ポイント推移を見ると1セット目2ブレークダウンもありえたとのことで、そこを踏ん張ってタイブレークを取り切れたことが勝因でしょうか。

初日はまさかの1-1になりましたが、中国2-0でもおかしくなかったし、何とか日本が2日目に望みをつないだような結果でした。

 

そして2日目。最大の誤算はここでした。
おそらくテニスファンがもっとも堅いと思っていたダブルスでMPからの敗戦。ショックが隠し切れず、実際多くのテニスファンが日本の勝利は厳しいと思ったでしょう。私も思いました。

正直、デ杯で最もよくある、天王山のダブルスという大一番でホーム下位国が勝利。これによって、アップセットが起きる条件は満たされました。

 

ではなぜ日本ペアは負けたのか?ということが気になってきます。
私の考えとしては、実はデ杯のダブルスは確実にダブルス専門か経験者がいないと勝ちにくいのですが、一方で有力なダブルス専門を揃えても必ず勝てるとは限らない、というのが理由ではと思います。

意外に思うかもしれませんが、フェデラー/ワウリンカのダブルスのデ杯成績は3-4です。ブライアン兄弟の成績も勝率8割台と取りこぼし、カバル/ファラーも10ー6。

どうしてこうなるのか?というと、ダブルスには目に見えない不確定要素があるからです。
まず有力ペア以外にもダブルス専門を集めた即席ペアが機能する可能性があるということです。
また現在のATPツアーのダブルスは、ツアーレベルでメンバー寡占状態になっているため、ランキングがあまりあてにならないということです。
そしてこれが如実に出るのが、ツアーレベルには足りないものの、チャレンジャーをコンスタントに回っているダブルスペア。今回は中国ペアがこれに当てはまりました。

一方日本ペアはマクラクランの主戦のシュトルフがドイツ国籍のため、内山との急増ペア。この差が出ました。

試合を見ていて思ったのは、積極性の欠如でした。これは、全豪終了後急ピッチにコンビネーションを確認せざるを得なかったためではないかと思います。動きのあるプレーは、連携が取れていないと難しいです(例えば、空きスペースを無意識に作ってしまい、そこに決められてしまうから)。

実際試合でよく見たのが、ベンのストロークが強くないため、無理に内山がカバーしてほとんど二人が同じ場所にいるようなパターンです。結果内山が強引に相手を弾いてポイントにしていましたが、相手がラケットに触れられたら失点でした。リスク管理としては不適切なように思いました。

あと最近ベンがちょっと不振のように思います。以前どこかのインタビューで「研究されるようになり、思うように勝てなくなった」(ソース不明で申し訳ないです…)と言っていましたが、勝っていたころのいいプレーが出なくなっています。
また昨日はサービス不振でした。ベンは今のところダブルスの要素の中ではサーブが軸になる選手。1stの確率が悪く、楽にプレーができなかったのもよくなかったです。

それでもなんとかダブルスの基本を貫き、MPまで行ったのでチャンスはあったと思うのですが、全体的にあと1ポイントが遠い一日でした。そのまま流れを引き戻すことができず、中国ペアの勝利。

 

残りシングルスは上海MSで錦織にひと泡吹かせたウー、さらに初日快勝のリーで、この段階で中国チームの勝率は5割あったのでは?と思います。

ここからはシングルス勢の巻き返し。日本のダブルエースが意地を見せました。

まずは西岡。前戦の最後でMTOを取ったこともあり、綿貫に交代するのでは?と思っていましたが、決死の出場。しかしこの采配が見事的中する形になりました。

ちなみに私が監督なら綿貫にしていたと思います。ダニエル以外で全員負けたらチームの負け。仕方ないと思って出したと思いますが、たぶんそうなっていれば結果は違っていたのではないでしょうか。

ウーは緊張していました。上海MSで出したような本来のプレーができず、自分からUEを量産していきました。それに対し、西岡は自分のテニスを貫き、相手のミスをしっかり待って自滅を誘いました。

印象的だったのは、大きくリードした場面でも表情を変えることなく、高い集中で臨んでいた西岡です。初日の負けを取り返すという強い気持ちが見えました。自分のミスに対し何度も憤りを感じていました。この西岡なら負けない。頼もしさすらありました。

結果大差での勝利。切り札を使用した中国は結果的にメンバー交代があだに。初の入れ替え戦(に相当するグレード)、勝てばマドリード行き。ウーのプレッシャーは相当なものでした。

終戦は初日勝っているリーとダニエルの一戦。

厳しい戦いになりました。
正直どっちが勝ってもおかしくありませんでした。3セットマッチになったデ杯ですが、5セットマッチ時代の緊張感そのまま。1ポイントの趨勢を見守る戦いが続きました。

ダニエル、本当に強くなりました。この日のリーは初日の勢いそのまま。最後まで落ちませんでしたが振り切りました。最後はけが寸前というところまで追い込み、日本チームを勝利に導きました。

2015年コロンビア戦といい、ダニエルの第5ラバーは本当に強いです。
添田から日本デ杯男の称号が引き継がれた瞬間ではないでしょうか。

11月に出ることがあれば、日本チームの大躍進に欠かせない存在になりそうです。

正確なレギュレーションを確認してませんが、日本チーム2番手の活躍は引き続き日本チーム躍進の必要条件。ダニエルの今後に期待です。

 

今回、勝利しながらも今後のダブルスへの向き合い方など大きな課題が残りました。勝ってなお学ぶこと、レベルアップが必要なことがたくさんあります。

しかし、今回をWG入れ替え戦のグレードと同義とするならば、またシングルス錦織抜きで勝つことができました。ウクライナ(錦織ダブルスには出ました)、ブラジル、ボスニアヘルツェゴビナ、中国と強力国相手にです。

日本テニス、強いです。
引き続き条件がかみ合えばデ杯上位進出の可能性があります。
今年出れないとかなりその扉は閉ざされるところでした。ポイントを失い、今後2月の試合にノーシードで出ると、勝てるものも勝てなくなります(日本チームのドロー運だし…オーストラリアとかドイツ引きそう…)

本大会で勝ち、シードを維持しながら勝負できる年に勝負する。ここから3年、錦織が元気なうちに見たことのない景色が見れる、そんな姿を期待したいです。